ジョン・オバニオンは1981年にデビューしたアメリカの歌手で、同年「僕のラブソング(Love You Like I Never Loved Before)」が全米24位を記録しています。 翌1982年3月、彼は『第11回東京音楽祭』に出場し「きみだけのバラード(I Don't Want To Loose Your Love)」で見事グランプリを獲得、その存在が日本で知られるきっかけとなりました。 (ちなみにこの時の金賞には高橋真梨子の「for you…」、銀賞にはアンジー・ゴールド(「ダンシング・ヒーロー」の作者)の「Get It Over With」が入賞)
東京音楽祭には「きみだけのバラード」の作曲者ジョーイ・カーボーン(Joey Carbone)も同行・来日しており、日本での仕事を増やしたいという彼の意向が日本側に伝えられ、その結果生まれた作品こそ翌1983年12月公開の映画『里見八犬伝』の主題歌でした。 映画のサウンドトラックからジョン・オバニオンが歌唱する「八剣士のテーマ (White Light)」がオープニングに、「里見八犬伝(I Don't Want This Night To End)」はエンディングに用いられ、1983年10月に日本国内で発売されたシングル「里見八犬伝/八剣士のテーマ」は17万枚を売り上げ1984年のオリコン・シングル年間77位を記録するヒットとなっています。
Tina Turner - What's Love Got To Do With It (1984年)
~「愛の魔力」?~
「愛の魔力」… 魅惑的な邦題ですが、そのイメージだけで歌を聴いていると実際のストーリーとは“別の世界”を彷徨うことになるでしょう。 一方、原題「What's Love Got To Do With It」を訳すと“愛とそれに、どんな関係があるの?”であり、抽象的で日本の歌のタイトルの概念からするとこのようなフィーリングを理解するのは骨が折れるものです。 もし日本でこのようなタイトルを探すとすればアン・ルイスの「女はそれを我慢できない」(作詞;加瀬邦彦)が浮かびますが、歌詞を読んでも“それ”について秘密めいた世界観が味わえます。
その最初のアルバムとなったのが1984年の『プライヴェート・ダンサー(Private Dancer)』であり、「愛の魔力」はその1st(「レッツ・ステイ・トゥゲザー」を含めると2nd)シングルで、Billboard Hot 100の3週連続No.1(年間2位)を獲得した、アイク&ティナ・ターナー時代を含め自身最大のヒットとなりました。 この年の『第27回グラミー賞』は圧巻で、「What's Love Got To Do With It」は“最優秀レコード賞”・“最優秀楽曲賞”・“最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞”の三冠に輝き、当時すでに45歳を迎えていたティナはポピュラー音楽史に残る驚嘆すべきカムバックとしてと称えられています。 また「愛の魔力」は、『ローリング・ストーン誌』“The 500 Greatest Songs of All Timeでも316位”に評価される作品です。
一方でティナの“ライオン・ヘアー?”と真っ赤な口紅、そして45歳とは思えぬ見事な脚線美が印象的なPVは『MTV Video Music Awards』で“最優秀女性ビデオ賞”に輝きました。 ちなみにPVは“モノクロ映像の別バージョン”もあり、こちらは最後のLyrics動画でお楽しみになれます。 個人的には、当時の最新曲をフィーチャーし“MTV Cops”として大ヒットした『Miami Vice』の映像も思い入れがあるので、ご紹介しておきます。
「What's Love Got To Do With It」の作者はテリー・ブリテンとグラハム・ライル、テリーは本作品のプロデューサーでもあります。 元々ティナのために書き下ろされた作品ではなく、まずクリフ·リチャードに断られ(後にカバー)、Phyllis Hymanという人が乗り気だったもののアリスタの社長クライヴ・デイヴィスが許可せず、ドナ·サマーは気に入るもうやむや…というような“いわく付き”でした。 結局テリーがプロデュースを担当していたイギリスのグループBucks Fizzによって初のレコーディングがなされますが、アルバムを発表する前にティナver.がリリースされたためお蔵入りとなったようです。 ティナ本人も初めて「What's Love Got To Do With It」のデモ・テープを聴いた時“気に入らなかった”そうで、それをテリーに“アーティスト次第で歌は変わるものだ”と説得され、試した所“気が付いたら私の歌になっていた”という逸話が残されています。
~Lyrics~
That the touch of your hand その手の感触が Makes my pulse react 私の鼓動を高ぶらせることに
「What's Love Got to Do With It」はティナ・ターナーのために書かれた作品ではありませんが、まるで彼女自身の半生を仄めかしているような内容になっています。 このようにティナの人生とキャリアを象徴するフレーズであることから、1993年には本作品をそのままタイトルにした自叙伝的映画『What's Love Got to Do With It(邦題は『TINA ティナ』)』が制作され、ティナ役を演じた主演のアンジェラ・バセットはアフリカ系アメリカ人女優として初めてゴールデン・グローブ主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞しました。 また、この映画のエンディング曲として、アイクとの夫婦関係を深く言及した「アイ・ドント・ウォナ・ファイト」(過去ログ)もティナによって新たにレコーディングされています。