I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

STOP!
地球温暖化/気象災害激甚化
Lil Dicky - Earth
Lil Dicky - Earth1
Beatles & Solo
Please Please Me


With The Beatles


A Hard Day's Night


Beatles For Sale


Help!


Rubber Soul


Revolver


Sgt Pepper's


The Beatles


Yellow Submarine


Abbey Road


Let It Be


Magical Mystery Tour


Beatles(the other songs)


John Lennon


Paul McCartney


Wings


George Harrison


Ringo Starr


「クリスマス・イブ」山下達郎

2018.12.14

category : Christmas

Tatsuro Yamashita - Christmas Eve1 Tatsuro Yamashita - Christmas Eve2


Tatsuro Yamashita - Christmas Eve(English Version) /2000年



~概要~

「クリスマス・イブ」は、発売から30年以上経つ今日に於いてもシーズンに一度は何処かで耳にするであろう、日本のJ-POPを代表するクリスマス・ソングです(…という説明さえ不要な程)。
元々は山下達郎が1983年6月8日に発表した7thアルバム『MELODIES』の収録曲で、そこから2ndシングル(1stは「高気圧ガール」)として同年12月14日に3万枚限定の【30センチ/45回転盤ピクチャー・レコード】《写真・左》として発売され、オリコン・シングルチャートで44位を記録しました。
B面はビング・クロスビーが大ヒットさせたクリスマス・スタンダード「WHITE CHRISTMAS」のカバーで、これぞ達郎サウンドといえる多重録音の“一人アカペラ”の美しさはまさに“聖夜”に相応しい仕上がりです。

86/87年も【17cmホワイト・ビニール盤】が限定発売されていますが、「クリスマス・イブ」が広く知られるようになったのは最初のリリースから5年経った1988年以降のことでした。
JR東海『ホームタウン・エクスプレス(X'mas編)』のCMソング次項詳細)に起用されたことで知名度が上昇、1988年11月10日に4度目となるシングルも初めて【8センチ・シングルCD】として発売されました。
しかしクリスマス・シーズンが過ぎた後もロング・ヒットが続き、最初のリリースから6年後となる1989年12月に初めてオリコン・シングルチャートで1位を獲得【発売から1位獲得までに要した最長記録(当時)】、1989年度年間75位/1990年度年間13位という大ヒットとなり、2013年の時点で累計185.1万枚を突破、これは【1980年代に国内で発売された楽曲で売上が最も多いシングル】とされています(2位はもんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」)。
また、その後もシーズンになると思い起こされるクリスマスのスタンダードとなり、オリコンでは1986年 - 2017年に【32年連続トップ100位以内獲得】を継続中であり、これは同チャートでの最長記録です。



 



~JR東海『クリスマス・エクスプレス(X'mas Express・Xmas Express)』シリーズ~

国鉄分割民営化により1987年に誕生したJR東海は同年、最初の企業広告として遠距離恋愛を題材にした『シンデレラ・エクスプレス』(松任谷由実の同名曲がモチーフ)を制作していますが、そのコンセプトに基づいて翌1988年のクリスマス・シーズン向けに制作されたのが『ホームタウン・エクスプレス X'mas編』でした。

テーマ曲「クリスマス・イブ」の主人公は男性であるのに対しCMでの主人公は女性で、起用されたヒロインは当時15歳の深津絵里(高原里絵)。
映像は“帰ってくるあなたが最高のプレゼント”をテーマに、女の子が新幹線のホームで彼の帰りを心待ちにするも現れず涙を零した瞬間、プレゼントを持った彼がムーンウォークで登場する…という微笑ましいストーリーでした。

この企画は翌1989年『X'mas EXPRESS'89』として継続され、恐らく「クリスマス・イブ」の人気が決定的となったのはこのCMによる影響も大きいでしょう。
ヒロインを演じたのは当時17歳の牧瀬里穂で、プレゼントを抱えて恋人を迎えようと駅の構内を急ぐ彼女が彼を発見、早く駆け寄りたい気持ちを抑えて柱の陰に隠れてワクワクしながら彼を待つ…という展開は、もはや「クリスマス・イブ」の“きっと来ない”せつなさは微塵も感じさせないストーリーとなっていますが、それを無視してもヒロインの初々しさは視聴者の共感を大いに誘うもので、牧瀬里穂自身もこのCMによって一躍脚光を浴びることとなりました(『Xmas EXPRESS』のCMはシリーズ化し、1992年まで毎年制作された)。

「クリスマス・イブ」は1983年の楽曲発表以来公式MVが存在していませんでしたが、発売30周年を記念して初めて映像化され、「クリスマス・イブ(30th ANNIVERSARY EDITION)」に新撮ショート・フィルムを収録したDVDが特典として付加されました。
ヒロイン役は広瀬すずが演じ、『X'mas EXPRESS'89』のヒロインだった牧瀬里穂が広瀬すずとすれ違ってぶつかる通行人役で特別出演しており、これは『Xmas EXPRESS'92』でヒロイン吉本多香美と山下達郎本人がぶつかる(カメオ出演)演出を彷彿させます。

 



~Christmas Eve(English Version) ~

山下達郎ファンの方はご存知のように、彼はオールディーズやビーチ・ボーイズの“マニア”であり、そうした手法やカバーを多く取り入れ作曲やサウンドに生かされていますが、「クリスマス・イブ」にもその血脈がしっかり流れています。
そうした特性からか外国の歌手が彼の楽曲をカバーすることも珍しくなく、「クリスマス・イブ」も同様でしたが、あまりに多くの解釈の異なる英語詞が作られていたため、公式の「Christmas Eve(English Version)」を制作することになりました。
そこで1982年の『FOR YOU』以来英語詞の提供を受けているアメリカのシンガー・ソングライター、アラン・オデイ(Alan O'Day)に依頼しオリジナルである日本語ver.に準じた世界観で作詞されています。

この公式English Ver.が最初にお目見えしたのは、1991年のビデオ映像『TATS YAMASHITA PRESENTS CHRISTMAS IN NEW YORK』でした。
その後1993年にクリスマス・ソング&アメリカン・スタンダードで構成されたアルバム『SEASON'S GREETINGS』に収録され、2000年からシングルにも採用されています。


Wonder if it's gonna snow again
雨はまた、雪へと移ろうのだろうか…

オリジナルの日本語Ver.との違いで気になったのが、【again】。
山下達郎が書いた日本語Ver.は心情表現を抑えて淡々と描いているのに対し、English Verは心情表現を加えて表現されている印象を受けます。
そうした印象からか、ここでの雨や雪は主人公の心模様と重なる【情景】であり、【again】は同じような場面が過去にもあったことを連想させました。


Somewhere far away the sleighbells ring
遠くに響く、スレイベルの音

【sleighbell】は“そりの鈴”でクリスマス・ソングによく使われる言葉ですが、山下達郎の(日本の)都会的な「クリスマス・イブ」に、“サンタを乗せたトナカイのソリ”が走るなんて想像できませんよね?
…なので、クリスマス・ソングによく使われるスレイベル(鈴を棒に取り付けた楽器)という解釈をしました。



~Epilogue~

「クリスマス・イブ」は日本はおろか、本場キリスト教国の人々にも愛される山下達郎の代表曲で、彼自身も“間違いなく私の代名詞となって残るであろう一曲。自分の全作品中、詞・曲・編曲・演奏・歌唱・ミックス、すべての要素がバランスよく仕上がった数曲のひとつ”と評しています。

元々はシュガー・ベイブ時代の未完成曲「雨は夜更け過ぎ」(1975年1月24日・新宿厚生年金会館小ホールでの『シュガー・ベイブ セカンド・コンサート』で演奏されている)から生まれたもので、バロック調のコード進行からテーマを“クリスマス”として創作されました。
しかし本人が“別にクリスマス・ソングで当ててやろうとか、そういう下心がもとよりあるはずもなく…”という位置づけであったため当初シングル化は想定されていませんでしたが、ムーン・レコード社長からの提案でシングル化が決まったそうです。


また、2001年に初回放送されたTBS系『クリスマスの約束』で、ホストの小田和正から“番組で一緒に「クリスマス・イブ」を演らないか?”の出演依頼に対する手紙の中で、山下達郎は次のように綴っています。

もともとこの曲は、オフコースに触発されて作ったものです。
青山のアパートの一階がオフコース・カンパニーで、二階に私の所属事務所があった時代でした。
あの頃は私も30歳になったばかりのとんがった盛りでした。
バンドで挫折した私にとって、オフコースはとても重要なライバルで、敵(失礼!)がバンドのコーラスなら、こっちは一人でとか、そういったしようもないことを若気の至りでいろいろと考えたものでした…


結局、山下達郎は出演せず小田和正が一人で「クリスマス・イブ」を歌いましたが…
この年『クリスマスの約束』のサブタイトルは、“きっと君は来ない”でしたっ! 


きっと君は来ない
ひとりきりのクリスマス・イブ


「クリスマス・イブ」の有名なフレーズですが、ここから窺えるのは“クリスマス・イブに(恋人もなく)ひとりきりは淋しい”という価値観。
コラムニストの堀井憲一郎氏によると、“1982年以前はクリスマスよりお正月が大事だった”が1983年12月の女性誌『アンアン』で「クリスマス特集 今年こそ彼のハートをつかまえる!」という特集が組まれるなど、その頃から“クリスマスを恋人同士で過さないといけない”という日本独特の概念が育まれたと指摘しています。

そう言われてみると「クリスマス・イブ」の発表も1983年だし、ざっと調べてもそれ以前にそうした価値観に基づいた日本のクリスマス・ソングって殆んど無いことを考えると、本曲も日本人のクリスマスの概念形成に少なからず影響を与えたといえるのかもしれません。

ただ、歌という文化が素晴らしいと思うのは、詞で悲しみを語っていても、曲や音色でそれを和らげる色づけしたり、あるいはバック・コーラスで主人公を励ます気持ちを込めることもできることです。
山下達郎が傾倒したオールディーズとはそうした色彩を多層で表す音楽であり、「クリスマス・イブ」には故郷を離れ都会で暮らす若者の孤独感を代弁し、励まそうとする彼の気持ちが込められている気がします。

…でも彼をそんな気持ちにさせたのも、“愛(人を思いやる)の大切さを確かめ合う”というクリスマスの概念があったからなのかもしれません。
キリスト教徒でもない日本人がこれほどまでにクリスマスに共感するのは、そういうことでしょう?

満たされた人には幸せを、満たされない人には希望を…
家族と暮らす人にも、ひとりきりの人にも、それぞれにクリスマスの恵みが届きますよう。



「Christmas Eve(English Version)」


続きはこちら >>

tags : 2000年 日本の曲 せつないクリスマス 

comment(10) 

「赤鼻のトナカイ」ジーン・オートリー

2017.12.15

category : Christmas

Gene Autry - Rudolph The Red Nosed Reindeer1 Gene Autry - Rudolph The Red Nosed Reindeer2


Gene Autry - Rudolph The Red Nosed Reindeer (1949年)



~マライアさんちのクリスマス~

クリスマスというと、トナカイの引くソリに乗ったサンタクロースが空を飛んでやって来るイメージで、寒さ厳しくなるこの季節にあたたかさを灯してくれます。
私たち一般人はそんなイメージを実際目の当たりにできることはまずありませんが、“クリスマスの女王”とも形容されるマライア・キャリーは例外のようです。
そのマライアはツアー中のロンドン公演で、次のように語っています。

(クリスマスは)最高の時間を過ごすわ。
みんなのクリスマスと比べ、私の方が凄いなんてことは言えない。でも、本物のトナカイが来るのよ。それにもちろん、サンタクロースもね♪


“みんな”って、どこの世界に住んでいる人たちのことだろう…? 



~概要~

「赤鼻のトナカイ」は「ジングルベル」「サンタが街にやってくる」と並ぶ三大クリスマス・ソングの一つで、日本でも“真っ赤なお鼻のトナカイさんは…♪”の日本語訳詞(新田宣夫)でお馴染みの歌です。
作者はクリスマス・ソングを専らとするアメリカのソングライター、ジョニー・マークス

オリジナルの発表は[The Singing Cowboy]として親しまれたカントリー歌手ジーン・オートリー (Gene Autry) で、1949年9月1日にリリースされると200万枚を売り上げてBillboardでもNo.1に輝いています(※Hot 100が生まれる前のチャート)。
1949年10月8日、ジーンはラジオ番組に出演して歌を披露しており、さすがに当時の映像は無いだろうと思ったら1953年のものが今回見つかりました。

その後ビング・クロスビーやポール・アンカ、スプリームス、ジャクソン5に坂本九、石原裕次郎、フィンガー5…といった豪華な顔ぶれがカバーするなど、1985年までに「赤鼻のトナカイ」の総売上は1億5000万枚を突破したとされています。
カバーがたくさんあって限定するのに困るのですが、私は古き良き時代の匂いがするエラ・フィッツジェラルドディーン・マーティン、美しいハーモニー&かわいいアニメが楽しいビヨンセのデスティニーズ・チャイルドver.がお気に入りです。

また子どもにとって夢のある歌だけに、日本では『オバケのQ太郎』や『怪物くん』『Dr.スランプ アラレちゃん』『美少女戦士セーラームーン』ほか多数のアニメ・キャラクターにより歌唱されてきました。
一方かなり意外なキャラクターも本曲へのアプローチを試みており、泉谷しげるやザ・デストロイヤーver.はお好み次第でドウゾ?


 
 



~Lyrics~

You know Dasher and Dancer
みんなが知ってるダッシャーにダンサー
And Prancer and Vixen
プランサーにヴィクセン

サンタクロースそのものの起源は4世紀頃とされていますが、今日一般的な“トナカイのソリに乗ったサンタ”という概念は1821年にニューヨークで出版された作者不詳の詩『Old Santeclaus with Much Delight』が最初だとされています(ただし、この時点ではトナカイは1頭のみ)。

その後1823年12月23日にアメリカ・ニューヨークの新聞Sentinel紙に無名で発表された詩『サンタクロースがきた(A Visit from St. Nicholas)』で、Dasher, Dancer以下8頭の名前を持つトナカイが登場し、これが米国内で定着し世界に広まってゆきました。


Rudolph the red-nosed reindeer
赤鼻のトナカイ、ルドルフは
Had a very shiny nose
とてもつやつやした鼻の持ち主

【赤鼻のトナカイ、ルドルフ】は、大手総合小売り業チェーン『モンゴメリー・ウォード (Montgomery Ward)』の広告コピーライターのロバート・ルイス・メイ (Robert Lewis May)が、1939年に同社の宣伝配布用の小冊子のために書いた詩文『ルドルフ 赤鼻のトナカイ(Rudolph the Red-Nosed Reindeer)』の主人公として創作されたキャラクターです。

1948年、ロバートの義理の兄弟ジョニー・マークスがルドルフの詩に基づいた歌曲「Rudolph the Red-Nosed Reindeer」を作詞・作曲しビング・クロスビーらへの楽曲提供を試みるものの断られ、1949年にジーン・オートリーによって初めて世に発表されることとなりました。
その後『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』は1964年にNBCでパペット・アニメーションが制作され、以来現在に至るまで日本はもちろん世界中で同アニメが放送・DVDなどで愛され続けています。

ちなみにトナカイの鼻について、wikiには【鼻の色は黒、もしくは白い毛が混じったもので歌にあるような赤ではない】と記述されており、私が写真と動画を何点か確認した所見を補足すると、鼻部は黒か白の毛で覆われていて皮膚は殆んど露出しておらず、毛が白い場合は部分的にピンク色に見えるものもありました。
(※トナカイの自然分布は北極圏周辺と極寒の環境であり、鼻は呼吸の際に体温を放出しないよう機能が備わっているそうです)

 


All of the other reindeer
だけど他のトナカイたちはみんな
Used to laugh and call him names
それを笑いものにしたり、悪口を言って

12/9のTBS『報道特集』で、“色覚検査の是非”についてのレポートがありました。
昔は学校での色覚検査は定期健康診断の必須項目でしたが2003年に必須から外されて行われなくなり、そのため自分の色覚異常を認識せぬまま進路決定がなされ、採用時にそれが発覚し就職できなくなるケースが相次いでいるというのです(※このため昨年度から一部で検査が実施されるようになった)。

学校で色覚検査が行われなくなくなった理由は“色覚異常に対する差別や偏見”で、学校での色覚検査に反対という男性の体験によると、検査時の誤答を教師が笑いのネタにしたため他の生徒たちに笑われ、心に深い傷を負ったといいます。
ただこの場合、原因は検査そのものではなく色覚異常という個人情報を公然として扱ったたこと、加えて教師の言行があまりに不適切であったように私には映りました。
人間関係にユーモアは必要ですが、人を貶めて取る笑いは最低です。



~Epilogue~

詩文『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』の作者ロバート・L・メイには1939年当時、癌の病を抱えた妻イヴリン (Evelyn) と4歳になる娘バーバラ (Barbara) の家族がありました。
この年のはじめロバートは所属会社の上司から、クリスマスの買い物客への宣伝配布用の冊子として、動物を主人公とした元気が出る内容のものを書くよう依頼されます。

そこで彼は、娘バーバラが大好きな鹿(deer)を主人公とする物語を思いつき、ルドルフの話を詩として彼女に読み聞かせ反応を確かめながらストーリーを創作してゆきました。
しかし妻イヴリンは物語の完成を待つことなく同年7月に帰らぬ人となり、心配した上司が絵本づくりの仕事を他の者に交代させることを提案しますがロバートはそれを断り、翌月に完成させて誰よりも最初にまずバーバラとイヴリンの両親に読み聞かせたといわれます。

Gene Autry - Rudolph The Red Nosed Reindeer3


“どうして、うちのママはみんなと違うの…?”

【赤鼻のトナカイ】は、そんな4歳の愛娘バーバラの問いから生まれました。
イヴリンの癌は1937年に見つかったといいますから、バーバラが2歳の頃からのことであり、彼女にとって母との思い出の殆んどは“闘病生活”だったのでしょう。
そんな“バーバラの言葉は彼女の幼い心の中でもやもやした疑問であり不安”、そして言葉が純粋であるからこそ、それは“ロバートにとっては最愛の妻と娘の不幸を救えない無力な自分の映し鏡”だったに違いありません。
そして、父であるロバートは娘の“問い”に答える責務がありました…。

"Rudolph with your nose so bright,
“ルドルフや、おまえの輝くその鼻で
Won't you guide my sleigh tonight?"
今晩、わしのソリを道案内しておくれ?”

人と違う人生には、人より多くの孤独と苦難が訪れるかもしれない。
でも人と違うからこそ、人にはない輝きが秘められていることを忘れちゃいけないよ。
大切なのは恐れて輝きを失うことではなく、信じてそれを磨くことなんだ。
 (※個人の解釈です)

父から、愛する娘への願い… 
今年も赤鼻のトナカイは“贈りもの”をあなたの心へ届けるため、世界を駆け巡ります。



「赤鼻のトナカイ」


続きはこちら >>

tags : 1949年 歴史的名曲 祈りのクリスマス 

comment(8) 

「ワンダフル・クリスマスタイム」ポール・マッカートニー

2017.12.08

category : Christmas

Paul McCartney - Wonderful Christmastime1 Paul McCartney - Wonderful Christmastime2


Paul McCartney - Wonderful Christmastime (1979年)



~ポールから、ビートルズ・メンバーへのクリスマス・プレゼント~

ポール・マッカートニーが1965年にビートルズの他の3人へのクリスマス・プレゼントとして制作した音源『Unforgettable』が、今月1日にYouTubeで公開されました。
この音源はポールがDJとなってナット・キング・コールやビーチ・ボーイズ、エルヴィス・プレスリーなどの曲を紹介する内容となっており、自宅にあるテープレコーダー2台を使って録音されたもので、ポール自身は“クレイジーで、前衛的なもの、夜遅くに聴いて楽しめるものを他のザ・ビートルズのメンバーのために作ってみたんだ。基本的に友人のためのものでしかないんだけどね”と、解説しています。

…あなたはもうクリスマス・プレゼントをご用意されましたか?
私はポールに倣って、本記事をクリスマス・プレゼントといたしましょう♪


Paul McCartney's Christmas Disc 1965



~概要~

「ワンダフル・クリスマスタイム」は1979年11月16日発売のポール・マッカートニーのシングルで(B面は「Rudolph The Red-Nosed Reggae」)、ビートルズ解散後初のソロ・シングル「Another Day」(1971年)以来8年ぶり、そして実現するはずだったウイングスの日本公演直前の1980年1月5日に全英6位を記録しました。
1979年6月、ポールはウイングスのアルバム『Back To The Egg』をリリース後6週間ほど自宅スタジオに籠って一人でレコーディングを行っており、この音源は翌年のソロ・アルバム『McCartney II』として発表されることとなりますが、「Wonderful Christmastime」もこの時の録音によるものです。

作詞・作曲、ヴォーカル&演奏の20トラック以上、プロデュースをポールが一人で担当し、それ以外にも特筆すべきといえば当時流行だった【テクノ・ポップ】がフィーチャーされていることでしょう。
これは当時日本のYMOや喜多郎・オフコースらも使っていたシーケンシャル・サーキット プロフェット5(Sequential Circuits Prophet-5)というアナログ・シンセサイザーによるもので、洋楽ではキム・カーンズの「ベティ・デイビスの瞳」(過去ログ)にも使用されたものです。
ただしポールはシンセサイザーの専門家ではないためか、新しい玩具に夢中になった子どもが弾きまくっているように電子音が強調されており、伝統的な作風が好まれる傾向のあるクリスマス・ソングの中にあって“少しやり過ぎ感”があるせいか、当時はあまり評価が高い作品とはいえませんでした。


しかし2000年代に入ってから急に新しい世代によるカバーが増えたことでクリスマス・ソングとしての人気が確立され、カイリー・ミノーグのポップスはもちろんDe La Soulのヒップホップ、Helixのヘヴィー・メタル、Eli Young Bandのカントリーといった実に幅広いジャンルからのアプローチがみられます。
このためポールは現在でも本曲だけで年間40万ドルの印税収入があり、累積だと1500万ドルにも上るそうです!

2013年にはアメリカの人気番組『Saturday Night Live』でポール自身がコメディを演じると共に本曲を披露したり、昨年12月には『The Tonight Show』で司会のジミー・ファロンや番組の“ハウス・バンド”を務めるザ・ルーツ、今年3月に日本でも公開された映画『SING/シング』のキャラクターとその声優陣(スカーレット・ヨハンソン、リース・ウィザースプーンほか)らと共にアカペラ・バージョンの楽しい映像を公開しました。


PVにはウイングスのメンバーが登場していたり、本曲リリース直後の1979年11月23日に母校リバプール・インスティテュートからウイングスのツアーをスタートさせているように、もしも1980年の【日本での事件】と【ジョンの死】という“まさか”が起こらなかったら、ポールの運命も少し変わっていたかもしれません。

 
 



~Lyrics~

The mood is right
ムードはばっちり
The spirit's up
気分も上々

イギリスに於いて11月中旬頃から街がクリスマス・モードに入るのは日本と変わりありませんが、お店ばかりが飾り付けを先行する日本とは違いイギリスのクリスマスは“準備が大変”といわれます。
クリスマスをカウントダウンするための【アドベントカレンダー(Advent calendar)】《写真・左》や、たくさんの人と交わす【クリスマスカード】、パーティー参加人数分の【クリスマスプレゼント】、【クリスマスツリー】などの準備に加え、クリスマス前2週間位となると地域や職場・学校などのクリスマス行事への参加が忙しくなるそうです。

この時期のイギリス人の慌ただしさは、日本の年末年始に喩えられます。

Paul McCartney - Wonderful Christmastime3


We're here tonight
今夜はみんな揃ってるし
And that's enough
それで十分さ

イギリスのクリスマスは【家族と過ごす日】(または親戚・親しい友達)であり、12/25がメインで当日はお店や交通機関さえお休みしてしまうそうです。
当日の流れとしては午前中に教会のミサへ参加し、帰宅してプレゼントを交換し合うと午後から【クリスマス・ディナー】が始まって、夕方にエリザベス女王のクリスマスのスピーチがあります。

日本ではチキンやスポンジケーキを食べますが、イギリスではターキー(七面鳥)と【クリスマス・プディング】です。
クリスマス・プディング《写真・右》はイギリスの伝統的なクリスマス・ケーキで、日本でいうプリン(custard pudding)と違い小麦粉の生地にドライフルーツやナッツ類を加えてオーブンで焼いたりした硬めのお菓子です。
オーブンに入れる前、生地に指輪やコインなどを埋め込んでおいて家族で切り分けて食べる際に運勢を占って盛り上がる…というのも、伝統的な慣習とされます。


The feeling's here
…そうさ、このフィーリング!
That only comes
それは、この季節にだけ訪れる
This time of year
特別な感覚

クリスマスといえば何といってもその“幸福感”で、「ワンダフル・クリスマスタイム」はまさにそれを表しています。
それは自分一人だけの幸せでなく、社会や地域全体がその喜びを共有しようと心を一つに願うからこそ生まれる特別な感覚。

日本の神道では神事を行う前に自分自身の穢(けが)れを水などで体を洗い流し“身を清める”作法がありますが、キリスト教の降誕祭は“心を清める”でしょうか…。
洋の東西を問わず“聖なるもの”に相対する時、人は謙虚になれるようです。



~Epilogue~

Beatleたちのクリスマス・ソング

スーパースターと呼ばれるミュージシャンは大抵何かしらのクリスマス・ソングやクリスマス・アルバムの類いを出しているものですが、意外にもビートルズはそうした作品をリリースしていません。
敢えてこじつけるなら1964年12月4日に発売で“クリスマス・セール”に引っ掛けてタイトルされたアルバム『Beatles for Sale』がありますが、選曲自体はクリスマスに関連したものではありませんでした。
解散後はご存知のように、ポールの「ワンダフル・クリスマスタイム」やジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」がスタンダード・ナンバーとなっています。

また、最もクリスマスが似合いそうなリンゴ・スターはメンバー中唯一クリスマス・アルバム『I Wanna Be Santa Claus』(1999)を発表しています(タイトルが何とも彼らしい♪)
一方、ジョージ・ハリスンはヒンドゥー教徒なので恐らくクリスマス・ソングはありませんが、1974年12月6日に「Ding Dong, Ding Dong」というシングルをリリースしBillboard Hot 100で36位と小ヒットしました(タイトルと発売時期は明らかにクリスマス・セールを意識している!)。
この曲は【参加ミュージシャンがあり得ないほど豪華】で、ドラムスにリンゴ・スター、ギターにロン・ウッドとミック・ジョーンズ、ベースにクラウス・フォアマン、ピアノにゲイリー・ライト、ホーンにトム・スコットらを揃え、更にはPVでジョージ自らがビートルズ時代の自分の衣装を着せ替え人形状態で見せるサービスぶりで、とりわけ【襟なし服】は見ものです!

 
Ringo Starr - Christmas Eve / George Harrison - Ding Dong, Ding Dong


Beatlesのクリスマス・ソング

…実は“非公式”であれば、ビートルズ・オリジナルによるクリスマス・ソングが存在します!
しかも作詞・作曲はジョン、ポール、ジョージ、リンゴのメンバー全員という超レア作品!!

「Christmas Time (Is Here Again)」は、イギリスのファン・クラブ向けに1967年のクリスマスに製作されたソノシート・レコード(雑誌の付録に付いてくる赤いペラペラのアレ)のために録音された歌。
楽曲自体は【Christmas time is here again】ほかの短いフレーズをひたすら繰り返す極めて単純な構成で、恐らくその場の即興で創られたものと想像しますが、メンバー全員によるハーモニーがビートルズらしくて魅力的です。

その後1995年、「Free as a Bird」に本曲の短縮編集バージョンがカップリングされました。
(本項ではComplete Versionを紹介)


The Beatles - Christmas Time (Is Here Again)


…さて、2017年のクリスマスまで2週間となりました。
早く来て欲しいような、ずっとこの楽しみのままでいて欲しいような…?

私はこれまで何曲もクリスマス・ソングを聴いてきましたが、日本のクリスマスとの感覚の一番の違いは“平和に対する願い”です(あくまで一般論として)。
ただ単に1年毎に自動的にやって来る年中行事としてではなく、平和があり、ささやかな宴を催す食料があり、その幸せを分かち合う家族があるからこそ楽しい祝日…。
それ故、彼らはその幸福感を味わえない貧しい人々や戦火の中に置かれた人々に思いを致し、今この瞬間を幸せに迎えられることへの感謝の気持ちをクリスマス・ソングに込めるのだと。
その意識が心にあるのと無いのでは、“その日”の意味が全く違ったものになるような気がします。
そして、忘れてはならないことがもう一つ…

Simply having a wonderful Christmastime
素敵なクリスマスを、シンプルに楽しもう



「ワンダフル・クリスマスタイム」


続きはこちら >>

tags : 1979年 シンセポップ 楽しいクリスマス 

comment(8) 

「ザ・クリスマス・ソング」ナット・キング・コール

2016.12.16

category : Christmas

Nat King Cole - The Christmas Song1 Nat King Cole - The Christmas Song2


Nat King Cole - The Christmas Song (1961年)



~ザ!Christmas Song~

“クリスマス”といえば欧米の主要な宗教であるキリスト教を代表する行事の一つですが、こと“クリスマス・ソング”に関してはキリスト教国ではない1990年代頃までの日本の方が旺盛に新作が創作されていたような気もします。
(近年は日本でも印象的な新作が生まれていないようにも思えますが…)
…とはいえ、由緒・伝統あるクリスマスにはノスタルジックなテイスト漂うゆったりとした古い歌が実によく似合うものです。

今回ご紹介する「The Christmas Song」も70年以上前に生まれた作品であり、まさにタイトルの如く21世紀の現在も変わらずアメリカ国民に愛され続けているクリスマス・ソングです。
どうぞ、素敵な歌声と共に最後までごゆっくりとお過ごしください。 



~概要~

「ザ・クリスマス・ソング」はフランク・シナトラと並ぶアメリカ・ジャズ界の巨人であった歌手/作曲家メル・トーメ(Melvin Howard “Mel” Tormé)と、当時彼とコンビを組んでいたソングライター、ロバート・ウェルズ(Robert Wells)が1945年に共作した作品です。
楽曲自体はほんの40分で出来上がったものの最初のレコーディングはそのメル・トーメではなく、1946年6月にナット・キング・コール率いる“The King Cole Trio”による最少編成でのシンプルなものでした。
しかしこの音源は所属レーベルであったキャピトル・レコードの反対に遭い発表は叶わず、40年以上経った1989年にようやく初公開されています。

1946年8月、初めてレコードとして発売されることとなる音源が“The King Cole Trio with String Choir”によって録音、その名が示すとおりここで初めてストリングス(弦楽四重奏およびハープ)が編成されました。
このバージョンは同年11月に78回転盤(蓄音機用レコード)としてリリースされ、ポップス/R&Bチャートの双方で大ヒットという成果を残しています。
1953年11月には、初めて磁気テープを使用しネルソン・リドルのフル・オーケストラを加えた3度目の録音が78回転SP盤(10インチ)/7インチ45回転盤の双方で発売されました。

1961年3月、ナットの初期のヒット作をステレオで再録音するという企画のアルバム『The Nat King Cole Story』のため、「The Christmas Song」は4度目のレコーディングが試みられ、アレンジは1953年ver.とほぼ同じだったものの円熟味を増したナットのヴォーカルとステレオ録音ということから、現在まで最も知られているのがこの1961年ver.です(1991年にはデジタル・リマスターが施された)。


ナットの“ベルベット・ヴォイス”があまりにも有名な「The Christmas Song」ですが同じ“ベルベット(The Velvet Fog)”の称号を持つこの曲の作者メル・トーメ自身が歌ったバージョンも忘れてはなりません。
それ以外にもクリスマスのスタンダード・ナンバーである本作はフランク・シナトラやビング・クロスビーといった“いかにも”な大物たちが競ってカバーしていますが、ここではナットの愛娘ナタリーとイタリアのテノール歌手アンドレア・ボチェッリがデュエットした映像と、ナットに負けない美声のアーロン・ネヴィルver.をご紹介いたしましょう。

でもリストの中にはこの曲のテイストとは正反対のイメージの意外な大物もカバーしていて、特に興味を引いたのがジェームス・ブラウンとボブ・ディラン!
強烈な個性をもつ彼らがこのスタンダード・ナンバーを歌うと、果たして…? 


 
 



~Lyrics~

Chestnuts roasting on an open fire
暖炉で炙(あぶ)られる栗
Jack Frost nipping at your nose
鼻を凍えさせるジャック・フロスト

【Jack o' Frost】は冬になると現れるというイングランドの民間伝承に登場する“霜の妖精”で、笑い声をあげて寒気をふりまき、怒ると人間を凍らせたりする恐ろしい存在とされ、霜や厳寒の擬人化表現でもあります。

1945年7月、「The Christmas Song」の作者の一人ロバート・ウェルズはカリフォルニアの焼けるような夏の暑さにウンザリし、気分だけでも涼しくなろうと寒い冬のことを思い浮かべノートに書いたのが、このフレーズを含む最初の4行だったそうです。
(…ということは、寒いこの時期はクリスマス・ソングより「あー夏休み」がいい!? 


Yuletide carols being sung by a choir
聖歌隊はユールタイドの賛美歌を唱え
And folks dressed up like Eskimos
人々は、エスキモーの装い…

ここにも、“極寒”を想起させる【Eskimos】…

【Yuletide】は、古代ヨーロッパのゲルマン民族・ヴァイキングの冬至祭だったユール(北欧語: jul、英語: yule)がキリスト教伝来によって名実共にクリスマスと一体化しそれに【tide(季節)】をくっつけた言葉で、つまり“クリスマスの季節”という意味です。
ちなみにクリスマス・シーズンというと、日本ではハロウィン明けから12/25までというイメージですが、アメリカでは“感謝祭(11月第4木曜日)”後から年を越して“1/6(公現祭)”まで続きます。


Tiny tots, with their eyes all aglow
目を輝かせたちび助たちは今夜
Will find it hard to sleep tonight
きっと、お利口になんか寝付きやしない

クリスマスの意味について日本とアメリカでは結構ギャップがあるように思えますが、[ちび助たち]にとっては日本もアメリカも変わりないようです!
子どもたちにとってクリスマスはサンタでありトナカイであり…そして最大の意味は“ソリに積んでいるもの”の中にあるに違いありません。
(…あなた自身も、覚えがあるでしょ? 

でもクリスマスの季節がやってくると街全体が飾り付けやイルミネーションに彩られ、そしてあちこちで聴こえてくるクリスマス・ソング…
たとえ92歳になろうと、きっと私はこの素敵な雰囲気に胸を躍らせていることでしょう♪



~Epilogue~

“Merry Christmas”

日本でもこの季節になると、子どもから大人までごく普通に交わすほどこの英語の挨拶は浸透しています。
しかし日本にその慣習をもたらせたアメリカ(特にニューヨーク)では近年、公共で“Merry Christmas”が使われなくなってきています(代わりに“Happy Holidays”が使われている)。
宗教心の薄い多くの日本人にとってあまり意識しないことかもしれませんが【Christmas】は[Christ(キリスト)]の降誕を祝う[mass(ミサ/祭儀)]を意味する言葉であり、キリスト教以外の信徒に対する配慮がなされたためといわれます。

病を治す薬が命を奪う毒となるように、どんな美しい言葉でさえ悪意を込めて用いれば人を傷つけてしまうものであり、つまりは言葉を使う人次第なのです。
それだけに、近年アメリカで“Merry Christmas”が使われなくなったというのはちょっと残念な感じがします。
何故なら、通例使われる【Merry Christmas】は[I wish you a merry Christmas(あなたの楽しいクリスマスを願っています)]の気持ちを込めたものであり、そこに悪意は伴いません。
【Merry Christmas】の言葉のもつ精神こそが“あなたの幸せ”、そして“あなたの隣人の幸せ”を思いやることに繋がり、街の飾り付けやクリスマス・ソングにもその精神が反映されて、この時期特有の“クリスマスの幸福感”を醸し出す根源であると思うからです。

異教徒であれ、異国人であれ、異民族であれ、その言葉に込められた精神に差別はない…
…そう、私は信じています。
だから今年も、この記事の先にある誰かとその想いを分かち合うため、この言葉を贈ります。

Although it's been said many times, many ways
使い古された言葉ではあるけれど…
Merry Christmas to you
“あなたにとって、素敵なクリスマスでありますように”



「ザ・クリスマス・ソング」


続きはこちら >>

tags : 1961年 祈りのクリスマス ジャズ 美声 

comment(6) 

「雪のクリスマス/ウインター・ソング」ドリームズ・カム・トゥルー

2016.12.09

category : Christmas

Dreams Come True - Winter Song1 Dreams Come True - Winter Song2


Dreams Come True - Winter Song (1994年)



~20年愛され続けた日本のクリスマス・ソング~

今秋スバル『Newインプレッサ』のCM(愛でつくるクルマ篇)にDREAMS COME TRUEの「LOVE LOVE LOVE」が起用され気になっていましたが、11月28日からはクリスマス期間限定(愛で選ぶクルマ クリスマス特別篇)で同じくドリカム「雪のクリスマス ‐ VERSION‘16」が流れています。

クリスマス・ソングが流れる頃、クリスマスまでその雰囲気がとても楽しくて、それが過ぎると年末年始の“片づけなければならないこと”に追われ、正月明けは現実に戻らねばならない憂鬱との闘いが待っている…
…何だか、毎年その繰り返しのような気がするのは私だけ? 





~概要~

「Winter Song」は1994年1月7日に発売されたドリカム14作目のシングルでオリコン週間1位(年間19位)、98.6万枚を売り上げました(オリジナル・アルバムには未収録)。
ご存知のとおり本曲は1990年のシングル「雪のクリスマス」が元歌であり、作詞が吉田美和&Mike Pela、作曲が吉田美和&中村正人による作品です。

CDリリース1ヶ月後の2月14日には本曲のMVが収録された“VHS”が発売され、デビュー20周年に当たる2009年にはこのビデオが“DVD”化されました。
1998年、ソニー「SONY “MD” WALKMAN」CMソングに起用され(出演;奥菜恵)、それに伴って「Winter Song」に2曲を加えた“マキシシングル(12cmCDシングル)”として再リリース、1994年盤と合わせ本曲は4年11か月をかけて売り上げ100万枚を達成しました(オリコンの集計では最も時間のかかったミリオン・シングル)。
これによって「Winter Song」は、B'zの「Real Thing Shakes」に次いで“ミリオン・セールスを達成した史上2例目の(日本人歌手による)全英詞シングル”となっています。
(余談ですが「Winter Song」の歴史を振り返ってみるとVHS、MD、マキシシングル、DVD…と、記録メディアの移ろいを思わせられます)

これ以外にも本曲はタイアップが多く、1993年に映画『めぐり逢えたら』(日本版)、1996年に映画『7月7日、晴れ』、2014年には『ホンダ・オデッセイ』CM(DANCING SNOWFLAKES VERSION)に起用されてきました。
また、英語詞であることからエリック・マーティン(MR.BIG)やボーイズIIメンら、海外の歌手にもカバーがみられます。

 …それと、やっぱりこの季節はオルゴール♪ 


 



~Lyrics~

The dusk is gaining ground, lights flicker all around
街灯が ともる頃に
And as I walk the lonely street, the snow is falling ever faster
降る雪が少し粒の大きさ増した

出だしのフレーズですが、ここはちょっと「雪のクリスマス」の冒頭と重ねてみました。
(⇒「雪のクリスマス」歌詞

…日本語ver.は凄く短いでしょ?
「Winter Song」は、単に「雪のクリスマス」を英訳しているのではなく、情景や心情がより詳しく描かれた内容となっています。
あるいは作詞者・吉田美和自身のその4年間の成長が、表現に豊かさを与えているのかもしれません…。


Looking to the sky, I wonder where you are,
空を見上げ、あなたを想う…“いま、何処に?”
The way you came into my life, filling every day with laughter
あなたと出逢ってからの私は、毎日が笑い声に満ちていた…

Wikiによると、吉田美和は“降らせ物(上から大量に物が降ってくるもの)に弱く、大量に物が降ってくるとすぐに泣いてしまう性質がある”のだそうです。
このことから察すると、彼女自身に“雪降る夜空を見上げ、あなたを想う…”特別な思い出があるのかも?

でも特別な思い出がなくとも“音もなくふわふわと舞うように降る雪”(低温状態ほど美しい)は時が止まったような神聖さがあり、感受性の強い人はそれだけでも想いが溢れてしまうことでしょう…。


Almost blind by the snowflakes on my face
視界を奪うほどに舞い降りる雪の粉たち
Despite the chill I feel the warmth of your embrace
この寒さにも、あなたの腕のぬくもりが包んでくれているみたい

「雪のクリスマス」も「Winter Song」も、雪に対する描写や表現に豊かさを感じさせますが、これは作者である吉田美和が北海道出身であることと無縁ではないはずです。
一口に雪といってもその形状にはいろいろあって、雨と雪が混ざって降る“霙(みぞれ)”、結晶が柔らかい固体の“雪”、直径5mm以上の氷の粒“雹(ひょう)”、5mm未満の氷粒“霰(あられ)”、ごく小さな氷の結晶“細氷(さいひょう/ダイヤモンドダスト)”などに分類されます。

…あなたならこの場面、どんな【snowflakes(雪片)】を想像しますか?



~Epilogue~

「Winter Song」は雪の降る寒い夜、空を見上げ遠くにある愛する人に想いを巡らす歌です。
ただし、その相手についてLyricsは【Tonight wherever you are..】と、オリジナルの「雪のクリスマス」は【たとえあなたが誰といても】と言及しています。
そんな背景を考えると、彼女の一途な想いにはちょっと“複雑な事情”もありそうです…。

クリスマス・ソングはキリストの生誕や家族の絆を意識させることからハッピーで穏やかな作品が多いですが、一方で山下達郎の「クリスマス・イブ」や昨年特集した「I'll Be Home for Christmas」のように、“さみしいクリスマス”を歌ったせつない名曲も数多くあります。
みんなが幸福感を覚える時期だからこそ、その喜びを分かつべき誰かがそばにいない孤独…。


しかし「Winter Song」は、そんな孤独を歌った作品とは一線を画するものがあるように思えます。
見方によっては“終わった恋を追いかけているだけ”に映るかもしれませんが、たとえそれが現実に叶うものでなかったとしても誰かを好きであるという感情が心に灯っているということは、人が生きてゆく上でとても大切なことです。
もしも彼女が一つの失恋に絶望しているだけだったなら、この作品に描かれる冬の情景は全く違ったものとなっていたことでしょう…。

恋の“好き”や家族に抱く“好き”は特別な感情であって、失ったからといってそれを補うに足る存在などそう簡単に見つかるはずなどありません。
時に、人はその苦しみから逃れるため“好き”を捨て去ろうとしますが、それは“生きる喜び”を自分で引きちぎるに等しい行為です。
「Winter Song」の主人公は自分の心の中に宿った“好き”を無理に引きちぎったり相手に押し付けたりせず、ただ純粋に好きな人を想い、それを心の糧としているような気がします。
それこそ、この歌が広く共感され、長く愛し続けられてきた理由なのではないでしょうか…。


I want to show you everything I see,
私の見るもの、感じるもの…
the way I'm feeling
その全てをあなたに届けたい

冬の夜空は、他のどの季節よりも美しく、時に白く小さな結晶を私たちにもたらします。
たまには暖房を離れ、夜空を見上げてみませんか? 



「ウインター・ソング」


続きはこちら >>

tags : 1994年 日本の曲 せつないクリスマス 

comment(10) 

PrevPage |  to Blog Top  | NextPage
プロフィール

Beat Wolf

Author:Beat Wolf
ジャンルを問わず音楽が大好き♪


参加ランキング
最新記事

全タイトルを表示
Artists
リンク
このブログをリンクに追加する
☆『相互』をご希望の方は、お気軽に♪
最新コメント
QRコード
QR

Copyright ©I Wish~洋楽歌詞和訳&解説. Powered by FC2 Blog. Template by eriraha. Photo by sozai-free 2000px.