John Travolta & Olivia Newton - Summer Nights (1978年)
~概要~
「想い出のサマー・ナイツ」は1978年の北米興行収入No.1の大ヒットを記録したアメリカの学園ミュージカル映画『グリース(Grease)』 の挿入曲です。 同映画からはサウンドトラック・アルバムもBillboard 200のNo.1に輝いて2800万枚をセールスしており(『Saturday Night Fever』に次いで年間2位)、アルバムからも4曲のTop5ヒットが生まれていますが本曲もその一つで、Billboard Hot 100の5位(年間69位)を記録しました。 とりわけ『グリース』 のイギリスでの人気は高く、同アルバムからの「You're the One That I Want」に次ぐ7週No.1に輝いて年間3位、同年を代表するヒット曲となっています。
歌っているのは(=劇中で歌唱している)ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョン、そしてその他のキャストがコーラスとして参加しています。 同映画の主役である二人は劇中でデュエットも多く、本曲を含む3曲を共に歌唱しました。 劇中でキャストと一緒に歌うという特殊な条件であるため通常のコンサートではオリジナルの顔触れで再現することは至難な性質の作品ですが、2002年の『Grease DVD Party』ではトラボルタを含むオリジナルのメンバーが実現しています! (ただし近年、一部のメンバーがオリビアのコンサートに参加することもある)
映画『グリース』 はミュージカル『Grease』を原作とし、「Summer Nights」もその作者であるジム・ジェイコブスとウォーレン・ケイシーによって作詞・作曲された作品ですが、シカゴでの初演時(1971年)には「Foster Beach」というタイトルだったようです。 「Summer Nights」は2004年に『AFI's 100 Years...100 Songs』の70位に選出された“アメリカ映画の歴史に残る名曲”であり、2010年にはBillboardの『Best Summer Songs of All Time』9位に選ばれる“長く愛され続けた夏歌”でもあります。
Tell me more, tell me more, Did you get very far? おい、もっと教えろよ…オマエ、行く所まで行ったんだろ? Tell me more, tell me more, Like does he have a car? ねぇ、もっと教えて…その人、クルマ持ってそう?
「I Wanna Be Loved by You」は、1959年の映画『お熱いのがお好き(Some Like It Hot)』の劇中でマリリン・モンローが歌唱した曲です。 それから半世紀以上経った楽曲ですが、昨年サントリー・プレミアムモルツのCMに起用されていたのでお耳馴染みの方も多いでしょう(女性ver.のカバーはゴダイゴのトミー・スナイダーの娘シャンティ、男性ver.は不明)。 タイトルの日本語表記は「アイ・ウォナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー」など英語のカタカナ表記のものが数種類あったり、映画の邦題「お熱いのがお好き」を用いたものなど統一されておらず、私は「あなたに愛されたいの」に馴染みがあるので本記事はそれで表記しています。
マリリン・モンローというと映画女優として著名である一方、1948年の『Ladies of the Chorus』以来8本の出演映画に於いて自ら歌唱する【歌手】であることも彼女の特筆であり、『お熱いのがお好き』でも「I Wanna Be Loved by You」を含め3曲を歌い、ゴールデングローブ主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得しました。 『お熱いのがお好き』はマリリンのキャリアを代表する作品であるだけでなく、2000年のアメリカ喜劇映画ベスト100(AFI's 100 Years...100 Laughs)の1位に選出された喜劇映画の傑作です。
どんな映画かというと、聖バレンタインデーの虐殺(1929年2月14日にシカゴで実際に起きた事件)の犯行を目撃してしまったジョー(トニー・カーティス)とジェリー(ジャック・レモン)がマフィアに追われ、身を隠すためにシュガー(マリリン)の在籍する【女性楽団】に【女装して】潜り込みます。 今回メイン動画とした「I Wanna Be Loved by You」の演奏シーンでは、歴史に残るマリリンの歌唱と共に、【女装した二人の男】が作品のコミカルな側面を演出しています。 このシーンの間奏部分でにこやかな顔をして手を振るのはオズグッド3世(ジョー・E・ブラウン)という大富豪で、実は【女装したジェリーに本気で恋をした】というのですから、その後の展開がワクワクするでしょ?
ところがこの女性キャラクターの風貌や歌い方があまりにもヘレン・ケインの特徴と似ていたため、制作元であるフライシャー・スタジオはヘレンに訴えられてしまいます。 1930年以降ベティの声優を務めたのは『ポパイ』シリーズでオリーブの声を演じたメエ・ケステル(Mae Questel)ですが、声質はヘレン・ケインとよく似ており、とりわけ当時『ベティ・ブープ』シリーズの中でベティが歌う「I Wanna Be Loved by You」の映像で聴いてみても、私には区別がつかないほどヘレンの歌声と瓜二つです。 判決は、ヘレン側の敗訴だったようですが…。
映画の音楽は主役ジャック・スケリントンの歌声も演じたダニー・エルフマンが担当し、「This Is Halloween」を含めた作曲・作詞も彼が担いました。 本曲は映画の冒頭で物語の舞台となるハロウィン・タウンについてのイントロダクションの役割を果たしており、ハロウィン・タウンの住人(声優)によって歌唱されています。 こうしたオバケ・妖怪の世界の概念は私たち人間社会とはギャップがあり、日本でもそうしたダーク・ヒーローとして愛され続けたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のOPテーマ曲でも、“お化けにゃ学校も試験もなんにもなーい!”と紹介されていました。
~Lyrics~
This is Halloween, everybody make a scene 今夜はハロウィン、みんなで騒げ Trick or treat till the neighbors gonna die of fright “トリック・オア・トリート!”お隣さんを震え上がらせるまで
Skelleton Jack might catch you in the back スケルトン・ジャックに後ろから捕まると And scream like a banshee キミはバンシーみたいな悲鳴を上げ
物語の主人公ジャックは元々カボチャ頭の案山子(かかし)ですが、冒頭の「This Is Halloween」のシーンの中で全身を炎で焼いてしまい[skeleton(骸骨)]となってしまいました。 この非常にスマートなキャラクターのデザインについて、自らもディズニーのアニメーター出身であるヘンリー・セリック監督は“長い脚で華麗に動く蜘蛛が着想源”と語っています。
「This Is Halloween」には劇中のキャラクターが多く登場しますが[banshee]はこれに該当せず、アイルランドおよびスコットランドに伝わる家人の死を予告するという女の妖精で、彼女の泣き声が聞こえた家では近いうちに死者が出ると言われているそうです。
[CHILD CORPSE TRIO] Tender lumplings everywhere どこもかしこも、かよわいウスノロばかり Life's no fun without a good scare ステキな恐怖がなけりゃ、人生楽しくもない
この提灯の由来については諸説ありますが、アイルランドの古い伝承によると[Jack the Smith]という飲んだくれで嘘つきな男にまつわる話が基になっているようです。 そのジャックがこの世の生を終えた時、生前の悪行から天国に行くことは叶わなかったものの、サタンを騙すことに成功して地獄行きも免れ、この時サタンから永遠に消えない地獄の炎を授かり、くり抜いたルタバガ(カブに似たアブラナ科の根菜)《写真・右》の中に灯してこの世の墓場を彷徨った…そして、そのランタンの灯火はundead(幽霊やゾンビなど)やvampire(吸血鬼)を遠ざけると一部の人々の間で信じられるようになってゆきました。 やがてこの伝承がアイルランド移民によってアメリカに伝えられ、ルタバガがカボチャに変わって広まった…とのことです。
Wouldn't you like to see something strange? 見知らぬものを見てみたいと思わない?
物語は主人公ジャック・スケリントンがハロウィンにマンネリを覚え、初めて目にしたクリスマスの華やかさに心を奪われることに始まります。 そこでジャックはハロウィン・タウンでもクリスマスを催そうとしたり、自分がサンタクロースとなってクリスマス・タウンの子どもたちにプレゼントを配ることを思いつくのですが、あくまで“ハロウィン的思考”でしかクリスマスを捉えられない彼やハロウィン・タウンの住人らのギャップが滑稽であり、一方でそれがタイトルにもなっている【The Nightmare(悪夢のような出来事) Before Christmas】を引き起こすことにもなるのですが…。
This is Halloween, this is Halloween 今夜はハロウィン、楽しいハロウィン Pumpkins scream in the dead of night カボチャは夜中に悲鳴を上げる
「メモリー」は、バリー・マニロウ1982年の12thアルバム『ヒア・カムズ・ザ・ナイト(Here Comes The Night)』の収録曲です。 アメリカでは同年後半にシングル・カットされ、翌年1月にBillboard Hot 100で39位まで上昇しました。 ご存知のように本曲のオリジナルは1981年に初演されたミュージカル『キャッツ(Cats)』のテーマ曲ともいえる作品で、作詞は『キャッツ』の原作者でノーベル文学賞受賞者でもあるイギリスの詩人T・S・エリオット(Thomas Stearns Eliot/1965年没)の遺稿を基に演出家のトレヴァー・ナンがその一部を付け加えたもので、作曲は『ジーザス・クライスト・スーパースター』『エビータ』『オペラ座の怪人』など誰もが知っているミュージカルに携わった大御所アンドルー・ロイド・ウェバーです。