I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「自由への疾走」レニー・クラヴィッツ

2022.04.19

category : Lenny Kravitz

Lenny Kravitz - Are You Gonna Go My Way (1993年)

一見コワモテで攻撃的なロックが実はとても平和的な中身だったりする…但し“刺激、強め”です ♪

《すべての記事を更新》いたしました。【続きはこちら>>】をクリックしてご閲覧ください。


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tags : 1993年 HR/HM Rock/ファンク ギター 平和 反戦 名作MV 日本で人気  

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「フィールズ・オブ・ゴールド」スティング

2020.05.25

category : Sting & The Police

Sting - Fields Of Gold (1993年)

多くのミュージシャンがカバーし、ポール・マッカートニーをも嫉妬させたスティングの名曲 ♪


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tags : 1993年 AC 優しい愛 癒やし 

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「ハロウィーン・タウンへようこそ」from ナイトメアー・ビフォア・クリスマス

2017.10.20

category : Disney/Animation

This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas1 This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas2


This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas(1993年)



~The Nightmare Before Christmas~

西洋の慣習でありながら日本の文化として完全に定着し、国民に愛されているクリスマス…
赤と白を纏(まと)ったやさしげな笑顔のサンタクロースが子どもたちにプレゼントを渡すため空をかけ巡るイメージは、子どもだけでなくみんなを幸せな気持ちにさせてくれます。
一方、暗い闇夜に耳まで裂けたかぼちゃ頭のジャック・オー・ランタンが不気味な笑みを浮かべているイメージのハロウィン…

santa_convert_20131223150610.png This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas3

全く正反対ですが、もしもこの二つのイメージを一つにしたらどうなると思います? 



~概要~

「ハロウィーン・タウンへようこそ」は、1993年公開のディズニー(Touchstone Pictures)映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(The Nightmare Before Christmas)』のオリジナル・サウンドトラックであり、OP曲です。
制作は『バットマン』や『アリス・イン・ワンダーランド』など独特な世界観を映し出してきたティム・バートンで、彼がディズニーのアニメーター時代に書いた詩が原案となっています。

ディズニー(カテゴリ)というとミッキー・マウスなどの“かわいいキャラクター”や、シンデレラなどいわゆる“ディズニー・プリンセス”が社風を象徴していますが、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のホラー・テイストはこれと対極であり、アニメーションでありながら内容が不気味で子ども向けでないと判断されたためディズニー系列の大人向け実写映画会社タッチストーン・ピクチャーズの作品として公開されました。
しかし100名を越える一流のアニメーターが1コマ1コマ丹念に創造(1440コマ/分)し、完成まで3年を費やした(1分の映像を撮影するのに1週間かかったといわれる)という“ストップモーション・アニメーション”による人形の動きや表情が実に豊かであり、こうした手作り感のせいかホラー・テイストでありながら映像には何処か温かみを感じさせるものがあります。

映画の音楽は主役ジャック・スケリントンの歌声も演じたダニー・エルフマンが担当し、「This Is Halloween」を含めた作曲・作詞も彼が担いました。
本曲は映画の冒頭で物語の舞台となるハロウィン・タウンについてのイントロダクションの役割を果たしており、ハロウィン・タウンの住人(声優)によって歌唱されています。
こうしたオバケ・妖怪の世界の概念は私たち人間社会とはギャップがあり、日本でもそうしたダーク・ヒーローとして愛され続けたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』のOPテーマ曲でも、“お化けにゃ学校も試験もなんにもなーい!”と紹介されていました。

 



~Lyrics~

This is Halloween, everybody make a scene
今夜はハロウィン、みんなで騒げ
Trick or treat till the neighbors gonna die of fright
“トリック・オア・トリート!”お隣さんを震え上がらせるまで

【Trick or Treat】は、ハロウィンで子どもたちが仮装してご近所を回る際に発する言葉です。
[Trick]は“いたずら”[Treat]は“ごちそう”で、Treatをくれない場合は子どもたちがTrick(生卵を玄関に投げつけるなどいろいろ)しても許されるそうですが、日本人には教育的に差し障りがありそう?

ちなみに[Treat=お菓子]となったのは、カトリックの聖人らを弔う祝日『Allhallowtide(万聖節の時節;10/31-11/2)』に於いて子どもたちや貧しい人々が家々を回って歌を歌い、代わりに十字模様の入ったお菓子[Soul cake]を分け与えた慣習からきているようです。
1963年にこの歌をピーター・ポール&マリーが「A' Soalin」としてレコーディングし、2009年にはスティングもカバーするなど意外に侮れない美しさがあります。

 


Skelleton Jack might catch you in the back
スケルトン・ジャックに後ろから捕まると
And scream like a banshee
キミはバンシーみたいな悲鳴を上げ

物語の主人公ジャックは元々カボチャ頭の案山子(かかし)ですが、冒頭の「This Is Halloween」のシーンの中で全身を炎で焼いてしまい[skeleton(骸骨)]となってしまいました。
この非常にスマートなキャラクターのデザインについて、自らもディズニーのアニメーター出身であるヘンリー・セリック監督は“長い脚で華麗に動く蜘蛛が着想源”と語っています。

「This Is Halloween」には劇中のキャラクターが多く登場しますが[banshee]はこれに該当せず、アイルランドおよびスコットランドに伝わる家人の死を予告するという女の妖精で、彼女の泣き声が聞こえた家では近いうちに死者が出ると言われているそうです。


[CHILD CORPSE TRIO]
Tender lumplings everywhere
どこもかしこも、かよわいウスノロばかり
Life's no fun without a good scare
ステキな恐怖がなけりゃ、人生楽しくもない

私たちの世界では通常[scare(突然の恐怖)]は避けたいものですが、ハロウィン・タウンではその逆です。
[lumplings]は作詞者ダニー・エルフマンによる造語だそうで、私は[lump(のろま)]+[‐ling(…に属する人)]をイメージしました。
ちなみに彼は当時オインゴ・ボインゴ(Oingo Boingo)というロック・バンドのメンバーであり、1994年のアルバムで「Tender lumplings」という曲も発表しています。

…それにしてもオバケとはいえ、子どもが人生を語るとはちょっとナマイキ? 



~Epilogue~

本作の主人公であるジャック・スケリントン(Jack Skellington)はハロウィン・タウンの住民に“パンプキン・キング”と称されているように、ハロウィンを象徴するカボチャの提灯【ジャック・オー・ランタン(Jack-o'-Lantern)】《写真・左》を彷彿させます。

この提灯の由来については諸説ありますが、アイルランドの古い伝承によると[Jack the Smith]という飲んだくれで嘘つきな男にまつわる話が基になっているようです。
そのジャックがこの世の生を終えた時、生前の悪行から天国に行くことは叶わなかったものの、サタンを騙すことに成功して地獄行きも免れ、この時サタンから永遠に消えない地獄の炎を授かり、くり抜いたルタバガ(カブに似たアブラナ科の根菜)《写真・右》の中に灯してこの世の墓場を彷徨った…そして、そのランタンの灯火はundead(幽霊やゾンビなど)やvampire(吸血鬼)を遠ざけると一部の人々の間で信じられるようになってゆきました。
やがてこの伝承がアイルランド移民によってアメリカに伝えられ、ルタバガがカボチャに変わって広まった…とのことです。

This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas3 This Is Halloween from the Nightmare Before Christmas4


Wouldn't you like to see something strange?
見知らぬものを見てみたいと思わない?

物語は主人公ジャック・スケリントンがハロウィンにマンネリを覚え、初めて目にしたクリスマスの華やかさに心を奪われることに始まります。
そこでジャックはハロウィン・タウンでもクリスマスを催そうとしたり、自分がサンタクロースとなってクリスマス・タウンの子どもたちにプレゼントを配ることを思いつくのですが、あくまで“ハロウィン的思考”でしかクリスマスを捉えられない彼やハロウィン・タウンの住人らのギャップが滑稽であり、一方でそれがタイトルにもなっている【The Nightmare(悪夢のような出来事) Before Christmas】を引き起こすことにもなるのですが…。

This is Halloween, this is Halloween
今夜はハロウィン、楽しいハロウィン
Pumpkins scream in the dead of night
カボチャは夜中に悲鳴を上げる

クリスマスとハロウィン…
影があるから光が輝いて見え、光があるからこそ影の黒さが際立つものです。

物語の最後にジャックがサンタクロースに“上手くいくと思ったのかね?”と説教されたように、対極的な概念にあるものをきちんと理解もせず安易にこれを一つにすることは失敗を招くだけでなく、白と黒というそれぞれの際立った特性さえ失わせてしまうことにもつながりかねません(灰色は別の使い道がありますが)。
幸いなことに、私たちには白は白、黒は黒の魅力をそれぞれ両方楽しむ機会が与えられています。
まずはスリリングでミステリアスなハロウィンを堪能することにいたしましょう♪

でもジャックがやった[ビックリ箱のプレゼント]は、意外とやってみたい人も多い? 



「ハロウィーン・タウンへようこそ」


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tags : 1993年 ミュージカル アニメ ディズニー 映画90's ハロウィン 

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「それが愛というものだから」ジャネット・ジャクソン

2015.11.06

category : Janet Jackson

Janet Jackson - Thats The Way Love Goes1 Janet Jackson - Thats The Way Love Goes2


Janet Jackson - That's The Way Love Goes (1993年)



~Janet Jackson Unbreakable World Tour 2015~

今年10月、7年ぶりのアルバム『Unbreakable』をリリースしたばかりのジャネット・ジャクソンが、『Unbreakable World Tour』で早くも11月19日から来日公演を行います。
ジャネットといえば近年カタール人大富豪と交際・結婚《写真・右》、彼女が子どもを望んでいたことから一時は引退説まで囁かれもしましたが一転、2015年はアルバム発表(既に全米No.1を記録)&ワールド・ツアーの年となりました!

日本公演は2002年以来13年ぶりで、今回のツアーは北米以外では日本が最初の公演となります。
キャリアの集大成ともいえる今回のセットリストの一つ、「That's The Way Love Goes」をお楽しみください♪



~概要~

ジャネット・ジャクソンは言うまでもなく“King of Pop”マイケル・ジャクソンの妹であり、1980年代後半~90年代にかけてはマイケルをも凌ぐほどの活躍を遂げた、歴代有数のセールスを誇るアメリカの女性歌手です。
前作『Rhythm Nation』で兄譲りのド派手な集団ダンス・パフォーマンスにより日本のお茶の間にもすっかりお馴染みになったジャネットは、1990年の初来日公演でも東京ドームを満杯にするスーパー・スターぶりで、翌年にはヴァージン・レコードと5000万ドルの契約金で移籍(※)、その第1弾となったのが自身の名を冠したアルバム『 janet.』でした。
(※ジャネットは1996年にヴァージンと当時の史上最高額で再契約していますが、この間彼女が発表したアルバムはこの1枚のみ!)

「それが愛というものだから」はその1stシングルとしてリリース、Billboard Hot 100で8週連続No.1(年間4位)に輝くジャネット最大のヒット曲で、これは兄マイケルの「ビリー・ジーン」をも上回る記録です。
プロデューサーはA&Mレコード時代からのジャム&ルイス(Jimmy Jam and Terry Lewis)ですが、移籍の影響かジャネットが27歳と成熟したからか、前作までのストリートが似合うノイジーなサウンドから洗練された大人のテイストへの転換が図られた作品といえます。
ベースとなっているスローな“ダウンテンポ”はジェームス・ブラウンの1974年の作品「Papa Don't Take No Mess」がサンプリングされており、それにジョージ・ベンソン風のギターを融合し1970年代を彷彿とさせるムーディーで極上なポップ・ソングとして創作されました。

こうした懐古的なサウンドとクールで抑制の効いたジャネットのヴォーカルは音楽批評家にも賞賛され、グラミーでは“最優秀リズム・アンド・ブルース楽曲賞(Best R&B song)”を受賞しました。
このテイストはブリトニー・スピアーズやアリシア・キーズ、デスティニーズ・チャイルドなど多くの歌姫に影響を及ぼしていますが、日本の宇多田ヒカルもその一人。
1999年の「Addicted To You (Underwater Mix)」には「それが愛というものだから」からギター・リフがサンプリングされていて、実はこの曲には本家・本元“ジャム&ルイス”がプロデューサーとして名を連ねています(続く「Wait & See ~リスク~」にも参加)。


MVでは、“恒例?”となっている派手なダンスを前面に押し出したパフォーマンスは封印し、友人や恋人たちとゆったり過ごすホーム・パーティー風の映像となっています。
また、『MTV Video Music Awards』にもノミネートされたこの映像には、当時まだ無名だったジェニファー・ロペスも出演しているので、刮目(かつ もく)してご覧ください♪

 




~Lyrics~

Like a moth to a flame
炎へと舞い
Burned by the fire
その身を焦がす蛾のように

日本でも“飛んで火に入る夏の虫”と言いますが、これもそうした蛾の習性から生まれたことわざです。
蛾に限らず多くの昆虫には光刺激に反応し移動する“走光性”があり、太陽や月明かり(真上からの平行光)では正常に機能するものの、火や照明器具による光(点光源)を浴びると感覚に狂いが生じ、光源に向かって螺旋を描いて飛行してしまいます。

高等生物を気取っている私たち人間も、一旦“恋の光”を浴びると平衡感覚を失い、危険の認知に関わらず光源に向かって真っすぐ吸い寄せられる習性があるのかもしれません…。 


I'm gonna take you places
連れて行ってあげたい
You've never been before and
あなたの、まだ知らない世界

昔、夏休みの楽しみの一つに、心霊体験を元にした再現ドラマ特集があって…
エっ? “ソッチの世界”(※)じゃない!?
(※1997年まで日本テレビ系昼帯枠の特番として放送されていた『あなたの知らない世界』)

…まぁ、そりゃそうだっ? 
人はそれを“天国”と呼ぶのだろうけれど、きっとそれは「Heaven Is A Place On Earth」とはまた趣きが異なります。
あなたなら、どんな世界へと導いてくれますか…?


I like to watch us play and
二人の営みすべてを見届けたいの、そして…
Baby, I've got on what you like
あなたの望みのままに、この身を任せる

“この身を任せる”なんてキレイにまとめていますが【get on(乗る)】ですから、本当はその反対!? 
詞全体を見通しても、“かなり積極的な姿勢”が窺えます。
この辺はジャネットが20代後半という年齢に入ったことも影響があるのでしょう。

お姫さまのようにただ“愛される”だけでなく、相手が望むことをしてあげる“愛する”悦びに目覚めたのかもしれません。
思いやりでした行為によって相手が喜んでくれると、最高の気分になれますよね♪ 
 逆に喜んでもらえなかった時、最悪の気分ですが?)



~Epilogue~

官能的でロマンティックなテイストは「それが愛というものだから」の魅力といえますが、楽曲は当初“失恋トーン”だったそうです。
ジャネットがインストゥルメンタルを初めて聴いた時、それに興味が湧かずジャム&ルイスに方向性を改めるよう要望したといわれます。
その修正版のテープを持ってジャネットはバカンスへと発ち、2週間後に帰国した彼女は興奮して言いました…

“これ、大好き!こんなの聴いたことない!絶対ヒットするわ、すぐ完成させましょう!”
出発前とは打って変わった態度ですが、彼女によると“もうコンセプトは考えてある”といいます。
それが…

“That's the way love goes”


…現実のジャネットは、これまで2度の離婚歴があります。
3人目のダンナさまは9歳年下で、何といっても“資産10億ドル”といわれる大富豪(ジャネット自身も同等の資産がある)!
アラブの大富豪というとカンドゥーラ(白いマキシ丈のワンピース)とクゥトラ(頭に被る布)といったお馴染みの民族衣装を思い浮かべますが、《写真・右》を見ると彼は(西洋文化的に)お洒落なカジュアルを着こなす、かなりのイケメンです!

「それが愛というものだから」以降のジャネットというと何かとセクシーさが強調され、2004年スーパーボウルのハーフタイム・ショーでの“事件”も含め、かなり大胆な肌の露出が話題となることもありました。
ところが、今年公開された『Unbreakable』からのシングル「No Sleeep」のMVでは体のラインを隠すような全身布で覆われた衣装を纏っており、現在行われているツアーの衣装も同じ傾向が見られるようです。
これはイスラム教徒であるダンナさまへの配慮とも、既にジャネット自身がイスラム教に改宗したためともメディアで言及されています。



新曲「No Sleeep」は“一緒にいる時、二人は眠らない”と大切な人との時間を愛おしむ女性の心情を歌った作品ですが、新婚の彼女のメッセージが誰に宛てられているかは、言うまでもありませんね?
誰もがジャネット夫婦のように異なる文化と宗教を越えて深く愛し合えるものではありませんが、現在の彼女の変化の中に、その秘訣を見出すことができる気がします。

That's the way love goes
それが、愛というものだから

試練を乗り越えた現在のジャネットなら、私たちをもっと深い“愛の世界”へと導いてくれることでしょう…。



「それが愛というものだから」


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tags : 1993年 ニュージャックスウィング 情熱の愛 グラミー ジャム&ルイス 

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「シェイプ・オブ・マイ・ハート」スティング

2015.01.23

category : Sting & The Police

Sting - Shape of My Heart1 Sting - Shape of My Heart2


Sting - Shape of My Heart (1993年)



~Shape of My Heart~

スティングの名曲「シェイプ・オブ・マイ・ハート」を語る時、映画『レオン』と切り離すことはできません。
あまりに薄幸な物語の結末に胸を痛めていると、流れてくる哀しいギターの響き…
せつなくも美しい調べの中、その余韻に浸ってしまわれた方も多いことでしょう。
しかし「Shape of My Heart」というタイトルを含め歌詞を紐解いてみると、映画ではあまり語られることのなかったレオンの心情を代弁しているようで、もっと彼に近づくことができたような気がします。

記事を読み終えたあなたも、そうであることを願って…。



~概要~

「シェイプ・オブ・マイ・ハート」は1993年3月発売のスティングの4thソロ・アルバム『テン・サマナーズ・テイルズ (Ten Summoner's Tales)』の収録曲で、シングルとしてはイギリスで57位を記録しました。
作品はスティングと、彼のサポート・メンバーとしても有名なドミニク・ミラーの共作で、印象的なギターはドミニクによる演奏であり、ネットでも二人の素敵な映像をいくつか確認することができます。

 

このギター・リフは1996年にアメリカのラッパーNas(ナズ)が「The Message」でカバーすると、以来モニカ「Take Him Back」ほかR&Bやヒップ・ホップ界を中心にカバーorサンプリングで人気のリフとなりました。
また、2001年にはマイケル・ジャクソンがアルバム『Invincible』の未発表ながら「Fall Again」で、日本でも1999年に宇多田ヒカルが「Never Let Go」に“よく似たリフ”を取り入れています。


「シェイプ・オブ・マイ・ハート」は『レオン』のイメージが強いと思いますがサウンドトラックとしてはウィリアム・ボールドウィン主演の映画『スリー・オブ・ハーツ(Three of Hearts)』が先(1993年)で、ここでは甘いラブ・シーンのバックに使用されています。

翌1994年、リュック・ベッソン・初のハリウッド監督作品『レオン(Léon)』のEDテーマとして使用され、映画の大ヒットと共にスティング・ファン以外にも「シェイプ・オブ・マイ・ハート」が広く知られるようになりました。
劇中で主人公“レオンは牛乳好きの殺し屋”というギャップのあるキャラクターとして描かれていますが、コレまた牛乳と縁の無さそうな(?)“スティングの実家が牛乳屋”というトリビアも意外でしょ!? 

 
Sting - Shape Of My Heart (Official Music Video) / Three of Hearts



~Lyrics~

He deals the cards as a meditation
男はカードを配る… 瞑想の如く、静かな心で
And those he plays never suspect
疑うことなく、ただ無心に

男はカジノのディーラーか、名うてのギャンブラーでしょうか…。
“ポーカー・フェイス”の例えがあるように、『アンサイクロペディア』はポーカーについて“いかさまの応酬がメインのゲーム”と定義しています。
“イカサマは見つかったら即失格だが、見つからなければやり放題”…
そんな世界に、男は何故“道”を追い求めるのであろう…。

一方レオンは殺し屋ですが、“何が起きるか分からないギャンブル的要素”は共通しています。
“失敗=死”の世界だからこそ、その遂行に極限まで感情を排し感覚を研ぎ澄まさねばならないのでしょう。


The sacred geometry of chance
偶然という神の配列を
The hidden law of a probable outcome
確率に隠された必然を

…このアタリの探求に快感を覚えるかどうかが、数学向きか否かの分かれ目なのでしょうね?
偶然を“たまたま”で済ますか、“神の意思”と捉えるかによって事象の意味も違ってきます。
ソレってまさに“占い”の領域でもありますが、その答えを裏付けているのが数学というのも、面白いハナシです。

男はそんな変わり者であり、実際スティングも“お金儲けでなく、哲学者のようなギャンブラーについて書きたかった”というようなコメントを残しています。


And if I told you that I loved you
もしも、愛してると君に告げていたなら
You'd maybe think there's something wrong
どうかしてるって、思われていただろうか…

男は、“you”に告げることはできなかったのでしょうか…。

殺伐とした殺し屋の世界を描いた映画に於いて心を和ませてくれるのが、少女マチルダのレオンへの熱烈なラブ・コール。
“殺し屋と少女の恋”というと私は北条司・原作の漫画『シティーハンター』を思い浮かべてしまいますが、当時ジャン・レノ;46歳/ナタリー・ポートマン;13歳という年の差でした!



~Epilogue~

I know that the spades are the swords of a soldier
スペードは戦士の剣
I know that the clubs are weapons of war
クラブは戦争の兵器

トランプには4つのスート (suit) があり、日本で普及しているのはフランス式(英米式)
一方、タロットのスート(小アルカナ)はラテン式で、それぞれには以下の種類と意味があります。
( )内はラテン式]

スペード(ソード/swords;剣) ・・・・ 【力】【戦い】などの外交的な力を司る
クラブ(ワンド/wands;棍棒) ・・・・ 【知性】【活動】などの内面的な力を司る
ダイヤ(コイン/coins;貨幣) ・・・・  【財産】【お金】等の物質を司る
ハート(カップ/cups;聖杯) ・・・・  【愛情】【感情】などの感覚を司る


I know that diamonds mean money for this art
ダイヤは、“このアート”と引き替えの貨幣

「シェイプ・オブ・マイ・ハート」の歌詞でスティングのセンスを特に感じるのが、【art】という言葉の用い方です。
このニュアンスを残しておきたくて、私は敢えてこれを訳しませんでした。
【art】は言うまでもなく“芸術”ですが、そのまま当てはめると解り辛いでしょ?
恐らく第一義的には1行上の【war】の韻を踏ませたのだと思いますが、実は【art】は“勉学や練習、観察によって身につけた高度な能力・職業”とか“ずるさ・狡猾”といった意味を併せ持ち、スティングは“ギャンブラーは芸術的なほど高度で狡猾な技能によって成立する技芸(職業)”と定義しようとしたのではないでしょうか…(“殺し屋”も、そんな要素がありそう)。

♠♣一方、映画のレオンは過酷な世界を生き抜く強さや技能、知識・経験を備えています。
♢それらによって、十分な収入も得ています。

But that's not the shape of my heart
だけど、ハートは僕の心の形ではない

少女マチルダの登場によって、レオンは遂に“ハート♡”を形づくる夢を得ました。
それまで彼は感情を抑え“敵わぬ犬には噛みつかない”慎重さで巧みに生き延びてきましたが、皮肉にも“守るべき人”と感情を甦らせたことで、敵うはずもない犬に噛みつく無謀を犯してしまいます。

“あの日”出口まであと数メートルの通路で、彼は何を思ったことだろう?
…だけど、決してそれは後悔じゃない
やっと“心”にめぐり逢えたことを…


これは、そんな幸薄い男に捧げるレクイエム… 



「シェイプ・オブ・マイ・ハート」


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tags : 1993年 哀愁 泣きのギター 映画90's 日本で人気 

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