Elton John - Candle in the Wind 1997~8月31日はダイアナ元英皇太子妃の命日~今年7月、ウィリアム王子とキャサリン妃の間に待望のジョージ王子が生まれたイギリス王室。
母であるダイアナ元妃がフランスで謎の事故死を遂げた1997年8月31日から丸16年となる今年、彼女に関する話題が脚光を浴びました。
1つは今月17日に報じられた、“彼女の死は英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)による暗殺”と示す証拠が、別件の裁判で提出されたというもの。
もう1つは、ナオミ・ワッツを主演とする伝記映画『ダイアナ』が10月18日に日本で公開されるというものでした…。
~哀しみに彩られたシンデレラ・ストーリー~史上例のないほど注目を集め、華やかなシンデレラ・ストーリーとして世界中に伝えられた
1981年2月24日のチャールズ王太子との結婚式により世界の女性の憧れの的となったダイアナ元妃でしたが、そもそもこれが悲劇の始まりでした。
チャールズ王太子は以前よりカミラ夫人(現コーンウォール公爵夫人;つまりチャールズ王太子の妻)を愛していたものの、相手は既婚者であるためにダイアナ元妃との結婚を決断するのです(以下、敬称略)。
しかし結婚後もチャールズはカミラと愛人関係を継続したため、ウィリアム、ヘンリーという2人の王子に恵まれたにも関わらずダイアナに心の平穏はありませんでした。
1990年代初めにはチャールズとカミラの携帯電話の会話の録音テープが暴露され、カミラは1995年に当時の夫と離婚、
ダイアナも1996年8月28日に正式離婚しています。
その約一年後…
“武器商人の御曹司でイスラム教徒”である恋人と、フランスのパリでの悲劇的な交通事故によりダイアナは亡くなってしまうのです(享年36)。
この時、“ダイアナは彼の子どもを身ごもって”いました…。
こうした“イギリス王室にとって不都合な要素”が多数揃っていることから、謀殺説が常に囁かれる事となるのです。
~作品の概要~9月6日、ダイアナの葬儀がウェストミンスター寺院で執り行われましたが、国葬ではなくそれに準ずる“国民葬”という形が採られました。
この時ダイアナと親交のあったエルトン・ジョンが歌ったのが「Candle in the Wind」で、ファンの方はご存知のように
1973年のアルバム『Goodbye Yellow Brick Road(黄昏のレンガ路)』に収録された作品を基にしたものです。
翌年にイギリスでシングル・カットされ11位を記録し、1987年にはアルバム『エルトン・スーパー・ライヴ 〜栄光のモニュメント〜』からカットされBillboard Hot 100で
6位(英5位)と再ヒットしています。
オリジナル作品の邦題は「風の中の火のように(孤独な歌手、ノーマ・ジーン)」とされていますが、この耳慣れない歌手の芸名は“
マリリン・モンロー”といいます!
そう、あの伝説のセクシー女優のことであり、彼女は映画の中で数多くの歌をパフォーマンスした歌手でもあったのです。
…とはいえ、マリリンが亡くなったのは1962年とその十年以上前のことで、歌詞によると作詞者バーニー・トゥーピンは当時まだ子どもだったと言っています。
エルトンはダイアナの悲報に大きなショックを受けますが、気を取り直して作詞者であるバーニーにダイアナへのトリビュートとして詞の書き換えを依頼しました。
こうして葬儀で披露されたのが「Candle in the Wind 1997」で、ここでは直接Dianaの名は用いず
“England's rose”と呼び掛けています。
ダイアナの死の直前には彼女の称号“Princess of Wales”の名を冠した新種のバラが生まれており、名実共に彼女は“英国の薔薇”となっていたのです。
この葬儀の後、ビートルズのプロデューサーだったジョージ・マーティンを招いて急遽追悼シングルとして編集され(
Something About The Way You Look Tonightとの両A面 )、イギリスの9月13日をはじめ続々と世界中でリリースされました。
Billboard Hot 100では
14週No.1の大ヒットを記録、年間でも1997年1位+1998年8位という離れワザをやってのけました!
世界各国でNo.1に輝き
全世界で3700万枚以上も売り上げ、正確な枚数が判らないビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」(5000万枚ともいわれる)を除けばシングル売り上げの世界記録とされています。
~1973年盤との違い~「Candle in the Wind 1997」では、1973年のオリジナルの特徴的なフレーズを所々残してストーリーが組み立てられていますが、対照的なのはタイトルでもある「Candle in the Wind」の持つ意味合い。
And it seems to me you lived your life like a candle in the wind…
…と喩えるのは同じですが、それに続くフレーズが正反対です。
73年のは…
Never
knowing who to cling to when the rain set in
雨が降っても、誰にすがりつけばよいのかも分からない97年は…
Never
fading with the sunset when the rain set in
雨が降っても、夕陽にも褪せることがない73年のは“風前の灯”の一般的な解釈を補っているのに対し、97年のはfade(次第に薄れる)を否定することで強さを表現しています。
従って私は、この場合の“Candle in the Wind”も“風にも負けず輝くキャンドルの灯”と解釈して訳しました。
サビの最後でYour legend ever
did(73年)がYour legend ever
will(97年)に替えている点やその他のフレーズからも、73年のはマリリンの死を儚んだのに対し
97年のはダイアナを讃える意味合いが強いようです。
わずか数日で歌詞を書かねばならなかったせいか、メロディーやリズムへのノリの完成度が不十分な所もありますが、まさにダイアナに相応しい美しい詞だと思います。
私はこのバージョンの、シンプルな中にもピアノが美しく響くアレンジが気に入っていて、長年歌い続けた作品なのに新鮮さが失われていないエルトンのヴォーカルにも心を打たれました。
~Epilogue~ダイアナという一人の女性の人生を振り返る時いつも、“幸せとは何か”を考えさせられます。
それは、どんなに富貴を極めても幸せを保障するものではないという現実。
ティアラを飾り美しいドレスをまとっても、彼女には
“あるべきはずの大切なもの”に恵まれませんでした。
それこそは、身分やお金が用意してくれるものではなく、パートナーである二人自らが力を合わせ守り育まなければならないものです。
“ともに生きる根拠”を…。
「キャンドル・イン・ザ・ウインド 1997」
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