I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「アイム・オンリー・スリーピング」ビートルズ

2022.11.05

category : Beatles & Solo

The Beatles - I'm Only Sleeping (1966年)

日々寒さが募る“霜月”になると、ジョンの言い分に共感する人が急増するのではないでしょうか?

《解説記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


続きはこちら >>

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tags : 1966年 サイケデリック 悲鳴 リボルバー 

comment(8) 

「タックスマン」ビートルズ

2018.02.16

category : Beatles & Solo

Beatles - Taxman1 Beatles - Taxman2


The Beatles - Taxman (1966年)



~静かなるビートル、「Taxman」にもの申す~

【確定申告】の時節となりました(~3月15日)。

確定申告には収入金額や必要経費などを詳細に記した帳簿類に加え、それらを裏付ける膨大な納品書や領収書などの書類を添えて税務署に提出する必要がありますが、今年は森友事件の交渉記録に関係する内部文書を、国会で“売買契約締結をもって事案は終了 / 記録が残っていない / 事業終了で廃棄”と説明した佐川宣寿(のぶひさ)氏が国税庁長官を務めているため、初日から同庁が大勢の市民に包囲される異常事態となっています。
国税庁のHPでは、申告者に対し【帳簿書類は5~7年間保存する必要あり】としていますが…

でも税に対しては、ビートルズも一言言いたいことがあるようで…。



~概要~

「タックスマン」は1966年8月5日に発売されたビートルズ7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー(Revolver)』に収録されている作品です。
作詞・作曲はジョージ・ハリスンで(通算6作目)リード・ヴォーカルもジョージ、ジョン・レノンとポール・マッカートニーがコーラスを務めています。
一方そのためかジョージはリズム・ギターを担当(ジョンはコーラスとカウベル)、ベースのポールがリード・ギターを掛け持ちししており、ここでのポールのギター・プレイをジョージも“インド風で満足している”と評しました。

ジョージは同年に始まったアメリカのドラマ『バットマン』の大ファンで、ニール・ヘフティ(Neal Hefti)の主題曲「Batman Theme」から着想を得て「Taxman」の創作を始めました(タイトルからして…モロ!)
目一杯働いて目一杯稼いだお金の殆んどを税金として持っていかれることにショックを覚えたジョージは「Taxman(収税吏)」をテーマとする構想を思いつきますが、一人では全うできずジョンに助けを仰いで完成させています。
その時の経緯について、ジョンは“ジョージに電話で助けを求められ、気の利いたアイデアをいくつか投げ入れてやった”と、1980年にプレイボーイ誌のインタビューで語っています。

「Taxman」のマスターはテイク12ですが【Aahh Mr. Wilson / Aahh Mr. Heath】の歌詞(コーラス部分)は、直前のテイク11で【Anybody got a bit of money?(誰か少しカネ持ってない?)】だったのが改められたものであり、これにエンディングのギター・ソロが追加され完成に至っていることを考えると、このちょっとした歌詞の変更が重要な意味を持っていると思われます。
また、本曲はビートルズのコンサートで演奏されることはなかったものの、1991年にジョージが日本だけでエリック・クラプトンとのジョイント・コンサートツアーを行った際に披露されており、ここではこの部分のコーラスに【Mr.Bush(当時のアメリカ大統領)】の名を紛れ込ませて歌っていました。


 
 



~Lyrics~

Let me tell you how it will be
これからの仕組みについて、ご説明いたしましょう
There's one for you, nineteen for me
あなたが1なら、私は19

当時イギリスでは通貨 1 ポンド = 20シリングであったため(1971年2月から10進法に移行)、20進法的な表現となっています。
つまりは【あなたが5%、私が95%】ということですが…
95%も税金で持っていかれるってコト!?

イギリスでは1964年から社会保障の充実に重点を置く労働党が政権に就いていたため、累進課税を布き富裕層に対して非常に高い税を課していました。
ビートルズは同年からアメリカでも大成功を収めトップクラスの高所得者となっており、[ふんだくられる側]になって初めてその恐ろしさに気づき、歌で不満を訴えたというワケです。


Don't ask me what I want it for (Aahh Mr. Wilson)
何のためお金を必要とするか、問わないことです
If you don't want to pay some more (Aahh Mr. Heath)
それ以上お支払いなされたくないなら

ビートルズの稼ぎを95%持っていったのが当時の労働党ハロルド・ウィルソン政権で、ジョンとポールが茶化すようにコーラスを入れている【Mr. Wilson】とは、この人です。
一方の【Mr. Heath】は、当時野党第一党であった保守党のエドワード・ヒース党首。
ビートルズは貧しい労働者階級出身なので恐らく元々は労働党支持層だったと思うのですが、お金持ちになると…?

それまで【Anybody got a bit of money?(誰か少しカネ持ってない?)】という収税吏への皮肉に過ぎなかったフレーズを、時の政治家の名前に変更することで背後に潜む【政治家こそがその主犯】であることを焙り出すようで面白みが増した気がします。


Now my advice for those who die
…それと、お亡くなりになられる方へのご忠告です
Declare the pennies on your eyes
目の上のペニーも、ご申告なさいますよう

戦国武将・真田幸村の家紋[六紋銭]は【三途の川の渡し賃(冥銭)】として有名ですが、これは死者と共に副葬品として金銭を納棺する風習に基づいています。
西洋にもギリシア神話に由来して硬貨を死者の口の中に含ませたり、瞼(まぶた)の上に置いて埋葬する冥銭の風習があるそうです([Penny]は英国ポンドの下位通貨)。

前項のとおり「Taxman」にはジョンの助力があるとされますが、それにしてもこのラインをはじめその他の言葉の端々に散りばめられた[ツッコミのキレとえげつなさ]は、ジョージというよりむしろジョンのそれを感じさせます。



~Epilogue~

私たち国民の、国など公共サービスへの義務的な公的負担は、[税金]以外にも[社会保障・保険料]があります。
この2つを合わせた国民所得に対する比率を【国民負担率】といい、日本は特に巨額の[財政赤字]によってサービスを維持しているのでこの3つを合わせた【潜在的国民負担率】を考慮する必要があり、その数値は平成29年度で49.4%です《写真;左》。
つまりビートルズのように95%とまではいかなくとも、私たち普通の国民でさえ税や保険料という名目で【所得の約半分を国や自治体に納めることを義務付けられている】…ということになります。
(※年金などは後で払い戻される)

Beatles - Taxman4
財務省HPより

こうした政府の会計のうち税金や国債を財源とする[一般会計]は国会の審議・議決を経て行使されますが、年金・医療などの公的保険や手数料などを財源とする[特別会計]は議員でさえその詳細を理解できておらず、国会の審議も不十分なまま各省庁と与党政治家の自由裁量で使い道が決められているとさえいわれます。
しかも2016年度の歳出《写真;右》をみてみると一般会計43.1兆円(純計)に対し特別会計は201.5兆円(純計)で、約4.7倍もの規模の違いがあり、こうした飽満財源に基づくムダ遣いの実情を塩川正十郎財務大臣が“母屋でおかゆをすすっている時に、離れですき焼きを食べている”と表現(2003年)したことをご記憶の方も多いでしょう。

まさにこうした不合理への民衆の怒りこそ民主党政権を生んだ原動力であり、当時はメディアでもグリーンピアなど全国に次々と建設される無駄なハコモノ施設や優雅な役人の天下り生活など特別会計の問題点を報道しました。
しかし第2次安倍政権発足以降こうした政府と官僚によるムダ遣いを問う姿勢は次第に消え失せ、最近では不正追及どころか国会中継や政治ニュースさえ大幅に縮小され、まるで国民の関心を政治以外に向けようとしているかのようです。

しかしたとえメディア統制し、私たちの耳目に情報が入らなくなったとしても、国民のお金の不適正支出が無くなったわけでは全くありません



“佐川国税庁官は、【適材適所】”

安倍首相の発言は、この政権の今後の方向性を示す重要な意味を内包しています。
言うまでもなく森友学園問題は安倍昭恵夫人がらみの案件であり、加計学園は腹心の友、女性ジャーナリスト準強姦もみ消し疑惑/スパコン事件は[安倍首相にもっとも近いジャーナリスト]と呼ばれる人物の関与が疑われる事案です。
しかし1年経ってもこれらの解明が一向に進まないのは、当事者である政治家と官僚が証拠を公表せず口をつぐみ、内部告発を[怪文書]で押し通し、警察・検察が首相に及ばない[忖度捜査]に徹しているからです。

国民の非難の矢面に立ち主君を守った佐川理財局長は安倍首相の恩人であり、彼をどう処遇するかで全官僚が首相に付くか国民に付くかが決まります。
安倍首相からの返答は【佐川国税庁官】という昇進であり、昨年夏の内閣改造に於いてこれまで政治家のポストだった【内閣人事局長(官僚人事を統括)を官僚出身の杉田和博官房副長官】に初めて与えることでした(但し、安倍人事が最優先であることは変わらないだろう)。
また、文科省の天下り規制違反摘発で懸念された官僚の天下り規制強化も、昨年12月の全省庁に亘る追跡調査で内閣府が天下り容認するメッセージを出したことは、彼らを安堵させたはずです。
(※実情は、今も毎年大量の官僚が天下りしているらしい)


安倍首相は官僚の秘密厳守の下、安心して次なるドリルで岩盤に穴を開けて利権を発掘し
官僚は政府の庇護の下、安心して企業と癒着し優良な天下り先を獲得
…これぞまさに[win-win]!

 まずは【残業代ゼロ法案】で、“労働者使い放題”♪
 そして来年は【消費増税10%】で、“税金使い放題”♬


彼らの“使い放題”のツケを払わされるのは、誰?


Cos I'm the taxman, yeah I'm the taxman
…何故って? 私こそTaxman、税を取り立てる側の人間
And you're working for no one but me
他の誰のためでもない、あなたは私のために働いているのだよ


Beatles - Taxman3


政府が築くべきは、若い芽が臆することなく真っすぐ初心を遂げられる社会です。



「タックスマン」


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「エリナー・リグビー」ビートルズ

2017.09.01

category : Beatles & Solo

Beatles - Eleanor Rigby1 Beatles - Eleanor Rigby2


The Beatles - Eleanor Rigby (1966年)



~「エリナー・リグビー」のオリジナル・スコアがオークションに!~

ビートルズ屈指の美曲「エリナー・リグビー」のオリジナル・スコアが、9月11日のオークションに出品されることになりました。
競売はビートルズの出身地リヴァプール近郊のウォリントンで行われ、約280万円程の落札額が見込まれているそうです。

「エリナー・リグビー」の楽曲自体のクレジットはご存知【Lennon–McCartney】ですが、弦楽八重奏を起用しているため編曲はプロデューサーのジョージ・マーティンが担当し、鉛筆で手書きしたスコアにはマーティンとポールが署名を入れています。
今回の競売では他にも「エリナー・リグビー」にまつわる出品が予定されており、主催者は“世界中で激しい争奪戦になるはず”と息巻いているそうです。



~概要~

「エリナー・リグビー」は1966年8月5日にイギリスでリリースされたビートルズの13枚目のオリジナル・シングル(「Yellow Submarine」と両A面)で、同日発売の7thアルバム『リボルバー(Revolver)』に収録されました。
シングルとしてイギリスではNMEで4週/MMで3週No.1に輝き、アメリカではB面扱いとなったもののBillboard Hot 100で11位を記録、2004年にはローリング・ストーン誌【The 500 Greatest Songs of All Time 137位】にもランクされています。

作者はポールでお得意の“物語風”を展開させていますが、歌詞のアイデアが煮詰まって自己完結できず他のメンバーらにアイデアを出してもらって完成させたようです(詳細別項)。
リード・ヴォーカルはポールで、本曲の歌唱により1966年のグラミーで【Best Contemporary Pop Vocal Performance, Male】を受賞しました。
一方、コーラスにジョン・レノンとジョージ・ハリスンが参加した以外、演奏についてビートルズは一切関与しておらず、このためリンゴ・スターは全く出番がありませんでした。

本曲は「Yesterday」に続いて二度目の本格的ストリングス編成曲ですが、こうしたクラシック志向には当時の恋人であるジェーン・アッシャーの存在が大きく影響を与えています。
ジェーンのお母さんはロンドンの名門ギルドホール音楽演劇学校の教授で、ジョージ・マーティンにオーボエを指導した人であり、当時アッシャー宅に住み込んでいたポールも彼女からクラシック音楽やその知識を授かっていました。
「Eleanor Rigby」はそんなアッシャー宅の地下の音楽室にあるピアノから生まれた曲であり、ポールがジョージ・マーティンに編曲を依頼した際“(アントニオ)ヴィヴァルディ風の弦楽八重奏”と注文をつけた知識も、その産物だったのです。
こうした経緯から生まれたのがヴァイオリン4/ヴィオラ2/チェロ2本という、ビートルズ作品中でも極めて特徴的な音の響きでした。

しかし、「Eleanor Rigby」の特徴的な音の響きは弦楽八重奏だけではありません。
通常のステレオは、左右2つのスピーカーによって実際そばで演奏を聴いているような音に近づけるものですが、『リボルバー』に収録の(オリジナルの)「Eleanor Rigby」では基本的にポールのリード・ヴォーカルは右チャンネルに、コーラスは左チャンネルに、ストリングスは左右両方(中央から聴こえる)に分別され入っており、特にヘッドホンを使うとそれぞれの切り代わる独特な音の感覚を楽しむことができるでしょう。
ただし、後年リミックスが施された「Eleanor Rigby」メイン動画はこの音源)は音質がクリアになっている反面、全ての音が中央から聴こえる普通のステレオ形式に変更されているので、ファンとしては微妙な所です…。

ビートルズ時代を含め「Eleanor Rigby」は長年封印されていた作品でしたが1984年、ポールは自作映画『ヤァ!ブロード・ストリート(GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET)』で本曲を初めて再演、その際「エリナーの夢(Eleanor's Dream)」というインストゥルメンタル曲を新たに創作しメドレーとしています。
また、ライブとして最初に披露されたのは1989年9月からのワールド・ツアーで、ビートルズ時代には不可能とされたストリングスの音をキーボードで再現し、ファンを歓喜させてくれました。

カバーはジョーン・バエズ、ヴァニラ・ファッジ、アレサ・フランクリンなどが有名ですが、私は何といってもレイ・チャールズ
彼は1968年に「Eleanor Rigby」をカバーしBillboard Hot 100で35位とヒットさせ、1990年にポールが“グラミー特別功労賞生涯業績賞”を受賞したステージで本曲をトリビュート演奏したことで、とりわけインパクトを残しました。


 
 



~Lyrics~

Ah look at all the lonely people
すべての孤独な人々について考える…

【孤独】という物語の展開に行き詰ったポールは他のメンバーや、ジョンの家に遊びに来ていた元クオリーメンのピート・ショットンに相談を持ちかけており、このラインはジョージ・ハリスンのアイデアだといわれます。
ジョンは1971年に“歌詞の半分以上は僕が書いた”、1980年には“最初のヴァース以外全部僕が書いた”と発言していますが、ポールは“ジョンにはいくつかの言葉を助けてもらったけど、8割は僕が書いた”、ピート・ショットンは“ジョンの貢献は0”と、認識に差異があるようです。

ジョンの“全部僕が書いた”やピート・ショットンの“ジョンの貢献は0”はそれぞれ余りに極端で、不自然さが感じられたため少し掘り下げてみたところ、話し合いの中で「Eleanor Rigby」の結末についてピート・ショットンが“最後はマッケンジー神父がエリナー・リグビーの葬儀を取り仕切る”と提案したのに対し、ジョンはそれを反対するなど意見を異にしており、結果的にポールはピートの意見を採用したため、ジョンはプライドを傷つけられたのではないでしょうか…?
ただ、【孤独】は明らかにジョンの得意とする分野であり、彼は少なからずこの作品に対し“思い入れ(執着)”があったと思うので、“ジョンの作詞による「Eleanor Rigby」”も味わってみたかった気もします。


Eleanor Rigby, picks up the rice
エリナー・リグビーは米を拾う
In the church where a wedding has been
結婚式後の教会

ポールは最初【Miss Daisy Hawkins】の名を思いついたものの満足できず、映画『Help!』で共演した女優【Eleanor Bron】から[Eleanor]を、1966年1月に舞台公演中のジェーン・アッシャーに会うため訪れたブリストルで見掛けた酒店【Rigby&Evens Ltd】から[Rigby]を取って【Eleanor Rigby】としました。

エリナー・リグビーの人物設定についてポールは“何もかも上手くいかないオールド・ミスの掃除婦”としているようで、ライス・シャワーを浴びて若いカップルが人生最良の日を謳歌した宴の後始末を、オールド・ミスが行うというのは何ともせつないものがあります…。


Father McKenzie, writing the words
マッケンジー神父は言葉を綴っている
Of a sermon that no one will hear
誰の耳に届くこともない説教を

一方こちらは最初【Father McCartneyとしたものの、ピート・ショットンに“ポールの実父と誤解されるので変えた方がいい”と指摘され、電話帳を調べて【McKenzie】に決めたそうです。
また、このラインと[靴下を繕う]というアイデアを出したのはリンゴ・スターともいわれます。
確かに、社会的地位も高いであろう年代の男性が独り靴下を繕う姿というのは、侘びしさをかき立てますが…。
(俗人はともかく、そのくらい物を大事にして安易に他力を頼まない高潔さこそ、聖職者の本来あるべき姿?)

ちなみに【Father McKenzie】には[ハザマケンジ]の空耳があり、[ミッキー・マッケンジー(Miki McKenzie)]は水谷豊の最初の奥さまです。 



~Epilogue~

…ところで、この作品には不思議なエピソードがあります。

【Eleanor Rigby】は1966年にポールが架空の人物として創作した名前ですが、ジョンとポールが初めて出会ったリヴァプールのセント・ピーターズ教会、そのウールトン共同墓地の中に【Eleanor Rigby】の名が刻まれた墓石《写真・左》が、1980年代になって発見されたというのです!
どんな名前も、世界を探せば大抵[同名異人]が見つかるものですが、ポールの出生地(ウールトン)、しかもジョンとの運命の出会いがあった場所でそれが見つかるという偶然…?
ちなみに、ポール本人は近年も基本的に“Eleanor Rigbyは架空の人物”という立場を通している一方、現実との奇妙な一致について“無意識のうちに影響を受けたかもしれない”とも言及しています。

Beatles - Eleanor Rigby3 Beatles - Eleanor Rigby4
 右は「Eleanor Rigby」をモチーフとして、1982年にスタンリー・ストリートに設置されたエリナー・リグビーの銅像。


では墓地に埋葬されたEleanor Rigbyさんとは、一体どんな生涯を送った人なのでしょうか?

墓石の記録によると彼女は独り身ではなく既婚者で、1939年に44歳で亡くなっています。
別の情報によると彼女はリヴァプールの病院で働いていた経歴があり、私は1956年に47歳で亡くなったポールのお母さん(ウールトン病院の元看護師)の生涯との類似を感じました。
ポールはこの時14歳、母を亡くした悲しみはもちろん、それまで涙を見せたこともなかった父が大泣きしている姿に衝撃を覚え、本当に大変なことが起きたのだと悲しみを深くしたそうです。
もしも母を亡くして間もないポールがこの墓と出あっていたなら、きっとその事を思い出さずにいられないでしょう。
ポールが【Eleanor Rigby】に込めた想い、そして当初なぜ【Father McCartney】を登場させようとしたのか、彼の心に少し近づけたような気がします。


All the lonely people
孤独なるすべての人々
Where do they all come from?
それは、何処からやって来るのか…

人は、誰もが孤独なものである。
そして、かけがえないものを失った時、その宿命を識る。
暗闇があるからこそ、光を求め彷徨(さまよ)う。
“生きる”とは、後戻りできないその闇を“時間切れ”まで前に進むこと…。



「エリナー・リグビー」


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「アンド・ユア・バード・キャン・シング」ビートルズ

2015.05.08

category : Beatles & Solo

The Beatles - And Your Bird Can Sing1 The Beatles - And Your Bird Can Sing2


The Beatles - And Your Bird Can Sing (1966年)



~And Your? Bird? Can Sing~

5/10~5/16までの一週間は、“愛鳥週間”
野鳥保護思想普及のため、1950年(昭和25年)に鳥類保護連絡協議会により設立され現在に至ります。
この季節、暑からず寒からず私たちにとっても活動し易い天候になりましたが、身近な鳥たちも何だか嬉しそうですよね?

ビートルズの「アンド・ユア・バード・キャン・シング」は、まさに鳥たちがじゃれ合っているような楽しいロック・ナンバー♪
でも、意外に“ウラ”のある作品です!
ポイントは、“birdの正体? 誰のbird?” …



~概要~

「アンド・ユア・バード・キャン・シング」は、ビートルズが1966年8月5日に発表した7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー(Revolver)』の収録曲です(シングル・カットはナシ)。
作詞/作曲・ヴォーカルはジョン・レノン、コーラスはポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが務めていますが、ポールは歌詞を手伝ったと言っています。

イントロからの印象的なギターはビートルズ屈指のギター・フレーズであり、ここではジョージに加えポールが参戦して厚いサウンドを生み出していて、ビートルズとしては唯一アメリカの雑誌『Guitar World』“100 Greatest Guitar Solos”の69位(対象はジョージ/2008年)にランクされました。
(※メンバー以外による演奏では、「While My Guitar Gently Weeps」のエリック・クラプトンも42位に入っている)

爽快で分かり易い曲に対し歌詞は意味深で全体を通して一つのストーリーを描くのは無理があり、解釈も意見が分かれるものがあります(詳細後述)。
『リボルバー』の頃になるとポールがクラシック、ジョージがインド音楽、ジョンがドラッグの影響が顕著になりライブ向きではない作品が占める中、「And Your Bird Can Sing」は数少ないライブ向きのロック・ナンバーでしたが、結局この曲がライブで歌われることはありませんでした。


一般的に「And Your Bird Can Sing」といえば“ギターの名曲”という印象が強いと思いますが、1996年のアウトテイク集『The Beatles' Anthology 2』では、また別の魅力を聴かせてくれています。
本作品のマスターは、1966年4月26日に上記の編成でレコーディングされたtake10。
これに対し“Anthology ver.”は4月20日のtake2で、全編を通して“ジョン&ポールのツイン・ヴォーカル(の多重録音)”で歌われているのが特徴です。

本来ビートルズのグループとしての魅力はデビュー前から“このスタイル”であり、「Please Please Me」「From Me To You」「She Loves You」「I Want To Hold Your Hand」など一連の大ヒットは、“二人のハーモニーが生み出した魔法”といえるのではないでしょうか…(※リンクは過去ログ)。

とりわけ、ここに紹介するAnthology ver.では素晴らしいコーラス・ワークを聴かせてくれるものの、何故か冒頭からジョンとポールの笑いが止まらず、正式版には成り得ないと承知してか終始じゃれて遊んでいます。
でも、その空気感こそがビートルズの魅力であり、私は“マスターのツイン・ギター+Anthologyのツイン・ヴォーカル、それとAnthology ver.のエンディングの口笛をリミックスした音”を是非聴いてみたいのです!

 
And Your Bird Can Sing (Anthology Version) / THE BEATLES CARTOON Ep35a



~Lyrics~

You tell me that you've got everything you want
欲しいものは全部手に入れたと、君は言う
And your bird can sing
それに、愛しい小鳥が歌ってくれるって…

この歌はミック·ジャガーと、当時の恋人マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)について言及しているという説があります。
すなわち【Youはミック】・【birdはマリアンヌ(birdはスラングで娘・恋人を指す)】であり、当時ジョンはミックに美人の恋人マリアンヌのことを散々自慢されたツッコミをネタにした…というハナシ。
マリアンヌは1964年に「As Tears Go By(涙あふれて)」(ミック&キース作であり、翌年ローリング・ストーンズも歌っている)など歌手としてヒットも放っているので【bird can sing】に該当し、“清楚なロリータ”として人気で【green(うぶ)】だった…というワケ。


You say you've seen Seven Wonders
七不思議をその目に入れたと、君は言う
And your bird is green
それに、小鳥は緑色だって…

一方で、これはポールがネタという説もあります。
ビートルズは1964年に全米ツアーを行いボブ・ディランに会っていますが、その際マリファナを勧められ彼らは初めて薬物の世界を“トリップ”しました。
この時ボブは何か“ありがたい話”を教えてくれたそうで、これに感銘を覚えたポールは忘れないようにメモを取ったものの、翌日その紙を見ると“There are seven levels(7つのレベルがある)”としか書いておらず、全く役に立たなかった(幻覚中に書いたため)…というエピソードから【Seven Wonders(七不思議)】が用いられた…というハナシ。

ちなみにこの日ボブが話したseven levelsとは、インド起源の神秘的身体論“7つのチャクラ”のことだったらしいですが…。


You tell me that you've heard every sound there is
音という音は全部耳に入れたと、君は言う
But you don't get me, you don't get me
だけど、その手は僕に届かない …届かない!

ここは説明の便宜上、不連続のセンテンスを並べました。
ミックにしろ、ポールにしろどちらも上昇志向の塊のようなところがあり、当時ポールは新たな音楽やサウンドを求めてあちこち探し回っていたし、ミックも何度となく熱心にビートルズのレコーディングを見学に訪れています。

当初、本作品のタイトルは「You Don't Get Me」と名付けられていました。
ミックかポール、あるいは別の人物に向けたメッセージかは定かではありませんが、やはり実質的に本作のテーマはここにあるといえるのでしょう。
個人的には、ポールに対し“どんなに必死で研究に励もうと、僕には追いつけないよ”と言っているようにも思えるのですが…。



~Epilogue~

地球上には声を持つ生物は実に数多く存在しますが、一般に人間が聴いて美しいと感じる鳴き声は案外数少ないものです。
中でも鳥類は【sing】と形容されるほどの“美声”の持ち主も多く、古今東西人々に愛されてきました。
また、一部の鳥類は歌うだけでなく“しゃべる”も得意で、その分野では他の追随を許さぬ…
…というか、本職の名優も真っ青な長ゼリフをしゃべることができるのネっ!? 




でも鳥って、歌えて・しゃべれるだけじゃなく…
“踊れる”んですよ!

…えっ、何のためって?
それはモチロン…

“キミのためさ。”

Look in my direction
こっちを見てごらん
I'll be 'round, I'll be 'round
僕がいる… そばにいるから

 極楽鳥の求愛

“たとえキミが振り向いてくれなくても、ボクはきっとそこにいる…。”


オトコの心意気、見せてもらったよ。 だけど…
最後の“それ”

フィニッシュは、それで正しかったのか? 
(ちょとコワイぞ…)



「アンド・ユア・バード・キャン・シング」


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comment(6) 

「フォー・ノー・ワン」ビートルズ

2014.05.19

category : Beatles & Solo

Beatles - For No one1 Beatles - For No one2


The Beatles - For No one (1966年)


~日本公演は全中止、ポールの回復を祈る~

ポール・マッカートニーの『OUT THERE JAPAN TOUR 2014』の全公演が、中止となってしまいました。
15日夕方に来日、翌16日にリハーサルが入っていたものの体調不良を訴え欠席、“ウイルス性炎症”と診断されたためです。
ウイルス性炎症とはウイルス感染に起因する病の総称で、一部報道によるとウイルス性腸炎のような症状が見られ腹部などに違和感があったといわれます。
主催者によると病状は重篤ではなく“3時間のライブができるだけの声が出ない状態”だそうで、そういう意味では一安心といったところでしょうか…。

この事態に対しポールは“早期再来日公演を強く希望”しているそうで、主催者と検討を続けているそうです。
ただ、今回の日本公演の主目的であった“国立競技場の最後を飾る”大役を果たすためには解体工事が始まる7月までに実行される必要があり、ツアーの日程から考えると28日の韓国公演~6月14日から始まるアメリカ・ツアーまでの間しかないでしょう。
もちろん全てはポールの健康が回復しての想定であり、今回日本公演中止が決まった以上ちゃんと入院し治療に専念して欲しいと思います。
何よりポールが元気でいてくれさえすれば、チャンスはまた訪れるのですから…。



~概要~

「フォー・ノー・ワン」は1966年8月5日発売のビートルズ7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー(Revolver)』の収録曲です。
シングル曲ではないので個別のチャート指標はありませんが、ローリングストーン誌が選んだ『100 Greatest Beatles Song』では40位と好位置に付けています(ちなみに41位は「ゲット・バック」)。

作者/ヴォーカル共にポールによる作品で、1966年の初めごろ恋人のジェーン・アッシャーとスイスにスキー・バカンスを楽しんだ際バスルームで生まれたそうです。
当時ビートルズはまだライブはやっていたものの1965年は45回のみで、プロモーションもわざわざ自分達が世界のテレビ局を回らずビデオに任せることを覚えた(プロモーション・ビデオは、こうして生まれた)ことで、メンバー各自プライベートな時間が増えた時期でした。
レコーディング機材も著しい発展を遂げ、メンバーが揃わなくても各自“録り置き”できるようになったためバンドとしての互いの存在意義が薄れていったのもこの時期といえるでしょう。

「フォー・ノー・ワン」はそうした象徴的な作品の一つで、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは演奏に参加していません(ただし、ジョンは“ポール作品でもお気に入りの一つ”と評している)。
ヴォーカル/ギター/ベース/ピアノをポール、ドラムス/マラカス/タンバリンをリンゴ・スターが担当し、印象的な“フレンチ・ホルン”にはアラン・シヴィルが起用されました。
バロック調を感じさせるのは“クラヴィコード(鍵盤楽器の一種)”で、これもポールが演奏しています。
『リボルバー』は革新的なレコーディングが試みられたアルバムですが、素朴と思えるこの作品でも実はポールのヴォーカルには手が加えられていて、テープ速度を若干遅くして録音されました。


残念ながらこの曲はビートルズのライブで演奏されたことはありませんが、その後ポールがソロで何度か取り上げています。
まず代表的なのは1984年のポール主演映画『ヤァ!ブロード・ストリート』のセルフ・カバーで、ここではストリングスをアレンジしてメロディーの美しさを引き立たせ、オリジナルと甲乙つけ難い完成度といえるでしょう。

 映画『ヤァ!ブロード・ストリート』より


また、近年もライブで披露されています♪



さらに、今回発見した中にはポールがスタジオでギター1本で歌う映像もありました。



~Lyrics~

Your day breaks, your mind aches
夜が明け、君の心は疼き始め
You find that all her words of kindness linger on
あの娘の優しい言葉を、求め煩(わずら)う

冒頭のフレーズ。
“You”は“She”と別れてからも、彼女のことが忘れられません。
“ kindness”ですから、“ラブラブ”な言葉ではなく日常の何気ない“思いやり”を思い返しているのでしょう。
せつないストーリーの予感…?


She wakes up, she makes up
彼女は目を覚まし、化粧をする
She takes her time and doesn't feel she has to hurry
時間をかけ、急き立てられることもなく

同じ別れの当事者なのに、“She”はごく普通の朝を迎えているのが対照的です。
オフコースの歌に“愛のない毎日は自由な毎日”というフレーズがありますが、彼女はまさにその呪縛から解き放たれ生き生きしているように思えます。
別れた後に限らず時間やお金を得ると、女性は貯蓄や自分磨きという未来に備え、男性は酒やギャンブルなど“その時限り”に浪費してしまう…
…そんなイメージは、偏見? 


You want her, you need her
君は彼女を求め、必要としている
And yet you don't believe her when she says her love is dead
“愛は終わった”という彼女の言葉を信じることなく

こういう状況の場合、“ソッポ向かれた方”は何処に気持ちを向ければ良いのでしょう?
彼の場合、彼女の言葉を全く聞き入れることができずちょっと心配…。
でもこの歌のように、傍で優しく見守ってくれる友人がいると心強いですね。



~Epilogue~

実は、この作品のタイトルは当初「Why did it Die(何故それは死んだのか)」でした。

この頃のポールは「フール・オン・ザ・ヒル」にも見られるように、哲学っぽい詩の世界に挑んでいたのでしょう…。
私は“ it=love”と解釈していて、「Why did it Die」だと“謎かけ”し過ぎて解ってもらえないし、あからさまに“love”を使うと安っぽいので「For No one」にしたのかもしれません。
言葉単独としては「For No one(誰のためでもなく)」の方が格段に美しいのですが、主題としては「Why did it Die」の方が作者の想いをより反映していると思います。

すなわち「Why did it Die」を、“サビの最後の一行A love that should have lasted yearsに対する問い”と捉えて二つを添えてみると…

A love that should have lasted years
何年と続いたはずの愛
Why did it Die
何故それは死んだのか

この“幻のタイトル”を頭に置いて作品に触れると、また違った世界が見えてきませんか?
“その答え”については、みなさんがそれぞれ妄想してくださいネ♪ 


早く元気になってね、ポール… 


「フォー・ノー・ワン」


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tags : 1966年 バロック せつない愛 リボルバー 

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