I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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「フリー・フォーリン」トム・ペティ

2017.10.13

category : Tom Petty

Tom Petty - Free Fallin1 Tom Petty - Free Fallin2


Tom Petty - Free Fallin' (1989年)



~Tom Petty 1950–2017 R.I.P.~

現地時間10月2日20時40分、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのトム・ペティが亡くなりました(享年66)。
2日早朝に自宅で心肺停止に陥り病院へ搬送されたものの、その時点で既に脳の活動が見られず、夜に生命維持装置が外されたと伝わっています(11日の時点で死因は“保留”と報じられている)。

トムと同じく“アメリカの良心”を象徴するボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、イギリスを代表する元ビートルズのポール・マッカートニーとリンゴ・スターも哀悼の意をメッセージしました。
また、当代を代表する歌姫テイラー・スウィフトは“私にとってトム・ペティは自分が崇拝していたある種のソングライティングを代表する存在であり、彼がインスピレーションを与えてくれたお陰で「Free Fallin'」を弾けるようギターを手に取った”とその憧れの気持ちを告白しています。

以下、本記事をトム・ペティに捧げます…。



~概要~

アメリカのシンガー・ソングライターであるトム・ペティは1976年からトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ(Tom Petty and the Heartbreakers)として活動を続けてきましたが、1989年には自身初のソロ・アルバム『フル・ムーン・フィーヴァー(Full Moon Fever)』を発表しました。
本アルバムのプロデュース及び共作者には『Cloud Nine』でジョージ・ハリスンを復活に導いたイギリスのロック・バンド【ELO】 (Electric Light Orchestra)のジェフ・リンを迎えて制作されており、『Full Moon Fever』は“聴き所で満たされたアルバム”と評されBillboard 200の3位と、自身過去最大級のヒットを記録しています。

「フリー・フォーリン」はトム&ジェフが2日で完成させたとされる曲で、ギターにはハートブレイカーズのマイク・キャンベルが参加しています。
1989年9月に『MTV Video Music Awards』 でハートブレイカーズ及びGuns N' Rosesのアクセル・ローズとイジー・ストラドリンと共に「Free Fallin'」をパフォーマンスしており、その後10月にアルバムからの3rdシングルとしてリリースされBillboard Hot 100で7位(1990年の年間64位)を記録、これは彼の生涯で最も成功したシングルです。

スティーヴィー・ニックスやスパンダー・バレエのトニー・ハドリー、P!nk、Keshaほか性別や世代、ジャンルを問わず多くの歌手にカバーされていますが最も有名なのは2007年にライヴ・アルバムにも収録されたジョン・メイヤーでしょう。
翌2008年『第42回スーパーボウル』ではトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとしてハーフタイムショーで「Free Fallin'」をパフォーマンスしました。
本曲の普遍的価値については、ローリング・ストーン誌も“500 Greatest Songs of All Time 179位”と評価しています。


トム・ペティについて、日本ではピンとこないかもしれませんが本作発表以降も長年アメリカで高い人気を維持し続けた希少なロック歌手であり、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ名義の最新アルバム『Hypnotic Eye』(2014年)も Billboard 200のNo.1に輝くなどセールスも好調で、今年はハートブレイカーズ40周年を記念した全米ツアーを行いました。
その最終公演であり、結果として彼自身生涯最期のコンサートとなってしまった2017年9月25日のハリウッド・ボウルでは「American Girl」を歌う前に“俺たちにはもうほとんど時間は残されていないけど、ここでこの曲をやる時間は残されている”という意味深な発言をしていますが、「Free Fallin'」の生涯最期のパフォーマンスがファンによって投稿されています。


  
 



~Lyrics~

She's a good girl, crazy 'bout Elvis
あいつはいい娘…エルヴィスにお熱を上げ
Loves horses and her boyfriend too
馬も、ボーイフレンドも愛してる

エルヴィス・プレスリーは、トムに音楽への興味を芽生えさせた人。
1961年の夏、当時10歳だったトム少年は特にエルヴィスのファンだったわけではありませんでしたが、彼の叔父がエルヴィスの映画のスタッフを務めており、近くで撮影(翌年公開の『夢の渚 Follow That Dream』)があるから見に来ないかと誘われたのがきっかけでした。

初めて見たエルヴィスの衝撃を、“エルヴィスは幻想のようだった。それまで僕が知っていた人間とは全然違うんだ。全身が光に包まれていて、神様みたいだった。”…トムはそう語っています。
この出来事で彼は一気にエルヴィスの虜となり翌日初めてレコード『G.I.ブルース』を購入、家族も心配するほどエルヴィスを聴き続けたそうです。


All the vampires walkin' through the valley
ヴァンパイアたちは皆、ザ・バレー(valley)を抜けてゆく
Move west down Ventura Blvd.
ベンチュラ大通りを西へと下り

トム・ペティはアメリカ東南部フロリダ州の出身ですが、バンド活動のため西海岸のカリフォルニア州ロサンゼルスに移住しており、歌詞には多くの地名が登場します。
【the valley】はロサンゼルス郡の一区[San Fernando Valley(サンフェルナンド・バレー)]を指しワーナー・ブラザーズ・スタジオやNBCスタジオなどメディア関係の会社が集中し、スターや業界人も多く住む華やかな地区です。

一方、当地はポルノ産業の要地でもあり、[女の子たちに群がるヴァンパイア(吸血鬼)]って“そういう男たち”のことを仄(ほの)めかしているのかもしれません。


I wanna glide down over Mulholland
マルホランドの空をグライドし下りたい
I wanna write her name in the sky
空に、あいつの名前を描きたい

マルホランドは正確には[Mulholland Drive]といい、ロサンゼルス北部の山を横断する曲がりくねった山道です。
ハリウッドを一望できる人気の“ドライブ・スポット”であり、夜景はまた格別でしょう。

「Free Fallin'」のPVにもそれらしき映像が組み込まれており、2001年のデヴィッド・リンチ監督の映画『マルホランド・ドライブ』の舞台となったのもこの地です。





~Epilogue~

「Free Fallin'」の魅力を端的に象徴しているのが、トム・クルーズが主演した1996年の映画『ザ・エージェント(Jerry Maguire)』
この映画は、スポーツ選手の代理となって契約交渉を行う【スポーツ・エージェント】(agentは[代理人])の物語で、以前は日本で耳慣れない職業でしたが、プロ野球の野茂英雄選手のメジャー移籍時にクローズアップされた団野村氏や松井秀喜選手のアーン・テレム氏といった名前に覚えがある方も多いでしょう。

トム・クルーズ演じるジェリー・マグワイアは一流事務所に所属するやり手のエージェントでしたが、自分たちが目先の金儲けばかりに囚われる余り本来あるべきエージェントの使命やあたりまえの人間性さえも失っていることに気づき、クライアントの数を減らし一人ひとりへのケアの充実を図る運営を提案すると、事務所側の返事は彼の解雇でした。
ジェリーはその信念に基づき独自の起業を決意するものの、彼の誘いに応じついて来てくれたのは事務員とクライアントそれぞれ1人だけでした。
そんな彼が初めてドラフトの目玉新人のクライアントを獲得できた帰りの道すがら…



このシーンが素敵です!
…いろいろあった彼の気持ちを想像しながら聞いてくださいね?

車のラジオからローリング・ストーンズの「Bitch」(下ネタ系の歌)が流れ、口ずさもうとしますが違和感からすぐチャンネルを変えてしまいます。
続くセンチメンタルなメリリー・ラッシュ「Angel of the Morning」、静かなグラム・パーソンズ「She」でもなく…
次のチャンネルから流れてきたのがこのフレーズ…

And I'm free, free fallin'
そうさ、自由…
Yeah I'm free, free fallin'
何に縛られることもなく、俺は墜ちてゆく

ジェリーの表情は一変し、運転しながら全身で喜びを溢れさせ絶唱しています! 
(ただしこの交渉は騙されていたことが後に判明する)


【free fall】は[自由落下]で、厳密には物体が空気抵抗などの影響を受けず重力の働きだけ(真空)で落下する現象です。
この概念から解釈すると、自由とは束縛からの解放であり、その瞬間から物体は重力に従い落下することになります。
それを人間の事情に置き換えるなら、“人は自由に任せると堕落する運命にあり”、[それを留まらせるためには何らか手段を自前で用意する必要がある]ということでしょうか…
これだけだと自由に何の得もないことになりますが、“自由の最大の魅力は希望”であり、束縛・固定されていないので[何処へでも行けるし努力次第でより高い次元へと浮揚することも可能]です。

確かに身体的成長の止まった大人の能力は訓練しないとただ衰える一方であり、だからこそ[free]でなく【Free Fallin'】として“落ちてしまわぬよう、もがき続ける必要がある”という応援のメッセージを込めたのではないでしょうか…。
何故なら、それこそが“生きるものが背負わねばならない宿命”だから。
時代が変わってもこの歌が新しい世代に歌い継がれるのには、そんな理由があるのかもしれません。

ただ、「Free Fallin'」の歌詞を見ていると何か不自然さがあって、スッキリしません。
その原因は3番の歌詞で、試しにこの部分を抜いて1・2・4番だけで構成するとストーリーがスッキリするのです。
1・2・4番では[a good girl]と[a bad boy]の物語で、3番だけ[the good girls]と[the bad boys]と複数形で表され全然別の話になっていることに気づきます。
これは個人的見解ですが、“「Free Fallin'」はトム・ペティの若かりし頃の淡い恋の歌で、照れ隠しに3番を入れたのでは?”…と。

そう考えてみると、あなた自身は全然解き放たれていなかったのでは…トム? 
(そういえばPVで[a good girl]が見つめる写真の男性って、たぶん若い頃のトム・ペティ?)



「フリー・フォーリン」


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tags : 1989年 偉大な曲 フォーク・ロック 映画90's 

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