I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と詳しい解説でお届けします♪

「ユー・スピン・ミー・ラウンド」デッド・オア・アライヴ

2016.10.28

category : 1980年代

Dead Or Alive - You Spin Me Round1 Dead Or Alive - You Spin Me Round2


Dead Or Alive - You Spin Me Round (Like a Record) (1984年)



~急逝、ピート・バーンズ~

1980年代、バブル時代を象徴するイケイケなダンス・ミュージックとして日本人の記憶に刻まれるデッド・オア・アライヴのヴォーカリスト、ピート・バーンズ(Pete Burns)が10月23日に心不全のため亡くなりました(享年57)。
同時代に活躍し、何かと比較されることの多かったカルチャー・クラブのボーイ・ジョージは“胸が張り裂けそうだ。彼は本物の偉大なる変わり者(※)の一人で、僕の人生の大きな一部だった。信じられない…。”とコメントしています(※【eccentrics;変わり者】の言い回しには、“この二人だからこそ言い合えるもの”がありそう…)。

今日は、ピート・バーンズに追悼を込めてお送りいたします。



~概要~

デッド・オア・アライヴは1980年にゴシック・ロック・バンドとしてイギリスでシングル「I'm Falling/ Flowers」でデビューを果たしていますがそれを含め数年間はヒットを出せていませんでした。
転機となったのがKC&ザ・サンシャイン・バンドの有名なダンス・ナンバー「That's The Way [I Like It]」をカバーしたことで、これが1984年に全英22位まで上昇し初めてのヒット曲となります。

同年11月、ダンス・ユニットに転身した彼らは「You Spin Me Round (Like a Record)」をリリースすると、チャートを17週かけてじわじわ上昇し、翌年3月にとうとう全英No.1にまで到達しました。
この余波は国内に止まらず世界に波及、カナダやアイルランド、スイスでもNo.1を獲得する大ヒットとなり、8月にはアメリカBillboard Hot 100でも11位を記録しています。

「ユー・スピン・ミー・ラウンド」の特徴的な打ち込みビートを聴いて1980年代後半に世界的ブームとなったユーロ・ビートのサウンドを思い起こす方も多いと思いますが、それもそのはず、本曲はそのユーロ・ビートの仕掛け人であるストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)のプロデュース作品であり、SAWにとっても最初の全英No.1ヒットでした。
この大ヒットを駆って85年5月には本曲を収録した2ndアルバム『Youthquake』が発売され全英9位を記録、Billboard 200も31位まで上昇しています。
ちなみに【Youthquake】は1960-70年代に若者に広がった、体制に対する反抗と過激主義に基づいた“若者の反乱”のことで、彼らのバンド名【Dead Or Alive】といい、その思想背景が窺えます。

「ユー・スピン・ミー・ラウンド」にインスピレーションを与えた楽曲についてピート・バーンズはルーサー・ヴァンドロスの「I Wanted Your Love」を挙げており、ギターはワーグナーの「Ride Of The Valkyries」に基づいているともいわれます。
デッド・オア・アライヴとワーグナー…
何の接点もなさそうな2人ですが、いわれてみると意外な共通点!?

 
 



~You Spin Me Round (Like a Record)~

「ユー・スピン・ミー・ラウンド」は、お目当ての相手が儘(まま)ならず恋に焦(じ)れる男の物語。
イケイケな曲の勢いの割には意外とウブな一面が隠されていて、私は何だか“ピート自身のキャラと実像のギャップ”を想像してしまいます。
ダンス・ナンバーなので詞のストーリー自体は深いものではありませんが、テーマに関連する“【spin】は軸を中心にすばやくクルクル回転する”イメージで、コマの回転やスケートのスピンが直感的です。
それを【record】に喩えるのはいかにもミュージシャンらしいですが、21世紀の日本の若者にレコードの回転という喩えは理解してもらえるでしょうか…。


You spin me right round, baby
キミは、ボクの心を釘づけにして目眩(めまい)させる
Right round like a record, baby
まるで、レコードのように

レコードのようにぐるぐる回す…

直訳すれば“ただそれだけの意味”しか持たない言葉ですが、少しだけ妄想を働かせるとちょっと面白いことに気づきます。
ストーリーからは、主人公が意中の人にゾッコンなのに、肝心のお相手には“多くの中の一人”としか認識してもらえず苦悩している様子が伝わってきます。

レコードはプレーヤーの軸にその身を固定して回転させて初めて真価を発揮するものであり、それは宿命です。
恋も、意中の相手という軸に心を固定しストーリーを展開させるものですが、それは必ずしも想いのままになるものでもなく、だからといって相手のそば(軸)から容易に離れることもできずその周りをぐるぐると回り続ける…

人生とレコードって、意外に似てる…? 



~ピート・バーンズの生涯~

ピート・バーンズはリヴァプール生まれで、お母さんは人目を引くほどオシャレでとても美しい人だったそうです。
しかし彼女はイギリスの風習に馴染めず(ドイツ系ユダヤ人)アルコールに溺れ精神を病むようになったため、ピートも十分な母の愛情を受けることができず生育したといわれます。
そのためかは定かではありませんが、ピートは少年時代から自分の容姿に強いコンプレックスを持ち、顔に絵の具を塗ったり化粧をしたり、髪を染め眉毛を剃って奇抜なファッションに身を纏(まと)ったため周囲から浮いた存在だったようです。

デッド・オア・アライヴとして人気を欲しいままにしてからも自分の顔へのコンプレックスは消えることはなく、お金があるだけその望むままに“究極の変身”である整形手術に依存するようになっていきました。
最初は鼻を整形する程度であったもののそれがエスカレートし、いつしか収入のほとんどを整形費用につぎ込むようになり、度重なる手術の失敗による炎症、果ては失明の危機や腎不全、腸障害など重篤な後遺症が次々と彼を苛(さいな)みました。
治療費を捻出するため貯蓄を使い果たし3億円の自宅も売却、更には楽曲の著作権まで売り払ったそうです。
(亡くなる1年前には自己破産に追い込まれていたと報じられる)
11/1追記;ピートは財産を全く残しておらず葬儀代にも事欠くありさまだったそうですが、ボーイ・ジョージが全ての費用の負担を申し出、無事執り行われることになったようです(詳細)。

しかしそれでもピートは整形依存を止められず、担当医からは“もう顔が元に戻ることはない”と告げられていたにも拘らず手術を重ね、近年の彼の写真は痛々しくて私には直視できません。
今年初めのピートの発言によると彼はこれまで300回以上の整形手術歴があるらしく、それによって命の危機すら経験しながらも“完璧なルックスを手に入れるための整形を止められないだろう”と語っていたそうです。

Dead Or Alive - You Spin Me Round3 Pete Burns 1959-2016
ケミカルピーリングやボトックスは定期的にやっている。習慣になっているんだ。人々は何年かおきに部屋の模様替えをするだろう?僕の整形もそれと同じ。顔を変えるのは、新しいソファーを買うようなものなんだ


ピート・バーンズが旅立った先に、身も心も安らかなる世界がありますよう…。  R.I.P.



「ユー・スピン・ミー・ラウンド」

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「スリラー」マイケル・ジャクソン

2016.10.21

category : Michael Jackson

Michael Jackson - Thriller1 Michael Jackson - Thriller2


Michael Jackson - Thriller (1984年)



~発表!“有名故人の長者番付 2016”~

先日、アメリカ『フォーブス』誌が今年の“有名故人の長者番付”を発表しました。
この1年間(2015年10月~2016年10月)で最も稼いだ上位5人を並べてみると…

5位 プリンス – 2500万ドル(約26億円)
4位 エルヴィス・プレスリー – 2700万ドル(約28億円)
3位 アーノルド・パーマー – 4000万ドル(約41.5億円)
2位 チャールズ・シュルツ – 4800万ドル(約50億円)

さすがに誰もが知っている有名人が並んでいますが、彼らを退け頂点に立ったのは誰だと思います?
…と、その前に最も稼いだ現役のスターを報告しておくと、1位はやはりテイラー・スウィフトで1億7000万ドル(約175億円)でした!

さて、故人の第1位は大方の皆さんのご想像通り、マイケル・ジャクソンです。
でもその金額がオドロキで、マイケルの1年間の収入は推定“8億2500万ドル(約860億円)”!!
ただしその内7億5000万ドル(約780億円)は、彼が権利を所有していたビートルズ楽曲を含むソニー・ATV・ミュージックの出版カタログの売却によるもので、でもたとえそれを差し引いたとしても約80億円の収入があったことになるのですから、どっちにしろ1位だったことに変わりません。
しかし先日50歳での妊娠が明らかになったジャネット・ジャクソンといい、凡人にとってこの2人は“何もかも信じ難い兄妹”ですね!?



~概要~

「スリラー」は1982年12月1日に発売されたマイケル・ジャクソンの6thソロ・アルバム『Thriller』からの“7thシングル!”で、その発売はアルバム・リリースから実に約1年2か経過した1984年1月23日のことであり、これがBillboard Hot 100で4位(年間78位)を記録したことにより、彼は“同一アルバムから7曲連続Top10入り”という前人未到の快挙を成し遂げました。
1984年の第26回グラミー賞では『Thriller』関連が“8冠”に輝いたことで有名ですが、このうち「スリラー」のパフォーマンスによってマイケルは“Best Male Pop Vocal Performance”を受賞しています。


「Thriller」の作者はマイケルではなく、前作での「Off The Wall」や「Rock With You」の作詞・作曲を手掛けたロッド・テンパートン(Rod Temperton)で、マイケルのプロデューサーであるクインシー・ジョーンズにその才能を買われたライターでした。
その彼が今年10月6日に亡くなった(享年66)との報道があり、その追悼の意味からも今年のハロウィンは「Thriller」を特集しようと思いました。

Michael Jackson - Thriller3 Rod Temperton 1947-2016

ロッドによると作曲にインスピレーションを与えたのはジャクソンズのファンク・ナンバー「This Place Hotel」だそうですが、1981年のリック・ジェームス「Give It To Me Baby」の方が近いものがあるようにも思えます。
また、権利の折り合いがつかず実現はならなかったものの『Thriller』のセッションでは日本のYMOの1979年のヒット曲「BEHIND THE MASK」(作曲;坂本龍一)のカバーが試みられており、何処となく「Thriller」にはそのエッセンスが含まれているような気も…?
マイケルの歌う「ビハインド・ザ・マスク」は、2010年に未発表曲集『MICHAEL』で初めて公開)
一方、作品の当初のタイトルは「Starlight Sun」や「Give Me Some Starlight」だったものの、“子どもたちにアピールできるものにしたい”というマイケルの意向から「Thriller」に改められた経緯があったそうです。

「スリラー」というとマイケルのライブの定番曲ですが初披露は意外と遅く、発表から5年近く経った1987年の『Bad World Tour』でした。
ちなみに、世界で最初にそのパフォーマンスを目にする栄誉に浴したのが日本で、ジャンボ・ジェットのチャーター機で来日したりチンパンジーのバブルス君にまで話題が及ぶなど日本中が大騒ぎとなり、さらに翌年も再来日するなどこのツアーで計23公演を行い、祖国アメリカを除けば世界的に突出した数の公演を日本で行っています。
しかしツアーの歴史を振り返ってみると「Thriller」の生歌を聴けたのはこの2年間だけで、残念ながら1992年の『Dangerous World Tour』以降は口パクとなってしまったようです。






~Lyrics~

There's no escapin' the jaws of the alien this time (they're open wide)
“エイリアン”による“死の恐怖(jaws)”から逃れる術はない
This is the end of your life
…もはや、一生の終わり

【thriller】は、スリルを与える人・物・創作(小説・映画…)のことです。
そうしたテーマのせいか、この作品には“thrillerな映画のタイトル”が随所にちりばめられています(※あくまで、私の解釈です)。
『Alien/エイリアン(1979年)』や『Jaws/ジョーズ(1975年)』をはじめ『Second Chance/第二の機会(1953年)』『Grizzly/グリズリー(1976年)』『The Ghoul/ブラッディ ドクターローレンスの悲劇(1975年)』などがあり、結果としては『Creature/クリーチャー(1985年)』も含まれるでしょうか…。


So let me hold you tight and share a killer, diller, chiller
だからキツく抱きしめさせて?…ゾクゾクするほどステキなことを分かち合おう
Thriller here tonight
今夜、ここで…

SFでマイケルの“遊び”に振り回されっぱなしのガール・フレンドを演じているのは、オーラ・レイ(Ola Ray)《写真・左》。
1980年6月号のプレイメイト(雑誌『PLAYBOY』のモデル)として脚光を浴びた人で、他には『48時間』や『ビバリーヒルズ・コップ2』にも出演しています。
劇中では仲良しの二人ですが、2009年5月にはこのSFへの出演料が十分支払われていないと係争にまで発展しており、その騒ぎの中マイケルが突然死去してしまいました(6月25日)…。

Michael Jackson - Thriller4 Michael Jackson - Thriller5

For no mere mortal can resist
すでに命運尽きた人間に
The evil of the thriller
悪霊の使いに抗う術はない…

この作品に無くてはならない不気味なナレーションの締めくくりのラインで、この言葉を最後に“男”は不敵な高笑いと共に部屋を去って行きます。
“男”の名はヴィンセント・プライス(Vincent Price)《写真・右》、かつて“三大怪奇スター”と称された戦後のアメリカ・クラシック・ホラー映画の第一人者です。
その名の通り『肉の蝋人形』や『ハエ男の恐怖』といった“いかにも”な出演作を歴任し、彼を敬愛して止まないティム・バートンの『シザーハンズ』への出演が遺作となりました。



~おまけ映像 笑って許して?(笑)~

 
 



~Epilogue~

そして、「Thriller」といって忘れてはならないのが世界で最も有名といっていいミュージック・ビデオ。
ミュージシャンにとって売りモノは音楽であって、MVはプロモーションのための手段に過ぎないという認識を大きく変えたのがポピュラー音楽専門チャンネル『MTV』の開局であり、マイケル・ジャクソンでした。
マイケルは自身のMVを“ショート・フィルム(短編映画)”と捉えており、詞は脚本で、それを音楽と映像で極限まで表現し切ることを目指していたのです。
そうして出来上がったのが約14分にも及ぶSF「Thriller」で、彼はこの短い映像(MVとしては普通の3倍ありますが)のために50万ドル(当時のレートで1億1500万~1億2000万円)の制作費をつぎ込み(普通のMVの10倍)、映画『狼男アメリカン』の監督であるジョン・ランディスと特殊メイク担当のリック・ベイカーを雇い、ゾンビがフォーメーションを組んで繰り広げるダンスと斬新で迫力ある映像を融合し、誰もがアッと驚くクオリティにまで昇華させました。


“Due to my strong personal convictions,
これは私個人の強い信念に基づくものであって、
I wish to stress that this film in no way endorses a belief in the occult.”
決してオカルト信仰を支持するものではないことをお断りしておきます。

これは歌詞ではなく、SF「Thriller」冒頭に記される免責事項
キリスト系の教会の多くが“ハロウィンは世俗のイベントでありその習俗がキリスト教的ではない”と認識しており、一部の教会からは“ハロウィンは子どもたちに世の悪魔や闇を‘楽しみ’として誤った方向に導くもので、これはオカルトである”といった否定的な見解もあるそうです。
「Thriller」についてもこれと似た見解があり、映像の公開時そのオカルト性や暴力的なシーンが含まれると批判を受けました。
特にジャクソン家は“エホバの証人(Jehovah's Witnesses)”の信徒であり、当時マイケルもこれに属していたため、“ゾンビやクリーチャーは教義に反する”とエホバの証人の指導者から抗議され、SFに免責を入れたともいわれます(こうした軋轢のせいか、マイケルは1987年に教団とは縁を切ったらしい)。


2009年…
マイケルの生涯最後の公演になるはずだった『THIS IS IT』
ここでも、「スリラー」は披露される予定でした。
そのために3D化した新たな映像まで制作し、マイケルの生のパフォーマンスと、飛び出す3D映像を合成して観客のド肝を抜くステージを計画していました。
ここに紹介するのは、新たな映像と『THIS IS IT』でのマイケルのリハーサル映像を編集したものです。



That it's a thriller, thriller night
まさにそれがスリラー、スリルが訪れる夜
'Cause I can thrill you more than any ghost would dare to try
何故なら、僕がどんなゴーストよりゾクゾクさせてみせるから


天が遣わしたちょっとイタズラなエンターテイナーと、ドキドキ・ハラハラのハロウィンをお楽しみください♪ 



「スリラー」

お急ぎの方は“Short Version”をどうぞ♪
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「ラヴァー・イン・ミー」シーナ・イーストン

2016.10.14

category : Sheena Easton

Sheena Easton - The Lover In Me1 Sheena Easton - The Lover In Me2


Sheena Easton - The Lover In Me (1988年)



~ベストヒット80's/シーナ・イーストン&ジョディ・ワトリー~

1980年代洋楽のヒット・ナンバーを東京フィルハーモニー交響楽団が演奏する『ベストヒット80's ミーツ シンフォニー』が10月28・29日に東京ドームシティホールで開催予定ですが、このイベントには80年代を代表する歌姫シーナ・イーストン&ジョディ・ワトリーのゲスト出演が決まっているそうです。
さらに、“ベストヒット80's”といえば洋楽ファンは連想するであろう『ベスト・ヒットUSA』ナビゲーターの小林克也も参加することになっていて、詳細はご本人が“懐かしいあの名調子”で紹介してくれています。

ジョディ・ワトリーといえば歌・容姿ともに当時を代表するセクシー・アイコンの一人ですが、一方これに対抗するシーナ・イーストンのお色気路線といえば、やはり「The Lover In Me」でしょう。
シーナの色っぽい“ムフフ”なPVもご用意してありますので、どうぞお楽しみに♪





~概要~

「ラヴァー・イン・ミー」は1988年の9thアルバム『ラヴァー・イン・ミー(The Lover in Me)』からの1stシングルで、Billboard Hot 100で2位(1989年の年間41位)を記録した作品です。
シーナにとって1984年の「Sugar Walls」以来約5年ぶりのTop10ヒットですが、ゲスト参加としては1987年にプリンスとの「U Got the Look」の2位もありました(「Sugar Walls」もプリンスの楽曲)。

1980年にデビューしたシーナは80年代前半は正統派のポップ・シンガーというイメージがありましたが、80年代半ばから“ファンク王子”と共演していることからも分かる通りブラック・ミュージックへのアプローチを試みており、彼女にとって転換期でもありました。
“シンデレラ・ガール”として一躍話題を集めたシーナも、“MTVの申し子”マドンナの出現によって衆目を奪われ、80年代半ばはジャネット・ジャクソン、80年代後半頃はポーラ・アブドゥルといった、何れもセクシーさとダンスを持ち味とした女性シンガーが際立った活躍をみせていた時流から、彼女もそのスタイルを意識せずにはいられなかったことでしょう。
プリンスとの共同関係は『The Lover in Me』でも継続されており、殿下はこのアルバムでシーナのために2曲を提供しています。

しかし80年代後半頃プリンス以上にアメリカのダンス・シーンに影響を与えていたのはボビー・ブラウンやペブルス、キャリン・ホワイトらを次々にスターへと導いていたL.A.リード&ベイビーフェイスで、「ラヴァー・イン・ミー」は彼らによる楽曲・プロデュース作品でした。
そのため「The Lover In Me」はそれまで以上に“黒っぽい強烈なダンス・ビート”をフィーチャーし、オーソドックスな楽器と最新の機材を巧みに融合させ洗練されたサウンドが創り上げられており、シーナ自身も“水を得た魚”のように生き生きと艶っぽい歌声とオーラで魅せてくれています。

 



~Lyrics~

Talk about the love you're missing
アナタがフラれたって噂
Maybe then it's true
…たぶん、それは本当でしょう

…別にそれを意識して選曲したわけではないのですが、見事に前回の「ダウンタウン・トレイン」からストーリーが繋がるでしょ!?
「Downtown Train」は一人の男性が、想いを寄せる女性と“Downtown Trainで会いたい”と願いを込めた作品であり、“もしも会えなかったら?”を想像したとき、色っぽい小悪魔がこんな風に彼に囁き掛ける場面が浮かんできたのです…。
でもシーナにPVのように色っぽく囁き掛けられたら、アナタならどうします?

 …やっぱ女のコは、小悪魔に限るよね♪


When they say love is blind
他人は、それを“恋は盲目”で片づけてしまうけれど
I can help you if you listen
アナタが耳を傾けてくれるなら、ワタシが苦しみから救ってあげる

ここは【they】を[彼ら]ではなく、“他人”とすることに拘りました。
だって“それ”は他人事だと冷静でいられますが、“自分のこと”だと誰だって迷子になってしまうものでしょ?
でも彼女の気持ちはアソビなんかじゃなく、その愛は“生涯保証つき”というのですから安心です!

 …アレっ? でもそう言うシーナ本人は確か××××じゃなかったっけ??



~Epilogue~

「ラヴァー・イン・ミー」は前回「Downtown Train」の難解さに比べ、全体にヒネリのない素直な歌詞といえます。
ただしテーマに掲げられる【The Lover In Me】は一見平易な単語ばかり並んでいるようにみえて意外と厄介で、素直に“私の中の恋人”と訳しても何だか意味がはっきりしません…。


If you talk about good loving
もしも素敵な恋を語るなら
Let's talk about the lover in me
ワタシという恋人だけ


実際の文脈上から判断するとここでの【the lover =私】なのに、その後【in me】を重ねて“くどい表現”をするからややこしくなるのですが、タイトルにもなっているくらいなので“それこそが重要なメッセージ”であるはずです。
人は、重要な事柄ほど念を押すように何度も確認したがるものであり、女性の“愛してる?”もそうした気持ちの表れなのでしょう。
とりわけ歌詞に登場するお相手は“ほかの誰かを探しに街中を駆け回る”人らしいので、彼女が【the lover in me!】【in me!】【in me!】と何度もアピールするのも無理からぬことにも思えます。

アナタの何気ない日常の中にも、相手のホンネを代弁する重要な一言が隠されている

…かも? 
(“くどい表現”にはお気をつけあれ…)



「ラヴァー・イン・ミー」

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「ダウンタウン・トレイン」ロッド・スチュワート

2016.10.07

category : Rod Stewart

Rod Stewart - Downtown Train1 Rod Stewart - Downtown Train2


Rod Stewart - Downtown Train (1990年)



~鉄道の日~

10月14日は、“鉄道の日”。
1872年10月14日(旧暦・9月12日)に新橋 - 横浜駅を結んだ日本初の鉄道が開業したことから、1922年に鉄道省により制定されました(当時は“鉄道記念日”)。
それから144年が経った2016年、北海道新幹線が開業しリニア中央新幹線品川駅工事が着工するなど鉄道は著しい発展を遂げた一方、それに伴い寝台特急カシオペアや急行はまなす、特急スーパー白鳥など“旅情誘う名物列車”が惜しまれながら今年をもって運転終了しました。

…そんなワケで、今回は【Train】をテーマとしてみました♪ 



~概要~

「ダウンタウン・トレイン」は1989年のベスト・アルバム『The Best of Rod Stewart』のため新たに録音されたシングルで1990年1月にリリース、「Da Ya Think I'm Sexy?」以来11年ぶりにロッド・スチュワートが英・米両方のチャートでトップ10入り[UK 10位/US Hot 100 3位(年間37位)]を達成した作品です。

オリジナルはアメリカのシンガー・ソングライターのトム・ウェイツが1985年に発表したアルバム『Rain Dogs』に収録された作品で、作者も彼です。
一応シングル・カットはしたもののチャ-ト・インは果たせず(…というか、彼は生涯を通じてHot 100にチャ-ト・インしたシングルは1つもない!)、ボクシング元世界ミドル級王者のジェイク・ラモッタ(※)が出演したPVが特筆されます。
(※ジェイク・ラモッタはロバート・デ・ニーロがアカデミー主演男優賞を獲得した映画『レイジング・ブル』の原作者であり、これは彼の自伝に基づいたものである)
その後1987年にメアリー・チェイピン・カーペンターやパティ・スマイス[本曲は彼女のバージョンで初めてチャート・イン(95位)]ら女性歌手によって歌い継がれ、1989年にロッドが歌うに至ったというわけです。

ロッドver.のヒットの要因として彼自身の哀愁たっぷりのヴォーカルがあるのはもちろんですが、プロデューサーを務めたトレヴァー・ホーンの貢献も大きく、ロッドはその出来映えについて『The Best of Rod Stewart』のライナーで“すばらしい才能にあふれ社交的なトレヴァー・ホーンがプロデュースした一枚岩のような曲”と評しました。
“レコーディングに貢献”といって忘れてはならないのは1960年代からの盟友ジェフ・ベックで、ここではスライド・ギターで参加しています。
また、「Downtown Train」は元々ロッドのお気に入りというわけだったわけでなくWEAレコードのロブ・ディキンズの紹介によるものだったらしく、“彼が、僕の関心をこの美しいトム・ウェイツの曲に向けてくれた”と、その功績に言及しています。

私が初めて「Downtown Train」のパフォーマンスを目にしたのは1991年のグラミーで、これはロッドが本作品で“Best Male Pop Vocal Performance”にノミネートされたことによるものですが、実際には恐らくこの時の歌は“口パク”だったと思われます。
ただ、この時のロッドのパフォーマンスがとにかくカッコよくて、今もお気に入りの映像です。
でも、どうしてもロッドの生歌が聴きたいという方のために、正真正銘の生歌映像をお付けいたしましょう♪

 



~“酔いどれ詩人”と「Da Ya Think I'm Sexy?」~

トム・ウェイツというと歌詞の難解さが有名で、「Downtown Train」についても本人が“誰にもカバーできない曲を書いたつもりだった”と語っているように、彼以外の人がこの詞を歌いこなすには解釈を変更する必要があるように思えます。
そこで、特に問題となる2番の歌詞についてオリジナルのトム・ウェイツver.とロッド・スチュワートver.を、私なりの解釈で比較してみました。




You wave your hand and they scatter like crows
お前が別れの手を振ると、奴らは烏のように四散する
They have nothing that'll ever capture your heart
…そんな連中に、その心を熱くさせるものなどあろうはずもない

まずは、トム・ウェイツver.。
ここで歌詞を難解にさせている最大のクセモノは【they】の存在で、早くも1行目から“Youが手を振ると、どうして【they】がカラスのように四散する?”という疑念が湧いてくるはずです。
主人公は、Youにとって【they】が好ましからざる存在と考えていて、同時に彼はYouに片想いしているらしいことは窺えるものの、その先を究明しようとするとどうしても1行目の疑念が立ちはだかってくることになります。

そこでこの“【You】を娼婦”、“【they】をその相手客”と仮定してみたらどうでしょう…
用が済んだらお互い惜しむことなくサヨナラ…というのも頷けるはずです。
さらに、3番の歌詞で[I know your window...]から始まる抽象的な部分も“惚れた娼婦が客と交わっているホテルの外に立つ主人公”とするなら彼の苦悩も具体的に理解できるし、全体としてもストーリーの筋が通ると思います。


You wave your hand and they scatter like crows
君が別れの手を振ると、それは烏のように四散する
They have nothing that'll ever capture your heart
…そこに、心を熱くさせるものなどあろうはずもない

一方、トム・ウェイツver.の解釈をロッド・スチュワートの「Downtown Train」にそのまま当てはめようとすると、ロッド自身のイメージや彼のバージョンから受ける清々しさとのギャップに違和感が湧いてきます。
でも考えてみれば“酔いどれ詩人”と形容されるトムの歌を、「Da Ya Think I'm Sexy?」を地でゆくロッドがカバーするのですから、そこに違和感が生じるのも無理はありません。

そこで、ロッドver.では“都会へ旅立った片想い(もしくは元恋人)の女性を、今も忘れられず見守り続ける主人公”という基本設定を描いてみました。
すなわち“【You】は娼婦ではない普通の女性”、“【they】は特定の人物ではなく、彼女を取り巻く大都会の空虚や危険”と捉え和訳を完成させました。



~Epilogue~

作品のテーマの一部となっている【downtown】は普通名詞としては[商業地区に・都心部に]といった意味ですが、この作品ではそこを走る電車は【Brooklyn girls】で溢れているということから、舞台は“ニューヨーク市ブルックリン区ダウンタウン・ブルックリンと思われます。
ブルックリンはニューヨークの5つの区の中で最も人口が多い250万人が居住する大都会で、区内にはニューヨーク市地下鉄が18線通っておりマンハッタンとを行き来する者の92.8%はこの地下鉄を利用するそうです。
「Downtown Train」のPVには地下鉄が登場し、《概要》の項で紹介したグラミーのパフォーマンス映像でも【Will I see you tonight on a downtown train】のラインにくるとロッドが頻(しき)りに右手で下を指さす仕草をすることからも、【Train=地下鉄】という解釈が成立します。


Will I see you tonight on a downtown train
“今夜、ダウンタウン・トレインで会えない?”
Every night, every night its just the same
…毎夜毎晩、唯そればかり想い巡らす

これまでトム・ウェイツver.とロッド・スチュワートver.のテイストの違いをあれこれ述べてきましたが、ストーリーの一番大切な部分は誰が歌おうと決して変わることはありません。
要は一人の男が一人の女を好きで、事情があって実現は叶わぬままであるものの、毎夜毎晩相手のことを思い浮かべている…
そんな、シンプルなラブソングです。
散々こねくり回しておいて言うのもなんですが、難解な歌詞を乗り越えた後、この真っすぐで解釈の余地もないメッセージに辿り着いた今の私の心情は、長く続いた雨の後、淀みなく澄み渡った青空に出あったような感動に似ています。

…改めて、この歌が好きになれました♪ 



「ダウンタウン・トレイン」

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