George Michael - Fastlove (1996年)~10年ぶりの新作発表!~レコード・セールス1億2000万枚を誇るスーパースターでありながら、近年は薬物使用や交通事故など私生活でのスキャンダルばかりが目立ち、果ては2011年に肺炎のため一時意識不明の重体にまで陥ったジョージ・マイケル。
しかしその約9ヵ月後のロンドン・オリンピック閉会式では、見事なパフォーマンスで復帰をアピールしファンを安心させてくれました(新曲を歌ってバッシングを浴びましたが…)。
それ以来となる新作はナンと10年ぶりのアルバムで、オリジナルとしてはソロ6作目となる
『Symphonica(シンフォニカ)』が今月発売される予定です。
このアルバムでは2013年3月に79歳で亡くなったグラミー賞14回受賞の名プロデューサー、
フィル・ラモーン(
ビリー・ジョエル「素顔のままで」など)との共同プロデュース作品で、彼にとってはこれが遺作となってしまいました。
先行シングルとなっている
「Let Her Down Easy」は「Wishing Well」などのヒットで知られるテレンス・トレント・ダービー(現サナンダ・マイトレイヤ)のカバー曲となっていて、なかなかアート性の高いバラードですよ♪
「Let Her Down Easy」~概要~「ファストラヴ」は1996年の3rd
アルバム『オールダー(Older)』に収録され、2ndシングルとしてBillboard Hot 100で
8位(年間62位)を記録しました。
イギリス・オーストラリア・イタリアでNo.1に輝いており、全英シングル・チャートとしては現時点で最後のNo.1となっています。
1990年代前半、ジョージは所属レーベルのソニーと泥沼の係争騒ぎを起こしていて、移籍を経てのソロ3作目は2ndアルバムから約6年の歳月が流れていました。
(それにしても、ソニーは“
マイケル”という名の人物とは相性が悪い!?

)
音楽的には強烈なR&Bダンス・ビートが根底になっていますが、その素となっているのが
パトリース・ラッシェン1982年の
「Forget Me Nots」(23位/Hot 100)で、特に後半には彼女のヴォーカルもサンプリングされています。
ちなみにこの影響か、「ファストラヴ」がヒットした翌97年には映画『メン・イン・ブラック』で主演の
ウィル・スミスが歌ったラップの主題歌にもパトリースの「Forget Me Nots」がサンプリングとして使われました。
ミュージック・ビデオは当時よく話題に挙がった“バーチャル・リアリティ(Virtual Reality)”をテーマとした映像になっていて、登場するセクシーなダンサーらはジョージにリモコンで操られる“仮想現実”という設定ですが…
その、“ジョージ自身も実はバーチャル・リアリティだった”というオチが最後に用意されていますよ!
また、登場するダンサーが装着しているヘッドホンのロゴが、
“FONY”となっているのは、何やら上記因縁と関係アリ!?
~Lyrics~Looking for some education僅かばかりの啓発でいいMade my way into the night夜に、俺の望みを叶えておくれ冒頭の部分で、“education”という言葉を選んでいる所にセンスを感じます。
たぶんこの歌で主人公は相手に“救い”を求めていると思われ、それが“education”であり“affirmation(肯定)”であるわけです。
educationは一般に“教育”という意味で知られますがちょっと“公”なカンジがして、主人公の心情を察すると
ここではもっとプライベートな教えを求めているのだと思いました。
“啓発”は、“人が気づかずにいるところを教え示して、より高い認識・理解に導くこと”とあるので、この場面で抱いた私のイメージに最も近い言葉だったのです。
You could help to ease my mind君なら、この心を救ってくれるBaby, I ain't Mr. Right“Mr. Right”なんか、なれないこの俺を・・・和訳には敢えて入れませんでしたが、“Mr. Right”は“結婚相手として理想的な男性”という意味です。
主人公が、そんな生き方はできないと自覚していると考えれば、彼の背景にある苦悩もうっすらと見えてくるのではないでしょうか…。
My friends got their ladies And they're all having babies友達はみんな、女と子どもを得ているがBut I just wanna have some fun俺は、僅かな慰みさえあればいい“男の背景にあるもの”が、さらにクローズ・アップされています。
周りがごく普通の家庭の幸せを築いてゆくのを、彼はどんな想いでこのように綴っているのでしょう。
“主人公=ジョージ自身”と想定すると、その本当の意味が理解できる…?
~Epilogue~“Fastlove”は、恐らく“fast food(即席料理)”に基づいた造語と思われます。
“fast”は速いという意味が一般的ですが“次から次へと歓楽を追う”という意味もあり、
Fastloveは
“刹那的・享楽的な恋”と理解することもできるでしょうか…。
私が今回、loveに“恋”という日本語しか充てなかったのは、
“愛に、刹那的・享楽的はない”と捉えるためです。
こうした使い分けができると思えば、日本語もなかなかクールな言語でしょ?

一方で主人公はそうした恋の営みを、“bad love”と認識しているようです。
恋は刺激を求めるもので、
愛は安心を求めるものだとしたら、人は最後は安心に辿り着きたいものなのかもしれません。
でも人に安心を与えるというのは容易いものではありませんし、それぞれに抱えた“事情”というものもあります。
Had some bad love僅かばかりのbad love…Some fastlove is all that I've got on my mind僅かなfastloveさえ、あれば…果たして、「Fastlove」とは…?
「ファストラヴ」)
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