マーティ・バリンは1960年代後半にカウンター・カルチャーの象徴にもなったアメリカのロック・バンド【ジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)】の創設者の一人でもあったシンガーソングライターです。 1981年に1stソロ・アルバム『恋人たち(Balin)』を発表、ここから生まれた自身最大のヒット曲が「ハート悲しく」でした。 Billboard Hot 100での最高位は8位ですが年間では41位と、トータルとしてロング・ヒットを記録しています。
作者のJesse Barishは70年代初めからマーティの友人であり、1978年にジェファーソン・スターシップ時代のマーティが歌ってヒットさせた「Count on Me」(全米8位)の作者でもあります。 Jesse Barishは後年自身のアルバム『Farther Sun』で「Hearts」をセルフ・カバーしており、この“あっさり味”はマーティver.と異なるテイストですが甲乙つけ難い魅力を感じました。
「ハート悲しく」のライナーノーツ(日本盤)の解説は、現在も?2歳で現役バリバリの音楽評論家・湯川れい子さんが務めていましたが、その中で彼女が本曲を“まるで日本人のために書かれたみたい”と評したように、歌謡曲との親和性を感じるテイストであり、実際に同年10月第3週付よりオリコン週間シングル・チャート(洋楽部門)で7週連続1位に輝くヒットを記録しました。 そうした風潮は大衆に限らずプロである歌手も同様で、アイドル歌手・河合奈保子が1982年2月のライブ・アルバム『NAOKO IN CONCERT』で男女の立場を逆にした日本語カバーを披露し、同年7月には稲垣潤一が1stアルバム『246:3AM』でカバーしています(日本語詞:湯川れい子)。
~Lyrics~
Is everything all right? 万事、うまくいっている? I just called to say how lost I feel without you 君なしで途方に暮れる男の気持ちを伝えようと、電話したんだ
別れた相手からの電話… あなたは、“その話”をどう受け止めるでしょう… “逆転”できる可能性は?
ところで、【I just called to say...】のフレーズに覚えがありませんか? …そう、スティーヴィー・ワンダー の名曲「心の愛」の原題が「I Just Called to Say I Love You」でした。 伝えたい内容は変わらないのに、ずいぶん印象が異なるものです…。
Miles away でも何マイルも離れ I really can't believe I'm here and how I still care about you 僕はこんな所で、まだこんなにも君を気に掛けているなんて…
また、稲垣潤一のデビュー曲は「雨のリグレット」ですが、当初「ハート悲しく」でデビューさせようという案もあったそうです。 この2曲の作詞を務めたのは湯川れい子さんですが、マーティがプロモーションで来日した際彼女が“これは「ハート悲しく」にインスパイアされて出来た曲”と言って「雨のリグレット」をプレゼントした所、彼はこれを大いに気に入って自分でもオフコースやもんた&ブラザーズのレコードを買い集めたといわれます(「雨のリグレット」の作曲者はオフコースの松尾一彦)。 その後マーティは日本で「雨のリグレット」の英語カバー「Regrets of the Rain」を含むミニ・アルバムをリリ-スしたり、KBCバンドやジェファーソン・スターシップとしてオフコースのカバー「Sayonara」や「Yes Yes Yes」を発表するなど、J-POPを愛した人でもありました。
Hearts can break 引き裂かれる二つの心 And never mend together 一つ手を取り合うこともないままに Love can fade away 愛は褪せてゆく