I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「名前のない馬」アメリカ

2023.11.17

category : America

America - A Horse With No Name (1971年)

シンプルなアコースティックに難解な歌詞。だけどあなたにも、こんな“旅”に覚えがあるのでは?

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tags : 1971年 フォーク・ロック アコースティック 心の旅 難解 環境  

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「偉大なる詐欺師」キング・クリムゾン

2023.10.04

category : King Crimson

King Crimson - The Great Deceiver (1974年)

動と静が起伏する即興演奏、それに交差する謎多き歌詞…秋の夜長は知的好奇心を楽しむ好機です ♪

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tags : 1974年 プログレ 難解  宗教  

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「ユニオン・オブ・ザ・スネイク」デュラン・デュラン

2022.07.28

category : Duran Duran

Duran Duran - Union Of The Snake (1983年)

刺激的なサウンド、謎めいた歌詞、映画のように壮大なMV…デュラン2の黄金期を象徴する作品 ♪

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tags : 1983年 ニューロマンティック 心理・哲学 難解 名作MV 新型コロナ  

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「黒くぬれ!」ローリング・ストーンズ

2018.08.06

category : Rolling Stones

The Rolling Stones - Paint It Black1 The Rolling Stones - Paint It Black2


The Rolling Stones - Paint It Black (1966年)



~概要~

「黒くぬれ!」はローリング・ストーンズがイギリスで1966年5月13日にリリースしたシングルで、通算6曲目の全英No.1を達成した作品です。
アメリカは同年5月6日の発売で、Billboard Hot 100で通算3曲目のNo.1(2週/年間34位)を記録、翌6月発売のアルバム『アフターマス(Aftermath)』に収録されました(UK盤には未収録)。
ローリング・ストーン誌“The 500 Greatest Songs of All Time 174位”に数えられる名曲であり、同誌の読者による“The Rolling Stones 10 Greatest Songs 3位”にも選ばれた、半世紀以上の歴史を誇るストーンズの代表曲の一つです。

1966年2月、ストーンズのオーストラリア・ツアー中のミック・ジャガー&キース・リチャーズの創作が元となった作品で、ミックはトルコ人歌手 Erkin Koray 1962年の作品「Bir Eylül Akşamı」との関連を1995年のインタビューで言及しています。
シングルとしてリリースされた当初のタイトルは「Paint It, Black」でしたがこれはオリジナルの表記ではなく、コンマ(,)が入ったのは事務側のミスであり、そのままだと“黒人にペンキを塗れと命令”しているような差別的誤解を招くため、その後コンマの入らない「Paint It Black」に改められました。


1966年3月、この曲がスタジオに持ち込まれた時まだ“ラフ・スケッチ”の状態で、演奏パートはメンバーによるセッションの中で構築されました。
当初アニマルズが1964年にヒットさせた「朝日のあたる家(The House of the Rising Sun)」のようなアレンジが模索されましたが満足するものができず、その後ビル・ワイマンがストーンズの最初のマネージャー(元オルガン奏者だった)エリック・イーストンのモノマネでオルガンを弾いてベースのリフを発見、チャーリー・ワッツも【double-time(倍テン)】のドラム・パターンでテンポ・アップさせるなど、それぞれの創意が加えられゆきます。

そして本曲に決定的なサウンドを与えたのはギタリストのブライアン・ジョーンズによるインドの弦楽器【シタール】の導入で、キース・リチャーズは“シタールを使ったことで全く違った感じの曲になった”と証言しています。
こうした経緯から、「Paint It Black」の作者が【Jagger/Richards】とされていることについて、ビル・ワイマンは自伝で“あの曲は【Nanker Phelge】とクレジットされるべきだ”と言及しました。


その独特な作風のせいか、1997年のオカルト・スリラー映画『ディアボロス/悪魔の扉(The Devil's Advocate)』(キアヌ・リーヴス、アル・パチーノ、シャーリーズ・セロンらが出演)ほか、意味深で陰のある映画やドラマに多く起用されています。
また、「Paint It Black」自体は戦争を特定した作品ではありませんが、1988年の『フルメタル・ジャケット』など“ベトナム戦争”を題材とする映画やドキュメンタリーにも起用がみられます。
その同年には忌野清志郎率いるRCサクセションがアルバム『COVERS』で「黒くぬれ!」を日本語カバーしており、これがなかなかカッコイイです♪


 
 



~Lyrics~

「Paint It Black」の歌詞は“意味深”だらけで難解なので、オリジナルの並びではなくこちらが設定したテーマ毎にまとめてみました。

I see a red door and I want it painted black
赤い扉なんて、黒く塗ってしまったらいい
No more will my green sea go turn a deeper blue
これ以上、俺の緑の海が深い青に変わることはない

ここは、“彼の異常性”について…

【赤】というと火や太陽、情熱、あるいは時代背景から共産主義をイメージさせますが、【見たくない赤】であるなら“血”も当てはまります。
この詞で最も難解な一つは【my green sea】で、[sea]とは何か、[green]が[a deeper blue]に変わることは何を意味するのか、残念ながらそれを断定できる根拠は見当たりません。


With flowers and my love both never to come back
花々も、“my love”も、もう二度と戻ることはない
I could not foresee this thing happening to you
俺は、お前の身に起きることを予見できなかった

“彼がこんな風になってしまった原因”について…

【flowers】はいかにも比喩表現ですが、かつては“美しいもの”が“複数”あったことを窺わせます。
【my love】を日本語にしなかったのは、失ったものが“心”か“人”か特定したくなかったからで、“その両方”かもしれません。
更に、もし【my love=you】であるなら、彼は“自責”を背負っていることになり、その心の【black】は相当に深そうです。


I wanna see the sun blotted out from the sky
空から消し去られた太陽…そのさまが見たい
Maybe then I'll fade away and not have to face the facts
やがて俺は消え失せ、現実の直視から解き放たれよう

“彼が、本当に望んでいるもの”について…

それは、“太陽のない世界”。
太陽は光の源であり、光が“色の多様”をもたらし、それらがほとんどない世界こそ【black】です。

【black】で占められた世界のイメージ…
夜、権威、悪、死、防衛、武勇、汚濁、有罪、炭、富裕層 など(wiki)

事実を悉(ことごと)く【black】に塗り潰すことで、
“彼”は心の内に巣食う【black(真実)】と向き合ことから逃れられる…。




~真実を覆い隠せ、Paint It Black!~

“Paint It Black!”

【真実を覆い隠したい時】や【現実逃避したい時】、人はその衝動に駆られます。
そして、今年の『第196回国会』(1月22日-7月22日)は、まさに[隠ぺい]や[改ざん]、[捏造(ねつぞう)]、[虚偽答弁]、[ご飯論法](意図的にかみ合わない答弁)、「コメントする立場にはない」(当事者なのに)、「記憶にない」、[証言拒否]…のオンパレードでした。

しかしこうした【黒塗り対応】を駆使すればするほど、その内に秘めた【Black】を自ら晒してしまうもので、これらで塗り固められた「森友学園」や「加計学園」を巡る問題についての安倍首相の説明に、国民の77%が納得していない(納得は17%)という調査結果(7/23 読売)も自明の理です。


《政府による3つの再発防止策》

こうした中、政府は国会が閉会した7月20日の閣僚会議に於いて、公文書管理の適正を確保するための『3つの再発防止策』をとりまとめました(以下は要約編集)。

管理体制や研修の強化による意識改革
「免職」を含めた懲戒処分/内閣府の独立公文書管理監を局長級に格上げ/各府省に公文書監理官
効率的に管理するための電子的な仕組み
内閣府が主導して文書を一元的に管理/作成・保存・廃棄・移管を一貫して電子的に行う)
決裁文書の管理のあり方見直し
(決裁文書の事後修正は認めず、修正する場合は決裁を取り直す)

政府の再発防止策を拝見した感想を一言で表すなら、“非常に欺瞞的”です。
まず、本策の一番のポイントは【内閣府主導】ですが、「内閣府」は加計学園問題への関与に嫌疑のある組織であり、「内閣府の長」は数々の問題で嫌疑のある安倍首相です。
そのような部署に「公文書や官僚に対するチェック管理の権限を一元的に集約させる」というのですから、本当の目的は「安倍首相の名前を書く不埒者が二度と現れないよう内閣府が監視を強化」することにあると考えられます。

第二に、の「決裁文書の事後修正は認めず」は本来当たり前の話であり、後半は「決裁を取り直せば“改ざん可能”」と受け取れます。
本策のきっかけとなった財務省の決裁文書改ざんは「政治家または上司の指示による組織的な不正」が原因であり、こうした「組織的な不正」に対する再発防止策は全く示さず、むしろわざわざ“お墨付き”を与えている印象が否めません。


《公文書について官僚の常識》

元経産省官僚の古賀茂明氏によると、官僚の常識として
「公文書は非公開が原則」として作成され、
「公開が避けられない公文書は問題のない内容だけを記すか黒塗りで対処」、
「絶対に公開できない情報は個人的なメモ扱いとし、公文書としては存在しないことにする」
「公開する場合もなるべく時間をかけて出す
という基本原則があるそうです。

公文書は公的機関が「行政の意思決定した過程や結果の記録」である一方、「自らが犯したミスや不正の証拠」となり得るものです。
このため公権力を行使する者にとって、それは「いつ破裂(糾弾)するか知れない爆弾」であり、「危険な信管(不都合な証拠)は外しておきたい」心情下にあることは想像に難くありません。
さすがに決済後の改ざんは容易ではないため、“賢者”は「最初から信管は外しておく(記録に残さない)」でしょう。
つまり、森友事件の近畿財務局のように安倍首相や麻生財務相ら10人の国会議員と安倍昭恵・首相夫人ら政治家関与の痕跡を残した公文書こそが彼らの常識では“あり得ない”のであり、問題行為と認識されているはずです。


《“詳細すぎる決裁文書”は非常識?》

そもそも森友問題が発覚したのも、豊中市議の木村真氏が当該地の『国有財産有償貸付合意書』『売買契約書』の写しを請求した際、金額と一部の条件が全て黒塗りにされたものを渡され、過去の国有地売買の随意契約の案件を調べても非公開だったのは森友1件だけだったことから不正を直感し、追及を始めたのがきっかけでした。
そして「なぜ森友が異例の待遇を受けたのか」の核心を指し示してくれたのが、不本意な文書改ざんを強いられ事件発覚後亡くなった財務省近畿財務局職員が作成した安倍昭恵・首相夫人など政治家の名前まで記述した“詳細すぎる決裁文書”です。

通常、政治家の関与は公文書に残さないのが官僚の常識ですが、一般常識からすると間違っているのは官僚の常識の方に思えます。
一般常識に則って考察するなら、公文書は原資を出している国民の財産であり、同じ理由で国民の利益に資するのが公務員の責務です。
公文書の最も重要な目的は“(健全な民主主義の根幹を支える)国民への説明”なのですから、国民が真実を描ける“記録(ドキュメント)”でなければならないはずです。
自らに障りのない事実だけを並べ、政治家や官僚に不都合な事実を省いた“”物語(ストーリー)”を、国民は求めてはいません。



~Epilogue~

『公文書管理法』の理念

この国の『公文書管理法』は「公文書」について“健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源”と位置づけ、“現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする”としています。

公文書管理法の制定に取り組んだ、福田康夫元首相の言葉

“正しい情報を入手することができるのは、民主主義の原点。入手できないと、国民は正しい判断ができない。結果、悪い判断によって悪い政治家が誕生してしまうことがある。
憲法だって、「アメリカ人が作った憲法だ」「日本人が提案していたんだ」などいろんな話がある。もっと立法過程が明らかになっていれば、そんなつまらない議論をしなくても済む
真実を示す資料がなければ、声のでかいのに、だまされちゃう”

この話は、今国会での数々の空しい議論を思い出させます…。
例えば加計学園問題で、柳瀬秘書官(当時)が加計学園側と官邸で面会していたことを記録した愛媛県職員作成文書が出てきた際、柳瀬氏の「記憶の限り会っていない」が何故か通用してしまうことで、その根拠とされた一つが「入邸記録で面会が確認できなかった(つまり面会した証拠はない、と…)」というもの。
菅義偉官房長官が「入邸記録は業務終了後速やかに廃棄される取り扱い」(つまり1日で廃棄)と答弁し、私は本筋よりこっちの方が驚きました(自衛隊日報と同様、本当は廃棄していない。菅氏は虚偽答弁。1日で廃棄したら自分たちが仕事で困る!)。
記録が残っていればそれで終わる話なのに、“あるべき記録が無い”ため水掛け論に終始し、みんな真実は分かっているのに証拠不十分のまま時間切れ…という茶番を、何度見せられたことでしょう。

“健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源”…


公文書は、“支配者”から国民の主権と人権を守ってくれる大切な“楯”です。

監視カメラは直接悪人を捕まえるものではなくても、その行動を録画する機能によって彼らを自重させ、一定の犯罪抑止効果を果たします。
公文書もこれと同じで、公権力の行使を一部始終正しく記録することで彼らも自重し、権力の腐敗を抑止することができるのです。ただし…

I look inside myself and see my heart is black
この胸の内を覗き込むと、心までも黒

公文書はスター・ウォーズの「ジェダイ」と似ていて、行使者の「フォース」次第で「暗黒面(Dark side)」に陥り易いものです。
行使者をダークサイドに陥らせないためには、私たちが常に「光明面(Light side)」の目でその行使を見守り、ライトサイドの心で“ジェダイ(全体の奉仕者/代議士)”を選ぶ以外にありません。


善を行なうには努力を必要とする。
しかしながら、悪を抑制するにはいっそうの努力が必要だ
  レフ・トルストイ



「黒くぬれ!」


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tags : 1966年 偉大な曲 ラーガ  難解  

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「スカボロー・フェア/詠唱」サイモン&ガーファンクル

2018.05.18

category : Simon & Garfunkel

Simon Garfunkel - Scarborough FairCanticle1 Simon Garfunkel - Scarborough FairCanticle2


Simon & Garfunkel - Scarborough Fair/Canticle (1968年)



~概要~

「Scarborough Fair/Canticle」はサイモン&ガーファンクル(以下S&G)1966年の3rdアルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム(Parsley, Sage, Rosemary and Thyme)』に収録された作品です。
当初シングル・カットはありませんでしたが、1967年12月に「サウンド・オブ・サイレンス」と共にダスティン・ホフマン主演の映画『卒業(The Graduate)』のサウンドトラックに起用、翌1968年にシングル・カットがなされBillboard Hot 100で11位(年間89位)を記録しました。


タイトルにあるように「Scarborough Fair」「Canticle」という異なる2つの歌が対位法的(複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ互いに調和させて重ね合わせる技法)に構築された楽曲です。
「Scarborough Fair」のクレジットに【Traditional】とあるように、その着想は元々イングランド・ケルト地方に17世紀頃から伝わるバラッド『The Elfin Knight(エルフィンナイト/妖精の騎士)』に由来するといわれます。
『エルフィンナイト』では超自然現象や意味の通らない内容が描かれており、本作でも“継ぎ目も針仕事もなしにシャツを作れ”や“革の鎌で刈り入れろ”ほか【ナンセンス】なものが散見できます。

伝承歌という性質上、歌詞やその構成、メロディに多くの派生が存在し、S&Gの「スカボローフェア」に見られる歌詞は18世紀末にほぼ成立していたようです。
また、19世紀末頃の楽譜によると当時の「Scarborough Fair」のメロディは“陽気でユーモラス”なものだったそうで、S&G ver.の叙情的な旋律はイングランドのフォーク歌手イワン・マッコール(Ewan MacColl)らによる1960年のバージョンの系譜によるとされます。

イワン・マッコールver.の影響を受けたのがイングランドのフォーク歌手マーティン・カーシー(Martin Carthy)で、アメリカ人であるポール・サイモンがこのイングランドの古い民謡と出合ったのは、デビュー・アルバムが泣かず飛ばずでイギリスへ“逃避行”していた1964年にマーティンが歌うのを聴いたことでした。
その後S&Gがマーティンver.のアレンジの影響を受けた「Scarborough Fair/Canticle」をヒットさせることになりますが、S&Gのみクレジットされたことに長年マーティンは快く思っていなかったようです(2000年に和解)。
一方ポールより先(1962年)にイギリスに渡っていた“フォークの貴公子”ボブ・ディランもイギリスの伝統的バラッドとマーティン・カーシーに多いに感化されており、ボブの1963年の作品「北国の少女(Girl from the North Country)」の音楽的要素と歌詞の一部はマーティンver.「Scarborough Fair」から引用しています。


一方「Canticle」はS&Gによるオリジナルで、1965年にポールがイギリスで発表したソロ・アルバム『ポール・サイモン・ソングブック(The Paul Simon Songbook)』に収録された「The Side of a Hill」の歌詞の一部を引用・改変したものです(別項参照)。
邦題は「詠唱」となっていますが、これはオペラなどの“独唱曲(Aria)”や“単純な音程の繰り返しで祈り捧げる歌(chant)”といった意味の言葉で、【canticle】は“頌歌/しょうか(ode)”です。
頌歌は壮麗で手の込んだ抒情詩(韻律)の形式で、抒情詩(じょじょうし)は“詩人個人の主観的な感情や思想を表現し、自らの内面的な世界を読者に伝える詩”であることから、「Canticle」にはS&Gのそういうメッセージが込められた作品と思われます。
「Scarborough Fair/Canticle」の複雑なコーラスはライブでの再現が困難であるためか殆んど「Scarborough Fair」単体で演奏されているようですが、1968年の『アンディ・ウィリアムス・ショー』ではアンディを加えた3人で「Canticle」を含めた再現を確認できました。


 
 



~Lyrics~

Are you going to Scarborough Fair?
スカボローの定期市をお訪ねですか?
Parsley, sage, rosemary and thyme
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム…

Simon Garfunkel - Scarborough FairCanticle3

【Scarborough】は、イングランド北部ノース・ヨークシャーの北海海岸沿いにある人口5万人ほどの町で、イングランド東海岸の主要な観光地の一つです《写真》。
「Canticle」に描かれるような緑の丘がとても美しく、北海に突き出した岬の断崖の頂にはスカーバラ城跡があります。
一説によるとこの町の名前は、10世紀ごろ当地に入ったヴァイキングの[Thorgils Skarthi]によって開かれた【borough(自治都市)】からだとか…。

近世まで、感染症など病気の原因はミアスマ(μίασμα/瘴気・悪い空気)であると考えられていたため、強い香りを放つハーブ類は予防効果があると信じられ重宝されてきました。
1630年、南フランスのトゥールーズでペストが大流行した際、病死した人々から盗みを働いて荒稼ぎした泥棒たちがいて、彼らは自分たちが“ペストに感染しなかったのはセージ、タイム、ローズマリー、ラベンダーなどを酢に浸して作った薬を塗って感染を防いだ”と証言したとされ、この酢は【4人の泥棒の酢(Four thieves vinegar)】として有名です。


On the side of a hill in the deep forest green
あの丘の斜面、深い森の緑
War bellows blazing in scarlet battalions
唸りを上げる戦争、燃え立つ深紅の大軍

「Canticle」の歌詞で、敢えてここは非連続のセンテンスを並べました、
「Canticle」はポール・サイモンが創った反戦歌「The Side of a Hill」を改変したものですが、「Scarborough Fair」には“そうした要素”はなく、何故ポールがこの二作品を一つに重ねたかは不明です。

ただ、その背景にはベトナム戦争への反戦感情があったであろうことは想像に難くはありません。
戦争とは、政府が国民の命の喪失を省みず強力な破壊兵器を用いて大量の人間を殺すという、極めて異常で非日常的な状態のことです。
当然そこには、ごく普通の平和な日常から戦争へと転換される瞬間があるわけですが、歴史を紐解くとその多くは何の脈絡もなくある日突然発生するのではなく、“戦争とは一見平和な日常が営まれる傍らで幾つか小さな予兆を重ね一歩ずつそこへ近づいてゆくもの”である気がします。
戦争は発生してから騒いでも遅いのであり、だからこそポールは“何気ない平和の中にその兆しを見逃すな”と、敢えてこうした表現を選択したのかもしれません。

 
The Side of a Hill / Simon & Garfunkel - Scarborough Fair (from The Concert in Central Park)



~“犠牲の精神”の分からない人間は、社会をよくすることができないのか?~

最近、国民に衝撃を与えている学生アメリカンフットボールの定期戦で発生した「悪質タックル問題」。
このニュースに接したとき、私は直ぐさまこの春から正式教科となった小学校の道徳の教科書に取り上げられている『星野君の二塁打』という題材への懸念と重なりました。

内容を簡単に説明すると…
“少年野球の試合で監督の送りバントの指示に従わず自己判断で打ちに行ったところタイムリー二塁打となってチームを勝利に導いた星野君が、試合後チームの輪(※原文ママ)を乱したとして監督から次の試合の出場禁止を告げられた…”
という話で、そこから【規則を尊重する態度を身につけさせる】ねらいの題材となっています。

この題材が生徒の個人評価を伴う正式教科となった道徳の教材として不適切なのは、「チーム勝利へ決定的貢献をした星野君」と「監督の指示に従わなかった星野君」という意見の割れる難しい論点を提示しているにも拘らず、政府(教科書)は最初から後者を断罪する監督を【正当】としているため、教師もその結論に沿って授業を展開し生徒を評価しなければならないことです。
組織の上位者の指示に従うことは誰も基本的に異論は無いと思いますが、もしも今回のアメフットのように上位者に「相手つぶせば出してやる」「できませんでしたじゃ すまされないぞ」と理不尽を命じられたら、これに従うことが道徳的に正しいといえるのでしょうか?

組織の上位者といえど人間であり欲に目が眩むこともあれば、判断を誤ることだってあります…

だからこそ彼らが迷走を始めた時、下位者がこれに盲従せず事実に基づいて自らの良心に従い善悪の判断し迷走を制御できる知性を備えていることが、組織のリスク回避のためにとても重要なはずです。
しかし非常時に知性を発揮するためには常日頃から一人ひとりが自分の頭で考え、行動する訓練が重ねられている必要があり、ただ規則や上位者に従ってさえいればよいという精神風土の下では、その知性は育まれません

それが欠如する組織だからこそ起こり得た現象が今回の「悪質タックル」であり、4月の大相撲春巡業で市長が土俵上で倒れた際「救命処置に駆けつけた女性看護師を退けるアナウンス」であり、政府与党と省庁で常態化している汚職の本質と思います。


そして、『星野君の二塁打』を道徳教科書の教材とした背景には隠された“本当のねらい”があると私は考えます。
道徳教材という性質上、通常であれば物語のクライマックスの部分に読者に教材のねらい(本作では「規則の尊重」)に誘導する“ある種の感動”が用意されているはずですが、本教材には読者に「やっぱり規則は守らないといけないな…」と強く思わせる根拠がありません(とても弱い)。
むしろ多くの読者の印象に残るのは、星野君の活躍を評価した子どもに対し監督が熱く反論する場面…

ぎせいの精神の分からない人間は、
社会に出たって、社会をよくすることなんか、とてもできないんだよ


確かに、映画『アルマゲドン』のラスト・シーンのように自分が犠牲になって他者を生かそうとする行為は感動を覚えます…
でも、それは自分以外の他者に強要されるべきものではないし、強要されて行った犠牲は美徳とは全く異質の“別モノ”です。

普通ならここまで目くじらを立てることもないのですが、監督の言葉は現在この国の政権を握っている安倍晋三首相及び彼の支援団体【日本会議】の思想の“コアな部分”であり、現にこうした思想が国民の内心を罪に問う『共謀罪法』や、近い将来日本の世論を形成する子どもたちの価値観を左右する『教育基本法』と道徳の教材に色濃く反映されているのです。
【滅私奉公】の心掛けは奇特で立派ですが、政府が国民にそれを求める時、国民はよほど注意を払うべきであることは、この国を含むあらゆる世界の歴史が証明しています。



~Epilogue~

メディアではあまり報じられていませんが、私には最近特に気になる案件がもう一つあります。
自衛隊の関連団体に、『隊友会』という組織があることをご存知でしょうか?
隊友会は自衛隊退職者など約7万2000人を正会員とするOBの互助会組織ですが、他方で防衛及び防災関連施策等に対する各種協力や調査研究・政策提言などの事業を行っている公益社団法人でもあります。
その隊友会について今月、支部組織『東京都隊友会』が憲法改定を求める署名活動を行い、“その送付先を自衛隊東京地方協力本部”としていたことが報じられました。

一般に公益社団法人が政治活動を行うことは禁じられていませんが、言うまでもなく自衛隊員は【自衛隊法第61条】で“選挙権の行使を除く政治的行為をしてはならない”と定められており、改憲運動という政治的行為のために自衛隊の施設を提供することは問題があり、このことについて都隊友会の担当者も“うかつだった”と認めています。
ただ、調べてみると更に問題なのが、この隊友会は単なる自衛隊退職者による団体ではなく、現役自衛隊員約17万人が「賛助会員」として組織に組み込まれていることです。
【賛助】とは“事業の趣旨に賛成して力ぞえをすること”であり、言葉どおりに解釈すると“自衛隊が改憲運動の趣旨に賛成して力ぞえをするのか?”という疑念が浮かびますが、防衛省は“現役隊員は署名の集約に一切、関わっていない”と説明しています。

しかし、【上意下達】が鉄の掟の自衛隊が元上官からの頼み事を“それは違法です”と断れるのか、人事権を握る安倍首相の宿願でもある改憲の協力を拒むとどうなるか…想像してみてください。

防衛という特殊な事業を主としていることを考えると“隊友会にとって政府は極めて重要な顧客”であり、その顧問や相談役には自衛隊OBの自民党議員が名を連ねます。
2013年の参院選では公益法人である隊友会が自民党・佐藤正久参議院議の選挙活動で現金を配って支援した疑いが浮上し、公選法違反(買収)で逮捕者も出るなど、隊友会は極めて政治的で特定政党寄りの団体であるようにも見えます。


こうした自衛隊OBと現役自衛官で構成される隊友会の政治スタンスを知ってみると、4月に民進党の小西洋之参院議員が防衛省・統合幕僚監部指揮通信システム部に勤務する30代の3等空佐から敵対的態度で罵倒された事件の背景に何があったのか、腑に落ちました。
基本的に戦後の日本の政治システムは、戦前の軍部の強い政治介入によって捻じ曲げられ大戦争を招いた反省から、自衛隊は【文民統制】によって政治への参与が厳しく制限されてきましたが、隊友会という公益社団法人の看板を借りることで実質的に政治的行為を行うことが可能となっているといえるのでしょう。
これは憲法上、護憲義務のある安倍首相が日本会議など任意団体の看板を借りて改憲運動を推し進めているのと同じ手法でもあります(隊友会は日本会議とも連携した運動を展開している)。

隊友会は偕行社(大日本帝国陸軍の元将校・軍属と自衛隊元幹部の親睦組織)らとの連名で提出した「平成29年度政策提言書」の中で改憲の必要性を主張し、1-(4)では国民の国防意識の高揚が極めて重要であるとし、憲法に“国民の国を守る義務の明記”を提言しています。

しかし戦前の太平洋戦争へ突入した原因の一つは、軍事拡大のための予算増大の賛同を得ようと国民の国防意識に火を点け煽った軍部が、予想以上に大きく燃え広がった国民の戦意高揚がプレッシャーとなって無謀なアメリカとの開戦に踏み切らざるを得なくなったことだったはずです。
愛国心や国防意識の高揚は自衛隊の予算獲得には役に立つかもしれませんが、それは裏を返せば近隣国への敵愾心の高揚であり、それによる関係悪化と軍拡競争が本当に戦争を招くことになりかねません。
あれほどの惨禍を代償として得た教訓を忘れ、同じ過ちを繰り返してはならないのです。


Never think that war, no matter how necessary,
いかに必要であろうと、いかに正当化できようとも、
nor how justified, is not a crime.
戦争が犯罪だということを忘れてはいけない  Ernest Hemingway

平和な今だからこそ、改めて心に刻み直そう。



「スカボロー・フェア/詠唱」


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tags : 1968年 フォーク 反戦 難解 コーラス 映画-60's  

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