I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「FAB」ジョージ・ハリスン

2016.05.20

category : Beatles & Solo

George Harrison - When We Was Fab1 George Harrison - When We Was Fab2


George Harrison - When We Was Fab (1988年)



~“FAB FOUR”~

ビートルズの有名なキャッチ・フレーズ“FAB FOUR”の名付け親であるトニー・バーロウさんが、現地時間5月14日に亡くなりました(享年80)。
バーロウさんはビートルズのマネージメント会社『NEMSエンタープライズ』広報部の主任で、1962年から1968年までビートルズを担当していました。

もちろん今回お届けする「When We Was Fab」はこのフレーズに由来する作品であり、かつてFABの一人であったジョージ・ハリスンのドキュメントでもあります。
中級以上を自認するビートルズ・ファンなら思わずニヤッと、初心者の方も背景を知ると“ガッテン”していだだける要素が多数ちりばめられているので、どうぞお楽しみに♪



~概要~

「When We Was Fab」は1987年発表のアルバム『クラウド・ナイン(Cloud Nine)』(『All Things Must Pass』から数えて9th)の収録曲で、2ndシングルとしてBillboard Hot 100で23位(イギリスで25位)を記録しました。
作者はジョージと、映画『上海サプライズ』で運命の出会いを果たしたELOのジェフ・リンの共作で、以降ジェフはジョージの創作とビートルズ・アンソロジー・プロジェクトを成功に導く重要な役割を担う存在となります。
タイトルで“We Was”となっているのは誤植ではなく確信犯で、ビートルズはよくこの“手口”を使っていたのでディープなファンは思わずニヤリ…?

上記のとおり“FAB”はビートルズのキャッチ・フレーズに関連する言葉であり、ドラムにはビートルズの盟友リンゴ・スターを招いてレコーディングされました。
歌詞もビートルズ時代を回顧する内容となっていて、曲調やアレンジには当時のジョン・レノンの作品「I Am the Walrus」を彷彿させるパロディー風の趣きがあります。
さらにシングル・ジャケット《写真上・左》には、アルバム『Revolver』のジャケットをデザインした旧友クラウス・フォアマンを再び起用し現在のジョージと対比させるという細かい“ネタ”への徹底ぶり!


視覚効果絶大のPVはまさにその集大成であり、1988年の『 MTV Video Music Awards』で6部門にノミネートされました。
まずジョージ自身はビートルズ時代のギターやファッションと初公開の“二人羽織芸?”を披露し、ジェフやリンゴが扱う“長ぁ~い”フシギな楽器など、全編を通して遊びゴコロ満載です♪
更に“隠し味”として、通り過ぎる通行人の中にポール・サイモン(野菜を運ぶ)やエルトン・ジョン(カップにコインを入れる)など大スターをカメオ出演させています(他にはレイ・クーパー)!

そして、本作に仕組まれた“最大のネタ”が…

PVの約2:00頃、“ウォルラス(セイウチ)の着ぐるみを被った左利きのベーシスト”の登場によって急展開します!
…その10数秒後、画面を横切る男が抱えたレコード・ジャケットには“ジョン・レノン”がいるではありませんか!!
(※ジャケットは『Imagine』の裏面で、抱えている男性はビートルズのロードマネージャーだったニール・アスピノール)
もしも着ぐるみの男がポール・マッカートニーなら、二次元のジョンを加え“ビートルズ勢揃い”です♪ 《写真・下》

この件について、テレビのインタビューでジョージが“着ぐるみ男はポール”と認めたことで論争は終結…
…したかに見えましたが、後年ポールが“[着ぐるみ男はポールと言うといいよ]と、僕が提案した”と告白したため、実際にはこれが未完であったことが明かされています。
(※スケジュールの都合でポールは撮影に参加できなかったらしい)

 George Harrison - When We Was Fab3



~Lyrics~

(Fab!) Back when income tax was all we had
Fab...振り返ると、抱えていたのはtax(税金)の山

ビートルズ・ファンなら、すぐにピンときたでしょう?
…そう、ビートルズ時代のジョージの代表曲「Taxman」
【income tax】は“所得税”で、庶民から大金持ちになった彼はその税率の高さに驚いたようですが、当時イギリスの富裕層に課せられていた税率を知ると、ナルホドです…。


(Fab!) In my world you are my only love
Fab...僕にとって、君は唯一つの恋だった

ビートルズ時代のジョージの恋というと、ビートルズ屈指のラブ・ソング「Something」にも歌われた美女パティ・ボイドでしょう。
パティとジョージは1966年に結婚していますが、ご存知のようにやがて「Layla」で彼女への倫ならぬ恋に情熱を燃やしたエリック・クラプトンとのドロドロの三角関係に陥る運命が待っています…。


(Fab!) Like this pullover you sent me
君は、“着ぐるみ”を着せ
(Fab!) And you really got a hold on me
まさに、僕を支配していた

ここでの【you】は、ポールを指すと解釈しています。
【pullover】は“頭から被って着る衣服”ですが、「FAB」は「I Am the Walrus」に関連付けられた作品であることから、映画『Magical Mystery Tour』でビートルズが“着ぐるみ”を着て同曲を演奏するシーンをイメージしました。
この頃すでにジョンは燃え尽き症候群(?)状態だったため、やる気満々なポールが必然的に活動の主導権を握るようになります。
この着ぐるみ演奏のアイデアはポールによるものかは定かではありませんが、ジョージの性格からするとバカバカしいと思っていたことは想像に難くはありません。
(ただし、少なくともジョンは一番喜んでやっていたように思う)



~Epilogue~

(Fab!) Long time ago when we was fab
Fab...ずっと昔、僕らが“Fab”だった頃

【Fab】は、[fabulous]の短縮形で、その意味は…
“伝説的な、物語に出てくる(ような)、信じられないほどの、《口語》 素晴らしい,素敵な”
…といった、最上級の褒め言葉です。

ごく平凡な人生を送っている人が“伝説的な”と形容される機会はまずないでしょうが、“素敵な”だったら一生に一度ぐらい望んでもいいのかな…?


(Fab!) But it's all over now, baby blue
Fab...悲しいけれど、すべては終わったこと

シングル「When We Was Fab」のジャケット《写真》を観察すると40代のジョージの絵には目尻のシワやほうれい線が描かれており、20年という歳月の経過を痛感させます。
この作品はある意味“「Fab」だった過去の自分に対する敗北宣言”とも解釈できますが、この良い意味での諦めが自虐的ネタをパロディーで笑い飛ばす心の余裕を生み、かつての名声に囚われていた彼を吹っ切らせ復活へと導いたような気がします。

George Harrison - When We Was Fab4


Still the life flowed on and on
そして尚、人生は巡りゆく…

先月ネットで目にした記事に、43歳を迎えた女優のキャメロン・ディアスが若さと美貌を維持するためのボトックス注射や、負傷した鼻の美容整形を施していたことを告白したものがありました。
しかし“一時的に肌が滑らかになったとしても、私たちの体のすべてのパーツが日々年を取っていくことを変えることはできない”と気づき、施術をやめたそうです。
そして、最近は“すべすべした肌や自信にあふれたお尻を持つことより、よりよき母、娘、妹、妻、友人…であることにこそ価値があり大切だと感じるようになった”といいます。

奇しくも、ジョージやキャメロンがこのような心境に至ったのも、同じ40代。
40代は人生の折り返し点であるだけでなく、それまで築き上げたキャリアが問われる時期でもあります。
健康や体質面の衰えを実感する年頃であり、我武者羅(がむしゃら)からの脱皮を迫られる…。

“四十にして惑わず”

…これ、ホント? 



「FAB」


Writer(s): George Harrison, Jeff Lynne /訳:Beat Wolf


もう随分と昔…
芝生も青々としていた頃
朝は幻惑に目覚め
夜は、流れ者のように帰り着いたものだった

Fab...
ずっと昔、僕らがFab(イケてた)だった頃
Fab...
振り返ると、抱えていたのはtax(税金)の山

朝の光の中、君を裸に愛撫した
…そこに、夜明けの受難!
二人は、愛を確かめ合っただけなのに

Fab...
ずっと昔、僕らが“Fab”だった頃
Fab...
僕にとって、君は唯一つの恋だった

この世は、君という幸福が存在する一方
fuzz(サツ;警察)がやって来ては、難癖つけやがる
だけど、もっと利口にならなくちゃ
buzz(噂話)が騒ぎ立て、大切な人を連れ去ってしまうから
連れ去ってしまうから…

顕微鏡で涙を拡大し
瑕疵(かし)さえ全て、教訓とした
そして尚、人生は巡りゆく…

Fab...
ずっと昔、僕らが“Fab”だった頃
Fab...
悲しいけれど、すべては終わったこと
Fab...
ずっと昔、僕らが“Fab”だった頃
Fab...
君は、“着ぐるみ”を着せ
Fab...
まさに、僕を支配していた
Fab! Doot, doot, doot...


最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 1988年 ジョージ・ハリスン サイケデリック 名作MV 

コメント

Beat Wolf さん、こんばんは~
「ジョージ・ハリスン」待っていましたよ。
メンバが若かりし頃でも、古びないでスリムパンツでイケてますー♪ 

でも詞をみると恋のロマンというのでもなく、君は着ぐるみを
着せとなっていて、なんだろうこの曲の描くものは???

モノクロの映像もいいですね(^^ゞ

2016.05.20  みすてぃむーん  編集

みすてぃむーんさん

おやっ?
ジョージ・ファンでしたか!
クールなイメージで、とりわけ「スリムパンツ」?
確かに、ビートルズに「ダボパン」は似合わない…。(笑)

「恋のロマン」も思い出の一つとして入ってますよ。
でも「着ぐるみ」も思い出に入っているというのが、不思議でしょ?(笑)
その点は、後ほど触れるのでお楽しみに♪

2016.05.20  Beat Wolf  編集

Beat Wolfさん、こんばんはー
かつてのアルバムもシングルも多彩な工夫やネタやアイディアが盛り込まれて
いるのですね。
PVは大スターのカメオ出演や着ぐるみの左利きのベーシストに
ジャケットにジョンでビートルズの勢揃い。
そして三角関係の運命ー ガムシャラからの脱皮・・・
人生のいろいろを乗り越えて♪顕微鏡で涙を拡大し瑕疵さえ全て、教訓とした♪ 
メンバーもジョージも普通の人から大スターになればなるほど大変ね。

では過剰な美容に惑わされないように、気をつけましょうf(^_^;

2016.05.24  みすてぃむーん  編集

みすてぃむーんさん

そうですね。
こういう「イタズラ」は、ポールならわかるのですが
ジョージがこんなことをするなんて、珍しいと思います。
「ビートルズ勢揃い」のネタが大き過ぎて
他の大スターのカメオ出演は、教えてもらわないと気づかないかも?(笑)

庶民の時は「金持ちから取れ!」だったのに
金持ちになった瞬間、「おいおい…」に変わったというわけです!(笑)

「過剰な美容」に頼ろうか、いいかげん諦めようか
決断を迫られるお年頃なのでしょうね?(笑)

2016.05.24  Beat Wolf  編集

PVは、楽しかったです。
あ、「ここ」って見ました(*^_^*)

ビートルズ色みたいで、心地良かったです。
大スター達が、楽しんで出ている感じも年齢なのでしょうか(笑)

ある意味、“あるがまま”で楽しむ、それが幸せ☆

2016.05.25  ☆dct☆  編集

☆dct☆さん

楽しいでしょう♪
でも、これもジョークの類いなので
「ここ、笑うとこ!」って、わかってもらえないとツラいですね?
大スター達も「隠れているけど、気づいて欲しい」で
ややこしい立場です。(笑)

“あるがまま”でいられるなら、それが一番ですよ。(笑)

2016.05.25  Beat Wolf  編集

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