Celtic Woman - Westering Home (2015年)~ Celtic Woman Voices of Angels World Tour ~ 2006年のトリノ・オリンピック、フィギュア・スケート荒川静香選手のエキシビションでテーマとなった「You Raise Me Up」で日本でもその名が知られるようになった女性音楽ユニット、ケルティック・ウーマン(Celtic Woman)が
6年振りの来日公演 を行います。
日程等についてはメンバーからも日本の皆さんにお知らせが届いているので、映像でご覧下さい。
今回の来日は昨年リリースされたアルバム『Voices of Angels』に基づくツアーで、
直前のインタビュー で彼女らは
“観客の皆さんが一曲ごとに、それぞれの曲が持つ要素と調和し、アイルランドの鼓動をコンサートを通して感じて欲しいです。実際にアイルランドに訪れたかのような感覚とそこにある心の温かさなどを、この公演を通して感じて頂ければと思います。”
…と、語っています。
VIDEO ~概要~ ケルティック・ウーマンは2004年、
“クラシック音楽とアイルランドの伝統音楽のアンサンブル” というコンセプトの下、誕生したグループです。
メンバーはアイルランド出身の女性で構成されていますが固定的ではなく、常時入れ替わっているといって過言ではありません。
同国出身の
エンヤ がそうであるように、ケルト音楽やゲール語(アイルランド・スコットランド・マン島の伝統的言語)という“ローカルな要素”を背景としながらも、クラシックやポップス、そして透明感ある美しい歌声という“洗練された要素”を融合させることによって、洋の東西や時代の流行に左右されない
“素材そのものの良さを味わえる” ことが、何より彼女らの最大の魅力といえるのでしょう。
「ウェスタリング・ホーム」は2015年の10thアルバム
『Destiny』 の収録曲ですが、シングル・カットやタイアップはありません。
ヴォーカルはスーザン・マクファーデン Susan McFadden、マレード・カーリン Mairead Carlin、イーハ・マクマホン Éabha McMahonが、フィドル(ヴァイオリン)はマレード・ネスビット Máiréad Nesbittが担当しています(今回のツアーではメンバーに一部変更があります)。
作品は長い船旅からの故郷への郷愁をテーマとしていると思われますが、彼女らの歌声はあまりに爽やかで、まるで“‘花よ蝶よ’と歌う森の妖精”に聴こえなくもありません?
…そんな「Westering Home」はケルティック・ウーマンがオリジナルではなく、当地では小学校で習うほど親しまれる
スコットランドの伝統歌 です。
楽曲は1920年代にスコットランドのHugh S. Robertonの作とされる一方、実はこれも二次創作のようで、Wikiによると
原曲はアイルランドに古くから伝わる 「Trasna na dTonnta」 (ゲール語)
と言及されています(確かにメロディーは同じ)。
元々はアイルランド北部沿岸にあるグウィドー(Gaoth Dobhair)のことを歌っていたようで、それをHugh S. Robertonがスコットランド向けに歌詞を改め、言語も英語に変更したと推測されます。
VIDEO VIDEO VIDEO VIDEO ~Lyrics~ Westering home with a song in the air 故郷の歌と共に、西へと向かう Light in the eye and its good by to care 瞳はきらめき、憂いにはさようなら 一見平易な言葉が並んでいるように見えて古い言葉や方言が混じった歌詞であり、加えてここで【home】を普通に[家]と解すると後で“何か変な感じ”が残ってしまうのです…。
Where are the folk like the folk o' the west? 家族のような西の民は何処? Canty and couthy and kindly, the best 陽気で、親切で優しい最高の人々 ここでの
【folk(s)】 も同様で、単純に[人々]と捉えるとこのフレーズに何の意味があるのか理解できなくなってしまいます。
しかし、これを
[共通の祖先や伝統・文化を受け継ぐ人々] と捉えると前後関係も違和感がなくなり、先の
【home】 もこの概念に従って“広い意味での家
[故郷・故国] ”と捉えると、ようやく“作品の心”へと導かれた気がしました。
Tell me of lands of the Orient gay 教えて…東の洋(うみ)の世界の繁栄 Speak of the riches that come from Cathay “キャセイ”からの富の伝説 【Cathay】は 10世紀に中国北部に遼を建国した
契丹(きったん・Qitai) の英語訳で、13世紀に『東方見聞録』を編纂したマルコ・ポーロによってヨーロッパに伝えられました。
当時の中国はモンゴル帝国の[元]として繁栄を極め、クビライの厚遇を受けたマルコ・ポーロ自身も巨万の富を持って帰国しました。
これが大航海時代に脚光を浴び、探検家が先を競って世界へと繰り出すきっかけになったともいわれます。
~Epilogue~ 「Westering Home」はスコットランド西岸にある
アイラ島(Islay) をテーマとしています《写真左・赤丸》。
…まずアイラ島ってどんな特徴があるのだろうと検索してみると圧倒的なのが
“ウイスキーの聖地” についてで、とりわけアイラ島で作られるピート(泥炭)によるスモーキーなスコッチ・ウイスキーは“アイラ・モルト”として世界中で愛され、2016年現在
8つの蒸留所 があるそうです。
その中の一つブナハーブン(Bunnahabhain)蒸留所で製造された
ウイスキーのラベルには 、故郷を望む船乗りのイラストと共に
“Westering Home”の文字 が刻まれており《写真・右》、本曲がどれほど地元で愛されているのか改めて実感させられました。
また、アイラ島に関連して出てきたのが作家・
村上春樹 で、彼はスコッチ・ウィスキーとアイリッシュ・ウィスキーをテーマとして、1999年にアイラ島とアイルランドを巡った紀行
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』 を発表しています。
一方アイラ島は“ヘブリディーズ諸島の女王”と称され、人口密集地のエディンバラやグラスゴーから少し離れた西端にあるためあまり開発がなされておらず、“スコットランドで最も美しい島”ともいわれています。
今回見つけた動画
によると、確かに一部に集落が点在する以外殆んどは起伏のある丘陵地や牧草地で、目を引くのは海と海岸の美しさで、ここにはイルカやアザラシも訪れるそうです。
また、ウイスキーの名産地だけあって水系が豊かで、ヨーロッパで最も優れたブラウントラウト釣りの名所の一つとして知られています。
VIDEO …かつて(14~16世紀ごろ)、
アイラ島は“あるケルトの氏族”が支配 するスコットランド西海岸とアイルランド北岸一帯の中心地でした。
その後イングランドとの勢力争いに敗れ領地を失い氏族制度も解体、彼らの多くが国外へと逃れてゆきました。
それから長い歳月を経た1940年、大西洋を越えて移住した彼らの末裔がアメリカ・カリフォルニアで商いを始め、2010年には全世界121カ国・約3万店舗をもつ世界最大のファストフード・チェーンストアにまで発展を遂げました。
…そう、あの
【マクドナルド(McDonald)】 です。
Ah but it's grand to be woken at day あぁ…それは、壮大なる一日の目覚め And find yourself nearer to Islay アイラの島近く、自らの運命を識る 今も世界で愛されるウイスキーの伝統を継ぐもの、そして海を渡り世界の誰もが知るブランドを確立したもの…
その“源流”は、この小さな島にありました。
「ウェスタリング・ホーム」 VIDEO 続きはこちら >>
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2015年 ケルト 故郷 美声