I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と詳しい解説でお届けします♪

「ザ・ウェイ・イット・イズ」ブルース・ホーンズビー & ザ・レインジ

2013.10.03

category : 1980年代

Bruce Hornsby The Range - The Way It Is1 Bruce Hornsby The Range - The Way It Is2



~Prologue~

10月1日、安倍首相が消費税率を来年4月から8%に引き上げる表明をいたしました。
その会見の全文を読んだ私の頭に浮かんだのが、この曲だったのです…。


~概要~

“ブルース・ホーンズビー”といって認知されている方は80年代の洋楽ファンか、熱心なジャズ・ファン及び90年代のグレイトフル・デッド・ファン位かもしれません。
しかし、ブルース・ホーンズビー & ザ・レインジとしてデビューした1986年の「ザ・ウェイ・イット・イズ」の大ヒットは、当時を知る人にとっては鮮烈な記憶ではなかったでしょうか。
シンセサイザーにより生み出された音が主役だったこの時代、ブルースが紡いだ“アコースティック”は反って新鮮だったし、一聴して彼の演奏と判るピアノの音色が人々の心を捉えて放さなかったのです…。

元々ブルースは大学で音楽を専攻後スタジオ・ミュージシャンとして活動していましたが、84年には自身のバンド“ブルース・ホーンズビー & ザ・レインジ”を結成しました。
この頃ヒューイ・ルイスと親交を深め、それがきっかけでレコード・デビューを果たしています。
1stアルバム『The Way It Is』からのデビュー曲「Every Little Kiss」はBillboard Hot 100で72位とヒットにはならなかったものの、2ndシングル「ザ・ウェイ・イット・イズ」が見事No.1を獲得(1987年の年間8位)しアルバムもBillboard 200で3位を記録する大ブレイクでした。
この活躍により、1987年のグラミーでは“最優秀新人賞”を獲得しています。

「ザ・ウェイ・イット・イズ」の魅力といえば、何とも美しく奏でられる不思議なピアノの音色でしょう♪。
音楽に対し非常に厳しいことで知られるプロデューサーのデイヴィッド・フォスターにも賞賛されたその調べは、都会の夜を想わせる洗練されたジャズ・テイストと田舎の素朴さ感じる温かなカントリー・フレイバーという相反する風味が調和しているのが全く以って見事です。
バンド解散後は本格的にジャズ志向へと向かうので、今思えばこの時代の不思議なサウンドはとても貴重に思えます…。


~Lyrics~

美しいピアノの調べに反し、詞はかなりシニカルです。
タイトルの「The Way It Is」は“そういうもの”といった意味合いで、そうなって欲しくないけど結局はそうなってしまうだろう…みたいな半ば諦めの気持ちが込められています。
当時のアメリカ社会の病理を風刺した内容で、どうにもしてあげられないもどかしさと嘆きが感じ取れるようです。


Standing in line marking time--
僅かな生活保護を求め
Waiting for the welfare dime
列を成して待つ人々…

80年代のアメリカはロナルド・レーガン大統領による財政拡張政策(いわゆるレーガノミクス)により上流階級と下流階級の格差が拡がったとされ、作品はそれを指摘しているのでしょう…。
貧富の格差は人々の心をも荒廃させ、富める者が貧しき者を侮る風潮も描かれています。


Said, 'Hey little boy you can't go
“なぁ坊や、お前は行けないんだよ
Where the others go
他のみんなが行く所へは

そうした影響は子どもたちの将来にも影を落としていて、貧しい家柄に生まれた子はそのために夢を諦めなければならず、親の“階級”がそのまま子どもに受け継がれてしまう現実が描かれています。
子どもはそのことに疑問を抱きますが、その問いに対する父親の返答は…?


Well they passed a law in '64
64年に、弱者のための
To give those who ain't got a little more
人権法を通したが
But it only goes so far
それも、遠い昔の話だ

ご存知のように奴隷制を布いた歴史のあるアメリカでは、1865年のアメリカ合衆国憲法修正第13条によりそれが廃止されましたが、それで有色人種への差別が無くなったわけではありませんでした。
1950~60年代の公民権運動の成果として1964年7月2日に制定された“公民権法”(人権法;Civil Rights Act of 1964)は、人種や宗教・性・出身国による全ての差別を禁じる画期的といえる内容でしたが…
これでも、アメリカから差別が撲滅されたわけではなく、作品では“法が人の心の中まで変えられるわけではない”と綴られています。
ここでは雇用が例として挙げられていますが、相変わらず肌の色(color)や襟の色(collar){ホワイトカラー(ワイシャツ)とブルーカラー(作業着)}による差別がそれを支配しているというわけです。


~Epilogue~

国税庁によると2012年の民間企業労働者の平均年収は408万円ですが、正規雇用が468万円、非正規雇用が168万円と約2.8倍の格差があります。
安倍首相は企業収益の改善により労働者所得上昇を謳っていますが、経済成長した小泉政権の5年半で企業の利潤は1.9倍増えたにも関わらず、この間サラリーマンの平均年収は1割減りました。
仮に、彼が望むようにインフレが進み労働者所得が上昇したら、企業はますます賃金の安い海外へ生産拠点を移したくなるし、事はそう単純には運ばないでしょう。

個人的には消費増税は不可避と考えますが、8%では借金が増える速度が少し緩まる程度で借金が減っていくわけではありません。
安倍首相がどんなに美辞麗句を並べようとこの国の危機は現実であり、“必ずしも法が人の心を正しく導き得るわけではない”とこの歌が訴え掛けているように、増税が危機を救ってくれるわけではないのです。
大切なのは国民一人ひとりの意識であって、お金の使い方を改めない限りこの国が救われることはないでしょう。

That's just the way it is
そんなもんさ
But don't you believe them
それでも、奴らを信じるかい?

そんな歌を唄わせることのない政治を、強く望みます…。



「ザ・ウェイ・イット・イズ」収録アルバム


ザ・ウェイ・イット・イズ



最後までお読みいただき、ありがとうございました♪

過去の“苦境になんか、負けないゾ!”作品…
「アイ・ドント・ウォナ・ファイト」ティナ・ターナー

歌詞は、こちらから…

Bruce Hornsby & The Range - The Way It Is(1986年)
Writer(s):Bruce Hornsby/訳:Beat Wolf


僅かな生活保護を求め
列を成して待つ人々…
何故って、彼らは仕事を金で買えないからさ
シルク・スーツの男が急ぐ傍ら
並んでいる貧しい老女と目が合い
“職に就けよ”と、からかう


“なぁ坊や、お前は行けないんだよ
他のみんなが行く所へは
何故って…お前は彼らと同じ夢を見てはいけないんだ”
“ねぇお父さん、どうして
そんな事に我慢してるの?
ルールを決める前に
ちゃんと考えて作ったんじゃないの?”
彼は、息子にこう答えた…


“それが現実なんだ
何も変わりはしない
そういうものなんだ”
それでも、奴らを信じるかい?


64年に、弱者のための
人権法を通したが
それも、遠い昔の話だ
何故って…法と人の心は別物なんだ
現に、今も雇用を支配しているのは
色の違いによる差別なのだから…


それが現実
何も変わりはしない
そんなもんさ
それが現実…



最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 音楽 洋楽 和訳  訳詞 Lyrics 

コメント

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2013.10.06    編集

匿名さま…

重いテーマを重苦しいサウンドで表現する方法もありますが
音楽って、基本的に心地よくなるために聴くものですよね。
この方が、重苦しい気持ちにならなくていいのかもしれません。

作者も、そう思ったから
「The Way It Is」なのでしょうね…。

2013.10.06  Beat Wolf  編集

ピアノが小さいのかと思ってしまいました。(*´▽`*)

才能がぶつかりあっている そんなグループですね。

私は 初めて聞きました。

ジャズは、詳しくないけれど ピアノが走っていて
素敵な演奏と 歌でした。

いい曲を教えてもらい、ラッキー♡

2013.10.07  ゆりママ  編集

ゆりママさんへ

初めてでしたか。
それでも、スッと心に入ってくる曲でしょう?
本格的なジャズって、好き嫌いはあるでしょうが
コレだとキライな人は少ないでしょう。

何より本人たちも楽しんで演奏しているのが
伝わって、こちらも和らぎますね♪i-228

2013.10.07  Beat Wolf  編集

心に残るピアノ

言われる様に美しく不思議なピアノの前奏がストライク!大好きでした。

またDon Henleyの"The end of the innocent"も大好きで久々に聞いたこの曲がBruce Hornsbyの作曲ピアノと約30年経って知って納得!

やはり私はこのピアノの魅力に自然とハマっていたんだなぁ
なんかうれしい…

2015.09.25  river  編集

Re: 心に残るピアノ

> 心に残るピアノ…
まさにその通りです!
ブログにも記したとおり、不思議な魅力がありますね。

「The End of the Innocence」は私も大好きで
どちらも心に優しいピアノのテイストがあります。
今の時代の音楽も、こういう感性の作品が生まれて欲しいものです。

2015.09.25  Beat Wolf  編集

ヒューイ・ルイスの前座で来日してましたね

後楽園球場(ドームになる前!)に観に行ったんですが
まあ、受けてませんでした・・・(´;ω;`)

シリアスな歌詞はあの場の聴衆は求めてなかったんでしょう~というより
(私も含めて)歌詞なんかわからないんで、もっと明るいノリが欲しかったんでしょうね。

それが~アラフィフの現在は、この歌詞の意味と重みをひしひしと感じます。

フィル・コリンズの「アナザーデイ・イン・パラダイス」なんかも似たような題材でしたよね・・・若いうちはピンとこなかったな~

これからの日本の政治や対米政策の在り方に「The Way It Is」とはなってほしくないんですがね。


2017.01.25  地味JAM尊  編集

Re: ヒューイ・ルイスの前座で来日してましたね

後楽園球場、懐かしい響きです。
ヒューイはブルースのデビューをサポートしていたので、連れて来たのでしょうね。
確かにヒューイの作品とは趣きが違うし、たとえ英語が解ったとしても
アメリカの社会背景を知っている人でないと、よく理解できないでしょう。
そもそも日本の若者は政治に関心がないので、こういうテーマの歌も興味ないと思いますが…。

「アナザーデイ・イン・パラダイス」もシリアスなテーマですが、とても好きです。
現在の民主政治で一番問題なのは、今回の大統領選挙で得票数はヒラリー氏が多かったのにトランプ氏が勝利し
日本でも得票数で負けた自民党に議席の7割が与えられるという、民意が反映されない選挙制度にあると思います。
だからこそ近年は原発や安保法、沖縄や天皇退位など国民の大多数と反対の判断が「彼らの一存」で決められてしまい
これはもはや民主主義ではありません。
そういう意味で、政治に対する不満を「The Way It Is」と諦めてしまわず
反対の意思をハッキリと選挙で投じることが大事だと思います。

2017.01.25  Beat Wolf  編集

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