「Taxman」のマスターはテイク12ですが【Aahh Mr. Wilson / Aahh Mr. Heath】の歌詞(コーラス部分)は、直前のテイク11で【Anybody got a bit of money?(誰か少しカネ持ってない?)】だったのが改められたものであり、これにエンディングのギター・ソロが追加され完成に至っていることを考えると、このちょっとした歌詞の変更が重要な意味を持っていると思われます。 また、本曲はビートルズのコンサートで演奏されることはなかったものの、1991年にジョージが日本だけでエリック・クラプトンとのジョイント・コンサートツアーを行った際に披露されており、ここではこの部分のコーラスに【Mr.Bush(当時のアメリカ大統領)】の名を紛れ込ませて歌っていました。
~Lyrics~
Let me tell you how it will be これからの仕組みについて、ご説明いたしましょう There's one for you, nineteen for me あなたが1なら、私は19
「エリナー・リグビー」は1966年8月5日にイギリスでリリースされたビートルズの13枚目のオリジナル・シングル(「Yellow Submarine」と両A面)で、同日発売の7thアルバム『リボルバー(Revolver)』に収録されました。 シングルとしてイギリスではNMEで4週/MMで3週No.1に輝き、アメリカではB面扱いとなったもののBillboard Hot 100で11位を記録、2004年にはローリング・ストーン誌【The 500 Greatest Songs of All Time 137位】にもランクされています。
作者はポールでお得意の“物語風”を展開させていますが、歌詞のアイデアが煮詰まって自己完結できず他のメンバーらにアイデアを出してもらって完成させたようです(詳細別項)。 リード・ヴォーカルはポールで、本曲の歌唱により1966年のグラミーで【Best Contemporary Pop Vocal Performance, Male】を受賞しました。 一方、コーラスにジョン・レノンとジョージ・ハリスンが参加した以外、演奏についてビートルズは一切関与しておらず、このためリンゴ・スターは全く出番がありませんでした。
ビートルズ時代を含め「Eleanor Rigby」は長年封印されていた作品でしたが1984年、ポールは自作映画『ヤァ!ブロード・ストリート(GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET)』で本曲を初めて再演、その際「エリナーの夢(Eleanor's Dream)」というインストゥルメンタル曲を新たに創作しメドレーとしています。 また、ライブとして最初に披露されたのは1989年9月からのワールド・ツアーで、ビートルズ時代には不可能とされたストリングスの音をキーボードで再現し、ファンを歓喜させてくれました。
カバーはジョーン・バエズ、ヴァニラ・ファッジ、アレサ・フランクリンなどが有名ですが、私は何といってもレイ・チャールズ! 彼は1968年に「Eleanor Rigby」をカバーしBillboard Hot 100で35位とヒットさせ、1990年にポールが“グラミー特別功労賞生涯業績賞”を受賞したステージで本曲をトリビュート演奏したことで、とりわけインパクトを残しました。
~Lyrics~
Ah look at all the lonely people すべての孤独な人々について考える…
イントロからの印象的なギターはビートルズ屈指のギター・フレーズであり、ここではジョージに加えポールが参戦して厚いサウンドを生み出していて、ビートルズとしては唯一アメリカの雑誌『Guitar World』“100 Greatest Guitar Solos”の69位(対象はジョージ/2008年)にランクされました。 (※メンバー以外による演奏では、「While My Guitar Gently Weeps」のエリック・クラプトンも42位に入っている)
爽快で分かり易い曲に対し歌詞は意味深で全体を通して一つのストーリーを描くのは無理があり、解釈も意見が分かれるものがあります(詳細後述)。 『リボルバー』の頃になるとポールがクラシック、ジョージがインド音楽、ジョンがドラッグの影響が顕著になりライブ向きではない作品が占める中、「And Your Bird Can Sing」は数少ないライブ向きのロック・ナンバーでしたが、結局この曲がライブで歌われることはありませんでした。
一般的に「And Your Bird Can Sing」といえば“ギターの名曲”という印象が強いと思いますが、1996年のアウトテイク集『The Beatles' Anthology 2』では、また別の魅力を聴かせてくれています。 本作品のマスターは、1966年4月26日に上記の編成でレコーディングされたtake10。 これに対し“Anthology ver.”は4月20日のtake2で、全編を通して“ジョン&ポールのツイン・ヴォーカル(の多重録音)”で歌われているのが特徴です。
And Your Bird Can Sing (Anthology Version) / THE BEATLES CARTOON Ep35a
~Lyrics~
You tell me that you've got everything you want 欲しいものは全部手に入れたと、君は言う And your bird can sing それに、愛しい小鳥が歌ってくれるって…
この歌はミック·ジャガーと、当時の恋人マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)について言及しているという説があります。 すなわち【Youはミック】・【birdはマリアンヌ(birdはスラングで娘・恋人を指す)】であり、当時ジョンはミックに美人の恋人マリアンヌのことを散々自慢されたツッコミをネタにした…というハナシ。 マリアンヌは1964年に「As Tears Go By(涙あふれて)」(ミック&キース作であり、翌年ローリング・ストーンズも歌っている)など歌手としてヒットも放っているので【bird can sing】に該当し、“清楚なロリータ”として人気で【green(うぶ)】だった…というワケ。
You say you've seen Seven Wonders 七不思議をその目に入れたと、君は言う And your bird is green それに、小鳥は緑色だって…
一方で、これはポールがネタという説もあります。 ビートルズは1964年に全米ツアーを行いボブ・ディランに会っていますが、その際マリファナを勧められ彼らは初めて薬物の世界を“トリップ”しました。 この時ボブは何か“ありがたい話”を教えてくれたそうで、これに感銘を覚えたポールは忘れないようにメモを取ったものの、翌日その紙を見ると“There are seven levels(7つのレベルがある)”としか書いておらず、全く役に立たなかった(幻覚中に書いたため)…というエピソードから【Seven Wonders(七不思議)】が用いられた…というハナシ。
ポール・マッカートニーの『OUT THERE JAPAN TOUR 2014』の全公演が、中止となってしまいました。 15日夕方に来日、翌16日にリハーサルが入っていたものの体調不良を訴え欠席、“ウイルス性炎症”と診断されたためです。 ウイルス性炎症とはウイルス感染に起因する病の総称で、一部報道によるとウイルス性腸炎のような症状が見られ腹部などに違和感があったといわれます。 主催者によると病状は重篤ではなく“3時間のライブができるだけの声が出ない状態”だそうで、そういう意味では一安心といったところでしょうか…。
この頃のポールは「フール・オン・ザ・ヒル」にも見られるように、哲学っぽい詩の世界に挑んでいたのでしょう…。 私は“ it=love”と解釈していて、「Why did it Die」だと“謎かけ”し過ぎて解ってもらえないし、あからさまに“love”を使うと安っぽいので「For No one」にしたのかもしれません。 言葉単独としては「For No one(誰のためでもなく)」の方が格段に美しいのですが、主題としては「Why did it Die」の方が作者の想いをより反映していると思います。
すなわち「Why did it Die」を、“サビの最後の一行A love that should have lasted yearsに対する問い”と捉えて二つを添えてみると…
A love that should have lasted years 何年と続いたはずの愛 Why did it Die 何故それは死んだのか