5月11日にシングル「I Get Around / Don't Worry Baby」としてシングル・カットされ、「Don't Worry Baby」はB面ながら単体でBillboard Hot 100の24位を記録しました。 チャート上、中ヒットに過ぎない本曲ですがビーチ・ボーイズの中でも名曲の誉れ高い作品の一つであり、『ロックの殿堂』“500 Songs that Shaped Rock and Roll”や『ローリング・ストーン誌』“500 Greatest Songs of All Time 178位”などにも選ばれています。 日本では「ドント・ウォリー・ベイビー」の表記が一般的と思いますが、当初は「気にしないで」という邦題が付けられていたようです。
ブライアン・ウィルソンと、友人でDJのRoger Christianの共作で、1963年にブライアンがラジオで聴いたロネッツ(The Ronettes)の「Be My Baby」(過去ログ)に感銘を受けて創作を始めたものです。 ブライアンによると「Be My Baby」のエッセンスを把握するために1000回以上聴いたそうで、素人が聴いてもそういうエッセンスを感じ取ることができると思うので、それを意識して聴き比べてみるのも面白いでしょう。
カバーは「雨にぬれても」(過去ログ)のB. J. トーマスによる1977年のバージョンが、Hot 100の17位を記録しています。 ブライアンも歌われることを望んだというロネッツのロニー・スペクターは1999年、愛娘カーニー&ウェンディのグループ【ウィルソン・フィリップス】は2012年にそれを実現させました。 また、ブライアンの功績を讃えて催された2001年の『An All-Star Tribute to Brian Wilson』で「Don't Worry Baby」を歌ったのは、ビリー・ジョエルでした。 日本では、山下達郎デビュー前1972年の自主制作アルバム『ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY』の一人多重録音ver.が何といっても秀逸です(ただし、さすがにコーラスは素人くさい)。
~Lyrics~
But I keep thinking もうずっと考え続けているんだ Something's bound to go wrong 何か‘間違い’が起こるんじゃないか、って
「カリフォルニア・ガールズ」はビーチ・ボーイズ1965年のアルバム『サマー・デイズ[Summer Days (and Summer Nights!!)]』の収録曲で、シングルとしてもBillboard Hot 100で3位(年間49位)を記録し、全世界で400~500万枚といわれる彼ら最大のセールスを挙げたヒット曲です。 時代を越えて愛され続けた作品で、『ロックの殿堂』は“500 Songs That Shaped Rock and Roll”に、『ローリングストーン誌』は“500 Greatest Songs of All Timeの71位”(2004年)と“Best Summer Songs of All Timeの4位”に、2010年には『グラミー殿堂賞(Grammy Hall Of Fame Award)』に選出されています。
作曲はブライアン・ウィルソンで、彼が初めて使用した麻薬による幻覚の経験が及ぼしたといわれています。 ブライアン自身“ビーチ・ボーイズの代表曲”と胸を張るほどの自信作であり、バッハの「Jesu, Joy of Man's Desiring(主よ、人の望みの喜びよ)」のリズムからインスピレーションを得ているそうで、特徴的な“シャッフル・ビート”(タンタ、タンタ…というリズム)もバッハから閃きを得たようです。
1960年代の“カリフォルニア・サウンドの象徴”とされるサウンドであり、ロネッツの「Be My Baby」(過去ログ)など“ウォール・オブ・サウンド”の生みの親であるフィル・スペクターを敬愛するブライアンのサウンドへの追及心は高まるばかりで、膨大な労力が費やされました。 カール・ウィルソンによる12弦ギターやブラス・セクション、オルガンなどで構成される美しいイントロはブライアンが満足するまで44テイクを要し、更にヴォーカル・トラックには2か月費やし何度もオーバー・ダブを積み重ねたそうです。
~ビーチ・ボーイズ以外の「California Girls」~
「California Girls」といえば、オリジナルのビーチ・ボーイズに劣らず有名なのが1984年12月にリリースされたデイヴィッド・リー・ロスver.でしょう♪ デイヴは言わずと知れたHR/HMバンド“Van Halen”(過去ログ)のヴォーカリストで、ソロ名義のEP『Crazy from the Heat』からのシングルとして発表し、Hot 100で3位を記録しました(直後にVHを脱退)。
このデイヴver.のバック・コーラスにはビーチ・ボーイズのカール・ウィルソンと、クリストファー・クロス(過去ログ)が参加したことでも話題を呼びましたが、それ以上に語られることが多いのが『MTV Video Music Awards』にもノミネートされたPVです。 何といってもデイヴ自身この歌を地でゆくようなキャラでハマっているし、“RothがLosの観光案内をする”というダジャレをはじめ個性的な観光客やたくさんの水着ギャル、VH時代から定評のあるサービス精神旺盛(過剰?)な彼のパフォーマンスは本作の楽しさを増幅させてくれています♪
この曲はビーチ・ボーイズとは別の作品ですが、歌詞の最後の一節にビーチ・ボーイズでサビとして有名な[I wish they all could be California girls]が使われており実はこれが無断使用だったことが判明したものの、作詞者であるビーチ・ボーイズのマイク・ラヴは“光栄に思っている。彼女の曲は素晴らしいと思うよ。世界中で成功することを願っている”と、逆にエールを送ったそうです。
~Lyrics~
Well East coast girls are hip 東海岸の女の子って、カッコいいな I really dig those styles they wear ホント、洋服のスタイルには感心する
ビーチ・ボーイズのマイク・ラヴは3月7日、今回のツアーのステージでカリフォルニアに所縁ある偉大な一人の女性を悼みました。 彼女はカリフォルニア州のファースト・レディを務め、後にアメリカ合衆国のファースト・レディに登り詰めたロナルド・レーガン大統領夫人だったナンシー・レーガン(享年94/※彼女の出身はニューヨーク)。 レーガン夫妻は予て(かね)よりビーチ・ボーイズのファンであり、彼らは1985年の大統領就任式後の舞踏会で夫妻のために歌った「Their Hearts Were Full of Spring」を、見事なコーラスと共にアカペラで彼女に捧げました。
I wish they all could be California あぁ…どの娘もみんな I wish they all could be California girls カリフォルニア・ガールだったらいいのに
スタジオ・ワークに専念するようになったブライアンは1965年、ビートルズの 『ラバー・ソウル』に衝撃を受けます。 これによりアルバムを単なる曲の寄せ集めではなく全体を一つのテーマとして成立させるアルバムの必要性を 感じ、それを具現化したのが1966年の『ペット・サウンズ(Pet Sounds)』でした。 しかしこれを聴いたビートルズのポール・マッカートニーやプロデューサーのジョージ・マーティンが逆に衝撃を 受け、負けじと『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を生み出すこととなるのです。 この切磋琢磨により二枚のアルバムは歴史的名盤として評価されることとなり、ローリング・ストーン誌の“500 Greatest Albums of All Time”でも『サージェント・ペパーズ…』が歴代1位、『ペット・サウンズ』が歴代2位として今も君臨しています。