I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「マイ・リトル・タウン」サイモン&ガーファンクル

2021.10.04

category : Simon & Garfunkel

Simon & Garfunkel - My Little Town (1975年)

もし大人になることが“黒の虹”を構成する一つになることであるなら、葛藤する若者の方が正しい

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tags : 1975年 ロック/ポップ 故郷  

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「S.O.S.」アバ

2021.04.23

category : ABBA

ABBA - S.O.S. (1975年)

あの幸せだった日々は何処へ行ってしまったの…あって当たり前ほど、なくてはならない大切なもの

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tags : 1975年 ポップ せつない愛 ドラマ 新型コロナ  

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「マホガニーのテーマ」ダイアナ・ロス

2017.11.24

category : Diana Ross

Diana Ross - Theme From Mahogany (Do You Know Where Youre Going To)1 Diana Ross - Theme From Mahogany (Do You Know Where Youre Going To)2


Diana Ross - Theme From Mahogany (Do You Know Where You're Going To) (1975年)



~ダイアナ・ロス、AMA生涯功労賞を受賞~

11月19日に開かれた『第45回American Music Awards』で、ダイアナ・ロスは長年に亘る音楽業界への貢献が認められ生涯功労賞(Lifetime Achievement Award)を受賞いたしました。

授賞式に於いてダイアナは娘や息子、その伴侶、孫たち、モータウンからベリー・ゴーディ・ジュニア、スモーキー・ロビンソンといった家族や長年の友人が見守る中で「The Best Years Of My Life」「Ain’t No Mountain High Enough」など圧倒的なパフォーマンスを披露しました。
また、アメリカ音楽史を代表する歌姫の栄誉に対し、現代を代表する歌姫テイラー・スウィフトやオバマ元大統領夫妻からも祝福のビデオ・メッセージが届くなど、その影響の大きさを物語っています。

それにしても…
御齢73歳にして、このセクシーさ!

Diana Ross - Theme From Mahogany (Do You Know Where Youre Going To)3 



~概要~

1960年代に【The Supremes】(シュープリームス/スプリームス)として12曲の全米No.1ヒットという途方もない記録を打ち立てたダイアナ・ロスは、ソロに転じた70年代に入ってもスーパースターとして進化を続けていました。
1971年、ビリー・ホリデイの伝記映画『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』に主演しゴールデングローブ賞新人賞を獲得するなど銀幕へと新境地を開くと、1975年には2作目の映画『マホガニー物語(Mahogany)』で再び主演を務めることとなります。

その主題歌こそ「Theme From Mahogany」であり、サブタイトルが「Do You Know Where You're Going To」でした。
作者は映画の音楽も担当したマイケル・マッサー(作曲)と、キャロル・キングの公私に亘るパートナーとして知られたジェリー・ゴフィン(作詞)。
この二人はホイットニー・ヒューストンの「Saving All My Love for You」やグレン・メデイロス「Nothing's Gonna Change My Love For You」、ピーボ・ブライソン&ロバータ・フラック「Tonight, I Celebrate My Love」(過去ログ)ほか数々の名曲を世に送り出したゴールデン・コンビです。

1975年9月、「Theme From Mahogany (Do You Know Where You're Going To)」は『Mahogany』のサウンドトラック・アルバムからのシングルとしてリリースされ、翌年1月にダイアナのソロとしては3曲目のBillboard Hot 100のNo.1(1976年の年間43位)に輝きました。
しかし、こうした活躍にも拘らず本曲はアカデミー歌曲賞の対象外とされそうになり、これに音楽業界が猛反発したためノミネートされる変更がなされたものの、結局『Nashville』の「I'm Easy」が受賞するという騒ぎが起きています。
恐らくこれは「Do You Know Where You're Going To」が元々1973年にThelma Houstonに提供された曲(レコーディングはしたが発表はしていない)で、映画のために創られた楽曲ではなかったからでしょう。


歌姫ダイアナの全米No.1ソングだけあってマライア・キャリーやジェニファー・ロペスといった後世の歌姫たちに歌い継がれましたが、日本では男性歌手である野口五郎が「涙のほほえみ」(訳詞 : 藤公之介)というタイトルでカバーしています。

そして、「マホガニーのテーマ」が特に日本で親しまれた理由といえば、やはりネスカフェのCMです。
ネスカフェは歴代多くの洋楽曲をCMに起用してきましたが、その中で恐らく最も有名なのが「マホガニーのテーマ」でしょう。
歌詞の一部を[Nescafé]に変更して歌われるこのCM、もちろんダイアナ本人が替え歌を歌っているわけではありません。
ただ【Do You Know...】に導かれるダイアナの叙情的な声の響きは日本人の琴線に触れるようで、後年彼女は世界で例外的に日本で「イフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザー」(過去ログ)を大ヒットさせることになります。


 
 



~Lyrics~

Once we were standing still in time
かつて、二人は立ち尽くした…
Chasing the fantasies that filled our minds
二つの心を満たす幻想を追い求め

『マホガニー物語』に於いて、ダイアナは一流ファッション・デザイナーを夢みる女性・トレーシー(マホガニー)を演じています。
ポップ・アイコンとしてのdiva(歌姫)とは、単に際立った女性歌手に与えられる称号ではなく、女性としての生き方やファッションなどさまざまな文化への影響力が及ぶものであり、まさにこの時代のダイアナはそうした存在でした。
映画の主人公トレーシーはデザイナー志望の女性ですが、本作の衣装はそれを演じたダイアナ自身がデザインしたものが使われており、当時のファッション・シーンにも影響を与えたそうです。

但し、社会での華やかな活躍が私生活の充実を保証するものではありませんが…。

Diana Ross - Theme From Mahogany (Do You Know Where Youre Going To)4


You knew how I loved you, but my spirit was free
貴方は私の愛を理解してくれた…でも私の心はそれに縛られることなく
Laughin' at the questions that you once asked of me
投げ掛けられたその問いさえ、あざ笑った

トレーシーは政治家志望のブライアンと出逢い恋に落ちますが、互いの野心が邪魔して、なかなか愛を深めることができません。
“恋か、夢か…”の選択を迫られるのはこの手のストーリーによくある展開ですが、“トレーシーの選択は夢”でした。
トレーシーはこの美貌ですから、その夢の実現に有力な男たちが次から次と現れ、彼女もそこからチャンスを掴んでゆきます。

そんなある日、ブライアンがローマまで彼女を追って来てアメリカに連れ戻そうとしますが…。


Now looking back at all we've planned
いま…二人が思い描いていた夢を振り返ると
We let so many dreams just slip through our hands
あまりにその多くを、掌からすり抜けさせてしまっていた

ローマでブライアンは、トレーシーに“どんな成功でもわかち合う相手がいなければ無意味だ”と説得を試みますが、彼女はその言葉を弱音だと罵倒し彼を追い返してしまいます。
その後トレーシーはヨーロッパのファッション界で大成功を収め、念願の夢を実現させることができました。

しかし、そのとき彼女の胸に去来した想いとは…?



~Epilogue~

物語の主人公トレイシー(マホガニー)は夢を追って恋を後回しにした結果、夢を実現させたもののブライアンに忠告されたとおり、その喜びを心から分かち合う人がいない孤独感に襲われます。
…でも、もし彼女が恋を得て夢を掴むチャンスを逸したとしたら、後悔しなかったでしょうか?
どちらも両立できるなら問題ないわけですが、それが叶わないなら取捨選択するしかありません。


Do you know where you're going to?
あなたは自分が何処へ向かおうとしているか、ご存知ですか…

改めて向き合ってみると、哲学的で重苦しい問いです。
恐らくこの【where you're going to】に従って取捨選択がなされたなら後悔も少ないのでしょうが、実際は目先に提示された条件の範囲で取捨選択を迫られるため、後悔も多くなるのでしょう。

“we know what we are, but know not what we may be.
自分の何たるかはわかっても、この先どうなるかはわからない”  ~戯曲『ハムレット』より~


ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ハムレット』第四幕 第五場で、突然の父の死で失意に陥った娘(オフィーリア)の言葉。
確かに、人生の先を見通すことはなかなか至難であるに違いありません。
ただ、【where you're going to】は大事ですが、それ以上に忘れてはならないことがあります…。


Do you like the things that life is showing you
人生という演劇に満足されていますか?

少なくとも私にとってこれこそが優先すべき問いであり、それと比べると【where you're going to】はそのための目標に過ぎません。
つまり人生を生きる喜びを棄損してまで【where you're going to】に拘る必要はなく、ルートAが不都合ならば途中でルートBに変更すればよいのです。
人生とは漠然とした先行きのへ思案ではなく、今を生きることなのですから…。


夢中で日を過ごしておれば、いつかはわかる時が来る。
 ~坂本龍馬(司馬遼太郎『竜馬がゆく』より)~





「マホガニーのテーマ」


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tags : 1975年 バラード/soul 人生 映画70's マイケル・マッサー 

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「ボヘミアン・ラプソディ」クイーン

2015.12.04

category : Queen

Queen - Bohemian Rhapsody1 Queen - Bohemian Rhapsody2


Queen - Bohemian Rhapsody (1975年)



~「Bohemian Rhapsody」40周年~

今年はクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が1975年10月31日に発表されて、ちょうど40年。
その「Bohemian Rhapsody」が全英チャートNo.1を独走していた最中、『A Night at the Opera Tour』同年のクライマックスとしてクリスマス・イヴの夜、彼らが立ったステージがロンドンのハマースミス・オデオン(現:イヴェンティム・オデオン)でした。
その模様が最新の技術によってレストアされ、今回『クイーン——オデオン座の夜 ~ハマースミス1975』としてこの11月20日にBlu-rayはじめマルチ・フォーマットでリリースされたことを、ご存知のファンも多いことでしょう。

クイーンがバンドとして大ブレイクした瞬間の爆発力とクリスマスのお祭りムードが相まって、とても素晴らしいコンサートとなっていますが、その中から一部の映像が公開されています。

 



~概要~

「ボヘミアン・ラプソディ」は4thアルバム『オペラ座の夜(A Night at the Opera)』の先行シングルとしてリリースされ、全英シングル・チャートで9週連続No.1を記録したクイーンの代名詞的作品です。
イギリスでは244万枚を売り上げ、2014年7月時点で「Candle in the Wind 1997」(同492万枚)、「Do They Know It's Christmas?」(同378万枚)に次ぐ歴代3位にランクされています(4位はウイングスの「Mull of Kintyre」)。

アメリカでもBillboard Hot 100で9位(1976年の年間18位)に入る初のTop10ヒットを記録するなど、世界的な大ヒットとなりました。
ローリング・ストーン誌“the 500 greatest songs of all timeの166位”にも選出されている楽曲であり、2002年のギネス・ワールド・レコーズ社によるアンケートでは“英国史上最高のシングル曲の1位”という結果も残っています。

作者はフレディ・マーキュリーで、ブライアン・メイによると“すべてフレディの頭の中に構想があって、彼とロジャー(・テイラー)とジョン(・ディーコン)でバッキング・トラックとしてそれぞれのパートを決めていった。”といい、ブライアンのパートであるギターについても“ヘヴィなリフはフレディが思いついた。彼が左手を使ってピアノで弾いたもので、僕はそれを参考にした。”と語っており、更には“『オペラ座の夜』の成功がなかったら、クイーンは解散していただろう。”とまで言及しています。
そんな彼は40年経った現在でも、ラジオからこの曲が流れるとボリュームを上げ、聴き入ってしまうそうです。

作品の構成は、①アカペラバラードオペラロックバラード(②のアウトロ)という多彩なジャンルから成る組曲形式で6分近い大作でありながら、そこに一片の無駄も存在せずビートルズの「ゴールデン・スランバーズ~」に勝るとも劣らない歴史的傑作です。
いくら名曲といってもライブでの再現に困るのがこのテの壮大な作品であり、1975年のハマースミス・オデオンでは[②バラード~キラー・クイーン~マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン~⑤バラード]という苦肉の策を採っていましたが、1977年以降は[②バラード~③オペラ(音声・映像)~④ロック~⑤]の形に定着しました。

「Bohemian Rhapsody」が傑出している点は音楽だけでなく映像面にもみられ、当時まだ広まっていなかった“プロモーション・ビデオ(PV)”を最新テクノロジーを駆使してクイーンのもつヴィジュアル・インパクトを最大限に引き出し、世界に反響を及ぼしました。
実は、これはTV出演のスケジュールが合わなかったため急遽2時間の撮影で制作されたそうで、新たな創造とは意外にも切羽詰まった状況から生まれるものなのかもしれません(ビートルズも、同じきっかけからPVを制作するようになった)。
ビートルズとの共通点というとフレディが弾いているピアノで、レコーディングには「Hey Jude」でポールが弾いたピアノが使用されています。

 



~Lyrics~

Is this the real life?
これは現実なのか…
Is this just fantasy?
それとも、ただの幻想?

冒頭のアカペラはメンバー4人による美しいハーモニーで構成されますが、残念ながらライブでは省略されている部分です。
PVの“暗闇に浮かぶ顔”はアルバム『Queen II』のジャケットがモチーフとなっている有名なカットで、後に様ざまな形で派生がみられました。

Caught in a landslide(地滑りに引き込まれる)
主人公にとって【this】は、抗い得ない運命のようなものだったのかもしれません。


Mama, just killed a man,
Mama...たった今、人を殺してきた
Put a gun against his head,
奴の頭に銃口を突きつけ

バラードの冒頭部分で、強いインパクトを与えずには置かないラインです。
ここで和訳に用いた【銃爪(ひきがね)】に、覚えのある方もおありでしょう?
これは世良公則&ツイストが1978年に放ったヒット曲「銃爪(ひきがね)」を引用したもので、作者・世良公則の造語といわれます。

殺人というと重要なのが“動機”ですが、ここでは何も語られてはいません。
あるのは罪悪感と未来に対する絶望、そして“Mama”…。


Easy come, easy go, will you let me go?
気ままに生きただけだ…俺を見逃してくれ
Bismillah! No, we will not let you go. (Let him go!)
ビスミッラー!いいや、お前を見逃すわけにはいかない(彼を赦し給え!)

オペラ風のパートですが[opera]は元々イタリア語で、【Scaramouch(イタリア喜劇の空威張りする道化役者)】【Galileo】【Figaro】【Magnifico】【mama mia】などイタリアに関連した言葉がたくさん用いられています。
一方【Bismillah(بسم الله الرحمن الرحيم)】はアラビア語で“神(アッラー)の御名において”という意味の言葉であり、主人公は裁きを受け、彼と周囲は赦しを乞うている様子が窺えます。

リアルタイムで歌と詞をなぞるとやり取りが面白く、何度も赦しを乞うものの終に【Never, never let you go】と言い切られてしまい、その絶望感を極端な低音の【No, no, no, no, no, no, no.】で表現しています。
主人公は落胆の心情を【Mama mia, let me go.(愛するママ、俺を助けて)】と吐露し、困り果てた彼はあろうことか魔王【Beelzebub】に助けを求めてしまう…というオチ!
“溺れる者は藁をも掴む”といいますが、切羽詰まった人間の心情がよく出ています。



~Epilogue~

ところで、本作品は「Bohemian Rhapsody」というタイトルを掲げながら、その言葉自体は歌詞中に一切登場していません。
…では、このタイトルは一体何を訴えかけているのでしょう?

【rhapsody】は日本語では一般に“狂詩曲(きょうしきょく)”と訳され、“歌をつなぎ合わせること”というギリシャ語の語源に由来する通り、さまざまな曲調がメドレーとして組み込まれていてこの曲はまさにそれを体現しています。
一方【Bohemian】は文字通り“ボヘミアに居住する人”ですが、イギリスのバンドであるクイーンが何故ボヘミア(チェコの西部・中部地方を指す歴史的地名)なのか、イマイチ腑に落ちません…。

ブライアン・メイは「Bohemian Rhapsody」について、“何のことかって? 僕らの誰もわからないよ。僕が知る限り、フレディはそのことについて話さなかったし、それを望んでもいなかった。彼の心の中には何か思うことはあったんだろうけど、彼はこういった魔法のかけらをスピンするのが大好きだった。現実を少し、ファンタジーを少しってね。いろんな解釈ができるのを楽しんでいたと思う。”と語っています。

“現実を少し、ファンタジーを少し”

私は、この言葉が最も真実に近いような気がします。
実は【Bohemian】には派生した言葉の意味があって、15世紀フランスに流入していたジプシーの多くがボヘミア地方からの民であったことから、“定住性に乏しく、異なった伝統や習慣を持ち、周囲からの蔑視をものともしない人々”のことをボヘミアンに喩えるようになったそうです。

“定住性に乏しく、異なった伝統や習慣を持ち、周囲からの蔑視をものともしない人々”

私は、この言葉に“彼の宿命”を重ねずにはいられません。
誰しも身の上について他人に語りたくないものはあるであろうし、それが世間一般の規範に反するものであったなら尚更です。
“逆境”の宿命に生まれた彼は、[Bohemian]の生きざまに自らの希望を重ね合わせていたかもしれません。

Nothing really matters to me.
大したことじゃない
Anyway the wind blows.
どのみち、風は吹く…

“彼”に吹いたのは、どちらへ導く風だったのでしょう…



「ボヘミアン・ラプソディ」


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tags : 1975年 プログレ オペラ 偉大な曲 コーラス 名作MV 映画00's- 

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「明日なき暴走」ブルース・スプリングスティーン

2014.01.19

category : Bruce Springsteen

Bruce Springsteen - Born to Run1 Bruce Springsteen - Born to Run2


Bruce Springsteen - Born to Run (1975年)


~えっ? あのブルース・スプリングスティーンが、“そんなコト…”!?~

私にとって、“ロックの理想”が全て詰まったブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」。
本来なら“夏”にお届けする想定でしたが、この曲に関連してそれにも勝る“面白いニュース”が出たので、今回この作品を特集することにいたしました!

この新ネタだけでもまとまった文量を要するため、曲紹介は当ブログで、新ネタは姉妹ブログ『I Will』で分担して掲載したいと思います。
なお『I Will』の更新は翌日になる予定なので、ご了承くださいね。


~概要~

ブルース・スプリングスティーンはアメリカのロック歌手で、ファンからは“ボス(Boss)”と慕われ“アメリカの良心”とも称される存在です。
近年は政治・社会問題を取り上げた作風が多くなっていますが、若い頃は“next Dylan(第二のボブ・ディラン)”としてアメリカの普通の若者の気持ちを代弁しカリスマ的な人気を獲得しました。

「明日なき暴走」は、ブルースがブレイクするきっかけとなった1975年の3rdアルバム『Born to Run』のタイトル曲で、1stシングルとしてBillboard Hot 100で23位を記録しました。
ローリング・ストーン誌の評価が極めて高く、アルバムは“500 Greatest Albums of All Time”の18位、「明日なき暴走」も“The 500 Greatest Songs of All Time”で21位にランクされている他、“ロックの殿堂”入りも果たしている楽曲です。
音楽は言うまでもなく素晴らしいですが本アルバムはジャケットがカッコよく、私はCDの小さな写真では満足できず、わざわざ大きなLPで持っています!

演奏をサポートしているのは勿論“Eストリート・バンド (The E Street Band) ”で、間奏では2011年に「ジ・エッジ・オブ・グローリー」でレディー・ガガと共演したサックスのクラレンス・クレモンズがソロを執っています。
今回ご紹介している映像は恐らく1984-1985年頃の“Born in the U.S.A. Tour”のライブを中心に編集されたバージョンで、名実共に全盛期のブルースのパフォーマンスは圧巻です!
オリジナル音源をお聴きになりたい方は、コチラをどうぞ♪


~背景~

デビュー当初、ブルースのレコード・セールスはサッパリでしたが識者の評価は高く、ライブ・パフォーマンスはファンの間でも評判でした。
1974年、そんな彼のライブを見たロック評論家ジョン・ランドーが雑誌で“ロックン・ロールの未来を見た。その名はブルース・スプリングスティーン!”と絶賛したため、ブルースは一躍脚光を浴びることとなりますが…
彼は余程ブルースに惚れ込んだのか、そのままブルースの1975年の3rdアルバム『Born to Run』のプロデューサーの一人に名を連ねることとなっています。

ブルース自身によると、作品は“まさに、タイトル通りの曲を書きたかった”という着想に拠るそうで、ボブ・ディランのような詩、フィル・スペクターのような音作り、デュアン・エディのようなギター、ロイ・オービソンのような歌唱の融合を目指し、“世界最高のロックを創り上げたかった”と語っています。
楽曲自体は1974年前半に書かれたもので、同年5月頃にはライブのレパートリーとなっていたようです。
最初のレコーディングは当人より先にザ・ホリーズのアラン・クラークにより為されましたが、リリースが遅れたためブルースのバージョンが先に世に出ることとなりました。


~Lyrics~

作品は、ある青年の青春を描いた内容となっていて、大きく分けて二つの側面があるように思います。
1つは早く町から飛び出したいと願う“切実な悲鳴”であり、もう1つは惚れた女の子への“ラブ・ソング”です。

h-Oh, Baby this town rips the bones from your back
なぁBaby、この街は背中から骨抜きにしちまう
It's a death trap, it's a suicide rap We gotta get out while we're young
死の罠、自殺のドアへと誘うのさ…若いうちに抜け出そう

主人公の青年の故郷を早く抜け出したいという願いは、若い頃のブルース自身の気持ちでもあったようです。
彼は、ニュー・ジャージー州モンマス郡フリーホールドという人口1万人程度の小さな町で青春時代を過ごしました。
地理的条件から考慮すると、この地の若者が隣接するニューヨーク市やフィラデルフィア市といった華やかな大都市への進出に憧れを抱くのは、想像に難くありません…。

加えて、ブルースはこの町のことを“小さな町で心まで狭い、保守的な町”と評しており、リベラルな民主党を支持する彼にとって、共和党支持が大多数を占めるこの町は決して居心地のよい場所ではなかったのかもしれません。
また、1984年の作品「マイ・ホームタウン」によると彼の高校では白人と黒人の喧嘩が絶えず、身近でショットガンによる事件も発生していたようで、そんな故郷での体験が作品に影を落としているのでしょう…。


The amusement park rises bold and stark
遊園地はくっきりと、これ見よがしにそびえ立ち
Kids are huddled on the beach in a mist
子供らは霞んだビーチに群がってる…

この連は、享楽へと変わりゆく人心への失望が感じられます。
1976年の「ホテル・カリフォルニア」といい、この時期はアメリカ社会の享楽化への危惧をテーマとする作品が多くありました。
「明日なき暴走」の指摘がこれに該当しているかは定かではありませんが、1974年にニュー・ジャージー(オーシャン郡ジャクソン・タウンシップ)には広大な総合アミューズメント施設“シックスフラッグス・グレート・アドベンチャー”が開業しており、2013年現在・世界最速のジェット・コースターも併設する世界最大のテーマ・パークとなっているそうです。


~Epilogue~

“Born to Run(走るために生まれた)”・・・
このメッセージは、“tramps(放浪者)”へ宛てられたものでもあります。
勿論これは単に物理的な浮浪者を指すというよりは、もっと“精神的な放浪者”のことなのだと思います。

これといって誇るもののない町に生まれ、商店や工場も次々と閉鎖されてゆく現状を見て育った子どもたち…
その不満や不安から逃れるため、ある者は享楽に奔り、またある者は暴力に依り、町も人もますます荒んでゆきます。
目的や希望を抱けず、彷徨う若者たち…

そんな、依るべき確かなものなど持たない“浮き草”だからこそ、“人をアテにせず・人のせいにせず”必死に自分の力で抗わなきゃ、もっと下流へと追いやられてしまう…
だから、走れ!
どんなに苦しくとも、走り続けるしかないんだ!

でも、こんな町の光景って、何処かで見たような…
きっと、私たちにとって“遠いの町”の空想物語ではありません…。



「明日なき暴走」


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tags : 1975年 ロック 負けない心 偉大な曲 

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Author:Beat Wolf
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