「恋することのもどかしさ」はポール・マッカートニーが1970年4月17日に発表した1stソロ・アルバム『ポール・マッカートニー(McCartney)』の収録曲です。 当時のシングル・カットはありませんでしたが、その後ポールが結成したウイングス(Wings)のワールド・ツアーで演奏され、そのアメリカ公演の模様を記録した1976年のライブ・アルバム『Wings Over America』から「Maybe I'm Amazed」のライブver.がシングルとしてリリース、US Billboard Hot 100で10位を記録しました。 (このバージョンは日本でもシングル・カットされましたが、それには「ハートのささやき」という1970年と異なる邦題が付けられていました…《写真》)
一方「Maybe I'm Amazed」はロッド・スチュワートが在籍したフェイセズが1971年にカバーするなど評価が高く、ローリング・ストーン誌も“The 500 Greatest Songs of All Timeの338位”と、極めて高い評価を与えています(ビートルズ以外でランクインするポールの唯一の曲)。 ポール自身も“このアルバムで最高の作品”と認めているお気に入りで、ウイングス時代から彼のツアーの殆んどで演奏されてきたセット・リストの常連曲です。
時代を超えて愛され続ける要因には、ビートルズ時代に培った「The Long And Winding Road」の“哀愁”と、「Helter Skelter」の“熱情”を一つの作品の中で両立する至難を具現させていることにあるといえるのでしょう…。 こうした至難は、その対極にあるテイストを難なく歌いこなすポールのヴォーカリストとしての表現力の豊かさがあって初めて成立するものであり、それこそが甘いだけのバラードにはないこの曲の魅力となっているのです。
~Lyrics~
Baby, I'm amazed at the way 驚いてる you love me all the time どんなときも、僕を愛してくれる君に
「All My Loving」や「And I Love Her」ほか、ビートルズ時代のポールによる数々のラブ・ソングが捧げられた女優ジェーン・アッシャーとは1967年のクリスマスに婚約まで至っているものの、それから僅か約7ヶ月後には婚約破棄という結果に終わってしまいました。 たぶんポールがリンダを生涯の伴侶に選んだ最大の要因はこの【you love me all the time】で、それに対しジェーンはポールの妻であることより女優である自分に価値を置いていたといわれます。 (もっとも、ジェーンの側からすると別れた原因はポールの浮気 )
Who's in the middle of something もやもやした何かの中で That he doesn't really understand. “答え”を見出せず、彷徨っているだけの
you pulled me out of time, 君が、時間の外へと連れ出し You hung me on the line 境界線にいる僕を見守り続けてくれたこと
そんな内憂外患な【time】から逃れるためにポールはこの時期“浮き名”を流すようなことも重ねていたようですが、所詮それらは一時凌ぎにしかなりませんでした。 何故なら、【on the line】にいる人を一時的に【pulled me out of time(時間の外へと引き出す)】ことはできても、最後まで【hang on(手放すことなくじっと見守る)】ことは誰にでもできることではないからです。
「ホワット・イット・テイクス」はエアロスミス1989年の10thアルバム『パンプ(PUMP)』の収録曲で、3rdシングルとしてBillboard Hot 100の9位(1990年の91位)まで上昇しました。 エアロスミスといえば1998年の映画『アルマゲドン』の主題歌「I Don't Want to Miss a Thing」が特に有名ですが本曲もそうした切ないテイストのバラードで、スティーヴン&ジョーに加えてバンド外のソングライター、デスモンド・チャイルドが共作者として参加しています。 デスモンド・チャイルドは前作『Permanent Vacation』で「Dude (Looks Like a Lady)」や「Angel」の作曲に携わった人であり、本作でも複数楽曲を提供するなどエアロスミス復活の立役者の一人です。 また、同じころ彼はアリス・クーパーの『Trush』のプロデュースを担当しており、その縁からかブラッド・ウィットフォード以外の4人のメンバーもそのアルバムのレコーディングに参加しています。
アコーディオンやビートルズの「A Day in the Life」風のピアノ、アコースティック・ギターなどをフィーチャーしたハード・ロック・バンドらしからぬソフト・サウンドであり、ライブではスティーヴンがアカペラで歌い始める演出もなされてきた作品です。 こうした情感たっぷりでありながらの爽やかテイストは“エアロスミス史上最高のバラード”とファンからの評価も高く、日本の人気ロック・ユニットB'zも1991年のアルバム『IN THE LIFE』で“アメリカのロック・バンドを意識した(稲葉)”というロック・バラード「憂いのGYPSY」を発表し話題を呼びましたが、その“影響力”の大きさを感じさせます。 しかしB'zほど明白ではないものの、Mr.Childrenの「終わりなき旅」や「Everything (It's you)」にも“同じ系譜”が垣間見えるように、エアロスミスが「What It Takes」で確立したスタイルが1990年代J-Rock全盛の雛型の一つであったと言っても過言ではないのでしょう。
ミュージックビデオは2種類あって、一つはテキサス州ダラスにあるカントリー・ダンス・ホール『Longhorn Ballroom』で撮影された映像で、これは今回のメイン動画に掲載いたしました。 もう一つはアルバム『パンプ』の制作過程を撮影したビデオ作品『The Making of Pump』に収録された映像で、こちらは本項に紹介いたします。
~Lyrics~
Girl, before I met you I was F.I.N.E. Fine おまえに出逢うまで、こんなんじゃなかった but your love made me a prisoner, yeah my heart's been doing time おまえの愛が俺を虜にし、心は囚われたまま
実はここでの[F.I.N.E.]は本作『パンプ』収録の「F.I.N.E.」という曲に引っ掛けており、[heart's been doing time]も前作『パーマネント・ヴァケイション』の「Heart's Done Time」との関連によるものと考えられます。 また、この部分以外にも[leave your life to the toss of the dice]は『パンプ』の「Love in an Elevator」の歌詞に関連させています。
こういう“お遊び”を見つけるのも、ファンにとっては楽しいものです ♪
It was easy to keep all your lies in disguise おまえにとって嘘を装うなど、いと容易いこと 'Cause you had me in deep with the devil in your eyes だって、その瞳の中の悪魔に魅入られた男が相手なのだから
「I Don't Want to Miss a Thing」と並び、 エアロスミスの最高傑作バラードの一つに数えられる「What It Takes」…
「I Don't Want to Miss a Thing」は、本来“目の前の君があまりに愛おしくて、一瞬たりとも目を離したくない”という微笑ましいラブ・ソングですが、どうしても映画『アルマゲドン』で娘の命を守るために自ら死地へと赴く父(ブルース・ウィリス)の心情と重なってしまうため、究極的な切なさを覚えてしまいます。
Tell me what it takes to let you go おまえを忘れるために、どうすればいい? Tell me how the pain's supposed to go この胸の痛みを消し去るため、どうすれば…
一方、「What It Takes」は“別れた君があまりに愛おしくて、一瞬たりとも心から離れない”切なさでしょうか…。 その苦しさから逃れるため、【what it takes(何が必要?)】と問い掛けているわけです。
Tell me that my lovin' didn't mean that much 俺の愛など、大した意味もなかったと Tell me you ain't dyin' when you're cryin' for me たとえ俺のために涙することがあろうと、死ぬほどの苦しみもないと言っておくれ…
PVは同時代のボン・ジョヴィ「アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー」やバッド・イングリッシュ「ホエン・アイ・シー・ユー・スマイル」と同様HR/HMのカッコよさだけでなく、女性も楽しめる洗練された映像美が見所となっています。 デイヴィッドをはじめイケメンというより“美しい”と形容すべき面立ちと長い髪を誇るメンバーですが、実はアルバムのレコーディングに携わったメンバーのほとんどはこの直前に解雇されており、シングルver.の演奏とPV出演は新メンバ-によるものということになります。 また、デイヴィッドとやたらイチャイチャしているセクシー美女はアメリカのモデル/女優タウニー・キタエン(Tawny Kitaen)で、この頃「Still Of The Night」や「Is This Love」などホワイトスネイクのPVに出まくっていました。 映像の雰囲気からお察しの通り二人は“ただならぬ仲”であり、1989年に結婚を遂げるも2年後に破局…という、何とも“ロックなカップル(?)”でした!
~Lyrics~
I don't know where I'm goin' 何処へ向かっているかなんて、わからない But I sure know where I've been ただ、そこに俺が存在したことははっきりしている
この歌は、何らかの理由で孤独の道を歩む決意した男の物語です。 タイトルの「Here I go again」はその心情を端的に表していると思われますが、歌詞全体を見渡すとそこには“よし、もう一度やってやる!”という意気込みより、“仕方ない、またやり直そう…。”という迷いと傷心が内包されているようにも感じ取れます。 一方、音楽的要素に耳を傾けてみると82年ver.は淋しげで“後者”を、87年ver.は力強さが増して“前者”の心情を代弁しているようにも思えるのです。
Here I go again on my own ここからまた一人、始めるさ Goin' down the only road I've ever known 歩むべき、唯一つの道を下り
「Here I Go Again」は、デイヴィッドが1974年に結婚した最初の妻Julia Borkowskiとの破局の際の心情を綴ったものともいわれます。 また、この頃そうした家庭内の不安定が影響してか彼はドラッグに溺れ、仕事でも人間関係や金銭問題にトラブルを抱えバンドも空中分解…といった公私共にどん底な時期にあったようです。 時が移り、新たな恋人タウニーと出会い、痛めていた喉の手術も成功し3年振りに制作されたのがアルバム『Whitesnake』でした。 実生活に光が射せば物事の解釈も楽観的になるもので、孤独を歌ったはずの「Here I Go Again」が“よし、もう一度やってやる!”に変わったとしても無理からぬことでしょう。 (…にしても、PVでのタウニーとのイチャイチャはやり過ぎ!? )