I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「シーズ・ライク・ザ・ウィンド」パトリック・スウェイジ

2018.09.08

category : Soundtracks

Patrick Swayze - Shes Like The Wind1 Patrick Swayze - Shes Like The Wind2


Patrick Swayze ft. Wendy Fraser - She's Like The Wind (1987年)



~概要~

「シーズ・ライク・ザ・ウィンド」は1987年に公開された映画『ダーティ・ダンシング(Dirty Dancing )』の挿入曲で、サウンドトラック・アルバムからの3rdシングルとしてカットされ、Billboard Hot 100の3位(1988年の年間40位)を記録しました。

歌っているのは本映画にヒロインの恋の相手役として出演している俳優パトリック・スウェイジで、しかもナント“自作曲”
ただし本曲は本映画のために書かれたものではなく、1984年にパトリックが出演した映画『Grandview, U.S.A.』のために、友人のStacy Widelitzと共作したものです。
しかし結局この映画では使用されず、その後『ダーティ・ダンシング』に持ち込んでプロデューサーとディレクターに聴かせたところ今度は気に入られ、1986年11月にサウンドトラックとして正式にレコーディングを行っています。

ただし、wikiによると【彼(音楽監督のジミー・アイナー)はまた、新曲『She's Like the Wind 』を歌うようパトリック・スウェイジに協力を求めた】との記述があり、パトリックは当初自分で歌うつもりではなかったのかもしれません。


「She's Like The Wind」のPVは映画シーンにパトリックが歌う姿を投影し、モノクロと“揺れる水面”が取り入れられた編集がノスタルジーを誘い、後半には“ft.”とされる Wendy Fraser も登場します。
映画『ダーティ・ダンシング』は低予算ながら1987年に最高益を生み出した映画の一つとして話題を呼び、パトリックも俳優として2つの賞にノミネートされましたが、何れも受賞は叶いませんでした。
しかしこの映画で彼に栄冠をもたらしたのは“本業ではない歌手”の方で、パトリックは「She's Like The Wind」によって『BMI Awards』で“Most Performed Song from a Film”を受賞しています。

恐らく俳優であるパトリックがレコードを出すなんて、他にないだろう…
そう思った私は浅はかで、1989年にパトリックが主演した映画『ロードハウス/孤独の街(Road House)』のサウンドトラックで2曲歌唱(うち1曲が自作曲「Cliff's Edge」)していました!
さすがに俳優であるパトリックのライブ映像なんて、無いだろう…
それもやっぱり浅はかで、1987年に『TopPop』という歌番組に出演していました!
ただし残念ながら口パクで、マイクの握りが力んでいたり呼吸が乱れているように見えるのは、慣れない仕事の緊張のせい?






~Lyrics~

Feel her breath on my face
息遣いを顔に感じるくらい…
Her body close to me
体を寄せ合う

主人公の情熱的な想い…
しかしそれと対照的に、どこか“夢想”を感じさせる彼。

鍛え抜かれたマッチョな肉体美…
しかしそれと対照的に、繊細優美でハイトーンな歌声? 


She's out of my league
君は、僕にとって手の届かぬ嶺に咲く花
Just a fool to believe
だけど、愚かなくらいに信じている

『ダーティ・ダンシング』ではヒロイン“ベイビー”(ジェニファー・グレイ)は17歳の医者の娘であるのに対し、ジョニー(パトリック)は労働者階級のダンサーです。
二人はそのギャップを乗り越えようとしますが現実は厳しく、ジョニーは仕事も辞めざるを得なくなってしまいます。

別れを決意したジョニーはベイビーの元を訪れ…
そんな流れの中で、「She's Like The Wind」が使用されています。




Just a fool to believe (just a fool to believe)
だけど、愚かなくらいに信じている
She's like the wind (just a fool to believe)
風のような人…

「She's Like The Wind」の後半部分に入ってくる女性ヴォーカルが、Wendy Fraser
ニューヨーク市立大学ハンター校で音楽を専攻し、ポップ・ミュージックへの進出を志していた女性歌手で、パトリックの歌声が繊細なので彼女の方が力強く聴こえます。
何を隠そう本曲の共作者Stacy Widelitzのガール・フレンドだそうで、本曲がサウンドトラックに起用される前デモを歌っていたのも彼女でした。

その後メジャーな存在にこそなっていませんがジャズ・シンガーへと転身し、ソロ作品も出しているようです。



~Epilogue~

2009年9月14日、膵臓癌とそれに伴う合併症のため57歳という若さで亡くなった俳優パトリック・スウェイジ。
1983年にフランシス・フォード・コッポラ監督の『アウトサイダー』過去ログ「Stay Gold」スティーヴィー・ワンダー)でトム・クルーズやマット・ディロン、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウらオールスター・キャストの長兄的な役どころを務め、1990年には『ゴースト/ニューヨークの幻』で全世界興行収入No.1を記録する世界のトップ・スターとなった彼にとって、『ダーティ・ダンシング』は出世作でした。

『ダーティ・ダンシング』ではダンサー役という難役で見事なダンスを披露し、自ら作曲した「She's Like The Wind」をヒットさせる大活躍でしたが、それはまさに“パトリックの人生そのもの”が詰まっているといってよい作品なのかもしれません。
彼は、振付師でもある母親のバレエ教室で幼少からバレエの英才教育を受けて育ち、バレエの劇団を経てブロードウェイ・ミュージカルへと歩んだ俳優です。
その彼が18歳のころ母のバレエ教室で一人の14歳の少女と出逢い、恋に落ち、1975年に結婚しました。
その女性はリサ・ニエミ(Lisa Niemi/女優)といい、パトリックが亡くなる2009年まで34年間伴侶であり続けた人。
2008年のインタビューでパトリックは、“「She's Like The Wind」はニエミのインスピレーション”と語っています。

Patrick Swayze - Shes Like The Wind3 <Swayze and his wife, Lisa Niemi>

She's like the wind through my tree
君は、僕の体を吹き抜ける風のよう…

Stacy Widelitzとの共作がどのように行われたか詳細は不明ですが、冒頭のこの歌詞とコードはパトリックの創作といわれています。
男女の喩えに“船と港”というのはよく耳にしますが、“”とは…
果たして、どんな想いが込められているのでしょう?

 “木は、どんな強風にも耐え抜いて立ち続けねばならない”じゃね?
 …それはアンタが悪行ばかり重ねているからでしょっ!




「シーズ・ライク・ザ・ウィンド」

『ダーティ・ダンシング』の過去ログ;「ビー・マイ・ベイビー」ザ・ロネッツ


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tags : 1987年 AOR  せつない愛 デュエット 映画80's ダーティ・ダンシング 

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「ヒート・オブ・ザ・ナイト」ブライアン・アダムス

2018.08.11

category : Bryan Adams

Bryan Adams - Heat Of The Night1 Bryan Adams - Heat Of The Night2



Bryan Adams - Heat Of The Night (1987年)



~概要~

ブライアン・アダムスは、カナダ出身のシンガーソングライターです。
1980年にデビューして一作毎にセールスを伸ばし1984年の4thアルバム『Reckless』で全米No.1を達成、それまでにない期待の中で発表したのが1987年の5thアルバム『イントゥ・ザ・ファイヤー(Into the Fire)』でした。
「ヒート・オブ・ザ・ナイト」はその1stシングルで、Billboard Hot 100でも6位(年間84位)を記録したロック・ナンバーです。

ブライアンというと大成功を収めた『Reckless』まで、“青春ロック”の形容がぴったりくる若さ溢れるストレートなロック/ラブ・ソングが中心でしたが、その彼も本曲を創作していた頃27歳となっていました。
当時の心境をブライアンは、“「Heaven」が全米No.1になった時‘やったぜ、まさに天国にいる気分’と叫ぶくらい喜んだけど、だからといってまたヒットするレコードを作ってやろうなんて、全く考えていないんだ。いつまでもラブ・ソングばかり書いていられないからね”と、語っています。

Bryan Adams - Heat Of The Night3Bryan Adams - Heat Of The Night2

その心境の変化は「Heat Of The Night」のシングルやアルバム・ジャケットからも一目瞭然で、ロック界に珍しい爽やかな好青年のイメージのブライアンにしては、ぼんやりした暗い印象のモノクロ写真でした[《写真・右》。
それまでも『Cuts Like a Knife』や『Reckless』のジャケットでモノクロは使用されてきましたが、ポーズを決めたり真正面から強い視線で見据えたりと、思わず“ジャケ買い”してしまいそうな魅力的なモノクロとは全く異なる印象です。
「Heat Of The Night」の歌詞も暗く抽象的で、サウンドは重く歪みモノクロ映像のPVには蛇まで登場してイエスの「Owner Of A Lonely Heart」を思い起こさせるような趣きさえあります。

こうした作品の暗さの背景には、作者であるブライアンとジム・ヴァランス (Jim Vallance)が1986年3月に[ベルリンの壁]を訪れたことが反映しているといわれます。
また、【黒】を多用した【フィルム・ノワール (film noir/虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画)】として名高い『第三の男(The Third Man)』(1949年・英)にも、部分的に影響を受けているそうです。
確かに、前回「Paint It Black」でも言及したように【黒】は力強さと存在感があって誰もが一度は憧れる色ですが、20歳くらいだとそれを前面に出すには“少し重荷”な色で、人生経験を重ねた20代後半は【黒】に挑戦してみたくなる年代かもしれません。
ちなみにこの映画のテーマ曲「ハリー・ライムのテーマ(Harry Lime Theme)」は非常に有名で、日本では「ヱビスビールのテーマ(CM曲)」としてお馴染みでしょう。


 



~Lyrics~

I was caught in the crossfire of a silent scream
声にならない悲鳴のクロスファイア
Where one man's nightmare is another man's dream
ある者の悪夢が、また別の者の夢となる在所

【crossfire】は日本語では“十字砲火”と訳され、2方向から発射される機関銃の火線が交差する地点に敵を誘導し、2方向から一斉に銃弾を浴びせる戦法で、攻撃する側にとっては“夢心地”、攻撃を受ける側は逃げ場もなく多方向から銃弾を浴びせられるという、まさに“悪夢”です。

主人公はそうした状況に置かれているわけですが、更には【a silent scream(叫ぶことを沈黙)】しているというのですから、もっと苦しい状態と推察できます…。


Met a man with a message from the other side
“向こう側”からメッセージを携えた男
Couldn't take the pressure - had to leave it behind
その苦難に耐えられはしない - 置き去りにする外には

この【a man】とは、一体何者でしょう?
【the other side】は“あの世”という意味もありますが、果たして…。

ただ、わざわざアドバイスをくれるのですから[悪い人]ではないのでしょう。
映画『ターミネーター』のカイル・リース(『T1』でサラ・コナーを守るため1984年へやって来た未来人)みたいな存在?


(Where you gonna hide when it all comes down)
奴らが降り来たら、何処に隠れる?
(Don't look back don't ever turn around)
後ろを見るな、決して振り返るな

主人公を脅かしているのは、コッチ!
その恐ろしい“奴ら”は歌詞中殆んどで【they】と表されていますが、ここだけ【it all】と表現されています。
しかもそれは【comes down】というのですから、奴らは普段“上の方”に存在するのかもしれません。
【a man】のアドバイス“構わずそのままにしておいた方がいい”と考え合わせると、どうやら逆らっても勝ち目がなさそう。

それが【the heat of the night】にやって来ると言われても…
一体、何処に逃げればいいの?



~人類を脅かす「Heat Of The Night」~

7月23日に埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の41.1℃を記録したのをはじめ、岐阜県美濃市で40℃超えを4度記録するなど、全国的にも40℃前後を連発している今年の猛暑。
しかし今年は欧州北部でも平年より3~6度高い気温が続き、ノルウェーとフィンランドの北極圏で7月に33℃を記録、スウェーデンは猛暑と乾燥により50件以上の森林火災が発生し、米カリフォルニア州デスバレーでは7月24~27日に4日連続で最高気温が52.8℃に達し7月の平均気温も42.3℃という観測史上世界最高月平均気温を記録するなど(過去最高も同地2017年7月の41.9℃)、猛暑は地球規模で確認されています(ちなみに今年7月の平均気温は東京28.3℃/大阪29.5℃)。

近年の温暖化傾向は日々の気温の数値や体感で多くの方が実感されていることと思いますが、過去130年の記録で見ても東京で夏は平均+2℃強、冬は約+4℃ほど平均気温が上昇しているというデータがそれを裏付けています。
この点については国立環境研究所地球環境研究センター副センター長の江守正多氏も“東京の気温上昇傾向は過去100年で約3℃であるが、おおまかにいってそのうちの1℃が地球温暖化(人間活動によるCO2排出)、2℃がヒートアイランド(緑地減少、アスファルト・コンクリートの蓄熱など)によると考えられる”と言及しています。


また、温暖化について『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)』2014年の「第5次評価報告書(IPCC AR5)」は以下のように評価を与えました。

極端な高温日(猛暑)については、すでに増えている可能性が「非常に高い(90%以上の可能性)」
その原因に人間活動の寄与がある可能性が「非常に高い(90%以上)」
今世紀初頭にさらに増える「可能性が高い(66%以上)」
今世紀末に向けてさらに増えるのは「ほぼ確実(99%以上)」


一方、気象災害と言ってもう一つ気になるのが、今年7月に大きな被害をもたらした【西日本豪雨】のように、これまでの認識とはまるで異なる“極端な雨の降り方”が、毎年のように災害を引き起こしていることです。
私たち一般人が知る【雨の降る仕組み】で考えてみても、①海や川があたためられ水分が蒸発し②空に蓄え切れなくなった水分が雨となって地上に降るのだから、“気温が高くなると雨量は増え、上昇気流が台風を生み、氷河が解けて海水面が上昇し水害を拡大させる…”といった変化をもたらすであろうことは漠然と想像できますが、これもIPCC AR5の評価によって裏付けられています。

つまり、この問題を放置したら“今世紀末までに更に3℃、4℃と温暖化が進み、それに伴って大雨や台風の被害が質・量ともに拡大する可能性が高い”ということです。
問題は、こうした見通しについて“私たち自身がどう向き合う(対処する)か”が、いま問われているのです。



~Epilogue~

こうした人類の存亡に関わる大きな問題に対処すべく国際社会が立ち上がったのが、2015年に合意された『パリ協定』です。
この協定の意義として大きいのは、温室効果ガスの排出削減義務を各国に課したことよりも、むしろ各国に“「脱炭素」がカネになる”というパラダイム転換を与えたことです。
これによって各国の意識は「脱炭素を押し付けられている」から「誰が脱炭素の主導権を握るか」に転じ、自然エネルギーの技術革新を我先にと競うようになり、一大ビジネス・チャンスへと発展してゆきました。

しかし残念なのは日本で、政府による2030年の電源構成で原子力の比率22~20%を確保する政策により自然エネルギーの導入が抑制されたため、2016年度も化石燃料依存度を89%まで増やし(対2010年比+8%)石炭火力発電の輸出拡大を目指すなど、脱炭素にもビジネス面でも世界の流れに逆行しています。

昨年末放送されたNHKスペシャルでは、台風でも倒れず海の深い日本に適した「浮体式洋上風力発電」を開発した日本の企業が、国内で電力会社に電気を買い取ってもらえる見通しが立たないためにビジネス展開ができない…という現実に、私は心を痛めていましたが、ぼやぼやしているうちにデンマークの洋上風力世界最大手メーカーが日本の洋上風力発電に乗り出して来てしまったようです。
一方、上手に育んで欲しいと思った試みが、環境負荷が極めて小さく発電源として天候に左右されない【黒潮発電】です。
日本の太平洋沿岸には世界最大規模の海流[黒潮]が流れており、現在はまだ実験段階ですが将来的に九州、四国、紀伊半島、房総半島などの沖にそれぞれ設置すれば原発の代替電源になる可能性を見込めるといいます。




In the heat of the night they'll be comin' around
灼熱の夜、奴らは巡り来る
They'll be lookin' for answers they'll be chasin' you down
答えを探し、お前を追い回す

灼熱の夜が個々人の焦燥で済む話なら、それでよい…
それが、この夏に限った一時の問題であるならば。

でも、もしこれが未来の地球に待ち受ける“過酷な運命”の通過点であるならば、
今この時代を担っている世界のみんなが知恵と力を合わせ、最善を尽くすべきではなかろうか?

“手遅れ”にならぬよう…。



「ヒート・オブ・ザ・ナイト」


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tags : 1987年 ロック 熱い 夏テイスト 環境 ・災害 

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「哀しみの天使」ペット・ショップ・ボーイズ

2017.10.27

category : Pet Shop Boys

Pet Shop Boys - Its A Sin1 Pet Shop Boys - Its A Sin2


Pet Shop Boys - It's A Sin (1987年)



~It's A Sin ? ~

今回のテーマは、【sin(罪)】。

私が中学3年のとき校長が替わり、彼の意向により突然“男子生徒は全員丸刈りにさせる”方針がその春から打ち出されたことがありました。
幸い2・3年生はそれが回避されたものの新入学の1年生からそれが実行され、私は坊主頭を免れて胸を撫で下ろす一方で“自分の髪型が一方的な他人の意向で強制される不合理”を、子どもながら漠然と感じたものでした。

21世紀の今日、日本はそんな不合理が罷(まか)り通った時代からとっくに卒業したものと思っていましたが、そんな最中偶然目にしたニュースで、生まれつき髪の色素が薄い女子生徒に対し“たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒く染めさせる”という指導を実行し、そのため生徒とその正当性を裁判で争っている大阪府立高校があることを知り、暗然たる気持ちにさせられました。

この裁判、まさか学校側が勝つなんてありませんよね?
(生徒側に嘘が無いとして)



~概要~

「哀しみの天使」はペット・ショップ・ボーイズ1987年の2ndアルバム『哀しみの天使(Actually)』の収録曲で全英で3週No.1、アメリカBillboard Hot 100で9位を記録したダンス・ナンバーです。
作者はメンバーのニール・テナント(vo)とクリス・ロウ(key)で、彼らが有名になる前の1984年にBobby O(Bobby Orlando)と制作したデモ音源が残されています。
タイトル「It's A Sin」にも使われる【sin】は“(宗教・道徳上の)罪”という意味で、ニール・テナント自身の体験を投影した作品です(別項参照)。

シングルが発売された後イギリスのDJジョナサン・キング (Jonathan King)が、「It's A Sin」はキャット・スティーヴンス1971年のヒット曲「Wild World」の盗作であると主張し、「It's A Sin」の曲・アレンジに「Wild World」の詞を組み合わせたカバーを勝手に発表したため逆にPSB側から訴えられ、この改変作の売り上げはチャリティーに寄付する羽目になるという騒ぎが起きています。
似ているといえば1988年に日本のWinkがカバーした「愛が止まらない 〜Turn It Into Love〜」(カイリー・ミノーグの曲としても有名)も気になるところですが…。

 
 



~Lyrics~

Father, forgive me, I tried not to do it
ファザー…お許し下さい、止めようと努力しました
Turned over a new leaf, then tore right through it
心を入れ換えても、ずたずたに引き裂いてしまうのです

作者の一人であるニール・テナントはローマ・カトリックの男子校[St Cuthbert's High School]の出身で、「It's A Sin」はここで体験した厳格な戒律への不満や怒りを表しており、本作品がリリースされたとき当時の教師が不快感を示したといわれています。
こうした経緯からもここでの【Father】はニールの実父ではなくカトリック教会の神父を指していると解され、これに続くセンテンス[Father, you fought me]を私は“あなたは懸命に向き合ってくれました”と訳していますが、もし【神父=教師】であるならより[fight(戦い)]的な激しいものだったのかもしれません。


For everything I long to do
僕がやりたいと望むことは
No matter when or where or who
たとえそれがいつ、何処で、誰とであろうと
Has one thing in common, too
一つの概念で通じている

一般的な『モーセの十戒』程度の戒律であればこれ程悲壮感漂う歌を創らなくてもよいのかもしれませんが、ニール・テナントには彼の抱えた“特別な事情”もあります。

PSBの代表曲でもある「Go West」(過去ログ)が象徴するようにニールはゲイであり、“同性愛行為は自然法に反する罪深い (sinful) もの”とするローマ・カトリック教会の教えは、“いつ、何処で、誰と何をしようと自分の存在を否定されている気分”になるのではないでしょうか…。



~七つの大罪 Seven deadly sins~

ニールが囚人、クリス・ロウが看守を演じるPVは、カトリック教会における『七つの大罪(七つの死に至る罪)』を犯した者を裁く異端審理を模しているとされます。
七つの大罪とは、罪そのものというより“人を罪に導く欲望や感情”のことであり、その七つとは以下のとおりです。

pride(傲慢)
avarice(強欲)
envy(嫉妬)
wrath(憤怒)
lust(色欲)
gluttony(暴食)
sloth/acedia(怠惰)



また、ローマ教皇庁は2008年に『新たな七つの大罪』を発表しており、その7つとは…

遺伝子改造、人体実験、環境汚染、社会的不公正
貧困(にさせること)、過度な裕福さ、麻薬中毒


となっており、古典的な七つの大罪は“個人を戒めている”のに対し、新たな七つの大罪は“社会や政治のあり方を戒めている”ような気がします。



~印篭のない『水戸黄門』、2017衆院選~

そもそも今回の選挙は2012年12月の第2次安倍内閣発足から約5年が経ち、その5年を費やした看板政策である『アベノミクス』『財政健全化』の達成度や、違憲の疑いが問われる中で強行採決により成立させた『秘密保護法』『安保法』『共謀罪法』、安倍首相夫妻と内閣自体が疑惑の主体となり未解明のままの『森友学園問題』『加計学園問題』『防衛省日報問題』、そして【憲法53条に基づいて開催義務のある臨時国会で何も議論せず】【天皇の権限である憲法7条を首相が乱用した今回の衆院解散】などの是非を総括すべきものでしたが、選挙中も[討論しない党首討論番組]を僅かに公開しただけで[有権者が知るべき各党首の適正や本音を引き出すことなく選挙戦が展開]され、結果は衆院の定数が10削減された中で自民党が公示前の議席を維持し事実上安倍内閣は国民に信任された形となりました。


ただやはり今回の選挙でも与党勢力が得票率(小選挙区49.32%/比例代表45.95%)で議席の67.3%を獲得し、野党勢力が得票率(小50.68%/比53.53%)で議席の32.7%しか獲得できず、【野党は得票率で勝って獲得議席は与党の半分以下】という正しく民意を反映しない選挙制度であることが改めて示されました。
この不合理な制度下に於いては野党が与党の2倍を得票するか、理念の異なる野党が一丸となって各選挙区で与党に1対1の構図を作らなければ互角の戦いさえ挑めず、たとえそれで政権交代が実現しても理念が全く異なる連立政権が安定した政権運営など望むべくもないことは、これまでの失敗の歴史が証明しています。
現在の日本の政治体制下では小選挙区制は民意を逆目にしか反映せず、これこそが近年私たちの民意が政治に反映されない違和感の正体です。

こうした歪んだ選挙制度こそが、21世紀の今日にあって戦前の大日本帝国憲法及び教育勅語を賛美する極めて少数派の思想をもつ安倍氏が、大多数の一般国民が支持する現憲法による民主・平和主義を駆逐・支配する不合理を可能にしたといって過言ではないでしょう。
しかしこの選挙の現状は憲法14条;『法の下の平等』にも反する恐れがあり、これを放置することは少数派支配という民主主義破壊を許容しているに他ならないため、改憲に優先して直ちにこの選挙制度を改める必要があります。
しかしそれを変え得る立場の与党は同時にこの選挙制度の受益者であるため自らこれを改める可能性は皆無であり、余程国民とメディアが少数野党を後押ししてムーブメントを起こさない限り実現しないでしょう。


一方、今回の選挙でも有権者の半数近くが投票を棄権するなど、国民の側にも反省するべき点があります。
また、私が特に注目したのは第2次安倍内閣発足以降、メディアで“その疑惑や適性が問われた閣僚たちが有権者にどう裁かれたか”でした。

森友・加計問題の安倍晋三首相、加計問題への関与が疑われた萩生田光一前官房副長官、その疑惑解明に対する姿勢こそが疑惑を更に深めた菅義偉官房長官・松野博一前文科相・義家弘介前文科副相・山本幸三前地方創生相、その適性を問われた稲田朋美前防衛相・共謀罪法の金田勝年前法相・“北方領土問題は素人”の江崎鉄磨沖縄・北方担当相、政治資金や口利き疑惑で辞任した小渕優子元経産相・甘利明元内閣府特命担当、オリンピックを巡る新国立競技場問題で辞任し今年の都議選時に政治資金問題が発覚した下村博文元文科相…
彼らの殆んどはこの衆院選で危なげない強さを見せつけ、全員が当選していました(山本氏と金田氏は辛勝)。

水戸黄門が印篭を出さずして、代官が行いを改めることがあるだろうか…。



~Epilogue~

ところで、今回の選挙で私は『(第24回)最高裁判所裁判官国民審査』に初めて[×]を記述しました。
これまで安倍首相は[お友だち内閣]を組閣したり、NHKにお友だちの会長を送り込み“政府が右というのを左と言えぬ”と言わせ、内閣人事局を設置し国民でなく安倍首相に奉仕する[忖度官僚]を輩出させるなど自らの権力強化のために手段を選ばず実行してきましたが、審査に際して私は“最高裁判事も介入してるのでは?”と胸騒ぎを覚え、調べてみたところ…

やっぱり介入していました!

今回の審査で対象となっている裁判官は7人ですが、うち一人はそれまで慣例となっていた日弁連推薦の候補者を退けて安倍内閣が選任した法学者でした。
もう一人は安倍首相の腹心の友・加計孝太郎氏と大学の同期生であり、学校法人加計学園の監事も務めていた元弁護士
そしてこの2人を含めた4人が、森友学園問題で財務省と近畿財務局が持つ関連電子データの証拠保全を求めた請求を棄却する決定を下していました。

…ただし、これまで最高裁判事は[職業裁判官][弁護士][その他]それぞれ出身枠の団体が選出するのが慣例であったものの、憲法79条が定めるその指名・任命権を有するのは内閣であり、内閣がこれを行使することは憲法上正当です。
私は、国民が選んだ(間接的ですが)内閣が省庁や最高裁判事の人事を決めることは正当と認識しますが、それは内閣がその絶大な権力を悪用しないという性善説に基づきます
もし内閣がその絶大な権力を民意や道義に反し、権力者とそのお友だちにとって都合のよい目的のために悪用したとしたらどうなるでしょう?
森友学園問題で疑惑究明を求める民意に反し、安倍首相にとって不都合な証拠が含まれるであろうデータを破棄する忖度官僚が出世し、その証拠保全を求めた請求を棄却する最高裁判事が選任されることになるのです。


2015年に元最高裁長官をはじめ、殆んどの法律専門家が違憲を指摘した安全保障関連法案

最高裁は三権分立の要件として内閣や国会に対し【違憲審査権】を有していますが、しかし実際は[付随的違憲審査制]であり、例えばこの場合“集団的自衛権を行使した戦争で戦死した自衛隊員の家族が国家賠償訴訟を提起した場合、その救済に必要な範囲でしか違憲の判断をせず”、殆んどの法律専門家が違憲を指摘する法令であっても最高裁は法令そのものの違憲性の判断は下さない方針となっています。

こうした司法の現実について元最高裁の瀬木比呂志氏は、“裁判所は、いまや権力の番人”と表現しています。
つまり内閣が最高裁の人事権を握ることにより裁判官は法の道義ではなく内閣の意向に沿った判決を出すようになり、現に今回の国民審査に係る判例に於いて1・2審まで住民側が勝訴してきた[第4次厚木基地騒音訴訟]も最高裁は住民側の差し止め請求を棄却しているように、行政訴訟で原告側が勝訴することは殆んどありません(8.4%/2012年)。

内閣の暴走を制御すべき[三権]の一角である国会は圧倒的与党が【強行採決】で野党を無力化し、憲法の番人たる最高裁は人事を質に【権力の番人】として飼い馴らし、[第4の権力]とされるメディア(報道)も他の三権による懐柔と圧力によって統制する…。


選挙が終わって安倍首相をはじめ閣僚らは“謙虚”を口にした一方、安倍首相はこれまで【与党2割・野党8割】に配分されていた国会質疑を【与党7割・野党3割】に見直す意向を荻生田光一幹事長代行に指示しました。
これまで野党に多くの時間が与えられていたのは、予算案や法案は事前に与党の承認を得て提出されているため国会での審議は野党に譲るという良識に基づくものであり、そもそも与党2割・野党8割の配分は民主党政権時代に野党だった自民党が強く求めた経緯によって定められたものです。
こうした自分勝手な政権運営を蔓延(はびこ)らせているのは、政治の緩み・驕(おご)りへの私たち有権者の許容、あるいは無関心の結果であり、これを正すのも私たちの責任です。

“すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。”  日本国憲法第15条

その理念を失った時…
国民のためにある政治は、私人のために多額の税金を投じた壮大な私事と成り下がる。



「哀しみの天使」


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tags : 1987年 シンセポップ 宗教 LGBT  

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「ステイ・ウィズ・ミー」ピーター・セテラ

2017.09.29

category : Chicago & Solo

Peter Cetera - Stay With Me1 Peter Cetera - Stay With Me2


Peter Cetera - Stay With Me (1987年)



~Stay With Me... 月に想いを~

旧暦“八月十五夜”は月が1年で最も美しいとされ、“中秋の名月”とも称されます。
今年は10月4日が当日ですがこの日の月は正確には“まんまる”ではなく、2日後の10月6日3:40に満月となります。
本ブログではこれまで…

 「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」クリストファー・クロス
 「デザート・ムーン」デニス・デ・ヤング

ほか“月の名曲”を何曲もご紹介してきましたが、今回の「Stay With Me」も実はその関連曲となっています。
詳細は、引き続き本文記事をお楽しみください♪



~概要~

ピーター・セテラは1960年代からアメリカのロック・バンド“シカゴ(Chicago)”のヴォーカリストとして、“Million Dollar Voice(100万ドルの声)”と称された歌手です。
1986年にシカゴを脱退しソロとして『ベスト・キッド2』の主題歌「Glory Of Love」、続く自身のアルバムから「The Next Time I Fall」を連続して全米No.1に輝かせるなど、改めてその才能を世に示しました。

その翌年の1987年に単発で「Stay With Me」をレコーディング、同年9月26日に公開の日本(東宝)の映画『竹取物語』の主題歌として発表、この時の邦題は「STAY WITH ME song for KA・GU・YA・姫)」でした。
こうした経緯から本曲は恐らく日本限定で企画されたシングルで、かぐや姫との惜別をイメージさせる楽曲とピーター・セテラの甘くせつない歌声が日本人の琴線に触れ、オリコン週間洋楽シングル・ランキングで1987年10月第2週付から4週連続No.1に輝いています。

一方、この映画は主演の沢口靖子をはじめ三船敏郎、若尾文子、石坂浩二、中井貴一…といった豪華キャストを配しただけでなく、ウルトラマンの円谷英二が死の間際まで映像化を切望していた企画であり、そのため“かぐや姫が宇宙人”という設定や巨大宇宙船、全長100mの首長竜まで登場するSF特撮映画となっています。
結果、総製作費が20億円にも上ってしまい、この年の日本配給収入6位に相当する14億5000万円を挙げたにも拘らず赤字となってしまいました(ちなみに7位は『ビバリーヒルズ・コップ2』)。


その後1990年代に「Heart of Mine」のボビー・コールドウェルによる「Stay With Me」がフィリップモリス社の煙草パーラメント(PARLIAMENT)のCM曲として、ニューヨークの夜景をバックに日本でオンエアされるようになり、こちらも広く親しまれました。
ボビー・コールドウェルの声質はピーター・セテラと非常に近いため全く違和感がありませんが、そもそも「Stay With Me」の作者の一人こそボビーその人であり、ピーターver.のプロデュースもこの2人によって共同で行われています。

 



~Lyrics~

How can you say it's over
“もう終わり”なんて、どうして言えるの?
What can there be that we can't overcome
二人に乗り越えられないものがあるなんて

かぐや姫が尋常ならざる人生を送るであろうことは、彼女が“竹の中から生まれた”瞬間から想像できます。
竹はピーク時に 1日で1m以上成長するそうですが、さすがに彼女が“生後3ヶ月で髪上げ(女性の成人の儀式)”まで成長するとは誰も想像できません! 

もしもそんな宿命の下に生まれた彼女が恋をしたとして、心のまま行動に移すことができるでしょうか…。
そこまで極端でなくとも、“乗り越えられないもの”が邪魔をすることって現実にもあるような気がします。


Darlin'after all that we've been through
あれこれ、ここまでずっとやってきたじゃない
Nobody else can warm your lonely nights
淋しい夜を温められる男は他にいない

相当な未練を感じさせますが、相手の方は余程の美人だったのでしょう…
かぐや姫の美しさについては、“容貌の清らかさは世に類いなく、男たちは身分を問わず彼女を手に入れたいと願い、昼夜となく家の近くに居続けた”とありますから、現代のアイドル以上の人気?

一方、映画でかぐや姫(加耶)を演じた女優・沢口靖子(当時22歳)も、高校時代すでに校内でファン・クラブが存在し他校から彼女を見るため男の子たちが押し寄せ、その後1984年に第1回『東宝シンデレラ・オーディション』で3万1653人の中からグランプリに選ばれていますから、こちらも負けてはおりません!
(ちなみにこのオーディションの最終3人の中には斉藤由貴もいたそうです)


Why do you turn away
…どうして顔を背けるの?
And you so afraid of needing someone
誰かを必要とするのを、懼(おそ)れているみたい

こういう時、“本当に嫌がっている”のか、“遠慮している”のか、ですが…
かぐや姫の場合、その拒絶ぶりはちょっと度を超えています。

彼女に近づこうとする全ての男性を拒み、皇子や大納言・右大臣…といった大貴族の求婚者には[(天竺にある)仏の御石の鉢]や[蓬莱(中国東の海中)の玉の石]といった無理難題で門前払い、時の帝でさえも会おうとはしませんでした(連れ帰らない約束で最終的に姿を見せた)。
でも、何故ここまで頑なでなければならなかったのでしょう…。



~Epilogue~

“旧暦8月15日は、かぐや姫が月に帰った日”
そして、『竹取物語』最大の謎といえば“かぐや姫はなぜ地球に来て、そして月に帰ったのか”でしょう。

誰もが知ってのとおり物語の冒頭でかぐや姫は竹から生まれたはずですが、彼女自身は“この身は人間世界のものではなく、私は【月の都の人】”とする一方、“故郷へ帰るのにうれしい気持ちはなく、【悲しい思いでいっぱい】”と語っています。
また、その理由については“【前世からの宿縁が無かった】ため出て行かなければならず、月の国の王に【休暇】の延長をお願いしたが許されなかった”と説明しました。

対して、姫を迎えに来た天人の王は翁に“【姫は天上で罪を犯し】、汝の僅かな善行に報いるため下界に下したが、【償いの期間が終わった】”と説明しており、かぐや姫の言葉とは齟齬(そご)があります。
また、彼は地上のことを【穢(けが)れたところ】、翁を【未熟者】【賤しいお前】と呼び、かぐや姫が月の都について【あの都の人は老いも悩み事もない】と言及していることも興味深い所です。

I can't live without you
君なしでは生きてゆけない
So please don't leave me now
…だから、どうか僕を置き去りにしないで


…さて、『竹取物語』の世界をお楽しみいただけましたか?
この物語は千年以上昔(9C後半~10C前半)に成立した【日本最古の物語】ですが、21世紀でも十分通用するファンタジーの概念が組み込まれているなど、この時代の人々の豊かな想像力に驚かされます。

古来より、月は人類にとって夜を灯す明かりであり、空想をかき立てる身近な天体でした。
しかし文明の進化は月を大映しにして“意外とサメ肌”であることを暴露し、月面着陸は月の表面が深海みたいに無機質で“ウサギが餅をつきそうにない”ありさまを、誇らしげに伝えました。

そういえばハイビジョン放送が始まった頃、女優さんが言っていた言葉とも重なります…
“このお肌 見え過ぎちゃうと 困るのよ”
(※“肌のキメまで映って困る”という内容を言っていましたが、川柳は私の創作です)
科学技術って、時々人間の“夢”を邪魔しません? 


でも、やっぱり…
夜空に浮かぶまんまるお月さまは、肉眼で“ぼうっと”みえるくらいが素敵です。



「ステイ・ウィズ・ミー」


続きはこちら >>

tags : 1987年 AC せつない愛 映画80's  CM曲 

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「オーバー・ザ・トップ」サミー・ヘイガー with エディ・ヴァン・ヘイレン

2016.07.01

category : Van Halen

Sammy Hagar - Winner Takes It All1 Sammy Hagar - Winner Takes It All2


Sammy Hagar - Winner Takes It All (1987年)



~勝者には、独占する権利がある!?~

「Winner Takes It All」…
直訳すると、“勝者がそれを全て取る”。
2009年の事業仕分けに於いて民主党の蓮舫議員が、次世代スーパーコンピュータ開発予算削減を求めて“(世界)2位じゃダメなんでしょうか?”…と、問うた波紋を思い出します。
“2位じゃダメ”といえば今年はオリンピック・イヤーであり、アスリートにとって金メダルは他の誰にも渡せないものでしょう。


 …そこでクエスチョン!
もし一組のカップルにトトロのシュークリーム1個あげたら、二人はどうする?

①彼女が“あなた全部食べて❤”と言い、オレがいただく
②オレ様が一番だから、当然オレがいただく
③甘味に情け無用、力ずくでもオレがいただく

 …どうあっても一人占めして食べたいようね?



~概要~

サミー・ヘイガーは1973年からモントローズ(Montrose)の一員としてとして活躍しその後ソロに転身、1985年にはアメリカHR/HM界を代表するバンドのヴァン・ヘイレン(カテゴリ) に加入し2代目ヴォーカリストを務めたアメリカのロック・ミュージシャンです。
サミーのお披露目となった1986年のアルバム『5150』は全米No.1の大ヒットを記録、続いて彼はソロ名義でシルヴェスター・スタローン主演の映画『オーバー・ザ・トップ(Over the Top)』のサウンド・トラックへと参加しました。

楽曲は『フラッシュダンス』『ネバーエンディング・ストーリー』など、当時話題の映画音楽を次々と提供してきた巨匠ジョルジオ・モロダーの手によるもので、本作の作詞トム・ホイットロック(Tom Whitlock)とのコンビは『トップガン』の「Take My Breath Away」や「Danger Zone」でも有名です。
シルヴェスター・スタローンといえば、鍛え抜かれた肉体を生かした作品スタイルから『ロッキー3』の「Eye of the Tiger」など“燃える名曲”を数多く生み出してきた俳優ですが、『オーバー・ザ・トップ』の主題歌である「Winner Takes It All」もそれらに劣らぬ出来栄えに仕上がったといえるでしょう。
しかし肝心の映画自体がスタローンの代表作『ロッキー』シリーズの約1/10程度の興行収入しか得られなかったためか、1stシングルとしてリリースされた「Winner Takes It All」もBillboard Hot 100で54位と振るいませんでした。

スタローンが、自分より遥かに大きな男たちとアーム・レスリングで勝ち抜かねばならない戦いの過酷さを伝えるのに十二分なサミーの迫力あるヴォーカルですが、当初「Winner Takes It All」を歌ったのは同サントラに参加していたエイジアのジョン・ウェットンでした。
しかし彼のバージョンは“不十分”と判定され、サミーが歌うことになったという経緯があったようです。

日本盤「オーバー・ザ・トップ」のジャケットには“with エディ・ヴァン・ヘイレン”と記されており、VHのギタリストであるエディが参加しているのかと思いきや、PVを見る限り“ギターを弾いているのはサミー本人”で戸惑われた方もあるでしょう。
しかし実際にはエディはちゃんとギターを弾いていて、彼は“ベース”ギターをプレイしています!
何でも、エディがベースを弾いたのはこの時が初めてで、彼はこのレコーディングのために3日でマスターしたそうですよ!



~Winner-take-all~

原題として用いられている【Winner-take-all】はアメリカ大統領選挙の一般投票で殆んどの州が採用する選挙方式です。
よくアメリカ大統領選挙は有権者による直接選挙といわれますが実際には、有権者は大統領選挙人を選び→大統領選挙人が大統領を選ぶという二段階方式になっています(※選挙人は誰に投票するか事前に公表しているので実質的に“選挙人を選ぶ=大統領を選ぶ”と解釈される)。
選挙人の数は州ごとに決まっていて、最多得票の選挙人(団)がその州に割り当てられた直接選挙票の全てを獲得することから“勝者総取り方式”と呼ばれます。

【Winner-take-all】は“最多票を獲得した人が全ての権利を得る”というシンプルで非常に分かり易い制度である反面、大きな欠点もあります。
元々アメリカのように堅固な二大政党制が根づいていれば現与党への批判票の行き場は1つに絞られ有権者は意思を反映させることができますが、イギリスや日本のように野党が小党乱立している場合批判票は細かく割れて殆んどが“死票”となり、たとえ反与党勢力が総数で与党を上回ったとしても単独で1位になる政党がなければ、与党の勝ちとなってしまうのです。

“大政党の独り勝ち”という【Winner-take-all】の特色は、小選挙区制が導入されて以降日本の衆院選で顕著であり、過去4回に於ける第一党('09年以外は自民党)の得票率の平均は46.5%であるのに係わらず、第一党が獲得した議席占有率の平均は75.3%に膨れ上がる“マジック”によってもたらされています。
さらに、投票率が50%強であることを考慮すると、“近年この国の立法・行政は国民全体の僅か25%の票が議席(衆院)の75%を支配し、その議決権の殆んどを独占”している実態が浮き彫りになってきます。
これこそが近年“原発回帰”や“安保法”、“沖縄米軍基地問題”、“与党政府の急速な右傾化”など重大事案について大多数の国民の気持ちと真逆の結果を次々と重ねながらも、いざ選挙をすると何故か自民党独り勝ちという不思議な現象のカラクリとなっているように思うのです。
民主主義国家に於いて、こんな民意を反映させない選挙制度は即刻改めるべきですが、その議決権を握る当の自民党にとってこんなオイシイ“魔法の選挙制度”は無いワケで…。



~Epilogue~

安倍首相は、今回の自民党の参院選のポスターに“この道を。力強く、前へ。”を掲げています。
“この道”とは、一体何を意味するのでしょうか…。

2014年の衆院選の際も“景気回復、この道しかない。”と経済政策を前面に打ち出し選挙で大勝利をしましたが、今年の参院選直前に2度目の消費増税延期を表明していることが、現在の景気状況を物語っています。
一方その間安倍首相が精力を注いだのは、進んで選挙の争点として広く国民に宣布しなかった『特定秘密保護法』や『安全保障関連法』の成立です。
今回の参院選ではスローガンから“景気回復”の文字が消えていますが、やはり選挙が終わるとその際争点化するのを避けてきた“この道”を力強く、前へ進めることに全力を注ぐのでしょう。


私は、至上命令としての護憲派ではありません。
現・日本国憲法9条2項の“陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。”の一文を純粋に解釈すると自衛隊の存在は疑いなく違憲であり、国民の大多数がその存在を認めている矛盾を解消すべく、“この一点に限り修正すべき”と考えています。

しかし、『自民党憲法改正草案』には全面的に反対です。
その条文の一字一句も然ることながら、何よりその根底には日本国憲法が最も大切にしてきた“国民主権”“基本的人権尊重”“平和主義”など国民の権利を削ぎ、思想信条・家族の領域までも国家が統制し、国家政府の権限を強化しようというねらいが強く感じられるからです。(日本国憲法改正草案Q&A(増補版)
安倍氏は口々に“美しい国”や“愛国”を持ち出しますが、愛や献身は個人それぞれの心から自然発生して初めて美しいのであって、愛国教育を含め国家や他人に強要された献身を、私は美しいとは思いません。


また、選挙の度に“これからの国のあり方”に係わる非常に重要な案件を国民から隠す姿勢や、アメリカ議会に約束した“事後処理”として国民の反対を押し切って強行採決した『安全保障関連法』、沖縄の民意で選ばれた知事への失礼、権力から独立性を保つべきの内閣法制局や日銀・メディアへの介入統制、GPIF評価損の公表を今年に限って選挙後に変更、政権中枢にある人たちの心ない言動

第2次安倍政権が発足してからの3年半は、その判断を下すのに十分な時間と、多くの材料がありました。
そして、もしかしたら今回が現憲法下で行われる最後の国政選挙になるかもしれません。
一つ言えることは、“信用できない人間に、大切なものを預けるべきではない”ということ。


私は、今上天皇を敬愛しています。
それは、彼の天皇という身分についてでなく、一個の人格として尊いと思えるからです。
きっと生来のお人柄に加え、戦争を経た日本の歴史を踏まえ、現・日本国憲法が理想とする精神の範(象徴)たるべく人格の修練に励まれてきたことでしょう。
武力で威嚇し国を守るのではなく、徒(いたずら)な戦意を萎えさせる静かな心。
日本は、陛下のように穏やかで偏りのない国風であって欲しい…。



「オーバー・ザ・トップ」


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tags : 1987年 ロック ギター 映画80's スポーツ/ドライブ  

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