The Beatles - I'm down (1965年)~武道館を“音楽の聖地”に変えた男~ 前回は、ポール・マッカートニーのワールド・ツアー『Out There! Tour』のラスト・ナンバーをご紹介しましたが、今回は4月28日に用意された特別追加『日本武道館公演』を想定し、1966年のビートルズ武道館公演のラスト・ナンバー選曲してみました。
“音楽の聖地・日本武道館”の歴史の扉を開いたビートルズ…
その起源となったロックの魅力がちりばめられた「I'm down」、たっぷりご堪能ください♪
~概要~ あなたは、「アイム・ダウン」をご存知ですか?
この曲はビートルズの公式オリジナル・アルバムにもベスト盤にも収録されておらず、これをご存知の方なら一廉(ひとかど)のビートルズ・フリークを自認しておられることでしょう。
「I'm down」は1965年7月23日(UK)に10枚目のオリジナル・シングル
「ヘルプ!」のB面曲 として発表され、ビートルズ解散後の企画盤『Rock 'n' Roll Music』に収録されたのみで(未CD化)、1988年以降はレア音源を編集したアルバム
『パスト・マスターズ Vol.1』 に収められています。
一方で、れっきとしたレノン=マッカートニー作品(ポール作)でありリード・ヴォーカルもポール、B面ながら
Billboard Hot 100では101位 を記録しました。
ビートルズは1964年1月~65年7月のツアーではリトル・リチャードのロック・ナンバー「ロング・トール・サリー(のっぽのサリー)」でライブを締めくくっていましたが、これに代わり得るオリジナル・ソングを目指して作られたのが「I'm down」です。
65年8月からのアメリカ・ツアーに始まり、
武道館公演 を経て1966年8月29日にビートルズが
公演旅行を止めるまでの約1年間、ラスト・ナンバーとしてライブに華を添えました 。
“ビートルズ屈指”の激しいロック・ナンバーで、まさにリトル・リチャードばりのポールのシャウトが実にカッコいいですが、とても“「イエスタディ」を歌った同じ人”とは思えませんよね?
でも実際には、「アイム・ダウン」は「イエスタデイ」や「夢の人」と同日にレコーディングされており、「イエスタデイ」のあの“静寂”と「アイム・ダウン」の“熱狂”という相反性を両立できる所がポールのヴォーカルの凄さであり魅力なのだと、私は思っています。
「I'm down」の
マスターは“Take 7” ですが
『Anthology 2』 では
“Take 1” が公開されており、ここではコーラスもなくジョンは“おとなしく”オルガンを弾いているものの、“Take 7”の頃にはコーラスが加えられジョンのオルガンもかなり“ハジけ”ていて、
1:32頃 には“バカ笑い(ジョン?)”が出るほどのお祭り騒ぎ!
また、1965年の全米ツアーで当時の世界記録となる観客動員55600人を挙げた
シェイ・スタジアムのライブ(メイン動画 ) では、リンゴがこの日
“完全にキレてた” と振り返るジョンは既に無双状態で、オルガンを肘でメチャクチャに弾いたり、まるで子供のようにはしゃいでマスっ!!
(でも
この映像にこそ、ビートルズが人を魅了して止まない所以が溢れている と思う)
カバーは
エアロスミス が1987年に『Permanent Vacation』で取り上げたものが有名で、スティーヴン・タイラーは2010年にもポールに対するトリビュートとして
「ゴールデン・スランバーズ~キャリー・ザット・ウェイト~ジ・エンド」 をパフォーマンスしています。
VIDEO VIDEO VIDEO I'm Down- The Beatles“Take 7” / Aerosmith - Houston 02-15-1988 ~Lyrics~ You telling lies thinking I can't see 僕が気づかないだろうって、君は嘘をつく You don't cry cos you're laughing at me 心の中で笑いものにして、涙も流さない 前奏なしにいきなり歌い出す、ビートルズお得意のパターン!
強いインパクトを与えることができる手法ですが、“ハズす”とその分ハズかしい…。
(カラオケもそうですよね?)
1966年のミュンヘン公演ではポールがこの歌詞をド忘れして、それをジョンが事前に教えてくれたにも関わらず何故か2番の歌詞から歌い出してしまい、頭が真っ白になったのか続くフレーズがシドロモドロになって自分で噴き出すさまをリンゴも大ウケしている貴重な映像が残っています!
(
“『ロックの殿堂』入り” おめでとう、リンゴ♪ )
VIDEO The Beatles - I m Down Live in Germany We're all alone and there's nobody else 二人っきりで他に誰もいないのに You still moan, "Keep your hands to yourself!" キミったら、いつまで経っても“触っちゃダメ!” せっかくイチャイチャするチャンスなのに、“おあずけ”を食らうなんて…
男たるもの、シャウトせずにはいられません!
でも、それは人間だけの苦悩ではないようで…?
VIDEO I'm down (I'm really down) そりゃぁないよ I'm down (Down on the ground) 地べたに打ちのめされるくらい、ヘコんじゃう ビートルズの大きな魅力である“追っかけコーラス”♪
リードがなぞる感情を、バックがすかさずフォローするチームワークのよさが彼らの持ち味であり、特にツアーを中止するまでの中期(人間関係が壊れる前)は充実していました。
でもこの“トホホ感”…
男性のみなさんは、覚えアリ!?
~Epilogue~ 1966年6月29日午前3時39分、台風のため11時間遅れてビートルズは羽田空港に降り立ち、
武道館公演 は6月30日~7月2日にかけて計5回行われれました。
現在の『Out There! Tour』では39曲前後/約3時間に及ぶ盛り沢山なライブを構成しているポールですが、当時ビートルズが日本で演奏したのは僅か11曲/約30分で、その
セットリスト は以下の通りです。
1. Rock And Roll Music 2.She's A Woman(過去ログ) 3. If I Needed Someone 4. Day Tripper 5. Baby's In Black 6. I Feel Fine 7. Yesterday 8. I Wanna Be Your Man 9. Nowhere Man 10.Paperback Writer(過去ログ) 11. I'm Down ビートルズがコンサートを行うというとどの国でも大騒ぎになるものですが、武道館公演では安全のため1万人の観客に対し3千人の警官を配備する厳戒態勢が敷かれ、メンバー自身も宿泊先である東京ヒルトン・ホテル(現キャピトル東急ホテル)に“ほぼ”軟禁状態に置かれました。
この間退屈を持て余した4人は、日本のファンのため1枚のキャンパスに寄せ書きした
絵画『Images of a Woman』の制作 に励み、これをビートルズ・ファン・クラブ会長に贈っています。
以前、
過去ログ「ハード・デイズ・ナイト」 で劇中のポールが変装してファンから逃れるシーンを言及していますが、コレは“現実のポールが得意とする手口”であり、彼はツアーの時つけヒゲやカツラ、帽子といった七つ道具を旅行カバンにいつも忍ばせていたそうです。
この特技を用いたかはともかく、
ポールは 7月1日にホテルを抜け出して
皇居を見物 していますが、すぐに連れ戻されてしまいました。
むしろ“知能犯は
ジョン ”で、その裏をかいくぐって原宿や麻布、青山を回り趣味の
骨董品の買い付け に成功しています(『サージェント・ペパーズ~』のアルバム・ジャケットに写る“福助人形”は、この時購入したもの)。
…さて、ポールは49年ぶりに武道館で「I'm Down」を歌ってくれるかは分かりませんが、彼は人を喜ばせることが好きな人だから何か“仕掛け”を用意しているのではないでしょうか?
ジョンはその生き方や死にざまによってビートルズの伝説に、より鮮烈なインパクトを刻み ましたが、
ポールは半世紀が過ぎた今なお、ビートルズの素晴らしさを直接後世に伝え続けて います。
生きて、ビートルズを伝える…
それこそが、誰よりもビートルズを愛したポールが歌い続ける意味なのではないでしょうか?
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