Sammy Hagar - Winner Takes It All (1987年)~勝者には、独占する権利がある!?~ 「Winner Takes It All」…
直訳すると、“勝者がそれを全て取る”。
2009年の事業仕分けに於いて民主党の蓮舫議員が、次世代スーパーコンピュータ開発予算削減を求めて“(世界)2位じゃダメなんでしょうか?”…と、問うた波紋を思い出します。
“2位じゃダメ”といえば今年はオリンピック・イヤーであり、アスリートにとって金メダルは他の誰にも渡せないものでしょう。
…そこでクエスチョン!
もし一組のカップルに
トトロのシュークリーム 1個あげたら、二人はどうする?
①彼女が“あなた全部食べて❤”と言い、オレがいただく
②オレ様が一番だから、当然オレがいただく
③甘味に情け無用、力ずくでもオレがいただく
…どうあっても一人占めして食べたいようね?
~概要~ サミー・ヘイガーは1973年からモントローズ(Montrose)の一員としてとして活躍しその後ソロに転身、1985年にはアメリカHR/HM界を代表するバンドの
ヴァン・ヘイレン(カテゴリ) に加入し2代目ヴォーカリストを務めたアメリカのロック・ミュージシャンです。
サミーのお披露目となった1986年のアルバム『5150』は全米No.1の大ヒットを記録、続いて彼はソロ名義でシルヴェスター・スタローン主演の映画
『オーバー・ザ・トップ(Over the Top)』のサウンド・トラック へと参加しました。
楽曲は
『フラッシュダンス』 や
『ネバーエンディング・ストーリー』 など、当時話題の映画音楽を次々と提供してきた巨匠
ジョルジオ・モロダー の手によるもので、本作の作詞トム・ホイットロック(Tom Whitlock)とのコンビは『トップガン』の「Take My Breath Away」や「Danger Zone」でも有名です。
シルヴェスター・スタローンといえば、鍛え抜かれた肉体を生かした作品スタイルから『ロッキー3』の「Eye of the Tiger」など“燃える名曲”を数多く生み出してきた俳優ですが、
『オーバー・ザ・トップ』の主題歌 である「Winner Takes It All」もそれらに劣らぬ出来栄えに仕上がったといえるでしょう。
しかし肝心の映画自体がスタローンの代表作『ロッキー』シリーズの約1/10程度の興行収入しか得られなかったためか、1stシングルとしてリリースされた「Winner Takes It All」も
Billboard Hot 100で54位 と振るいませんでした。
スタローンが、自分より遥かに大きな男たちとアーム・レスリングで勝ち抜かねばならない戦いの過酷さを伝えるのに十二分なサミーの迫力あるヴォーカルですが、当初「Winner Takes It All」を歌ったのは同サントラに参加していたエイジアのジョン・ウェットンでした。
しかし彼のバージョンは“不十分”と判定され、サミーが歌うことになったという経緯があったようです。
日本盤「オーバー・ザ・トップ」のジャケットには
“with エディ・ヴァン・ヘイレン” と記されており、VHのギタリストであるエディが参加しているのかと思いきや、PVを見る限り“ギターを弾いているのはサミー本人”で戸惑われた方もあるでしょう。
しかし実際にはエディはちゃんとギターを弾いていて、彼は
“ベース”ギターをプレイ しています!
何でも、エディがベースを弾いたのはこの時が初めてで、彼はこのレコーディングのために3日でマスターしたそうですよ!
~Winner-take-all~ 原題として用いられている
【Winner-take-all】はアメリカ大統領選挙の一般投票で殆んどの州が採用する選挙方式 です。
よくアメリカ大統領選挙は有権者による直接選挙といわれますが実際には、有権者は大統領選挙人を選び→大統領選挙人が大統領を選ぶという二段階方式になっています(※選挙人は誰に投票するか事前に公表しているので実質的に“選挙人を選ぶ=大統領を選ぶ”と解釈される)。
選挙人の数は州ごとに決まっていて、最多得票の選挙人(団)がその州に割り当てられた直接選挙票の全てを獲得することから“
勝者総取り方式 ”と呼ばれます。
【Winner-take-all】は“最多票を獲得した人が全ての権利を得る”というシンプルで非常に分かり易い制度である反面、
大きな欠点 もあります。
元々アメリカのように堅固な二大政党制が根づいていれば現与党への批判票の行き場は1つに絞られ有権者は意思を反映させることができますが、イギリスや日本のように
野党が小党乱立している場合批判票は細かく割れて殆んどが“死票” となり、たとえ
反与党勢力が総数で与党を上回ったとしても単独で1位になる政党がなければ、与党の勝ちと なってしまうのです。
“大政党の独り勝ち”という【Winner-take-all】の特色 は、
小選挙区制が導入されて以降日本の衆院選 で顕著であり、過去4回に於ける第一党('09年以外は自民党)の得票率の平均は46.5%であるのに係わらず、第一党が獲得した議席占有率の平均は75.3%に膨れ上がる“マジック”によってもたらされています。
さらに、投票率が50%強であることを考慮すると、
“近年この国の立法・行政は国民全体の僅か25%の票が議席(衆院)の75%を支配し、その議決権の殆んどを独占”している 実態が浮き彫りになってきます。
これこそが近年“原発回帰”や“安保法”、“沖縄米軍基地問題”、“与党政府の急速な右傾化”など重大事案について
大多数の国民の気持ちと真逆の結果を次々と重ねながらも、いざ選挙をすると何故か自民党独り勝ちという不思議な現象のカラクリ となっているように思うのです。
民主主義国家に於いて、こんな民意を反映させない選挙制度は即刻改めるべきですが、その議決権を握る当の
自民党にとってこんなオイシイ“魔法の選挙制度”は無い ワケで…。
~Epilogue~ 安倍首相は、今回の自民党の参院選のポスターに
“この道を。力強く、前へ。” を掲げています。
“この道” とは、一体何を意味するのでしょうか…。
2014年の衆院選の際も
“景気回復、この道しかない。” と経済政策を前面に打ち出し選挙で大勝利をしましたが、今年の参院選直前に2度目の消費増税延期を表明していることが、現在の景気状況を物語っています。
一方その間安倍首相が精力を注いだのは、進んで選挙の争点として広く国民に宣布しなかった『
特定秘密保護法 』や『
安全保障関連法 』の成立です。
今回の参院選ではスローガンから“景気回復”の文字が消えています が、やはり
選挙が終わると その際争点化するのを避けてきた
“この道”を力強く、前へ進める ことに全力を注ぐのでしょう。
私は、至上命令としての護憲派ではありません。
現・日本国憲法9条2項の“陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。”の一文を純粋に解釈すると自衛隊の存在は疑いなく違憲であり、国民の大多数がその存在を認めている矛盾を解消すべく、“この一点に限り修正すべき”と考えています。
しかし、『
自民党憲法改正草案 』には全面的に反対です。
その条文の一字一句も然ることながら、何よりその根底には
日本国憲法が最も大切にしてきた“国民主権”“基本的人権尊重”“平和主義”など国民の権利を削ぎ、思想信条・家族の領域までも国家が統制し、国家政府の権限を強化しようというねらいが強く感じられる からです。(
日本国憲法改正草案Q&A(増補版) )
安倍氏は口々に“美しい国”や“愛国”を持ち出しますが、愛や献身は個人それぞれの心から自然発生して初めて美しいのであって、愛国教育を含め国家や他人に強要された献身を、私は美しいとは思いません。
また、選挙の度に“これからの国のあり方”に係わる
非常に重要な案件を国民から隠す姿勢 や、
アメリカ議会に約束した“事後処理”として 国民の反対を押し切って
強行採決 した『安全保障関連法』、沖縄の民意で選ばれた知事への失礼、権力から
独立性を保つべき の内閣法制局や日銀・メディアへの
介入統制 、GPIF評価損の公表を今年に限って選挙後に変更、政権中枢にある人たちの
心ない言動 …
第2次安倍政権が発足してからの3年半は、その判断を下すのに十分な時間と、多くの材料がありました。
そして、もしかしたら今回が現憲法下で行われる最後の国政選挙になるかもしれません。
一つ言えることは、
“信用できない人間に、大切なものを預けるべきではない” ということ。
私は、今上天皇を敬愛しています。
それは、彼の天皇という身分についてでなく、一個の人格として尊いと思えるからです。
きっと生来のお人柄に加え、戦争を経た日本の歴史を踏まえ、現・日本国憲法が理想とする精神の範(象徴)たるべく人格の修練に励まれてきたことでしょう。
武力で威嚇し国を守るのではなく、徒(いたずら)な戦意を萎えさせる静かな心。
日本は、陛下のように穏やかで偏りのない国風であって欲しい…。
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