Barry Manilow - I Made It Through The Rain (1980年)
~概要~
「悲しみをこえて」は1980年のバリー・マニロウ7thアルバム『Barry』に収録された作品で、シングルとしてもBillboard Hot 100で10位(1981年の年間89位)を記録しました。
「I Made It Through The Rain」の楽曲は元々Gerard KennyとDrey Shepperdが“決して諦めない歌手の苦闘”をテーマとして創作し、そのジェラード・ケニー自身が1979年のアルバムで発表したものがオリジナルです。 その後この曲を気に入ったバリーが、「Copacabana」のジャック・フェルドマンとブルース・サスマンらと共に“決して諦めない人生の苦闘”の歌詞に書き換え、おなじみのバリーver.となりました。
2005年からバリーはラスベガス・ヒルトン・シアターで長期公演『Barry Manilow : Music and Passion』を行いましたが、「I Made It Through The Rain」もそのセットリストの一つとして編成されました。 そのステージ上、この歌の途中で彼は“この曲を歌うと祖父を思い出す”と言って演奏を中断し、幼い頃の思い出を語っています。
前回の「黒くぬれ!」本文記事を中断して、急きょ「I Made It Through The Rain」に変更したのは、日毎に被害が拡大する【西日本豪雨】の状況を踏まえ、「悲しみをこえて」の願いを込めてお届けしたいと思ったからでした。 本文記事もその趣旨でお届けするつもりでしたが、この間の【政府・与党の災害対応】があまりに国民の生命と財産の保護を蔑(ないがし)ろにしたものであり、この国の危機管理を担う政府・与党がこのような危機管理意識では被災地への必要な救済が滞るばかりか、これから迎える本格的台風シーズンも危ぶまれます。
「メモリー」は、バリー・マニロウ1982年の12thアルバム『ヒア・カムズ・ザ・ナイト(Here Comes The Night)』の収録曲です。 アメリカでは同年後半にシングル・カットされ、翌年1月にBillboard Hot 100で39位まで上昇しました。 ご存知のように本曲のオリジナルは1981年に初演されたミュージカル『キャッツ(Cats)』のテーマ曲ともいえる作品で、作詞は『キャッツ』の原作者でノーベル文学賞受賞者でもあるイギリスの詩人T・S・エリオット(Thomas Stearns Eliot/1965年没)の遺稿を基に演出家のトレヴァー・ナンがその一部を付け加えたもので、作曲は『ジーザス・クライスト・スーパースター』『エビータ』『オペラ座の怪人』など誰もが知っているミュージカルに携わった大御所アンドルー・ロイド・ウェバーです。
その1stシングルとしてBillboard Hot 100で3週連続3位(年間27位)を記録していますが1978年は映画『サタデー・ナイト・フィーバー』が世界的な社会現象にも発展した年で、同関連曲がほぼ半年チャートのトップを独占していました。 「涙色の微笑」がピークを迎えた4月第4週~5月第1週は、1位「恋のナイト・フィーバー」・2位「アイ・キャント・ハヴ・ユー」(イヴォンヌ・エリマン)共に“サタデー・ナイト・フィーバー/ビー・ジーズ楽曲”が居座り続ける時流であり、「涙色の微笑」も通常であればNo.1になれたかもしれません。
ハートウォーミングなメロディーの「涙色の微笑」はSANYOやvodafone、現在も“【TOYOTOWN】プリウスα かくれんぼ篇”(堺雅人出演)など、これまで何度もCMソングに起用され、バリーを知らない方も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? 映画での起用も複数あり、2002年のキャシー・ベイツ主演映画『夢見る頃を過ぎても(Unconditional Love)』ではバリーが本人役で登場しこの曲を歌い、2008年の映画『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー(Hellboy II: The Golden Army)』では半魚人と悪魔がこの曲をデュエットするというフシギなシーンに用いられました。
その親しみ易さのせいか、楽曲は80年代に入ってちょっとした騒動に巻き込まれてしまいます。 1984年にリリースされ、クリスマスの定番曲として有名なワム!の「ラスト・クリスマス」… (察しの良い人は、ここでピンとくる?) …が「涙色の微笑」のメロディーに類似しているとして、作者のジョージ・マイケルを音楽出版社ディック・ジェイムズ・ミュージック (Dick James Music Ltd.)が訴えるという事件が起きてしまったからです! ジョージ側はこれを認め、「ラスト・クリスマス」の初年度の印税をバンドエイドに寄付することで法廷外で和解しました。
「コパカバーナ」は、1978年のアルバム『愛と微笑の世界(Even Now)』に収録された曲です。 (同アルバムからは、過去に「夜のしじまに」を紹介しました) 3rdシングルとしてリリースされBillboard Hot 100で8位(年間74位)を記録、バリーは翌年この曲で“グラミー最優秀男性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞”を授賞しています。 バリーの作品を代表するラテン・ダンス・ナンバーで、それ以外でもブラスバンド演奏曲としてお馴染みですね♪
同78年にバリーはゴールディ・ホーン&チェビー・チェイス主演の映画『ファール・プレイ(Foul Play)』の主題歌「愛に生きる二人(Ready To Take a Chance Again)」(Hot 100/11位)を手掛けていて、「コパカバーナ」はその挿入曲でもありました。 ゴールディ・ホーンといえばキャメロン・ディアスとよく似た顔立ちをしていますが、そのキャメロンが起用された2006年のソフトバンクCM曲としてこの曲をご記憶の方も多いのではないでしょうか?
~Copacabanaは、ブラジルじゃない!?~
作曲はバリー、作詞はブルース・サスマン&ジャック・フェルドマンによる作品で、心躍る曲調に反し歌詞は意外にも“サスペンス風”です(詳細は後述)。 “Copacabanaを題材にしよう”というアイデアは、彼らがリオデジャネイロの“ Copacabana Hotel ”での話し合いから生まれました。 ただし直接的にこのビーチを舞台とするのではなく、“キューバのハバナにある(架空の)クラブ”での物語という設定がなされています。 ちなみに、ここで描かれているクラブはバリーが1960年代に通い詰めたニューヨークのナイトクラブ“Copacabana”をモデルとしており、タイトルにも使われる“Copa”はこのクラブの愛称だそうです(現在もこのクラブは存在する)。