I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と詳しい解説でお届けします♪

「ワン・モア・トライ」ジョージ・マイケル

2016.12.30

category : Wham! & George Michael

George Michael - One More Try1 George Michael - One More Try2


George Michael - One More Try (1988年)



~ R.I.P. George Michael 1963-2016 ~

既に報じられているとおり、イギリスを代表する男性歌手の一人ジョージ・マイケルが現地時間12月25日のクリスマスに急逝しました(享年53)。
2015年12月31日のナタリー・コール、明けて1月10日のデヴィッド・ボウイの相次ぐ死に幕を開けた波乱の2016年はその後も多くのスターの魂を天に召還し、最後まで落ち着きを取り戻すことはありませんでした。
⇒2016年に亡くなったスター一覧

しかし一連の動揺は収まるどころか、12月27日には『スター・ウォーズ』の“レイア姫”キャリー・フィッシャーが(享年60)、更にはそのキャリーの実母で女優・歌手のデビー・レイノルズが娘の死の翌12月28日に亡くなる(享年84)という訃報の連続に驚かされた方も多かったことでしょう。
当ブログのキャパではその全てをカバーすることはできませんが、改めてその冥福を心よりお祈りいたします。



~概要~

「One More Try」は1987年10月30日発売、ジョージ・マイケルの1stソロ・アルバム『フェイス(Faith)』の収録曲です。
ご存知のようにジョージは1980年代中頃までに世界的アイドルに上り詰めたイギリスのポップ・デュオ“ワム!(Wham!)”の中心人物でした。
ところがその人気絶頂を極める中、彼は自らワム!を脱ぎ捨て“本当の自分”を求めて歩き始めたのです…。

ワム!の一連の作品の殆んどはもちろんジョージの自作によるもので、その弾けるポップ性と若さ溢れるエネルギーがキラキラしたオーラとなって多くの人々を魅了してきました。
しかしワム!の解散から僅か1年でリリースされたジョージの1stソロ・アルバム『Faith』は、その輝かしいイメージを全く覆すテイストのものでした。
そこにはかつてのキラキラ感はなく、“まるで黒人”といっていい粘っこくてコクのあるブラック・ミュージックで占められていたのです。
最小限のリズムとキーボードのみでシンプルに編曲されたバラード「One More Try」もその例外ではなく、そこに漂うゴスペルのインスピレーションが主人公の心情を極限まで表現しているように思えます。

「One More Try」は1988年4月にシングル・カットされると、5thシングルという不利な条件をモノともせずBillboard Hot 100で3週No.1(年間11位)を記録しました。
また、同時に本曲はAdult ContemporaryとHot R&B/Hip-Hop SongsチャートでもNo.1を達成しており、特に白人男性歌手によるR&Bチャート1位は、以後2007年のロビン・シック(Lost Without U)まで20年近く成し遂げる者が現れませんでした。
日本ではソニー・ウォークマンのCMにPVがそのまま使われていたので、曲・映像共にご記憶の方も多いでしょう。

一方、あまりにブラック・ミュージックに傾倒(アメリカ寄り)し過ぎたせいかジョージの本国イギリスではアメリカほど歓迎はされておらず、当時の彼としては物足りない8位に終わっています。
しかし白人のジョージが作曲し歌唱した本曲は後世、Divineやビヴァリー・ナイトなど黒人歌手によってカバーされており、彼らに歌い継がれることこそ、彼にとって望むべき栄誉だったといえるのかもしれません。


 



~Lyrics~

'Cause teacher
何故なら、teacher...
There are things that I don't want to learn
僕には学びたくないことがある

これは、教師と生徒の物語なのでしょうか…
教師は教えるのが仕事、生徒は学ぶのが仕事ですが、あなたはどんな学生でした?
正直、私は“学びたくないことがある”というより、“学びたくないことだらけ(あまり興味が湧かなかったという意味で)”でしたが…。

特にこの物語の主人公が学んだと思われる“事柄”については教科が設けられていないどころか、むしろ“教師はその事柄を生徒に学ばせまいとしていた”ような…? 


And the last one I had
そして、最後にあなたから授かったもの…
Made me cry
それは、叫ばずにいられないほどの悲しみだった

教師が生徒に、最後に授けるものといえば“卒業証書”!
…ではないようですね?
生徒が教師に恋心を抱くというのはよくあることと思いますが、それに応じるわけにいかないというのも教師という職業です。

カリキュラム上、教師と生徒の別れは宿命ではあるものの若人には新たな出逢いが用意されており、その悲しみは通常“良い思い出”として昇華される?


For an uptown boy
山の手育ちの坊やにとって
Whose teacher has told him goodbye, goodbye, goodbye
あなたにさよならを告げられたことは…

ところで、少し捉え方を変えてみましょう…
【teacher】は言うまでもなく教師ですが、辞書には[物事を教えてくれる抽象概念を擬人化したもの]ともあります。

ここはイメージを拡げて、teacherを“知識・経験豊かな少し齢の離れた年長者”としてみたらどうでしょう?
二人の別れの背景には、いろんなストーリーが膨らみそうです…。



~Epilogue~

作者であるジョージ・マイケルは自身の「One More Try」について、次のように評しています。
僕の高傑作であり、5年後・10年後の僕はバラードによって記憶されているだろう…

更に彼は、ワム!時代に発表した「ケアレス・ウィスパー」と比較して、以下のような言及を加えています。
多くの人は「Careless Whisper」が好きだと言うけれど、僕個人にとっては感情的な意味は何も持たないんだ。多分、人生の中の何か別の時期に生まれた曲だからだと思う。一方「One More Try」は僕の心に極めて近い位置にあるバラードなんだ。みんな「Careless Whisper」と「One More Try」を比べるけれど、僕には比較の対象にすらならないんだ

「One More Try」の歌詞のほとんどは、感傷的な言葉で埋め尽くされています。
しかし最後の一行でようやく、弱々しいながら【one more try】という前向きな言葉が登場し、これがそのまま作品のタイトルになっていることから、それが“この時点での彼の結論”だったといえるのでしょう。


I'm so cold Inside
心の奥まで寒くてたまらない
Maybe just one more try
それでも、もう一度挑んでみるか…

「One More Try」を構成する音楽的要素[ゴスペル]は、近代アフリカから奴隷としてアメリカ大陸に強制連行され、独自の言語・宗教を剥奪された黒人らにとっての苦しみ・悲しみの淵で救いとなった福音(神のことば=God spell)を表現する手段として生まれた音楽です。
ゴスペルを歌うことが彼らの励みであり、それに接した人々をも勇気づける…

ジョージは自らの凍えそうな心を、ゴスペルに救いを求めていたのかもしれません。
自由も故郷も、人としての尊厳さえも奪われ奴隷を強いられた人々の深い悲しみと、自らのままならない現実への失意を重ねて…
そして、その絶望の中にも新たな光を見出した彼らの英知への憧憬と、彼自身が迎える明日への希望を込めているようにも思えます。


One More Try...
生きることは苦しいけれど、でも生きているからこそ、それは叶えられる



「ワン・モア・トライ」

“Lyrics&歌詞和訳”は下の“続きはこちら>>”をクリックして表示させてください。


Writer(s): George Michael /訳:Beat Wolf


危険なんて、もうたくさん…
だから、通りを行き交う人の群れに
天使を見つけ出そうとしている
…ただ、僅かばかりの安らぎを求め
でも、時は来たようだ
教えて欲しい…
もし、あなたが僕を愛しているなら
それを口にして伝えて欲しい
もしも、僕を手放したくないならば…


何故なら、teacher...
僕には学びたくないことがある
そして、最後にあなたから授かったもの…
それは、叫ばずにいられないほどの悲しみだった
…だから、学びたくない
あなたを抱きしめ、あなたに触れ
そのすべてが僕のものと、心に想い描く…
それは喜びなんかじゃない
山の手育ちの坊やにとって 
あなたにさよならを告げられたことは…

二人がまだ見知らぬ間柄だった頃
僕は、あなたにとってただのひよっ子で
危ういことなど何もなかったけれど
今、想いは熱を帯び
あなたを見つめても
その瞳は“no”を告げている
でもあなたは、僕を愛しく思い
必要としている
…そして僕は歌を書いた、間違ったやり方かもしれないけれど
わがままを許して欲しい



必要としているというなら
決して僕を捨てたりしないはず
あなたは間違っているし、それほど強い人じゃない
僕を手放せるほど…


そして、teacher...
僕には、まだ学ぶべきことがある
でも、あるのはこの自尊心だけ
あぁ…だから学びたくない
あなたを抱きしめ、あなたに触れ
そのすべてが僕のものと、心に想い描く…
それは、喜びなんかじゃない
挑む心を失った
山の手育ちの坊やにとって

心の奥まで
寒くてたまらない
それでも、もう一度挑んでみるか…


~Let's Singin'~

最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 音楽 Lyrics 和訳 洋楽 

コメント

Beat Wolfさん、おはようございます。
ジョージ・マイケルのソングライターとしてシンガーとして
才能を証明した名曲なのですね。
心の内面の“恋”の葛藤を描いた歌詞ですね。
♪山の手育ちの僕というのも 必要としているならあなたは間違っているし 
それほど強い人間じゃない僕を手放せるほど....♪
心の苦しさ胸の内の恋心が伝わってきます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Beat Wolfさんさん、今年一年いつも細やかに見て下さって丁寧で適切な
コメントを頂きまして本当にどうもありがとうございます(*^_^*)
それに引きかえ音楽に詳しくない、わたしのコメントで大変申し訳ない
限りです。
どうぞ来年も宜しくお願い致します。

2016.12.31  みすてぃむーん  編集

みすてぃむーんさん

この曲の素晴らしさは、聴いていただけるとよくわかると思います。
ご指摘のとおり単純なラブ・ソングではなく心の内面に
葛藤を抱えた内容となっていますが…
彼の場合「別の事情」も含まれるので、実際にはもっとフクザツです。(笑)

そのカギを握るのは「teacher」の存在なので
それに着目しながら想像してみてくださいね。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こちらこそ毎回コメントをいただき、ありがとうございます。
ただ、私もアートや建築について専門知識もないので、それはお相子です。
でもみすてぃむーんさんのお陰で、建築の面白さが少しわかるようになってきました♪

2016.12.31  Beat Wolf  編集

あけましておめでとうございます⛩


ジョージマイケルの訃報も驚きました。
素敵なソロがあったんですね。
解説楽しみにしてます。

今年もよろしくお願いします(^ ^)

2017.01.03  きり  編集

きりさん

あけましておめでとうございます。

ジョージマイケルの訃報、ご存知でしたか。
でもその後も訃報が続き、当惑しています。
今年は穏やかな年になるといいですね♪

2017.01.03  Beat Wolf  編集

Beat Wolfさん、こんばんは。
ジョージ・マイケルは既になくなっていたのですか。
曲は恋というより教師と生徒にようなので結構
ショックな展開です。

何も知らなくて、でも前奏が綺麗で歌い方もステキな曲で
今となると、訴えるように歌いかけているのと
“グッバイと繰り返し 心の奥は寒くてたまらない”
とはとても切ないです(涙)

2017.01.03  みすてぃむーん  編集

みすてぃむーんさん

そうなのです、亡くなってしまいました。(涙)
近年いろいろあって、健康面で問題を抱えていたのは知っていましたが
まだ若いだけにショックです。

歌は、予備知識がなくてもステキでしょ♪
歌詞も、曲も歌の表現も素晴らしい作品です。
でもそれが単なる歌ではなく、彼の心の叫びだったとしたら
一層切なさが増します…。

2017.01.03  Beat Wolf  編集

One more try
生きることは苦しいけれど、でも生きているからこそ、叶えられる。
この解説の最後の一行に、光を見ました。

光に向かって生きる✨
光になる。
光を見ている限り影の存在で、影を見ることができたときに、始めて光になる。

全てが表裏一体。
あぁ、また人と違ったことを。。。。
でも、Beat Wolfさんは、理解してくれるので安心して書けます。
今年もよろしくお願いいたします。

2017.01.04  ☆dct☆  編集

☆dct☆さん

最後の一行は、彼の波乱の人生と早過ぎる死のことが重なって
少し感傷的になってしまいました。

私も、光と影は表裏一体だと思います。
影があるからこそ、光は鮮やかに輝けるし
光があるからこそ、影が安らかに思えます。

どんな話でも、ちゃんと聞いてくれる相手があればこそ
心が響き合う「光」が生まれると思います。
そうした光を大切にしたいですね。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。

2017.01.04  Beat Wolf  編集

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