I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「ラヴィング・ユー」ミニー・リパートン

2015.03.27

category : 1970年代

Minnie Riperton - Lovin You1 Minnie Riperton - Lovin You2


Minnie Riperton - Lovin' You (1975年)



~Lovin' You~

桜の季節…
特に花びらが舞う頃になると私は、「Lovin' You」と、その作者であり歌唱したミニー・リパートンのことを思い浮かべずにはいられません。
楽曲や歌の美しさだけでも十分普遍的価値のある作品ですが、その魅力の源泉であるミニー・リパートンという一人の女性について知った時、あなたはもっとこの歌を好きになるでしょう。

その一助になることを願って…。



~概要~

ミニー・リパートンはアメリカ・シカゴ出身の歌手で、“5オクターブ”ともいわれる広い声域を駆使した美しい歌声は、後世マライア・キャリー(過去ログ)セリーヌ・ディオン(過去ログ)など多くの歌姫たちに影響を及ぼしました。
ミニーは音楽一家に生まれ、両親は早くから彼女の声の才能に気づきシカゴのLincoln CenterやHyde Park High Schoolでオペラを専門的に学ばせています。
こうした恵まれた環境の下、15歳で早くもガール・グループ“ジェムス(The Gems)”の一員としてレコード契約、その後ソロ・デビューも果たし(Andrea Davis名義)、私生活でもプロデューサーのリチャード・ルドルフと結婚、2人の子どもにも恵まれる順調ぶりでした。
しかし当時ミニーが唯一得られなかったのが“歌手としての成功”で、育児の忙しさもあって彼女は20代前半にして引退同然の2年間を過ごしています。

そんなミニーにも、憧れのシンガーがありました。
同じ黒人シンガーとして当時名声を欲しいままにしていた、スティーヴィー・ワンダー(過去ログ)です。
彼女はスティーヴィーと歌うことを夢みていましたが、実は彼も以前からミニーの歌声に注目していて、そうした相思相愛からミニーは彼のバンド“Wonderlove”にバックコーラスとして参加する機会を与えられ、スティーヴィーがグラミー・最優秀アルバム賞を受賞した1974年の作品『Fulfillingness' First Finale』のレコーディングにも貢献しています。

そうした経緯からスティーヴィーがミニーの復帰に一役買ったのが、同年発表したミニーの2ndアルバム『パーフェクト・エンジェル(Perfect Angel)』でした。
このアルバムでスティーヴィーはプロデュースに加え5種類の楽器演奏及び2曲の楽曲提供で支援し、さらにはWonderloveのメンバーだったデニース・ウィリアムスマイケル・センベロまで応援に駆け付けています。
(※ただし、レコード会社との権利上の問題を避けるためスティーヴィーは“El Toro Negro”や“A Very Special Fan”という名で記されている)

「Lovin' You」はこのアルバムからのシングル・カットで、Billboard Hot 100では1975年4月5日付でNo.1(1週/年間13位)に輝きました。
当初『パーフェクト・エンジェル』には8曲が用意されましたがスティーヴィーはあと1曲必要と思い、ミニーとリチャードに“君たちにとって、一番照れ臭い歌はない?”と尋ねたところ思い当たったのが、娘のマーヤ(現在、マルチ・タレントとして活躍するMaya Rudolph)の子守唄として歌っていた“melody”でした。
この“melody”を手直しして完成したものが「Lovin' You」であり、そのため同曲のアルバムver.ミニーの一部のパフォーマンスでは歌の終わりで“Maya...”と繰り返されています。
あまりにもミニーのイメージが強いせいか意外にカバーは少なく、1992年にシャニースがBillboard R&Bチャートで59位に入ったのが最高で、日本では1991年のジャネット・ケイのバージョンが有名でしょうか…。

 
Minnie Riperton / Shanice



~Lyrics~

Lovin' you is easy
あなたを好きになるのは、たやすいこと
cause you're beautiful
だって、あなたは本当に美しい人なんだもの

「You Are So Beautiful」(過去ログ)や「What Makes You Beautiful」(過去ログ)のように英語では【beautiful】は頻繁に使われますが、日本語に変換するのにこれほど厄介な言葉はありません。
【美しい】という言葉は価値があり過ぎて重いというか…日本人は軽々しく口にしませんよね?
増してや“男性に対する形容としての【beautiful】”は、相当違和感が…?

でもミニーの、夫リチャードに対する想いはやっぱり【美しい】なのだと思います♪
そのココロは、Epilogueにて…)


No one else can make me feel
私の心を彩るなんてできない
The colors that you bring
あなたがもたらす色のほかには

【The colors】がとても素敵な意味を持つと思うので、節全体を“色”に拘って表現してみました。
人は、それぞれに“色”を持ち、たとえそれが単体としてどんなに美しい色であったとしても他の色と隣り合うと“調和する色・しない色”があったりします。
また、色は“混ざり合う”ことで新たな色が生まれ、あるいは共感し合って“色が似てくる”こともあるでしょう。

「Lovin' you」は、そんな“二人の色”が混ざり合った結晶のようなもの…。


Lovin' you I see your soul come shinin' through
愛してる…あなたの心の奥を知るほどに
And every time that we oooooh
二人の心がまた一つ、ふれあうたびに
I'm more in love with you
あなたをもっと好きになってゆく

あなたなら、2行目の【oooooh】に隠れる部分にどんな言葉を充てますか?

長所だけ知ることができたらいいのに、普通は短所も漏れなく知ることができるのが困ったトコロです。
特に恋愛は“ラブラブ”から始まるだけに、次第に減点してゆくのが宿命…
…ナンてことはありませんよね!(たぶん…?)



~Epilogue~

…この物語には、“続き”があります。
「Lovin' you」の大ヒットから明けた1976年、ミニーを待っていたのは“乳がん”の宣告でした。
同年4月、乳房の切除手術が成功すると彼女は乳がんの啓発のために自分が乳房を切除したことを公にし、広く女性に訴え掛けました。

“毎月の胸の検診、腫れ物に対する初期の診断と早期治療がとても重要です。そして、万一もし除去手術になっても何も落胆することはありません。胸を取ったからといって女性らしさが失われることは何もないのです。”

翌77~78年、ミニーは精力的にツアーをこなす一方で乳がんの啓蒙活動に奔走しました。
1978年、彼女はレーベルをキャピトルへと移籍、5thアルバム『ミニーと出会ったら(Minnie)』の制作を始めます。
しかし…


Stay with me while we grow old
齢をとっても、ずっとそばにいてね
And we will live each day in springtime
きっと、一日一日を春の陽だまりの中で暮らしてる


1979年5月、アルバム『Minnie』がリリースされ、ミニーは6月15日に『Mike Douglas Show』に新作のプロモーションとして出演していますが、具合が悪いのかここでは患部と思われる右腕はずっと固定したままで歌っています(腋の下にある“腋窩リンパ節”は、乳がんが転移し易い場所)。
彼女には、もう“時間”が残されていませんでした…。


MEMORY LANE - MINNIE RIPERTON Live on Mike Douglas Show

この最後のテレビ出演直後ミニーは寝たきりとなり、7月10日に入院。
11日夜にスティーヴィー・ワンダーが見舞いに訪れ“Minnie Get Well Soon(早く良くなって)”と歌い掛けると、彼女は“私の待っていた最後の人が来てくれた”と応え、翌朝その歌を聴きながら夫リチャードの腕の中で息を引き取りました(享年31)。


病床にあって、ミニーは家族のために最期まで笑顔を絶やさなかったといいます。
彼女が壮絶ながんとの闘病生活の中で何故このように明るくいられたかについて、スティーヴィーは2005年の「Positivity」という作品の中で彼女の生前の言葉を引用しています。

Like fine wine I like seeing the glass of life as half full than half empty
グラスの中の美味しいワイン…
“半分しかない”より、私は“半分もある”ってみるの


もちろん、これはミニーが乳房を片方失ったことをネガティヴに捉えず前向きに生きようとする決意の表れですが、手術時28歳の女性にとって乳房を失うことは決して軽い決断ではなかったはずです。
しかしその重い決断を支えていたのは、最愛の夫リチャードでした。
ミニーは言います…

“夫は、私の傷を私の個性のしるしだと言うの。一つになった胸を、この世で最も素晴らしくかけがえのないものだと。なぜなら、その傷のお陰で私が生きていられるから…。”

何故ミニーが彼のことを“beautiful”と形容したのか、もう説明不要でしょう。
…そう、「Lovin' you」はミニーがリチャードに宛てたラブ・レターであり、彼にめぐり逢い、共に生きることができた人生への悦びの歌です。
彼女の生涯は31年で幕を閉じましたが、きっと彼女なら自らの人生についてこう振り返るでしょう…

“half full...(半分だけど、精一杯生きたわ)”



「ラヴィング・ユー」



Writer(s):Minnie Riperton, Richard Rudolph /訳:Beat Wolf


あなたを好きになるのは、たやすいこと
だって、あなたは本当に美しい人なんだもの
あなたとひとつになる…それが、私の望むすべて
あなたを愛することは、夢を叶える以上の悦び
私の営みすべて…それは、あなたを愛するため
La la la la la la la... do do do do do

私の心を彩るなんてできない
あなたがもたらす色のほかには
齢をとっても、ずっとそばにいてね
きっと、一日一日を春の陽だまりの中で暮らしてる
あなたを愛したからこその、艶(あで)やかな人生
私の心は、毎日があなたへの想いでいっぱい…

Lovin' you...
あなたの心の奥を知るほどに
二人の心がまた一つ、ふれあうたびに
あなたをもっと好きになってゆく
La la la la la la la... do do do do do


最後までお読みいただき、ありがとうございました♪

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tags : 70's ソウル ピュアな愛 美声  

コメント

初めまして。

いつも素敵な選曲ありがとうございます。

知っている曲があると口ずさみながら聞いています。

相互リンクお願いできますか?

2015.03.27  メロンボール  編集

この人のこの一曲。ややもすれは「一発屋」と誤解されてしまいがちなのですが、動画を見るとやっぱり引き込まれてしまいます。
テンション入りまくりなエレピのバッキングでもぶれない圧倒的なテクニックは恐れ入ります。

2015.03.27  わんわんわん  編集

メロンボールさん

いえ、こちらこそお世話になっています。
特に、この歌は楽曲もそうですがミニーの歌が魅力的ですよね♪

ご要望の件、了解しました。
これからもよろしくお願いします。

2015.03.28  Beat Wolf  編集

わんわんわんさん

う~ん、恥ずかしながら私もそう思っていました…(笑)
(数字的にはヒットは1曲のみで、しかもそれが1位ですから)
でも、他と違うのは彼女の歌が時代を超えて色褪せないほど素晴らしい点でしょうね。
「彼」のエレピも、テンション入りまくりですし?(笑)

2015.03.28  Beat Wolf  編集

感動!!

カバーもいいですが、ラジオから流れる彼女の声に何度魅了されたことでしょう。
黒人歌手によくある張った声ではなく、かわいらしい声なので、
今回の記事を拝見するまでずっと白人歌手だと思い込んでいました。

恥ずかしくなるほど素直でストレートなラブソング。
そんなエピソードがあったんですね。

すばらしい記事をありがとうございました!
とても感動しました。

2015.03.31  つかりこ  編集

Re: 感動!!

そうですね。
黒人っぽくない透明感ある歌声で、歌も上手いのに
それを押しつけるような歌い方じゃありませんよね。

黒人だからブルースを歌うべきと、みんなに言われるそうですが
ミニーはこう答えるそうです。
「私には、ブルーに落ち込むようなことなんか何もない。
ブルースは哀しい気持ちにならなければ歌えないでしょ?
私は、いつだってハッピーな人間だから。」

素敵な人でしょ?

2015.03.31  Beat Wolf  編集

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2015.04.01    編集

匿名さま

彼女の生涯を振り返ると、人生は長さじゃないのだと思わされます。
今からでも、少しは見習いたいです。(笑)

2015.04.01  Beat Wolf  編集

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2020.03.28    編集

Re: リンクさせて頂きました

はじめまして。
いえ、こちらこそありがとうございます。

確かに曲はよく知っていても
その背景ってあまり知らないものです。
この曲は説明するまでもなく
誰もがすぐ魅力を理解できるでしょう。
でも、この曲の由来はとても素敵ですよね。

一方で、儚くもせつない…
まるでこの曲に漂う魅力と重なります。
ミニー・リパートソンという素晴らしい歌手を惜しんで
神が授けてくれたような運命めいたものを感じます。(笑)

2020.03.28  Beat Wolf  編集

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