U2 - I Still Haven't Found What I'm Looking For(1987年)
~概要~
「アイ・スティル・ハヴント・ファンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終りなき旅)」はアイルランドのロック・バンド【U2】の5thアルバム『ヨシュア・トゥリー (The Joshua Tree )』からの2ndシングルで、 「With or Without You」に続いてBillboard Hot 100 のNo.1(2週/年間23位)に輝いた作品です。 受賞こそ逃しましたが、1988年の『第30回グラミー賞』では【 Record of the Year 】【 Song of the Year 】の主要2部門にノミネートされました(後者の受賞曲は「Somewhere Out There」リンダ・ロンシュタット&ジェームス・イングラム)。 オールタイムの評価も高く、ローリング・ストーン誌【The 500 Greatest Songs of All Time 93位(2010年)】、ロックの殿堂【500 Songs That Shaped Rock and Roll】など、U2の中でも屈指の名曲といえます。
作者はU2で、1998年12月の『Q』誌によると、『The Joshua Tree』のセッション中メンバーはずっとゴスペルを聴いていて、タイトルはジ・エッジが、メロディーはボノが思いついたのがきっかけだったそうです。 ところがサウンドがあまりにU2っぽくなかったため当初は本気で取り上げるとは誰も思っておらず、ある評論家は“「I Want To Know What Love Is」(フォリナー)の二番煎じ”と評したといいます。 しかし、完成する頃にはみんな“何か特別なものがある”と確信するようになったといいますから、この間に決定的な何かがあったのでしょう。
「終りなき旅」は『The Joshua Tree』ツアーを伝える1988年のドキュメンタリー映画『U2/魂の叫び(U2:Rattle and Hum)』、及び同ライブ・アルバムにも収録されました。 このツアーで本曲はゴスペル・コーラスを従えて演奏されオリジナル以上に感動的なものがありますが、映画ver.ではコーラス隊とのリハーサル映像となっており、やはりゴスペルはコーラスの“歌うさま”が楽しく、彼らの迫力に圧倒されさすがのボノも途中から聴き役に回っています!
~Lyrics~
You broke the bonds and you あなたは枷(かせ)を断ち Loosed the chains, carried the cross 鎖を解き、重い十字架を背負った
ここも宗教に由来すると思われる表現で、【speak with tongues】はキリスト教(ペンテコステ派)における“異言(いげん)”の意味もあります。 異言とは“宗教的高揚状態にある人が、(聖霊の働きによって)異国・または意味不明の言語を舌から発すること”といった意味とされますが、無宗教の人にはイメージし難い世界でしょう…。
I believe in the kingdom come 神の国の到来を信じよう Then all the colors will bleed into one すべての色が一つの血脈に帰す、その時を
【kingdom come】も[来世・天国]といった意味でますます“宗教臭い”歌詞ですが、本作にはそれとは別のテーマが隠されている気がします。 ボノが生誕したアイルランド島は、隣国イギリスとの関わりに於いてアイルランド共和国と北アイルランド(イギリスのカントリー)、ローマ・カトリックとプロテスタントという【二つの国家と二つの宗教】が複雑に絡み合って戦争・紛争を繰り広げた長い歴史があります。 U2初期の代表曲「Sunday Bloody Sunday」はその一つ【血の日曜日事件】(1972年)をテーマとした作品として有名ですが、「I Still Haven't Found What I'm Looking For」にも、分断された島に生きるアイルランドの人々の「終りなき旅」の宿命を想起せずにはいられません。
2018年1月1日現在、世界にある原発443基の1割に当たる42基が日本にあります(建設中・計画中を含めると53基)。《写真・右 World map of current nuclear power plants》 日本以外の原発密集地域はアメリカ・ヨーロッパ・中国などですが、左右の地図を見比べるとわかるとおり、日本ほど地震多発地帯と重なっている原発密集地域は世界にありません。 政府は「普天間基地が世界一危険」であることを民意に反する性急な移設の大義名分に掲げますが、その心根に偽りがないなら、「世界一危険な日本の原発」についても、同じ扱いをするはずでは…?
「ニュー・イヤーズ・デイ」は1983年の3rdアルバム『WAR(闘)』に収録され、アイルランドのロック・バンドであるU2が初めてUKチャートのトップ10(10位)に入ったシングルです。 一方アメリカではBillboard Hot 100で53位と、初のチャート・インを記録しました。 社会問題を楽曲のテーマとすることの多いU2を象徴する作品で、ローリングストーン誌“The 500 Greatest Songs of All Time 435位”(2010年)にランクされています。
作者はU2で、ボノ(vo)が新婚の妻アリ・ヒューソンへのラブ・ソングとして書いた詞と、アダム・クレイトンがサウンドチェックの際にヴィサージ(Visage;イギリスのシンセポップ・グループ)の「Fade To Gray」のベース・ラインを弾き間違えたことから生まれた曲が基礎となっています。 『WAR』は文字通りさまざまな“戦い”をテーマとしたアルバムであり、「New Year's Day」も途中で政治的な背景を含んだ戦いの内容に書き換えられました。