映画の音楽は主役ジャック・スケリントンの歌声も演じたダニー・エルフマンが担当し、「This Is Halloween」を含めた作曲・作詞も彼が担いました。 本曲は映画の冒頭で物語の舞台となるハロウィン・タウンについてのイントロダクションの役割を果たしており、ハロウィン・タウンの住人(声優)によって歌唱されています。 こうしたオバケ・妖怪の世界の概念は私たち人間社会とはギャップがあり、日本でもそうしたダーク・ヒーローとして愛され続けたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のOPテーマ曲でも、“お化けにゃ学校も試験もなんにもなーい!”と紹介されていました。
~Lyrics~
This is Halloween, everybody make a scene 今夜はハロウィン、みんなで騒げ Trick or treat till the neighbors gonna die of fright “トリック・オア・トリート!”お隣さんを震え上がらせるまで
Skelleton Jack might catch you in the back スケルトン・ジャックに後ろから捕まると And scream like a banshee キミはバンシーみたいな悲鳴を上げ
物語の主人公ジャックは元々カボチャ頭の案山子(かかし)ですが、冒頭の「This Is Halloween」のシーンの中で全身を炎で焼いてしまい[skeleton(骸骨)]となってしまいました。 この非常にスマートなキャラクターのデザインについて、自らもディズニーのアニメーター出身であるヘンリー・セリック監督は“長い脚で華麗に動く蜘蛛が着想源”と語っています。
「This Is Halloween」には劇中のキャラクターが多く登場しますが[banshee]はこれに該当せず、アイルランドおよびスコットランドに伝わる家人の死を予告するという女の妖精で、彼女の泣き声が聞こえた家では近いうちに死者が出ると言われているそうです。
[CHILD CORPSE TRIO] Tender lumplings everywhere どこもかしこも、かよわいウスノロばかり Life's no fun without a good scare ステキな恐怖がなけりゃ、人生楽しくもない
この提灯の由来については諸説ありますが、アイルランドの古い伝承によると[Jack the Smith]という飲んだくれで嘘つきな男にまつわる話が基になっているようです。 そのジャックがこの世の生を終えた時、生前の悪行から天国に行くことは叶わなかったものの、サタンを騙すことに成功して地獄行きも免れ、この時サタンから永遠に消えない地獄の炎を授かり、くり抜いたルタバガ(カブに似たアブラナ科の根菜)《写真・右》の中に灯してこの世の墓場を彷徨った…そして、そのランタンの灯火はundead(幽霊やゾンビなど)やvampire(吸血鬼)を遠ざけると一部の人々の間で信じられるようになってゆきました。 やがてこの伝承がアイルランド移民によってアメリカに伝えられ、ルタバガがカボチャに変わって広まった…とのことです。
Wouldn't you like to see something strange? 見知らぬものを見てみたいと思わない?
物語は主人公ジャック・スケリントンがハロウィンにマンネリを覚え、初めて目にしたクリスマスの華やかさに心を奪われることに始まります。 そこでジャックはハロウィン・タウンでもクリスマスを催そうとしたり、自分がサンタクロースとなってクリスマス・タウンの子どもたちにプレゼントを配ることを思いつくのですが、あくまで“ハロウィン的思考”でしかクリスマスを捉えられない彼やハロウィン・タウンの住人らのギャップが滑稽であり、一方でそれがタイトルにもなっている【The Nightmare(悪夢のような出来事) Before Christmas】を引き起こすことにもなるのですが…。
This is Halloween, this is Halloween 今夜はハロウィン、楽しいハロウィン Pumpkins scream in the dead of night カボチャは夜中に悲鳴を上げる
アメリカのシンガー・ソングライターであるトム・ペティは1976年からトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ(Tom Petty and the Heartbreakers)として活動を続けてきましたが、1989年には自身初のソロ・アルバム『フル・ムーン・フィーヴァー(Full Moon Fever)』を発表しました。 本アルバムのプロデュース及び共作者には『Cloud Nine』でジョージ・ハリスンを復活に導いたイギリスのロック・バンド【ELO】 (Electric Light Orchestra)のジェフ・リンを迎えて制作されており、『Full Moon Fever』は“聴き所で満たされたアルバム”と評されBillboard 200の3位と、自身過去最大級のヒットを記録しています。
「フリー・フォーリン」はトム&ジェフが2日で完成させたとされる曲で、ギターにはハートブレイカーズのマイク・キャンベルが参加しています。 1989年9月に『MTV Video Music Awards』 でハートブレイカーズ及びGuns N' Rosesのアクセル・ローズとイジー・ストラドリンと共に「Free Fallin'」をパフォーマンスしており、その後10月にアルバムからの3rdシングルとしてリリースされBillboard Hot 100で7位(1990年の年間64位)を記録、これは彼の生涯で最も成功したシングルです。
スティーヴィー・ニックスやスパンダー・バレエのトニー・ハドリー、P!nk、Keshaほか性別や世代、ジャンルを問わず多くの歌手にカバーされていますが最も有名なのは2007年にライヴ・アルバムにも収録されたジョン・メイヤーでしょう。 翌2008年『第42回スーパーボウル』ではトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとしてハーフタイムショーで「Free Fallin'」をパフォーマンスしました。 本曲の普遍的価値については、ローリング・ストーン誌も“500 Greatest Songs of All Time 179位”と評価しています。
トム・ペティについて、日本ではピンとこないかもしれませんが本作発表以降も長年アメリカで高い人気を維持し続けた希少なロック歌手であり、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ名義の最新アルバム『Hypnotic Eye』(2014年)も Billboard 200のNo.1に輝くなどセールスも好調で、今年はハートブレイカーズ40周年を記念した全米ツアーを行いました。 その最終公演であり、結果として彼自身生涯最期のコンサートとなってしまった2017年9月25日のハリウッド・ボウルでは「American Girl」を歌う前に“俺たちにはもうほとんど時間は残されていないけど、ここでこの曲をやる時間は残されている”という意味深な発言をしていますが、「Free Fallin'」の生涯最期のパフォーマンスがファンによって投稿されています。
~Lyrics~
She's a good girl, crazy 'bout Elvis あいつはいい娘…エルヴィスにお熱を上げ Loves horses and her boyfriend too 馬も、ボーイフレンドも愛してる
エルヴィス・プレスリーは、トムに音楽への興味を芽生えさせた人。 1961年の夏、当時10歳だったトム少年は特にエルヴィスのファンだったわけではありませんでしたが、彼の叔父がエルヴィスの映画のスタッフを務めており、近くで撮影(翌年公開の『夢の渚 Follow That Dream』)があるから見に来ないかと誘われたのがきっかけでした。
All the vampires walkin' through the valley ヴァンパイアたちは皆、ザ・バレー(valley)を抜けてゆく Move west down Ventura Blvd. ベンチュラ大通りを西へと下り
トム・ペティはアメリカ東南部フロリダ州の出身ですが、バンド活動のため西海岸のカリフォルニア州ロサンゼルスに移住しており、歌詞には多くの地名が登場します。 【the valley】はロサンゼルス郡の一区[San Fernando Valley(サンフェルナンド・バレー)]を指しワーナー・ブラザーズ・スタジオやNBCスタジオなどメディア関係の会社が集中し、スターや業界人も多く住む華やかな地区です。
車のラジオからローリング・ストーンズの「Bitch」(下ネタ系の歌)が流れ、口ずさもうとしますが違和感からすぐチャンネルを変えてしまいます。 続くセンチメンタルなメリリー・ラッシュ「Angel of the Morning」、静かなグラム・パーソンズ「She」でもなく… 次のチャンネルから流れてきたのがこのフレーズ…
ただ、「Free Fallin'」の歌詞を見ていると何か不自然さがあって、スッキリしません。 その原因は3番の歌詞で、試しにこの部分を抜いて1・2・4番だけで構成するとストーリーがスッキリするのです。 1・2・4番では[a good girl]と[a bad boy]の物語で、3番だけ[the good girls]と[the bad boys]と複数形で表され全然別の話になっていることに気づきます。 これは個人的見解ですが、“「Free Fallin'」はトム・ペティの若かりし頃の淡い恋の歌で、照れ隠しに3番を入れたのでは?”…と。
そう考えてみると、あなた自身は全然解き放たれていなかったのでは…トム? (そういえばPVで[a good girl]が見つめる写真の男性って、たぶん若い頃のトム・ペティ?)
「ビューティー・アンド・ザ・ビースト~美女と野獣」は、1991年のディズニー・アニメ映画『美女と野獣(Beauty and the Beast)』の表題曲です。 タイトルからして“Beauty”と“Beast”がデュエットしそうなイメージですが、この映画でヒロイン・ベルの声を演じたアメリカの女優ペイジ・オハラの歌唱は“あまりにブロードウェイ的”としてディズニーに却下されてしまいました。
これにより実際の劇中で歌っているのはBeastの召使い“ポット夫人”で、それを演じているのはトニー賞・ミュージカル主演女優賞の受賞歴もあるイギリスの女優アンジェラ・ランズベリー。 彼女はテレビ・ドラマ『ジェシカおばさんの事件簿』でお馴染みの人ですが(私は個人的に『ナイル殺人事件』のミセス・サロメ・オッターボーン役が強烈な印象)、1991年時点で66歳となる彼女がこの歌を歌うことについて自身でも戸惑いがあったといわれます。 ただし、“息子の愛の成就をやさしく見守る母心”のような彼女の「Beauty and the Beast」はレコーディングに立ち会ったスタッフの涙を誘い、2004年のAFI『アメリカ映画主題歌ベスト100』で62位にランクインするなど高く評価されている歌唱です。
一方、ディズニーは映画の宣伝用に「Beauty and the Beast」をシングルとしてリリースすることを決め、カナダ人歌手セリーヌ・ディオンを雇いレコーディングを試みるものの彼女の知名度不足を心許なく思い(『Unison』がヒットする前?)、「愛のセレブレーション」(過去ログ)などデュエットで多くの実績のあるR&B歌手ピーボ・ブライソンと組ませることにしました。 このバージョンは映画のエンド・クレジットで使用されBillboard Hot 100で9位(1992年の年間64位)とヒットし、1992年のセリーヌのアルバム『Celine Dion』にも収録されています。
1992年3月、第64回アカデミー授賞式では劇中で歌ったアンジェラ・ランズベリーとシングルver.セリーヌ&ピーボの豪華メドレーが実現、「Beauty and the Beast」は“アカデミー歌曲賞”を受賞しました。 また、翌年2月の第35回グラミーではセリーヌ&ピーボver.が“最優秀ポップ・パフォーマンス賞デュオ/グループ”を受賞しています。
2017年、ディズニーの実写版『美女と野獣』のテーマ曲を歌っているのはアリアナ・グランデ&ジョン・レジェンド。 アリアナ(Ariana Grande)は2013年のデビューからBillboard 200で2作連続No.1を達成した23歳のシンガー・ソングライターで、親日家としても知られます。 ジョン(John Legend)は今年の第89回アカデミー賞で最多の6部門を受賞したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』にも出演している人気のR&B歌手/ピアニストです。 ところで、この劇中では誰が「Beauty and the Beast」を歌っているのだろう…。
~Lyrics~
Tale as old as time 時の歩みほどに悠久の物語 True as it can be それは、この上ない真実
Bittersweet and strange ほろ苦さと面妖が出逢い Finding you can change 自らの過ちを学び Learning you were wrong 自らも、変わり得ることに気づく
猛々しく粗暴な野獣はベルの優しさに触れることで心の安らぎを覚え、彼女によって拓かれた心には思いやりと人を愛する感情を芽生えさせてゆきます。 その変わりゆく心と、それに出逢えた悦びこそが作品のテーマ曲「Beauty and the Beast」であり、二人はこの曲と共にダンスを踊り、互いの心に芽生えたぬくもりを確かめ合うのです。
「チェンジ・ザ・ワールド」は、1996年7月に公開されたジョン・トラボルタ主演のファンタジー恋愛映画『フェノミナン(Phenomenon)』の挿入曲としてエリック・クラプトンが歌唱した作品です。 シングルとしてBillboard Hot 100の5位(年間19位)を記録し日本でもラジオ局J-WAVE(TOKIO HOT 100)で年間No.1に輝くなど、世界各国で大ヒットしました。 その後も日本ではカバー&CMなどで広く・長く愛され続け、2015年3月からはトミー・リー・ジョーンズ&タモリの不思議な空気感と共に“サントリー・コーヒー・プレミアムボス”のCM曲としてお馴染みでしょう♪
“ギター・レジェンド”のエリックが“当代随一の音楽プロデューサー”ベイビーフェイス (Babyface)とコンビを組んだことでも話題を呼んだ作品であり、ベイビーフェイスはPVにもギター・プレイヤーとして出演しました。 翌年のグラミーで「Change The World」は“最優秀レコード賞/最優秀楽曲賞/最優秀ポップ男性ヴォーカル賞”の三冠を獲得しており、その授賞式でもこの2人のギターの弾き語りによってパフォーマンスされています。 以来エリックのアコースティックの定番としてライブには欠かせないナンバーとなりましたが、一方のベイビーフェイスにとっても長年のレパートリーとなっているようです。
あまりにもこのイメージが強いせいか、彼またはベイビーフェイスの作曲と思われがちですが作者はこの何れでもなくトミー・シムズ(ブルース スプリングスティーンの「Streets of Philadelphia」をプロデュース)、ゴードン・ケネディ、ウェイン・カークパトリックによって1990年代前半に書かれたものです。 エリックがこの曲を聴いたとき車を運転しながらノンストップで200回聴き続けるほど気に入ったそうで、ヒットを確信したといわれます。
さらに、初めて「Change The World」を正式に発表したのはアメリカの女性カントリー歌手ワイノナ・ジャッド(Wynonna Judd)で、エリックver.の5カ月前の1996年2月にリリースしたアルバム『Revelations』に於いてでした。 エリックver.がグラミーで最高の評価を得たにもかかわらず、アカデミー歌曲賞の候補に挙がらなかったのはこのためと思われます。
…なんて、大業を目標に掲げた偉人が好んで言いそうなセリフ? 例えば2008年のアメリカ大統領選挙でバラク・オバマ氏が連呼した “Change, Yes, we can.(変えよう、我々ならできる)”が浮かびます。
あるいは、アップル・コンピュータ創業者のスティーブ・ジョブズ氏の有名な殺し文句! “Do you want to sell sugared water for the rest of your life, or do you want to come with me and change the world? このまま一生砂糖水を売り続けたいか、それとも私と一緒に世界を変えたいか?” [ペプシコーラの事業担当社長ジョン・スカリー氏(※)をアップルに引き抜いた際の言葉(※マイケル・ジャクソンをCMに起用するなど、ペプシをコーラ業界トップにした人)]