「天使のささやき」は、1973年に発表した3rdアルバム『The Three Degrees』の収録曲(PIR移籍後最初)で、この時のメンバーはシーラ・ファーガソン、フェイエット・ピンクニー、ヴァレリー・ホリデイ(2016来日メンバー)という顔ぶれでした。 翌年2月、ギャンブル&ハフはアメリカの音楽番組『ソウル・トレイン』のテーマ「TSOP (The Sound of Philadelphia)」を作曲しソウル・バンドMFSBに演奏させていますが、そのコーラス・パートにスリー・ディグリーズが起用され、これが4月にBillboard Hot 100でNo.1に輝いています。
しかしこの日本での思わぬ大ヒットが欧米でその評価が見直されるきっかけとなり、9月にシングル「When Will I See You Again」がリリース、アメリカではHot 100で2位(1975年の年間75位)/Cash Box誌No.1を記録。 イギリスでは週間No.1に止まらず年間2位というこの年を代表する大ヒットとなり、1978年にはチャールズ皇太子の30歳の誕生日を祝う式典にスリー・ディグリーズが招かれこの曲をパフォーマンスしました。
そのせいかケニー・ギャンブルがピアノで「When Will I See You Again」を彼女らに紹介した時、この曲のリード・ヴォーカルを務めることとなるシーラ・ファーガソンは“こんな誰でも歌える簡単な曲なんて、歌わない!”と、憤慨したそうです。 しかし何百万という大ヒットを遂げ自分たちにとって大切な作品となった後、シーラは“彼の方が正しかった”と自らの過ちを認めています。
Will I have to wait forever? …ずっとずっと待たされる?
このフレーズは最もこの女性のかわいらしさを伝えていると思うので、“そんな表現”にしてみました。
「When Will I See You Again」の特筆すべき一つは“全文疑問文”で構成されていることで、そのため訳し方によっては“いつまで待たされるの?”と相手を問い詰めているようなニュアンスを与えてしまい兼ねません。 でも曲の雰囲気からは、“そういう趣旨”が込められた歌ではないことがすぐに理解できるはずです。 …なので一つひとつは簡単に見えるこの疑問文の羅列が、詰問になってしまわぬよう日本語表現には案外苦心させられました。
Is this my beginning or is this the end? 私にとって、これは始まり? それとも…
…さて、それにしても何で本作品の邦題は「天使のささやき」?? 原題の「When Will I See You Again」をはじめ、Lyricsには[angel]も[whisper]もありません。 『The Three Degrees』のレコード・ライナ-を見てみると彼女らの売り文句には“フィラデルフィアのセクシー・エンジェル”と掲げられており、「When Will I See You Again」冒頭の彼女らの悩ましい【Oooooo, haaa...】がこれを象徴するでしょうか…。
でも、どんなに愛らしかろうとも彼女たちは決して[angel]ではありません! なぜなら、グループの名前である【The Three Degrees】は “Man, woman, and devil, are the three degrees of comparison.” (男-女-悪魔は、比較の三段階変化)
ジョー・コッカーの“前職がガスの配管工”というのは有名なハナシですが、彼がビートルズに所縁の深い人物であることも、また然り。 何せ1964年のデビュー曲「I'll Cry Instead」から「With a Little Help from My Friends」(過去ログ)、「Something」(過去ログ)、「She Came In Through the Bathroom Window」と、60年代にメンバー全員の持ち歌を制覇(カバー)している程ですから。 しかも、メンバーに直接“楽曲のおねだり”もできる間柄でした!
1974年には4thアルバム『I Can't Stand In The Rain』を発表、「美しすぎて」はその2ndシングルでBillboard Hot 100で5位(1975年の年間65位)を記録し、デュエット曲「愛と青春の旅だち」を除けばアメリカで最も成功した作品です。 また、ジョー・コッカーの「美しすぎて」は1993年にアル・パチーノの主演映画『カリートの道』の主題歌として起用され、日本ではジョーを含め複数のバージョンで数多くのCM(パーラメント/TDK/ホンダ...etc.)”に使われたので、ご記憶の方もあるのではないでしょうか…。
オリジナルは5分弱の長い作品であるのに対しジョーのバージョンは2分40秒程とかなり短く、実質わずか4行の内容だけに焦点を当て2度繰り返して歌っているので、“You are so beautiful to me”のフレーズが歌詞全体の半分を占めています。 これをそのまま直訳して表記すると“君はとても美しい”だらけになってしまうため、今回の和訳では同じ英文は言葉を換えて表現したり創作になっていたりすることをご了承ください。
Such joy and happiness you bring 君が蒔いた、喜びと幸せの種 Such joy and happiness you bring こんなにも、ときめきと満ち足りた人生をもたらしてくれた
「バンド・オン・ザ・ラン」はビートルズ解散後としては5作目、ウイングス名義では3作目となる1973年のアルバム『Band on the Run』のタイトル曲で2ndシングルとしてリリースされBillboard Hot 100で2週連続No.1(年間19位)に輝きました。 アルバム『Band on the Run』はBillboard 200で4週No.1を含む記録的ロング・セラーにより年間2位という商業的大成功を収めただけでなく、1975年にはグラミーで“最優秀ポップ・パフォーマンス賞”を授賞し、ポールの天敵(!?)ローリング・ストーン誌さえ“500 Greatest Albums Of All Time”の418位にランクさせる趣きのある作品です。
ところで、「Band On The Run(逃げるバンド)」って、どういうコトだと思います? “バンドが逃げる”というとまず浮かぶのは、熱狂的なファンやしつこいマスコミから逃れるというイメージですが…。 ちょっと、アルバム・ジャケット(写真・右)を見てみてください。 みんなが同じ黒の服を着て、暗闇の中でスポットを当てられ驚いているでしょ? (“ドリフターズのコント”じゃありませんよ!?)
If I ever get out of here もしも、ここを出られるなら Thought of giving it all away To a registered charity 持ってるもの全部、チャリティーにくれてやろう
第2部は“願望”を匂わせる部分になっていて、“If I ever get out of here”のフレーズはビートルズ時代にアップル・レコードの会議でメンバーのジョージ・ハリスンが発した言葉がそのまま用いられています。 囚人とすぐに打ち解けたポールも“クサいメシ”は合わなかったようで、その時出された味噌汁のトラウマからその後何年もそれを口にできなかったとか…(今は、好きらしい)。
Well the rain exploded with a mighty crash やれやれ…お天道さまの下に出た途端 As we fell into the sun 叩き付けるような、激しい雨のお出迎え