I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と詳しい解説でお届けします♪

「ボクサー」サイモン&ガーファンクル

2014.05.03

category : Simon & Garfunkel

Simon Garfunkel - The Boxer1 Simon Garfunkel - The Boxer2


Simon & Garfunkel - The Boxer (1969年)



~Prologue~

4月26日夜、サイモン&ガーファンクルのポール・サイモンが“治安を乱した容疑”で地元警察に逮捕されたとの報道が、世界を駆け巡りました!
原因は20年以上連れ添った奥さんのエディ・ブリッケル(Edie Brickell & New Bohemiansのリード・シンガー)との夫婦喧嘩で、双方とも軽症を負っていたそうです。

ただ、二人は29日に裁判所へ出廷し問題はないと訴え、ポールとエディは翌日にも夫婦がデュエットした新曲「Like To Get To Know You」を公開し夫婦仲の円満をアピールしましたとさっ(メデタシ、メデタシ?)♪



~概要~

サイモン&ガーファンクルは世界で最も成功したデュオの一つで創作的な活動期間は1964 - 1970年と短いものの(単発的には外にもある)、「明日に架ける橋」など優れた楽曲と「サウンド・オブ・サイレンス」のような美しいハーモニーで今も人々を魅了し続けています。

「ボクサー」は彼らにとってアメリカで2曲目のNo.1ヒット「ミセス・ロビンソン」に続いてのシングルで、1969年4月にリリースされBillboard Hot 100で7位(年間76位)を記録、その後1970年のラスト・アルバム『明日に架ける橋(Bridge over Troubled Water)』に収録されました。
ベスト盤を含め現在よく知られているのはこのアルバムに収録されたバージョンで、オリジナルに含まれた約1分程の“この一節”が削られたものになっています。
オール・タイムとしての価値も認められる名曲で、ローリング・ストーン誌“ the 500 Greatest Songs of All Time(2010 Edition) ”にも106位にランクされる作品です

作者はポール・サイモンで、レコーディングには彼らにとって最長の100時間以上費やされました。
“ボクサー”というと『ロッキー』シリーズや格闘技系の入場曲「ファイナル・カウントダウン」(過去ログ)に象徴される“燃えるイメージ”がありますが、どう考えても”サイモン&ガーファンクル=格闘技”という構図は想像し難いモノがあるでしょ?
でもやっぱりその“期待に違わずボクシングらしくないサウンド”で、アコースティック・ギターとポール&アート・ガーファンクルによる見事なハーモニーがメインのカントリー調の趣があります。
唯一ボクシングっぽいとすれば、“Lie la lie ...”のコーラスの合間に入ってくるサンド・バッグを叩くようなドラム音ぐらいでしょうか?

後で詳しく述べますが実はこの作品はタイトルにあるような「ボクサー」をメインに掲げているわけではなく、本当のテーマは他にあるのです…。

 Live in the Central Park, New York, September 1981



~Lyrics~

I am just a poor boy
僕は、貧しいただの男

物語の実質的な主人公は、彼。
故郷を離れ都会に出たものの、定職も定住も得られず彷徨う一人の若者。
きっと、あなたの街にも“彼”はいるはず。
誰の気に留められることもなく、ひっそりと…。


Where the ragged people go
ぼろぼろの人たちが集まる…
Looking for the places only they would know
そんな人だけが知る場所を求めて

“the places only they would know”が、今回特に心に引っかかりました。
何年か前、何らかの理由で道路のアスファルトの僅かな隙間から逞しく生えた“ど根性大根”が話題となったのをご記憶でしょうか?

でも、彼らだって好んでそんな場所に根を下ろしたわけじゃない…
あんな小さな生命なのに、懸命に生きようとするその姿に私たちは感銘を受けました。
ただ、彼らは生まれる場所に恵まれなかっただけ…。


In the clearing stands a boxer
リングという荒野に立つ、一人のボクサー…

“boxer”という言葉が使われるのは実はこの1回だけで、主人公“a poor boy”とは別人と私は捉えています。
何故、わざわざボクサーを引き合いに出してきたのだろう…
その理由は、次に記します。


"I am leaving, I am leaving"
“きっと、這い上がる…”
But the fighter still remains
闘う男は、まだここに生きている

たぶん、この歌は社会の底辺で必死に生きる“名もなき貧者”への応援歌なのではないでしょうか?
“身を削ってお金を稼ぐ”象徴として、ボクサーを掲げたのだと思います。

テレビで見るボクサーはどれも華やかですが、実際は日本チャンピオンでさえ1試合のファイトマネーが100万円程なのだそうです(年間4試合で400万円、ここから何割かをジムに納める)。
そういえば『あしたのジョー』で、矢吹丈らが“泪橋”下の小屋を出られたのは東洋チャンピオン以降だったような…。



~貧しき者たちの心の叫び~

Lie la lie ...

この作品で印象的なものの一つに、このコーラスがあります。
しかしLyricsを読むと分かりますが、実はこれ以外でも“ lie ”と“ lay ”は頻繁に使われています。
みなさんは学生時代、この二つの意味や活用形の紛らわしさに頭を悩まされた記憶はありませんか?
ここでは、その紛らわしさを逆手に取って巧みにそれを織り交ぜ物語を構成しています。

ご存知のように“ lie ”には“横たわる”と“嘘をつく”という全く別の意味があり、“ lay ”には“横たえる”という意味があります。
この作品では、“貧しい人たちが理不尽や’偽り’により、さらに’どん底’へと追いやられている”現実を訴えているように思えるのです。
そして“Lie la lie ...”はそれを悲しみ、やがてそれが憤りとなって民衆の大きな叫びへと発展してゆくさまを象徴させているのではないのかと…。



~Epilogue~

近年耳にする流行語に、“ワーキング・プア”という言葉があります。
雇用側に有利な低賃金や社会保障制度により、マジメに働いているのにも関わらず生活の困窮を強いられる人々が増えているというのです。

一方で、天下りによりマジメに働かずとも何千万という収入と退職金を得ている人もいます。
こうした“理不尽な社会のしくみが、カネと権力を握っている彼ら自身によって作られる”限り、それを持たない弱者の苦しみが正当に省みられることはないのでしょう…。
人々の“叫び”が聴こえてきませんか?

Lie la lie ...
偽りと理不尽の横行は、もうやめにしてくれ!



「ボクサー」

最後までお読みいただき、ありがとうございました♪

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tags : 音楽 洋楽 和訳  訳詞 Lyrics 

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