「Every Little Thing」は、1964年12月4日に発売されたビートルズ4作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ビートルズ・フォー・セール(Beatles for Sale)』の収録曲です。 世界的にシングル・カットの記録はありませんが日本では「Rock and Roll Music」(過去ログ)のB面としてリリース、85万枚の最高売り上げを記録しました。
通常【レノン=マッカートニー】はリード・ヴォーカル=主な作者であるのに対し、「Every Little Thing」のリード・ヴォーカル=ジョン・レノン、作者=ポール・マッカートニーという極めて例外的な作品です。 ビートルズはヴォーカルのダブルトラック(重ね録り)を多用していたのでヴァースはジョンのダブルトラックのように聴こえますが、耳を澄ますとポールのユニゾン(ジョンと同じ音で歌っているが殆んど判別できない)も入っており、逆にコーラス部分ではジョンが抑えてポールの声が前面に出ています。 また、例外的といえば本曲では打楽器に[ティンパニ]が取り入れられているのも斬新です(もちろん、リンゴ・スターが演奏)。
本曲の噂として【ジョージが寝坊で遅刻したためリード・ギターを含む全てのパートをジョンが弾いている】というのがあります。 一説によると本曲について、ポールが1964年に“the electric guitar riff was played by Lennon, rather than by George Harrison”と言及したとされており、『Beatles for Sale』のライナーノーツでも渋谷陽一が“ジョージが録音に遅れてきたので彼のギターが入っていない。だからジョンのギターがリードの替わりもやっていて…”と解説していることから、そのように広まったのでしょう。 ただしレコーディング・セッションの記録を調べてみると「Every Little Thing」の録音は1964年9月29日(テイク1〜4)と30日(テイク5〜9)の2日間に分けて行われており、遅刻という理由によってジョージが2日間・計9テイクのセッションに全く参加していないというのも、常識的に考えて不自然な話です(本曲のマスターは最終第9テイクといわれる)。
「Every Little Thing」のカバーとしてはイギリスのロックバンド・イエス (Yes) の1969年のデビュー・アルバム『イエス・ファースト・アルバム』でのバージョンが有名で、ただしこれが「Every Little Thing」と判るまで1′40″以上要するでしょう。 また、後のカーペンターズとなるリチャード&カレンがThe Richard Carpenter Trio名義でインストゥルメンタル・カバーした貴重な未発表音源も存在します。
~Lyrics~
When I'm walking beside her あの娘と並び歩いていると People tell me I'm lucky みんなに、運が良いって言われる
当時ポールはジェーンの実家に居住しており、「Every Little Thing」はこの家の音楽室から生まれています。
I remember the first time 出逢った頃を思い返してみても I was lonely without her 彼女がいないと淋しくて…
ポールとジェーンが出逢ったのは1963年、BBCラジオの対談でした。 それをきっかけに二人の交際は始まりますが、翌1964年はビートルズがアメリカで大ブレイクを果たして世界を飛び回る多忙を極めた年であり、旅先での淋しい気持ちをジェーンへのラブレターとしてポールが書いたのが彼の初期の名曲「All My Loving」(過去ログ)です。
そんな状況下で書いた「Every Little Thing」がポールからジェーンへのメッセージであることは誰が見ても明白ですが、この歌のリードをジョンに譲っているのは何故だろう…?
Every little thing she does, あの娘がしてくれる She does for me, yeah ちょとしたこと、一つひとつ
【Every Little Thing】というと、日本のみなさんは真っ先に「Time goes by」の【ELT】を思い浮かべるでしょう。 一方、ビートルズ・ファンはこのユニット名を聞くと、必ず本曲のことを連想するはずです。 ELTの名前の由来について調べてみると[ビートルズの楽曲『Every Little Thing』を由来]といった記述が散見できるものの、メンバー自身または所属先による言及は(今回の検索では)発見できませんでした。 ただ、wikiには創設メンバーの五十嵐充が[中学初期にTHE BEATLESに夢中]という記述があったので、少なくとも彼はビートルズを通して「Every Little Thing」という言葉を認知していた可能性があります。
また、スティングが在籍したロック・バンド【The Police】の1981年の作品には「Every Little Thing She Does Is Magic」という楽曲があり、ここまでフレーズが同じだと…!?
しかし、本ブログでは性懲りもなく2017年武道館公演直前特集として、ビートルズ公演のセット・リストの1曲「Baby's In Black」をご紹介いたします!
~概要~
「ベイビーズ・イン・ブラック」は1964年12月4日に発売された4枚目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ビートルズ・フォー・セール(Beatles for Sale)』の収録曲です。 本作はビートルズのアルバムの中ではカバー曲も多く一般的に地味なイメージがある作品ですが、当ブログではこれまで「Eight Days a Week」や「Mr. Moonlight」、「Rock and Roll Music」の3曲を取り上げており、こうしてみるとなかなかインパクトのあるナンバーが揃っていると思いませんか?
レノン=マッカートニー作品はその名に反し実はどちらか一方だけによる創作が多いですが、「抱きしめたい」(過去ログ)などジョンとポールが終始2人でヴォーカルを分け合うものは本当の共作(貢献度が同等)の場合が多く、2人で歌い通す「Baby's In Black」は数少ない“リアル Lennon–McCartney”の一つです。 あまりロックっぽくない6/8拍子の楽曲をジョンとポールが同時に1本のマイクでヴォーカル録音した臨場感あるハーモニーが全体に豊かな色彩を添えており、どちらがメインのメロディーかの問いに対し、ポールは“どちらもメインさ”と答えています。
「Baby's In Black」はシングル・カットこそなかったものの、アルバム・リリース後1965年6月のヨーロッパ・ツアーからビートルズ最後の公演となる1966年8月29日のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークでのコンサートまで演奏され続けたセットリスト曲で、もちろん日本公演でも披露されました。 その間1965年にアメリカのハリウッド・ボウルで演奏されたライブ音源は1996年にアンソロジー・プロジェクトの一環としてリリースされたマキシ・シングル「Real Love」や、ビートルズ唯一の公式ライブ・アルバム『The Beatles at the Hollywood Bowl』が2016年に初CD化された際のボーナス・トラックに収録されています。
~Lyrics~
Oh dear, what can I do? あぁ…一体、どうすればいいっていうの? Baby's in black and I'm feeling blue 愛しい君は黒い服、僕の心はブルーなんて
I think of her, but she thinks only of him 僕は君で頭がいっぱいなのに、君はアイツのことばかり And though it's only a whim, she thinks of him ただの気まぐれなのに、アイツのことばかり…
しかしアストリッドがビートルズに与えた影響は、「Baby's In Black」だけではありません。 彼女はファッションやデザインに鋭い感覚の持ち主で、彼女が恋人であるスチュアートに施した[moptop]の髪型や彼に着せた[round neck]のジャケットは後に【マッシュルーム・カット】【襟なしスーツ】としてビートルズのヴィジュアル・イメージに大いに貢献した、というのがファンの間での定説となっています。 ただし、アストリッド本人によると[moptop]は当時既にドイツの男の子の間で流行しており、その髪型を大いに気に入ったスチュアートが彼女にカットしてもらったのが実情で、[round neck]のジャケットも彼女の洋服を借りて彼がステージで着用したのが始まりだったそうです。 これに対し、当時革ジャン&リーゼント(いわゆる典型的な不良スタイル)がトレードマークだったビートルズのメンバーは、そんなスチュアートのスタイルを“ママのジャケット”とからかったといいます。
彼女がもたらしたものはそれに止まらず、当時アストリッドは写真家の卵でハンブルク時代のビートルズを被写体として多く撮影していますが、彼女の写し出すモノクロの“half shadow(半影)”スタイルが斬新で、それを大いに気に入っていたビートルズは2ndアルバム『With the Beatles』のアルバム・ジャケットにこの手法を用いました(撮影はロバート・フリーマン)。 また、『With the Beatles』と並びアート・デザインとして人気のビートルズの7thアルバム『Revolver』のジャケット・デザインを手掛けたクラウス・フォアマン(後にマンフレッド・マンのベーシスト)も、アストリッドとの縁によるものです(彼女の元恋人)。
「ロック・アンド・ロール・ミュージック」は1964年12月4日に発売されたビートルズ4作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ビートルズ・フォー・セール(Beatles for sale)』に収録された作品です。 英・米ともにシングル・カットはありませんがフィンランドやノルウェー、オランダ、オーストラリアなどで発売され、とりわけ日本ではビートルズ最高の85万枚を売り上げました。
ビートルズが敬愛する黒人歌手チャック・ベリーが作詞・作曲し1957年にBillboard Hot 100で8位を記録した楽曲のカバーであり、ここではジョン・レノンがリード・ヴォーカルを務めています。 オリジナルのチャック・ベリーが抑揚を抑えたクールな歌唱であるのに対し、ジョンはまさに“エキサイト”しており感情に訴え掛けてくるようです。
ビートルズはコンサートのオープニング曲として歴代「I Saw Her Standing There」や「Twist and Shout」など激しいロック・ナンバーを好んで選曲してきましたが、1966年のツアーでは本作品が選ばれており、この年初来日を果たした日本武道館公演のOPを務めたのも「Rock and Roll Music」でした。 このうち、武道館公演初日(6/30)では通常よりキーを下げ短縮したバージョンが披露され、この音源は1996年にリリースされた『The Beatles' Anthology 2』に収録されています。
本作品はビートルズ以外にもビーチ・ボーイズ、REOスピードワゴン、ブライアン・アダムスなど錚々たる顔ぶれにカバーされるロックのスタンダードであり、オリジナルのチャック・ベリーver.はローリング・ストーン誌“500 Greatest Songs of All Time 128位”にランクされ、ロックの殿堂“500 Songs that Shaped Rock and Roll”入りを果たしています。 また、カバーではありませんか今回Youtubeで見つけた音源にはビートルズの「Rock and Roll Music」とレッド・ツェッペリンの「Rock And Roll」をマッシュアップ(※)させた作品があり、マッシュアップ好きの私にはタマラナイ1曲♪ (※mashup;2つ以上の曲から片方はボーカルトラック、もう片方は伴奏トラックを取り出してそれらをもともとあった曲のようにミックスし重ねて一つにした音楽の手法)
~Lyrics~
It's got a back beat, you can't lose it 強烈なバック・ビートを、もう放せない Any old time you use it いつだって、そうするさ
ここで記される【In The Mood】は一般的な文章の一部でなく“曲名”と解釈していますが、実際それを意味するかは不明です。 「In The Mood」というと1939年にグレン・ミラー楽団によって大ヒットしたジャズの超有名曲が真っ先に浮かび、どんな名曲であってもナマイキ盛りの若造に掛かってはそんな言い方になるのかもしれません。 あなたは“若かりし頃”、どうでした?
It's way to early for a congo コンゴにはちょっと早い So keep a rocking that piano やっぱり、ロックなピアノを刻み続けよう
【congo】は上の[tango-mambo-]の流れと思われますが、正直【way to early for a congo】の真意はよくわかりません(たぶん韻を重視しただけで、深い意味はない)。
一方、ビートルズの「Rock & Roll Music」で大きな魅力となっているのが、ファンキーなピアノ・プレイ♪ ここでのプレイヤーには諸説あって、アルバムのライナーを担当したDerek Taylorは“ジョン&ポールとジョージ・マーティンが一つのピアノで演奏”、『ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ』の著者Mark Lewisohnは“ジョージ・マーティン”、エンジニアを務めたGeoff Emerickは“ポール”だと言っています。
Just let me hear some of that rock and roll music ロックン・ロールを聴かせてよ! Any old way you choose it 君だって、それがいいだろう?
…かつて“ロックは若者の象徴”でしたが、今は当のポール・マッカートニーも74歳を迎え、現代の若者からは「Rock and Roll Music」のような心湧き立つロックン・ロールが聴こえてこないような気がします。 昔、私が抱いていた“演歌はおじさん・おばさんの音楽”という偏見と同じ感覚で、若者たちはロックを捉えているのだろうか…。
ビートルズがデビュー前の1961年6月にドイツで交わした初めてのレコード契約書が、この9月19日にオークションで7万5,000ドル(約900万円)で落札されました。 これはロック歌手トニー・シェリダンのバックとして演奏を行うという内容で、この時リンゴ・スターはまだ加入しておらず前任のピート・ベストが名を連ね、【Beatles】という名前はドイツ語の男性性器を意味する【Pidels】と発音が似ているという理由で、この契約ではバンド名を【The Beat Brothers】(Tony Sheridan and The Beat Brothers)名義に変更されました。
「ミスター・ムーンライト」は1964年12月4日に発売されたビートルズの4作目の公式オリジナル・アルバム『ビートルズ・フォー・セール(Beatles for sale)』の収録曲で、英米ではシングル・カットはされず、日本で1965年3月15日に「What You're Doing」とのカップリングで独自発売されました。 日本でシングル・カットされたとはいえ『ビートルズ・フォー・セール』はやや地味な印象のアルバムであり、それにも関わらずこの曲が私たちにとって強く心に刻まれることとなったのは、ビートルズ来日に際し放送され視聴率56.5%を記録したドキュメンタリー番組『ザ・ビートルズ日本公演』の中で、彼らがパトカーに先導され羽田空港からヒルトン・ホテルまでの道中のシーンで印象的に使われたためといわれます。
ただし、「ミスター・ムーンライト」は武道館公演はおろかライブ演奏されたこともほとんど無い作品で、唯一デビュー直後の1962年12月にハンブルクのスター・クラブで行われたライブで演奏され、非公式のライブ・アルバム『Live At The Star-Club In Hamburg, Germany; 1962.』に記録が残されるのみです。 リード・ヴォーカルはジョン・レノン、コーラスはポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが務めていますが“レノン=マッカートニー”ではなく、作者は ロイ・リー・ジョンソンという人。 最初に歌ったのはブルース・ピアニストのピアノ・レッド(Piano Red)がドクター・フィールグッド&ジ・インターンズ(Dr. Feelgood and the Interns)名義で1962年に発表したもので、これがイギリスのR&B愛好家の間で人気となってビートルズにも伝わったようです。
ビートルズの得意ワザの一つといえば「All My Loving」(過去ログ)や「Hey Jude」(過去ログ)のような“前奏なしの歌い出しスタイル”ですが、「ミスター・ムーンライト」もこれら2曲に劣らない“歌い出しの名曲”です♪ でも、このスタイルは非常に強いインパクトが与えられる分“いきなりハズしかねない”危うさもあり、特に最初からフル・パワー全開の本作品では、当のジョンも『The Beatles Anthology 1』(テイク1)のイントロで息が切れて挫折してしまい、ポールに“惜しかったな。”のツッコミを浴びています! 一方で、ジョンは「ミスター・ムーンライト」の歌唱によってヴォーカリストとしての評価が高まったとも言われています。
The Beatles - Live In Japan 1966 / The Beatles Mr. Moonlight StarClub 1962
Dr. Feelgood & the Interns - Mister Moonlight (1962) / The Beatles Anthology 1
~Lyrics~
Mr. Moonlight ミスター・ムーンライト You came to me one summer night ある夏の夜、あなたは目の前に現れ