Summer Nights/ミュージカル「グリース」より Wedding Bell Blues/Fifth Dimension Moves Like Jagger - Jumpin' Jack Flash/The Rolling Stones Without You/David Guetta We Found Love/Rihanna
ロバータ・フラックは、1969年に1stアルバム『First Take』でデビューしました。 実は、今日紹介曲の「First Time Ever I Saw Your Face」はこのアルバムに収録された作品ですが、当初からシングル化されたわけではなくアルバム・シングル共に商業的には捗々(はかばか)しくはありませんでした。 しかし3枚のアルバムのキャリアを重ねた1971年、思わぬチャンスが舞い込みます…。
当時西部劇の大スターとして活躍していたクリント・イーストウッドが、自らの路線変更と“初監督”を試みた映画作品に「First Time Ever I Saw Your Face」を使いたいと申し出てきたからです。 その映画とは1971年11月に公開された『恐怖のメロディ(Play Misty for Me)』で、“モントレー・ジャズ・フェスティバル”で有名なモントレーのディスク・ジョッキーが主人公の物語だけあって、音楽は重要な要素でした。
この作品は1987年の映画『危険な情事』のお手本になったとも囁かれるように、クリントが女性ストーカーに追われる緊迫のサスペンス・スリラーで、非常にゆったりした曲調の「First Time Ever I Saw Your Face」とは結び付かないですが…? クリントはそんなシリアスな作品にあって、恋人と過ごす安らかで平和なひと時を、甘美なこの曲で彩り対比させたかったのかもしれません。
映画起用による反響は予想外に大きく、劇場で映画を観た人々が「First Time Ever I Saw Your Face」を求めてレコード店に殺到したといいます。 そこで、翌年3月にシングルがリリースされると瞬く間にチャートを駆け上がり、Billboard Hot 100で6週連続No.1(1972年・年間2位)に君臨する大ヒットで、これは女性ソロ・シンガーとしては1959年のゴギ・グラント以来の1位保持記録でした。
「First Time Ever I Saw Your Face」はロバータがオリジナルではなく、1957年にイギリスのシンガー・ソングライターのイワン・マッコールが後の妻となるペギー・シーガーのために作ったフォーク・ソングでした。 ところがこれを劇的に変えたのがロバータで、オリジナルが約2分半なのにも関わらず彼女のは5分半もあり、そのためテンポが非常にゆったりしています。 このテンポの変更はロバータの声質を際立たせ、元来“マロン”のように甘く落ち着いた濃厚な味わいがある歌声に、より深みを加える効果を与えました。 (個人的にも、そんな彼女の温かい歌声が大好きです…)
一方で、ロバータとは正反対の声質を持つセリーヌ・ディオンも1999年のアルバム『All the Way… A Decade of Song』でこの曲をカバーしていて、彼女独特の浮遊感を誘う透明な歌声もまた心地よい…。 リンクしてあるので、比較してみると面白いですよ♪
ロバータ・フラックは1973・74年と、2年連続でグラミー・最優秀レコード賞(Record Of The Year)を授賞した類まれな女性ソウル・シンガーで、“ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー”に名を連ねる(49位)男性R&Bシンガー、ダニー・ハサウェイとのデュエット作品も数多く残してきました。 ところが1979年にダニーが亡くなってしまい、大切な仕事上のパートナーを失ってしまいます。 その後任として名前が挙がったのがピーボ・ブライソンで、ソフトな“シルキー・ヴォイス”はロバータとの相性は抜群でした。
二人はまず、1980年に共同でライブ・アルバム『Live & More』を発表します。 その後82年のロバータのアルバム『I'm the One』でも一部共演すると、翌83年には二人のデュエットで構成された『Born to Love』を発表しました。 このアルバムに収録されたのが「愛のセレブレーション」で、アメリカ・Billboard Hot 100では16位・イギリスでは2位を記録しています。
“Celebrate”は儀式を行なうといった意味で、原題の「Tonight,I Celebrate My Love」は直訳すると“今夜、私の愛の儀式を行ないます”となるでしょう。 じゃあそれがどんな儀式かというと、“I make love to you”と歌われています。 “make love”は単に愛し合うというよりも“肉体関係を伴う”ものを指し、それを“今夜執り行う”というワケです。