「ホワット・イット・テイクス」はエアロスミス1989年の10thアルバム『パンプ(PUMP)』の収録曲で、3rdシングルとしてBillboard Hot 100の9位(1990年の91位)まで上昇しました。 エアロスミスといえば1998年の映画『アルマゲドン』の主題歌「I Don't Want to Miss a Thing」が特に有名ですが本曲もそうした切ないテイストのバラードで、スティーヴン&ジョーに加えてバンド外のソングライター、デスモンド・チャイルドが共作者として参加しています。 デスモンド・チャイルドは前作『Permanent Vacation』で「Dude (Looks Like a Lady)」や「Angel」の作曲に携わった人であり、本作でも複数楽曲を提供するなどエアロスミス復活の立役者の一人です。 また、同じころ彼はアリス・クーパーの『Trush』のプロデュースを担当しており、その縁からかブラッド・ウィットフォード以外の4人のメンバーもそのアルバムのレコーディングに参加しています。
アコーディオンやビートルズの「A Day in the Life」風のピアノ、アコースティック・ギターなどをフィーチャーしたハード・ロック・バンドらしからぬソフト・サウンドであり、ライブではスティーヴンがアカペラで歌い始める演出もなされてきた作品です。 こうした情感たっぷりでありながらの爽やかテイストは“エアロスミス史上最高のバラード”とファンからの評価も高く、日本の人気ロック・ユニットB'zも1991年のアルバム『IN THE LIFE』で“アメリカのロック・バンドを意識した(稲葉)”というロック・バラード「憂いのGYPSY」を発表し話題を呼びましたが、その“影響力”の大きさを感じさせます。 しかしB'zほど明白ではないものの、Mr.Childrenの「終わりなき旅」や「Everything (It's you)」にも“同じ系譜”が垣間見えるように、エアロスミスが「What It Takes」で確立したスタイルが1990年代J-Rock全盛の雛型の一つであったと言っても過言ではないのでしょう。
ミュージックビデオは2種類あって、一つはテキサス州ダラスにあるカントリー・ダンス・ホール『Longhorn Ballroom』で撮影された映像で、これは今回のメイン動画に掲載いたしました。 もう一つはアルバム『パンプ』の制作過程を撮影したビデオ作品『The Making of Pump』に収録された映像で、こちらは本項に紹介いたします。
~Lyrics~
Girl, before I met you I was F.I.N.E. Fine おまえに出逢うまで、こんなんじゃなかった but your love made me a prisoner, yeah my heart's been doing time おまえの愛が俺を虜にし、心は囚われたまま
実はここでの[F.I.N.E.]は本作『パンプ』収録の「F.I.N.E.」という曲に引っ掛けており、[heart's been doing time]も前作『パーマネント・ヴァケイション』の「Heart's Done Time」との関連によるものと考えられます。 また、この部分以外にも[leave your life to the toss of the dice]は『パンプ』の「Love in an Elevator」の歌詞に関連させています。
こういう“お遊び”を見つけるのも、ファンにとっては楽しいものです ♪
It was easy to keep all your lies in disguise おまえにとって嘘を装うなど、いと容易いこと 'Cause you had me in deep with the devil in your eyes だって、その瞳の中の悪魔に魅入られた男が相手なのだから
「I Don't Want to Miss a Thing」と並び、 エアロスミスの最高傑作バラードの一つに数えられる「What It Takes」…
「I Don't Want to Miss a Thing」は、本来“目の前の君があまりに愛おしくて、一瞬たりとも目を離したくない”という微笑ましいラブ・ソングですが、どうしても映画『アルマゲドン』で娘の命を守るために自ら死地へと赴く父(ブルース・ウィリス)の心情と重なってしまうため、究極的な切なさを覚えてしまいます。
Tell me what it takes to let you go おまえを忘れるために、どうすればいい? Tell me how the pain's supposed to go この胸の痛みを消し去るため、どうすれば…
一方、「What It Takes」は“別れた君があまりに愛おしくて、一瞬たりとも心から離れない”切なさでしょうか…。 その苦しさから逃れるため、【what it takes(何が必要?)】と問い掛けているわけです。
Tell me that my lovin' didn't mean that much 俺の愛など、大した意味もなかったと Tell me you ain't dyin' when you're cryin' for me たとえ俺のために涙することがあろうと、死ぬほどの苦しみもないと言っておくれ…