85年2月に上記2枚のシングルを収録した2ndアルバム『シャウト(Songs from the Big Chair)』、3月に同アルバムからの新たなシングル「Everybody Wants to Rule the World」が発売されるとアメリカでも一気にTFFの人気に火が点き、同曲は全米No.1に登り詰めます。 この勢いに続いてアメリカでリリースされたのが「Shout」で、8/3付からBillboard Hot 100で3週連続No.1(年間21位)を記録、見事2曲連続No.1を達成しました。
アルバム『シャウト』はトータルで8カ月の期間をかけて制作されていますが、「Everybody Wants to Rule the World」は僅か1週間で完成したのに対し、「Shout」と「Head over Heels」は2曲だけで4カ月費やされました。 作者の一人であり「Shout」のリード・ヴォーカルを執ったローランド・オーザバル(Roland Orzabal)によると、“小さなシンセサイザーとドラム・マシンで創ったんだけど、当初はマントラ(仏の真実の言葉)みたいな繰り返しのコーラスだけだった”といいます。 プロデューサーのクリス・ヒューズに聴かせた所、“シンプルだし、5分で録音できるね”…と言われたものの、数週間経ってもまだそれは途半ばだったそうです。 ローランドが歌詞を思いつかず悩んでいるのを見てイアン・スタンリー(key)が幾つかのアイデアと方向性を出してくれ、それが契機となってようやく前へ進んだ…という難産でした。
~Lyrics~
Shout, shout 大きな声で叫んでごらん Let it all out 胸の内にある感情を、全て吐き出すのさ
【Tears For Fears】というユニット名は、ジョン・レノンが1970年ごろ治療を受けたことでも知られるアメリカの心理学者アーサー・ヤノフ(Arthur Janov)の著書『Prisoners of Pain』(1980)に由来します。 彼の提唱する【原初療法(primal therapy)】は“心の奥深くに潜む苦痛の記憶を幼少期まで遡り、そのすべてを吐き出すという治療法”です。
「アンダー・プレッシャー」はイギリスのロック・バンドのクイーンと、同シンガー・ソングライターのデヴィッド・ボウイにより1981年10月26日にリリースされたコラボレーション・シングルで、全英No.1/アメリカBillboard Hot 100で29位を記録、クイーンにとって1975年の「Bohemian Rhapsody」以来2曲目/デヴィッドは1980年の「Ashes to Ashes」以来3曲目の全英No.1でした。 アルバムはクイーンが1981年11月の『GREATEST HITS』(英国盤には未収録)と1982年の『Hot Space』、デヴィッドは1995年にリマスターした『Let's Dance』のボーナストラックに収録されています。
「Under Pressure」でもう一つ特筆すべきといえばジョン・ディーコンによる“ベース・リフ”で、2011年のMusicradar.comの一般投票による<The 25 Best Basslines of All Timeで4位>にランクされました。 一度聴いたら頭にこびりつくこのベース・ラインについて、ジョン自身は“デヴィッド・ボウイの創造”と言い、そのデヴィッドは“僕が参加する前に書かれていた”と回顧しています。
These are the days - it never rains but it pours These are the days - どしゃ降りの日々 People on streets - people on streets People on streets - 路上の人々
【it never rains but it pours】は“降れば必ずどしゃ降り”と訳され、“悪い事は続く”という広い意味合いのことわざとしても解されます。 【people on streets】は歌詞中に何度も使われており、日本語版wikiには“この曲の最初のタイトルは「People on Streets」であった”とありました(ただし、その根拠は付加されていない)。
一方、英語版wikiによると「Under Pressure」は元々ドラマーの“ロジャー・テイラーが書き始めた「Feel Like」が原曲”とされています。 デヴィッドとのセッションが始まった時点で「Feel Like」は未完成で、当初フレディ・マーキュリーが中心となってメンバー全員で創作が進められ、その後デヴィッドも歌詞面で重要な貢献があったようです。 ちなみにロジャーは1998年のソロ・アルバム『Electric Fire』で「People On Streets」という曲を発表しており、なかなか面白い作風となっています。
Under pressure that burns a building down Under pressure! 建物は焼き尽くされ Splits a family in two 家族は二つに裂かれ
【under pressure】は、“物理的または精神的に加圧・強制された状態”のことです。 【people on streets】といい、とても重苦しい言葉が並びますが、このラインからすると本作品は内戦か戦争を背景としているのでしょうか… 何れにしても、風や川がそうであるように、力の作用は“上から下へ”働きます。