I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「民衆の歌」~ミュージカル『レ・ミゼラブル』より

2021.07.30

category : Soundtracks

Les Misérables - Do You Hear The People Sing? (1980年)

フランス国民が帝政から“共和制”を勝ち取るまでの苦難を描いた19世紀を舞台としたミュージカル

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tags : 1980年 ミュージカル 決意 プロテスト 映画00's- 新型コロナ  

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「想い出のサマー・ナイツ」ジョン・トラボルタ&オリビア・ニュートン=ジョン

2018.07.12

category : Olivia Newton-John

Olivia Newton - Summer Nights1 Olivia Newton - Summer Nights2


John Travolta & Olivia Newton - Summer Nights (1978年)



~概要~

「想い出のサマー・ナイツ」は1978年の北米興行収入No.1の大ヒットを記録したアメリカの学園ミュージカル映画『グリース(Grease)』 の挿入曲です。
同映画からはサウンドトラック・アルバムもBillboard 200のNo.1に輝いて2800万枚をセールスしており(『Saturday Night Fever』に次いで年間2位)、アルバムからも4曲のTop5ヒットが生まれていますが本曲もその一つで、Billboard Hot 100の5位(年間69位)を記録しました。
とりわけ『グリース』 のイギリスでの人気は高く、同アルバムからの「You're the One That I Want」に次ぐ7週No.1に輝いて年間3位、同年を代表するヒット曲となっています。

歌っているのは(=劇中で歌唱している)ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン=ジョン、そしてその他のキャストがコーラスとして参加しています。
同映画の主役である二人は劇中でデュエットも多く、本曲を含む3曲を共に歌唱しました。
劇中でキャストと一緒に歌うという特殊な条件であるため通常のコンサートではオリジナルの顔触れで再現することは至難な性質の作品ですが、2002年の『Grease DVD Party』ではトラボルタを含むオリジナルのメンバーが実現しています!
(ただし近年、一部のメンバーがオリビアのコンサートに参加することもある)

映画『グリース』 はミュージカル『Grease』を原作とし、「Summer Nights」もその作者であるジム・ジェイコブスとウォーレン・ケイシーによって作詞・作曲された作品ですが、シカゴでの初演時(1971年)には「Foster Beach」というタイトルだったようです。
「Summer Nights」は2004年に『AFI's 100 Years...100 Songs』の70位に選出された“アメリカ映画の歴史に残る名曲”であり、2010年にはBillboardの『Best Summer Songs of All Time』9位に選ばれる“長く愛され続けた夏歌”でもあります。

夏の定番曲だけあってカバーも多い楽曲ですが、名前もジャンルも近いことから取り上げ易かったのがミュージカル・ドラマ『glee/グリー』で、Season 3 第10話 「プロポーズ大作戦」(Yes/No)で使用されています。
主に歌っているのはサムとメルセデスの元カップルの二人で、残りのメンバーがそれぞれ男女に分かれて訊き役に回っている中…カート・ハメル(クリス・コルファー)は【the Pink Ladies】に属して歌っています。
このアイデアを出したのはカートの恋人ブレイン・アンダーソン役のダレン・クリスで、脚本を読んで“カートは男子といたってつまらないだろうから、女子とサンドイッチやチーズバーガーを食べながら、おしゃべりする方を選ぶはず”とプロデューサーに提言したものだったそうです。
ちなみにこの映像は映画『グリース』で「Summer Nights」が撮影された、実在のロサンゼルス・ヴェニス高校で撮影されており、ダレンが“映画とそっくり同じベンチで撮影したんだよ”と興奮して語ったとされるように、かなり当時を忠実に再現して編集されており、今回は映画とドラマのシーンを重ねた映像を発見したので、ファンの方はぜひ見比べてみて下さい。


 



~Lyrics~

Summer loving had me a blast
夏の恋は、一陣の風のように
Summer loving happened so fast
夏の恋は、あっという間に起こったわ

映画のプロローグの部分では、きれいな海辺でダニー(トラボルタ)とサンディ(オリビア)が仲睦まじく愛し合うシーンが編集されています。
これは本編に入る前の夏休みに避暑地で出逢い、恋に落ちた二人のエピソードを示唆するものであり、サンディはオーストラリアに帰る身の上であったため“ひと夏の恋”で終わらなければならなかった、という事情がありました。
二人は再会を信じつつ、泣く泣く別れることになりますが…。


Tell me more, tell me more, Did you get very far?
おい、もっと教えろよ…オマエ、行く所まで行ったんだろ?
Tell me more, tell me more, Like does he have a car?
ねぇ、もっと教えて…その人、クルマ持ってそう?

…ところが夏休みが終わり新学期が始まる早々、ダニーが通うアメリカの高校にサンディが転校してくる…という奇跡的な展開!
二人は“ひと夏の恋”について、それぞれ男子グループ【the T-Birds】《写真・左》と女子グループ【the Pink Ladies】《写真・右》に追及されることになりますが、その応答が「Summer Nights」のシーンになっています。

上が【the T-Birds】で下が【the Pink Ladies】のパートですが、質問の切り口が男女の違いそのもの!? 

Olivia Newton - Summer Nights3


I saved her life, she nearly drowned
危うく溺れる所、オレが命を助けてやったのさ
He showed off splashing around
あの人、子供のように水を跳ね上げ人目を引こうとしていたの

ここは上がダニー、下がサンディによる二人の馴れ初めについての言及ですが…
えっ! 互いに言っていることが全然違ってる?

このギャップは転校して二人が再会した際、ダニーが海で会った彼とは別人のような態度だったことに、サンディが受けたショックの原因にも重なります。
【夏の海】と違っていたのはダニーの人格そのものではなく“彼の背後にいる存在”であり、このシーンで再会した瞬間は【夏の海のダニー】だったのに、背後の存在を意識してからは【もう一人のオレ】に変身、この間うつろうトラボルタの演技が絶品です!

とかく男は【武勇伝】を語りたがる生き物であり、仲間の前で女性にデレデレした姿を晒すことは彼らに軽んじられる原因となりますが…
…にしてもダニー、今回はちょっと“盛り過ぎ”? 





~Epilogue~

『グリース』は高校3年の“少年・少女たち”が織りなす学園物語…
ですが撮影時トラボルタは23歳、オリビアに至っては29歳(!)という実年齢で、彼女の出演を要望したのはトラボルタだったといいます。

オリビアは当時既に多くのヒット曲を抱えたポピュラー音楽界のスターでしたが、ヘレン・レディのディナー・パーティーでプロデューサーのアラン・カーに映画『グリース』のヒロイン役のオファーを持ちかけられた際、二つ返事で受けられない事情がありました。
何故なら、オリビアは1970年にイギリスのミュージカル映画『Toomorrow』で主演し散々な目に遭ったトラウマがあったこと、サンディの役柄の一部がそれまでのオリビアのイメージを壊すリスクがあること、高校生を演じるにはあまりに実年齢と離れていたことに不安があったのです。
そこで事前にスクリーン・テストを受け、相手役のトラボルタと話しをしてみてようやく安心し、引き受けることにしたといいます。

…そんなオリビアの不安を緩和するためか(?)、その周りには彼女が少女に見える“大人びた高校生”がいっぱい!
リッゾことストッカード・チャニングは当時33歳、ソニーことマイケル・トゥッチ31歳、ジャンことジェイミー・ドネリー30歳…ほかも20代後半です。

 ちなみに、『8時だョ!全員集合』で「学校コント」のドリフターズはみんな30代以上
 …比べるなっ!


さて、多くの学校にとって【夏休み】が始まります。
今年は直前に西日本豪雨が発生し、多くの人が亡くなり、多くの町や家が土砂に流されました。
被災地の学生さんたちにとって、今年の夏休みは後片付けなどに追われ忙しかったり、今後への不安に苛まれる方も少なくないことでしょう。

筋肉トレーニングを行うと腕が太くなるのは広く知られることですが、これは非日常的で過大な負荷を受けて筋線維の一部が破断された後に起きる現象です。
この時あなたの体は“この筋肉の太さでは危ない”と危機感を覚え、秘めたる能力を発揮し筋線維を以前より少し太く修復(超回復)するため、筋肉量が増えて筋力もアップします。
精神や人生もこれと同じで、大きな苦労を乗り越えた時に人は強く、大きく成長できるのです。

Summer days drifting away
夏の日々は流れ去り
To, uh oh, those summer nights
夏の夜の思い出となった

この特別な夏に悩み、苦しみ、泣いたこと…
その稀なる厳しい経験が、あなたのこれからの長い人生を支える太い柱となってくれますように。



「想い出のサマー・ナイツ」


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tags : 1978年 楽しい愛 ミュージカル グリース 映画70's  歴史的名曲 

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「あなたに愛されたいの」マリリン・モンロー

2018.02.09

category : Soundtracks

Marilyn Monroe - I Wanna Be Loved By You1 Marilyn Monroe - I Wanna Be Loved By You2


Marilyn Monroe - I Wanna Be Loved By You (1959年)



~“恋多き女優”の生涯~

20世紀最大の“セックス・シンボル”マリリン・モンローといえば野球選手ジョー・ディマジオや劇作家アーサー・ミラーとの結婚、歌手フランク・シナトラや時の大統領ジョン・F・ケネディ兄弟との恋愛など“恋多き女”のイメージがあります。
反面、3度の離婚や何度もの流産、精神疾患や薬物中毒の問題、そして36歳という短い生涯を終えるに際しても自殺説や謀殺説が囁かれるなど、幸福な女性であったというイメージもありません。

果たしてこの稀代の女優マリリン・モンローとは、一体どんな人生だったのでしょう…。
ある一つの恋の物語から、紐解いてみたいと思います。



~概要~

「I Wanna Be Loved by You」は、1959年の映画『お熱いのがお好き(Some Like It Hot)』の劇中でマリリン・モンローが歌唱した曲です。
それから半世紀以上経った楽曲ですが、昨年サントリー・プレミアムモルツのCMに起用されていたのでお耳馴染みの方も多いでしょう(女性ver.のカバーはゴダイゴのトミー・スナイダーの娘シャンティ、男性ver.は不明)。
タイトルの日本語表記は「アイ・ウォナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー」など英語のカタカナ表記のものが数種類あったり、映画の邦題「お熱いのがお好き」を用いたものなど統一されておらず、私は「あなたに愛されたいの」に馴染みがあるので本記事はそれで表記しています。

マリリン・モンローというと映画女優として著名である一方、1948年の『Ladies of the Chorus』以来8本の出演映画に於いて自ら歌唱する【歌手】であることも彼女の特筆であり、『お熱いのがお好き』でも「I Wanna Be Loved by You」を含め3曲を歌い、ゴールデングローブ主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得しました。
『お熱いのがお好き』はマリリンのキャリアを代表する作品であるだけでなく、2000年のアメリカ喜劇映画ベスト100(AFI's 100 Years...100 Laughs)の1位に選出された喜劇映画の傑作です。

どんな映画かというと、聖バレンタインデーの虐殺(1929年2月14日にシカゴで実際に起きた事件)の犯行を目撃してしまったジョー(トニー・カーティス)とジェリー(ジャック・レモン)がマフィアに追われ、身を隠すためにシュガー(マリリン)の在籍する【女性楽団】に【女装して】潜り込みます。
今回メイン動画とした「I Wanna Be Loved by You」の演奏シーンでは、歴史に残るマリリンの歌唱と共に、【女装した二人の男】が作品のコミカルな側面を演出しています。
このシーンの間奏部分でにこやかな顔をして手を振るのはオズグッド3世(ジョー・E・ブラウン)という大富豪で、実は【女装したジェリーに本気で恋をした】というのですから、その後の展開がワクワクするでしょ? 

でも、これも[synchronicity(意味のある偶然の一致)]というものなのか、先に触れたアメリカ喜劇映画ベスト100のランキングで、『お熱いのがお好き』に続いて第2位にランクされたのが【女装した男(ダスティン・ホフマン)が恋をする】映画『トッツィー』だというのも、興味深い結果です。
ちなみに、『トッツィー』の主題歌「君に想いを」(過去ログ)はとてもピュアで素敵な曲なので、そういうテイストがお好きな方は是非お聴きになってみてください。


 
右の動画は、1988年の映画『ロジャー・ラビット』より



~オリジナル歌手は“ベティちゃん”!?~

実は、「I Wanna Be Loved by You」は『お熱いのがお好き』の1959年よりもっと昔からある楽曲です。
今からちょうど90年遡った1928年のミュージカル『Good Boy』のために書かれた曲で、アメリカの歌手ヘレン・ケイン(Helen Kane)《写真・左》によって歌唱されました。
独特のベイビー・ヴォイスで歌われる本曲のスキャットによって彼女は人気者となり、【ブブッパドゥ・ガール (Boop-Boop-a-Doop Girl)】と呼ばれたそうです。

Marilyn Monroe - I Wanna Be Loved By You3

1930年にアニメーター、グリム・ナトウィックが【メスのフレンチ・プードルを擬人化《写真・中》】しベティ・ブープ(Betty Boop)を創作し、『Dizzy Dishes』という作品に初めて登場させました。
その2年後にベティは人間とする設定に改められ、お馴染みの【セクシーなおてんば娘《写真・右》】のキャラクターに生まれ変わりました。

ところがこの女性キャラクターの風貌や歌い方があまりにもヘレン・ケインの特徴と似ていたため、制作元であるフライシャー・スタジオはヘレンに訴えられてしまいます。
1930年以降ベティの声優を務めたのは『ポパイ』シリーズでオリーブの声を演じたメエ・ケステル(Mae Questel)ですが、声質はヘレン・ケインとよく似ており、とりわけ当時『ベティ・ブープ』シリーズの中でベティが歌う「I Wanna Be Loved by You」の映像で聴いてみても、私には区別がつかないほどヘレンの歌声と瓜二つです。
判決は、ヘレン側の敗訴だったようですが…。

 



~Epilogue~

映画『お熱いのがお好き』撮影時の1958年、マリリン・モンローは1956年に結婚した3人目の夫・劇作家アーサー・ミラーとの夫婦生活が破綻へと向かっていました(1961年に離婚)。
そうした影響からか、この頃マリリンは精神が不安定な状態であった上(境界性パーソナリティ障害ともいわれる)、そうした中で妊娠・流産が続き(子宮内膜症に苦しんでいた)、後年トニー・カーティスの告白によると映画で恋の相手を務めたトニーと撮影中不倫関係にあったそうです。

その後もジョン・F・ケネディらと浮名を流し、1962年8月5日に36歳の若さでこの世を去ったマリリン…
しかし、そんな彼女をずっと見守り、一途に愛し続けた一人の男性がいます。
元ニューヨーク・ヤンキースのスーパースターで、彼女の二人目の夫だったジョー・ディマジオです。

Marilyn Monroe - I Wanna Be Loved By You4

マリリンとジョーは1954年1月14日に結婚し新婚旅行で日本にやって来た《写真・右》ことは有名ですが、そのハネムーン中に諍(いさか)いが生じ僅か274日で離婚してしまいました。
しかし彼はその後もマリリンを一途に愛し続け、彼女が亡くなる数日前に二人は再婚の約束をしていたと、関係者による証言もあるそうです(それが本当だとすると、自殺説は…)。
事実、マリリンの葬儀を取り仕切ったのもジョーであり、彼女の遺体に“愛している”と何度も囁き涙を流したと伝えられています。

彼女の死後“マリリンとのことを話してくれたら5万ドル払う”との誘いに対し、ジョーは“世の中には金に換えられないものがある。それは愛の思い出だ”と即座に断ったとされ、その後20年に亘って週3回、彼女の墓に赤いバラ(アメリカン・ビューティー)を贈り続けたという逸話もあります。
その後生涯ほかの誰とも再婚することなく1999年、84歳となっていたジョーは“死んだらマリリンの所へ行ける”と言い残し、その数日後に彼女の下へと旅立ちました。

I wanna be loved by you, just you
あなたに愛されたい…あなただけ
And nobody else but you
あなた以外、誰でもない

遠回りして、死に際してようやく本当の愛に辿り着いた二人…



「あなたに愛されたいの」


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tags : 1959年 ピュアな愛 ミュージカル 映画-60's CM曲 

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「ハロウィーン・タウンへようこそ」from ナイトメアー・ビフォア・クリスマス

2017.10.20

category : Disney/Animation

This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas1 This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas2


This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas(1993年)



~The Nightmare Before Christmas~

西洋の慣習でありながら日本の文化として完全に定着し、国民に愛されているクリスマス…
赤と白を纏(まと)ったやさしげな笑顔のサンタクロースが子どもたちにプレゼントを渡すため空をかけ巡るイメージは、子どもだけでなくみんなを幸せな気持ちにさせてくれます。
一方、暗い闇夜に耳まで裂けたかぼちゃ頭のジャック・オー・ランタンが不気味な笑みを浮かべているイメージのハロウィン…

santa_convert_20131223150610.png This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas3

全く正反対ですが、もしもこの二つのイメージを一つにしたらどうなると思います? 



~概要~

「ハロウィーン・タウンへようこそ」は、1993年公開のディズニー(Touchstone Pictures)映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(The Nightmare Before Christmas)』のオリジナル・サウンドトラックであり、OP曲です。
制作は『バットマン』や『アリス・イン・ワンダーランド』など独特な世界観を映し出してきたティム・バートンで、彼がディズニーのアニメーター時代に書いた詩が原案となっています。

ディズニー(カテゴリ)というとミッキー・マウスなどの“かわいいキャラクター”や、シンデレラなどいわゆる“ディズニー・プリンセス”が社風を象徴していますが、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のホラー・テイストはこれと対極であり、アニメーションでありながら内容が不気味で子ども向けでないと判断されたためディズニー系列の大人向け実写映画会社タッチストーン・ピクチャーズの作品として公開されました。
しかし100名を越える一流のアニメーターが1コマ1コマ丹念に創造(1440コマ/分)し、完成まで3年を費やした(1分の映像を撮影するのに1週間かかったといわれる)という“ストップモーション・アニメーション”による人形の動きや表情が実に豊かであり、こうした手作り感のせいかホラー・テイストでありながら映像には何処か温かみを感じさせるものがあります。

映画の音楽は主役ジャック・スケリントンの歌声も演じたダニー・エルフマンが担当し、「This Is Halloween」を含めた作曲・作詞も彼が担いました。
本曲は映画の冒頭で物語の舞台となるハロウィン・タウンについてのイントロダクションの役割を果たしており、ハロウィン・タウンの住人(声優)によって歌唱されています。
こうしたオバケ・妖怪の世界の概念は私たち人間社会とはギャップがあり、日本でもそうしたダーク・ヒーローとして愛され続けたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のOPテーマ曲でも、“お化けにゃ学校も試験もなんにもなーい!”と紹介されていました。

 



~Lyrics~

This is Halloween, everybody make a scene
今夜はハロウィン、みんなで騒げ
Trick or treat till the neighbors gonna die of fright
“トリック・オア・トリート!”お隣さんを震え上がらせるまで

【Trick or Treat】は、ハロウィンで子どもたちが仮装してご近所を回る際に発する言葉です。
[Trick]は“いたずら”[Treat]は“ごちそう”で、Treatをくれない場合は子どもたちがTrick(生卵を玄関に投げつけるなどいろいろ)しても許されるそうですが、日本人には教育的に差し障りがありそう?

ちなみに[Treat=お菓子]となったのは、カトリックの聖人らを弔う祝日『Allhallowtide(万聖節の時節;10/31-11/2)』に於いて子どもたちや貧しい人々が家々を回って歌を歌い、代わりに十字模様の入ったお菓子[Soul cake]を分け与えた慣習からきているようです。
1963年にこの歌をピーター・ポール&マリーが「A' Soalin」としてレコーディングし、2009年にはスティングもカバーするなど意外に侮れない美しさがあります。

 


Skelleton Jack might catch you in the back
スケルトン・ジャックに後ろから捕まると
And scream like a banshee
キミはバンシーみたいな悲鳴を上げ

物語の主人公ジャックは元々カボチャ頭の案山子(かかし)ですが、冒頭の「This Is Halloween」のシーンの中で全身を炎で焼いてしまい[skeleton(骸骨)]となってしまいました。
この非常にスマートなキャラクターのデザインについて、自らもディズニーのアニメーター出身であるヘンリー・セリック監督は“長い脚で華麗に動く蜘蛛が着想源”と語っています。

「This Is Halloween」には劇中のキャラクターが多く登場しますが[banshee]はこれに該当せず、アイルランドおよびスコットランドに伝わる家人の死を予告するという女の妖精で、彼女の泣き声が聞こえた家では近いうちに死者が出ると言われているそうです。


[CHILD CORPSE TRIO]
Tender lumplings everywhere
どこもかしこも、かよわいウスノロばかり
Life's no fun without a good scare
ステキな恐怖がなけりゃ、人生楽しくもない

私たちの世界では通常[scare(突然の恐怖)]は避けたいものですが、ハロウィン・タウンではその逆です。
[lumplings]は作詞者ダニー・エルフマンによる造語だそうで、私は[lump(のろま)]+[‐ling(…に属する人)]をイメージしました。
ちなみに彼は当時オインゴ・ボインゴ(Oingo Boingo)というロック・バンドのメンバーであり、1994年のアルバムで「Tender lumplings」という曲も発表しています。

…それにしてもオバケとはいえ、子どもが人生を語るとはちょっとナマイキ? 



~Epilogue~

本作の主人公であるジャック・スケリントン(Jack Skellington)はハロウィン・タウンの住民に“パンプキン・キング”と称されているように、ハロウィンを象徴するカボチャの提灯【ジャック・オー・ランタン(Jack-o'-Lantern)】《写真・左》を彷彿させます。

この提灯の由来については諸説ありますが、アイルランドの古い伝承によると[Jack the Smith]という飲んだくれで嘘つきな男にまつわる話が基になっているようです。
そのジャックがこの世の生を終えた時、生前の悪行から天国に行くことは叶わなかったものの、サタンを騙すことに成功して地獄行きも免れ、この時サタンから永遠に消えない地獄の炎を授かり、くり抜いたルタバガ(カブに似たアブラナ科の根菜)《写真・右》の中に灯してこの世の墓場を彷徨った…そして、そのランタンの灯火はundead(幽霊やゾンビなど)やvampire(吸血鬼)を遠ざけると一部の人々の間で信じられるようになってゆきました。
やがてこの伝承がアイルランド移民によってアメリカに伝えられ、ルタバガがカボチャに変わって広まった…とのことです。

This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas3 This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas4


Wouldn't you like to see something strange?
見知らぬものを見てみたいと思わない?

物語は主人公ジャック・スケリントンがハロウィンにマンネリを覚え、初めて目にしたクリスマスの華やかさに心を奪われることに始まります。
そこでジャックはハロウィン・タウンでもクリスマスを催そうとしたり、自分がサンタクロースとなってクリスマス・タウンの子どもたちにプレゼントを配ることを思いつくのですが、あくまで“ハロウィン的思考”でしかクリスマスを捉えられない彼やハロウィン・タウンの住人らのギャップが滑稽であり、一方でそれがタイトルにもなっている【The Nightmare(悪夢のような出来事) Before Christmas】を引き起こすことにもなるのですが…。

This is Halloween, this is Halloween
今夜はハロウィン、楽しいハロウィン
Pumpkins scream in the dead of night
カボチャは夜中に悲鳴を上げる

クリスマスとハロウィン…
影があるから光が輝いて見え、光があるからこそ影の黒さが際立つものです。

物語の最後にジャックがサンタクロースに“上手くいくと思ったのかね?”と説教されたように、対極的な概念にあるものをきちんと理解もせず安易にこれを一つにすることは失敗を招くだけでなく、白と黒というそれぞれの際立った特性さえ失わせてしまうことにもつながりかねません(灰色は別の使い道がありますが)。
幸いなことに、私たちには白は白、黒は黒の魅力をそれぞれ両方楽しむ機会が与えられています。
まずはスリリングでミステリアスなハロウィンを堪能することにいたしましょう♪

でもジャックがやった[ビックリ箱のプレゼント]は、意外とやってみたい人も多い? 



「ハロウィーン・タウンへようこそ」


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tags : 1993年 ミュージカル アニメ ディズニー 映画90's ハロウィン 

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「メモリー」バリー・マニロウ

2016.11.25

category : Barry Manilow

Barry Manilow - Memory1 Barry Manilow - Memory2


Barry Manilow - Memory (1982年)



~今日のテーマは“cats”♪~

私の大好きな番組NHK『ダーウィンが来た!』11月20日放送分の主役は、“cats”!
福岡県糟屋郡新宮町相島(あいのしま)は別名“猫の島”とも呼ばれ、多くの野良猫たちが人と共存して平和に暮らしています。

猫というと、一般に単独行動を好み他の猫と共同体を築かないイメージがありますが、この島の猫たちの中には群れを作り仲間と共同生活を営んでいるものもいます(野良猫では結構あるらしい)。
特に私が感銘を受けたのが、姉妹の猫が一つ屋根の下一緒に暮らし役割分担しながら共同で互いの子どもを育てていることでした。
さらに、彼女らは別の場所に暮らす母親の所に子どもたちを連れて行って面倒を見てもらったりと、まるで人間みたいだなぁとしみじみしていると…
ナンとその姉妹のお母さんが、自分の孫に当たる子どもたちにお乳を与えているではありませんか!!

思わず、人間の場合を想像してしまいましたが…? 



~概要~

「メモリー」は、バリー・マニロウ1982年の12thアルバム『ヒア・カムズ・ザ・ナイト(Here Comes The Night)』の収録曲です。
アメリカでは同年後半にシングル・カットされ、翌年1月にBillboard Hot 100で39位まで上昇しました。
ご存知のように本曲のオリジナルは1981年に初演されたミュージカル『キャッツ(Cats)』のテーマ曲ともいえる作品で、作詞は『キャッツ』の原作者でノーベル文学賞受賞者でもあるイギリスの詩人T・S・エリオット(Thomas Stearns Eliot/1965年没)の遺稿を基に演出家のトレヴァー・ナンがその一部を付け加えたもので、作曲は『ジーザス・クライスト・スーパースター』『エビータ』『オペラ座の怪人』など誰もが知っているミュージカルに携わった大御所アンドルー・ロイド・ウェバーです。

ミュージカル『キャッツ』は都会のごみ捨て場を舞台とする野良猫たちの物語ですが、劇中に於いて「Memory」を歌うのはグリザベラという娼婦猫であり、1981年の初演でそのグリザベラを演じたイギリスのミュージカル女優エレイン・ペイジが歌ったバージョンはイギリス国内でも6位と大ヒットしました。
同年、早速バーブラ・ストライサンドがカバーしHot 100の52位にチャート・インさせています。

その翌年バリーがカバーしヒットさせるわけですが、私が「Memory」を知ったのはこれより少し後のことで、1983年にこの曲を収録した彼の『Greatest Hits Vol. II』が発売され、とりわけ日本ではその11月に劇団四季が『キャッツ』の初演(2015年に通算公演回数9000回を達成!)を行うということで話題となり、バリーの「Memory」に再び脚光が浴びていた時期のことでした。
洋楽初心者だった私はこの曲を聴いた途端“惚れて”しまい早速この『Greatest Hits Vol. II』を購入してしまったわけで、以後このアルバムは長く私の愛聴盤としてあり続けました。
バリーver.の「Memory」は典型的な“バリー節”であり、彼の魅力を堪能できる作品となっています♪

 
 



~Lyrics~

Has the moon lost her memory
夜空の月もひとりぼっち
She is smiling alone
すべてを忘れたような微笑みを浮かべている

音もない舗道、ひとりぼっち微笑む月、枯葉、うなりをあげる風…
…“何か”を象徴しているようでもあります。
でもお月さま、“memoryを失った微笑み”ってどんな笑顔? 


All alone in the moonlight
月明かりの下、ひとりぼっち
I cam smile at the old days
遠く、懐かしい日々に笑みがこぼれる

地上にも“ひとりぼっち微笑むもの”がいるようですが、一方は[memoryを失い]一方は[memoryを甦らせて]笑っているのが興味深いところです。
生きていればいろんな【memory】が刻まれ、その中には“忘れたくないもの”もあれば、“忘れたいもの”もあるでしょう。
…どちらも“忘れられない”に違いありませんが、どうせなら思い出は楽しいものの方がいいですね? 


It was beautiful then
かつて美しさに彩られていた頃
I remember the time I knew what happiness was
あぁ…幸せを謳歌したあの頃

『キャッツ』で「Memory」を歌うグリザベラは年老いた雌猫で、みんなからの嫌われ者です。
でも若い頃は絶世の美貌を誇り、多くの雄猫から賞賛を浴びるほどの存在でした。
そんな彼女の背景に触れると、いま彼女がどんな心境なのか、“どうして【memory】なのか”が見えてくる…。



~Epilogue~

『キャッツ』には、テーマともいえる【Jellicle(ジェリクル)】という言葉が頻繁に使われています。
これは[jewelry(宝石類)]と[miracle(奇跡)]を組み合わせた、原作者T.S.エリオットの造語だそうで(異説もある)、物語に登場する【ジェリクル・キャッツ】にとっては“人間に飼い馴らされることを拒否して、逆境に負けずしたたかに生き抜き、自らの人生を謳歌する強靭な思想と無限の個性・行動力を持つ猫”であることが理想です。
彼らは年に一度の[ジェリクル舞踏会]に参加し、最も純粋なジェリクルと認められると[新しいジェリクルの命]が与えられ、天上に上ることが許されます。

当初のグリザベラは夢も希望もなく過去の栄光を振り返るばかりでジェリクルに最も遠い存在でしたが、改心し舞踏会で「Memory」を歌い最高のジェリクルと認められます。
「Memory」は真夜中から夜明けへと移りゆく歌であり、まさに彼女の決意が込められているのです…。


If you touch me you'll understand what
ふれてごらん? あなたにも、きっとわかるはず
Happiness is look a new day has begun
幸せとは、新たな一日のはじまりに見るものであることを

若さと美貌を失い、
今という時間を共にできる信頼すべき仲間も、未来に描くべき夢や希望もなかったグリザベラ…
もしもあなたが“彼女”だったなら、この歌のメッセージに耳を傾けてみてください。

朝と夜は黙っていても一定時間ごとに入れ替わりますが、人生では自らが意思を持って変えようとしない限りなかなか夜は明けるものではありません。
加齢は私たちから美貌や健康、身体および精神の機能を奪い、それと引き換えに“memoryという知恵”を与えてくれます。
そのことを理解せず、いつまでも若い頃の価値観に拘っていたなら衰えゆく自分に失望するだけで、せっかく蓄積させた[memory]を“昔は良かった…”にしか使わないことでしょう。
でも若さと引き換えた“memoryの使い途”は、それだけじゃ勿体ない!

“[memory]は、今日と明日に生かしてこそ【Jellicle(宝石・奇跡)】が育まれる”
そのことを、どうか忘れないでくださいね。



「メモリー」


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tags : 1982年 ミュージカル 希望 

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