Stevie Wonder - Living For The City (1973年)~概要~ 「汚れた街」はスティーヴィー・ワンダー1973年の16thアルバム
『インナーヴィジョンズ (Innervisions)』 の収録曲で、2ndシングルとして
Billboard Hot 100の8位(1974年の年間45位) を記録しました。
作品の発表により、1974年のグラミーでスティーヴィーが
“Best Rhythm & Blues Song” を、1975年のグラミーで本曲をカバーしたレイ・チャールズが
“Best Male R&B Vocal Performance” を受賞しています。
また、ローリング・ストーン誌2010年版の
“The 500 Greatest Songs of All Time”105位 にもランクされた楽曲です。
作者はもちろんスティーヴィーで、フェンダー・ローズやドラムス、シンセベース、シンセサイザーといった全ての演奏もスティーヴィー1人による多重録音でレコーディングされました。
それを可能にしたのが
【TONTO】 (The Original New Timbral Orchestra)という当時世界最初&最大のポリフォニック・シンセサイザーで、スティーヴィーが楽曲・サウンド共に時代の最先端を走っていたイメージはこの機材を用いていた時期と重なります。
「汚れた街」は、
レイ・チャールズ 以外にもソウルデュオ・アイク&ティナ・ターナーやディープ・パープルのイアン・ギラン、ジャズ・ピアニストのラムゼイ・ルイス、R&B歌手アッシャーといった幅広いジャンルにカバーされる人気曲です。
但し、今回私が見つけた“イチ推し”は
「Living for the Paradise City」 というダジャレめいたタイトルの動画。
【スティーヴィーのヴォーカルとGuns N' Roses「Paradise City」の演奏のマッシュアップ】で、これがまた絶品!
…以来、私の中ではヘビーローテーションしています♪
「汚れた街」は一般に
人種差別に対する抗議のメッセージ が込められていると解されていますが、実際にアルバム『Innervisions』を発表する数ヶ月前の1973年4月28日、
ニューヨークで10歳の黒人少年が白人(私服)警察官によって射殺される事件 が発生し、周辺地区で暴動に発展して多数の負傷者が出る騒ぎとなっています。
(警官は起訴されたものの、白人11人/黒人1人という陪審員によって無罪判決が下された)
少年の葬儀には何千人もの人が参列し、スティーヴィーもその一人で、その時のインタビューで彼は次のように語ったそうです。
“僕の心にアメリカの愚かさがまた一つ刻まれてしまった。黒人の人たちが事の重大さを認識して、行動を起こすことを期待します…”
VIDEO VIDEO VIDEO VIDEO ~Lyrics~ A boy is born in hard time Mississippi ミシシッピが厳しい時に生まれた少年 Surrounded by four walls that ain't so pretty 汚れた壁に囲まれた場所だった 主人公は黒人少年とその家族で、彼らは不当に安い対価での労働と貧しい生活を強いられています。
その暮らしぶりについて【just enough】と表されていますが、その実情は“過不足ない”より“ぎりぎり(で生きている)”印象です。
彼らは
有色人種であるという理由で雇用差別 を受けており、正当な職業に就けない弱みにつけ込まれ、生きてゆくために不当な労働を受けざるを得ない…といった事情でしょう。
作品の間奏部分で、
成長した主人公の“その後”と思われる寸劇 が挿入されています。
彼は憧れのニューヨークへ到着し、バスから降りてその光景に感慨を覚えていると突然パトカーがやって来て、状況が理解できぬ間に逮捕され“10年の罪”を着せられてしまう内容です。
まるで、前項で言及したニューヨークの事件のよう…。
Her skirt is short but Lord her legs are sturdy スカートは短いけれど、脚は健康的 To walk to school she's got to get up early 学校に歩いて通うため、早起きしなくてはならない アメリカ南部諸州には、1964年まで
『ジム・クロウ法(Jim Crow laws)』 という州法が存在しました。
ジム・クロウ法は黒人労働力に依存する南部白人農園主たちの“黒人が白人と平等になっては困る”という思惑を代弁する人種差別法で、
“有色人種(主に黒人)に対し一般公共施設の利用の禁止・制限” を定めています。
(アラバマ州では)公共交通機関の利用は禁じていませんでしたが“白人優先席”が設けられており、1955年に市営バスに乗車した
黒人女性が運転手の指示に従わず白人優先席に座ったため逮捕 されるという事件が起こりました(モンゴメリー・バス・ボイコット事件)。
これを知った
キング牧師らがバスへの乗車ボイコットを呼びかけ ると、バス利用者の約4分の3を占める黒人が一斉に利用しなくなって逆に市側が経済的大打撃となり、連邦最高裁もこの人種隔離政策に違憲を下したため、約1年で問題が収束しています。
~Living For The City~ スティーヴィー・ワンダーが「Living For The City」を発表したのは、1973年。
ニューヨークで10歳の黒人少年が白人(私服)警察官によって射殺される事件が発生した年ですが、40年以上が経過した現在もアメリカでは
ヘイトクライム (人種、民族、宗教、性的指向などに係る特定の属性を有する個人や集団に対する偏見や憎悪が元で引き起こされる暴行等の犯罪行為)が後を絶たず、FBIの犯罪統計によると、
2017年に通報されたヘイトクライムは7175件(前年比約17%増)で、3年連続で増加 とのことです。
2017年に“メキシコとの国境に壁”という極端な公約を掲げたドナルド・トランプ政権が誕生して世界を驚かせましたが、トランプ氏を熱烈に支持しているのはメキシコからの(不法)移民に仕事を奪われる脅威を感じた南部地方を中心とする白人労働者階級。
“自由の国”を標榜するが故にアメリカには長年多数の移民が流入し、結果
1960年に人口の85%を占めていた白人は2014年時点で62.2%まで低下 、そうした事態にアメリカでの主導権を他民族に奪われる危機感を覚えた
白人層が右傾化 、一部が白人至上主義やヘイトクライムなど過激化し、極端な考え方の政権を誕生させてしまったといえるのではないでしょうか…。
しかも
“2050年に白人は47%で半数を割る”と予測 されており、将来的にアメリカの政治体制は政治理念に基づくのではなく【共和党(白人)】と【民主党(非白人;ヒスパニック+黒人+アジア系)】という人種・民族の主導権争いになってしまうのかもしれません。
【危機的な日本の国会…でも、国民の多くはそれに無関心?】 一方日本に目を転じると、これまで医者や弁護士など「高度な専門人材」に限って認められた外国人の就労目的での日本在留資格を、建設・コンビニ・介護など「単純労働者」にも拡大する
移民政策の大転換について、政府に白紙委任することを定めた『出入国管理法(入管法)改正案』 がスケジュール通り衆議院を通過し、会期末(10日)前12/7の成立を目指して参議院で審議中です。
しかし予想どおり
審議はこれが国権の最高機関かと疑う惨状 で、政府は法案の内容についての質問にマトモに答えないばかりか、11/29の参院法務委では昨年自民党自らが強引に増やした「与党3:野党7」の
質問時間割当の責任を、長谷川岳議員(自民)と伊藤孝江議員(公明)が全うせず、合計57分を使い切らぬまま質問を終了 してしまいました。
しかもあまりに絶望的な現実は、森友事件や働き方改革での文書があれほど“あり得ない捏造”と非難されたはずなのに、
今回の審議でも政府は全く反省なく虚偽を用いている ことです。
昨年からの1年半で技能実習生が1万1368人失踪した問題について、
法務省は摘発された実習生2870人の聴取票を集計 し、
実習生の失踪動機を「より高い賃金を求めて」が86.9% と、同省は11/8の野党合同ヒアリングで説明しましたが、事前に要望された全員分の聴取票のコピーは拒否し、白紙の聴取票見本のみを提示しました(⇒野党は重ねて聴取票の提示を要求)。
その後も野党が“中身が公表されない限り法案審議できない”と聴取票の開示を要求し続けた結果、
11/16 にようやく一部黒塗りにして聴取票が開示され、さらに
法務省は同日“「より高い賃金を求めて」は67.2%だった”と訂正 たものの、
実際の聴取票の失踪動機についての質問の答えの選択肢に「より高い賃金を求めて」は存在せず 、事実は「低賃金」「低賃金(契約賃金以下)」「低賃金(最低賃金以下)」の3つであり、
真実は“実習生の失踪動機の67.2%は「低賃金」”だったことが判明 しています。
また、同省は聴取票のコピー・持ち出しを禁止したため、野党はデータを同省で1枚1枚手書きで書き写すことから始めなければなりませんでした。
その間に法案は衆院を通過し、
12/3に野党が独自に分析した結果を公表 、“「低賃金」=1929人(67.2%)”、“月給「10万円以下」1627人(56.7%)”でした。
ここまで
生産性の低い国会運営を強いる政府・与党が、”生産性の高い移民政策”を施策する というブラック・ジョーク…(であって欲しい)。
【移民を増やすほど、シアワセになれるんだよ… オレが! 】 「移民の歌」の記事 で、外国人労働者の誘致拡大すると、安倍内閣の国家戦略特区諮問会議民間議員を務める竹中平蔵氏の人材派遣業大手『パソナ』が多大な利益を得るカラクリを言及しましたが、得をするのは人材派遣業だけではありません。
現行の外国人技能実習生制度は、
受け入れ企業が『監理団体』に実習生一人当たり毎月数万円の「監理費」を支払い (※監理団体によって差がある)、
『監理団体』が『公益財団法人・国際研修協力機構(JITCO)』に「会費」を上納 (JITCOは今年度17億3300万円の収入)する仕組みで運営されていますが、
JITCOには役員として9/15人の省庁OBの天下り があるそうです。
一方、受け入れ企業を監査するという
『監理団体』は、大物政治家のオンパレード !
ベトナム人技能実習生受け入れの監理団体
『公益財団法人東亜総研』 の代表理事・会長は武部勤・元自民党幹事長、特別顧問は二階俊博・自民党幹事長。
ミャンマー人技能実習生受け入れの監理団体から手数料(年会費5万円/初年10万円/実習生が3人増える毎に1万円ずつ上乗せ)を徴収している
『日本ミャンマー協会(JMA)』 の名誉会長は中曽根康弘・元総理大臣、最高顧問は麻生太郎・副総理兼財務相…以下、何でこれだけの大物政治家が多数名を連ねる必要があるのかと思うほど豪華な組織です。
でも、
“豪華布陣のコスト”は最終的に誰が払わされているのでしょう… 。
そもそも、“顧客”の要望する法案を1本でも多く通すことが、政府・与党が給与以外の“カネと票”を得るための“営利活動”のようです。
先の国会で西日本豪雨対応より優先させて成立を急いだ
『カジノ法』 は、トランプ大統領の支援者である「ラスベガス・サンズ」「シーザーズ・エンターテインメント」「MGMリゾーツ」といった
米国カジノ企業への利益供与 するためのものであり、
麻生太郎財務大臣、野田聖子総務大臣、西村康稔官房副長官、岩屋毅議員ら国会議員15人が米国カジノ企業にパーティー券を購入してもらっていた ことが報じられています。
(
『
政治資金規正法 22条の5』は、“政治団体・
政治家は、外国人や外国法人 、株式の過半数を外国人等が保有している上場5年未満の株式会社
などから、政治的寄附を受けてはならない ”としている)
~Epilogue~ “Wir riefen Arbeitskräfte und es kamen Menschen.” 我々は労働力を呼んだ。だが、やってきたのは人間だった 移民政策を論じる際、必ず言及されるというスイスの作家マックス・フリッシュの言葉です。
「いわゆる移民政策をとることは考えていない」…独善の定義で世界通念を無視し、数年に亘って外国に居住・労働する人を
“民(国家社会を構成する人)” と認めない安倍首相の心に、この教訓が刻まれているとは思えません。
“差別の心” とはそのような認識を言うのであり、その心を持つ安倍首相による移民政策で
“地縁・血縁なく選挙権もない発展途上国出身の単純労働者”がどのように扱われるか は、これまでの外国人技能実習制度で証明済みです。
外国人技能実習制度 は、長時間労働や低賃金(及び未払い)、契約違反(放射能除染作業を含む)、不当な強制(人身取引を含む)、
実習生365人が死亡 (1992-2014まで)するなど、国連人権委員会から度々制度の変更・廃止を勧告され、厚労省の調査でも受け入れ事業所の7割以上から労働基準法違反が確認された問題のある制度であるにも拘らず、長年放置されてきました。
しかし今国会、更なる移民迎え入れについての審議で、
次々と法案の信頼性を根底から覆す虚偽が発覚 したにも拘らず、政府・与党は
法案の信頼を回復せぬまま強行採決 によって成立させる予定です。
“圧倒的強者の不正義”に支配された外国人技能実習制度は、悲しいことに
同じ“強者の不正義”によってまた新たに生まれ変わろうとしている のです。
ただ、こうした
“強者の不正義による支配 ”は、外国人労働者だけの苦しみではありません。
「一億総中流」と形容された終身雇用の時代から、首の切り易い
「非正規雇用」 が正社員の担ってきた責任を負わされ、職業安定法が禁じてきた
賃金の中間搾取を認める「労働者派遣法」 が施行され、さらに今年
「残業代ゼロ」時代 に突入…。
この労働環境の変化って、
すべて“雇用側が得をし、労働者が損をするルール変更” でしょう?
加えて言うならこの間
「法人税は減税、消費税は増税」 、「円安誘導で
輸出企業は増収 、(ドル換算で)
労働者は減収 」で、
単純移民労働者を50万人入れると単純労働の賃金は13.82%減少 するという試算から
「移民政策で得をするのも雇用側、損をするのは労働者」 ということになります。
ちなみに、1988年に国家公務員推計463万円/民間男性平均468万円と、民間が5万円多かった年収は、2018年は
国家公務員678万円、民間正規494万円 /非正規175万円/男性532万円/女性287万円(17年)と、官民で所得が大きく逆転しています。
こうした
富める者がより得をし、貧しき者がより損をする社会 は自然の流れでなっているわけでなく、
政・官・財の「鉄のトライアングル」の我田引水によってもたらされている のです。
また、そもそも「働き手が足りない」⇒「移民労働者を増やす」という
『入管法』は、議論の“出発点が間違って”います 。
「働き手が足りない」という現象は“結果”であって、
その原因は「少子化」であり、「それをどうするのか」という議論から始めるのが筋 で、それは政権の一存で決めてよいものでは決してなく、
「国民に相当な負担を強いるものであるから、国民全体を巻き込んだ議論でなくてはならない」 と思うのです。
「少子化」┳「人口減少を容認」(亡国の可能性)
┃
┗「容認しない」┳「自力で増やす」(女性一人当たり2人出産でも人口は減少)
┃
┗「移民を入れる」┳「期間限定」(亡国の可能性)
┃
┗「永住を許可」(移民族 > 日本民族の可能性)
この『入管法』は「癌に絆創膏」を貼るようなものであり、一時的に労働力不足は緩和できても人口減少を治癒するものではありません。
法案の強行採決を許すことは、国民がその大事な決定に関与せず、安倍首相に白紙委任することを意味する のです。
「汚れた街」 VIDEO 続きはこちら >>
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