Kool & The Gang - Joanna (1983年)~寛(ひろ)い心で~ 元ビートルズのリンゴ・スターがトランプ大統領就任日に平和を訴える自身の楽曲「Now the Time Has Come」(
Beatles「Yellow Submarine」 の記事で紹介)の無料DLを行ったそうですが、彼が抱く危機感に共感を覚えるという方も多いのではないでしょうか?
不動産王ドナルド・トランプ氏がこれまで成功を築いてきた
ビジネスの世界は相剋によって“強者が弱者を併呑”することで己がより強大に なったかもしれませんが、
政治は“みんなが共存できるもの” でなければ成立し得ません。
“挙国一致の価値観”は差別を生み、差別は憎しみを、憎しみは暴力を、暴力は破滅をもたらします。
どうか世界の民主主義のリーダーであるアメリカが、平和裏に“寛容”を取り戻せますよう…。
~概要~ クール&ザ・ギャングの系譜は実に1964年にまで遡り、1969年にデビューしたアメリカのソウル/R&Bファンクのバンドです。
当初はリード・ヴォーカルを置かず、ジャズ・ファンクを中心とした曲を演奏していました。
70年代もそこそこヒット曲は出していましたが、バンドの転機となったのは1979年のジェイムス“JT”テイラーの加入です。
彼の加入により念願のリード・ヴォーカルを獲得、以降“新生”クール&ザ・ギャングはヒット曲を多く生み出してゆきます。
「ジョアンナ」は、1983年のアルバム
『イン・ザ・ヒート(IN THE HEART)』 の収録曲。
アルバムからは“彼ららしい”ノリノリなファンク・ナンバー「Straight Ahead」
が1stシングルとしてカットされますがBillboard Hot 100でマサカの103位(この曲がヒットしないなんて、信じられない)!
続く2ndシングルとしてリリースされたのが“彼ららしくない”スローなバラード「ジョアンナ」で、
Hot 100の2位(R&B1位/1984年の年間24位) と、1stシングルとは真逆の評価がなされました。
こうした、ファンク・バンドなのにその王道であるファンクが評価されず真逆のテイストがヒットしてしまうというのは案外よくあることで、同時代に活躍したロック・バンドTOTOやフォリナーの、ロックよりバラードばかりがヒットしてしまう例に似ています。
しかし「ジョアンナ」とTOTOの共通点は、それだけに止まりません。
TOTOというと歴代、「Angela」や「Lorraine」、「Goodbye Elenore」といった女性名を冠した曲が多いですが、1983年の
「Rosanna」(過去ログ) では遂に“グラミー3冠”を獲得しています。
実は、「ジョアンナ」はクール&ザ・ギャングのギタリスト、チャールズ・スミスが持ち込んだ
「Dear Mom」 というナンバーが原曲でした。
ところがサックスのロナルド・ベルが、
“今は(「Rosanna」のような)ネーム・ソングがトレンドだ ” と言い出したことから、それが女性名の「Joanna」に変更になったそうですよ!
VIDEO VIDEO ~Lyrics~ She gives me her love and a feeling that's right 愛と優しさを捧げてくれる、そうさ… Never lets me down, especially at night 夜は、決して物思いさせたりしないひと 恋人や伴侶が愛と優しさを捧げるのは、当たり前…
…果たして、そうでしょうか?
少なくとも、それを受ける側がそれを当たり前と思ってしまったなら、あとは“減点”しかありません。
少しでもそれが足りないと、不満ばかりが募る…。
…ところでさ、 “決して僕をガッカリさせたりしない、特に夜”
って、ドユコト? She picks me up when I'm feeling low 沈んだ時、手を差し伸べてくれたひと And that's why baby I've got to let you know …だからこそ、君にこの想いを伝えたい 【low】と【know】の韻がいいカンジ♪
あと、【low】の時【pick up(拾い上げる)】してくれるという表現も気に入りました。
人に助けてもらうのはうれしいことですが、“人間関係の妙”はむしろその感謝の気持ちを相手に伝えた時にこそあるような気がします。
その時、彼はその想いをどんな風にして伝えたのだろう…。
We can do all night, so nice 君となら、夜も素敵に越えられる We'll have it all and everything will be alright 二人なら、何だって手に入れ、上手くいく “男と女が一晩中できる、とってもイイコト”って、何でしょう…
せっかくの美しいバラードだけに、“それ”を匂わせていいものか日本語に変換する上で意外と気を遣います。
いいんじゃね?それが“funk”というものだもん!
アンタが下世話なだけでしょ?
~Epilogue~ 「ジョアンナ」は楽曲だけでも十分あったかいテイストのラブ・ソングですが、それを更にほのぼのとさせてくれるのが“Joanna's Diner”という小さなレストランを舞台としたPV。
しかし店内に入り、登場するジョアンナと思わしき女性は“髪に白いもの”が混じっていて、恐らくこの歌を聴いた殆んどの人が“期待”を裏切られたことでしょう(元歌となった「Dear Mom」の名残かも)!?
そして、息子のように若く、甘いルックスと歌声の“JT”テイラーに導かれるように彼女は若かりし頃のよき思い出へと心を巡らせてゆきます…。
アメリカを象徴するイメージに
“アメリカン・ドリーム” がありますがそれは一握りの覇者・勝者による夢物語であって、PVに描かれるジョアンナは恐らく若い頃の夢は叶わぬまま人生の半ばを過ごし、やがて近しい人以外に知られることもなく静かに人生の幕を下ろすであろう、彼の国の96%の人生を象徴する女性…。
(※実際に
アメリカン・ドリームが叶う確率は約4% といわれる)
Joanna, I love you... You're the one, the one for me この世で唯ひとり 僕にとって、かけがえないひと きらびやかな光が行き交う都会から遠く離れた町の片隅で、ひっそりと生きる…
勝者にとって、それは取るに足りない小さな人生かもしれない。
でもそんな人生にだって、彼女の生誕を祝い、その成長を喜び、心を交わし、愛し、愛され、その死を悲しむ人たちがいる。
彼女の人生は彼女ひとりだけの価値ではなく、彼女の幸せを願い、それを見守ってきた人たちの願いでもある。
そういうごく平凡な誰かの人生を、おおらかに励ます心…
ここにこそ、私の大好きなアメリカがある。
「ジョアンナ」 VIDEO 続きはこちら >>
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1983年 R&B/ポップ 優しい愛