Linda Ronstadt ft. Aaron Neville - Don't Know Much(1989年)~Prologue~どうしてこんな素敵なデュエット・ソングが、日本では生まれないのだろう?
日本でデュエット曲というと、一杯飲んでほろ酔い気分のオジさんが宴会で(半ば強引に?)女性を誘ってカラオケで歌う(…ために作られた?)イメージが強く、私にとって音楽または歌詞に心を揺さぶられることの少ないジャンルとなっています(あくまで、個人的な主観です)。
せっかく男女が一緒に歌うなら、もっと違った“創造”もあるだろうに…?
たぶん邦楽と洋楽で最もギャップのあるジャンルの一つが、デュエット曲なのかもしれません。
2013年を締めくくりは、厳かでほっこりさせるデュエット・ソングをお届けいたします♪
~概要~1970年代のアメリカを代表する歌姫、リンダ・ロンシュタット。
リンダにとって1980年代中頃は転機となった時期で、ジェームス・イングラムとのデュエット曲「Somewhere Out There」の大ヒットは彼女に新たな扉を開いています。
1989年、リンダは
アルバム『Cry Like A Rainstorm, Howl Like The Wind』を発表しますが、このアルバムもアーロン・ネヴィルを招いてのデュエットが話題を呼び更なる成功へと導きました。
アーロンはR&Bバンド“ネヴィル・ブラザーズ”のメンバーで、泣く子も黙るコワモテと厳ついガタイからは想像もつかない、甘く優しいコトこの上ない魅惑のファルセットの持ち主!
彼はこのアルバムで4曲リンダと共に歌っていますが、1stシングル「Don't Know Much」の
Billboard 2位(1990年間20位)だけでなく、11位を記録した2nd「All My Life」にも貢献しています。
成功は、チャートやセールスに止まりません。
1989年のグラミーでは「Don't Know Much」が
“Best Pop Performance By A Duo Or Group With Vocal”と“Song of the Year”にノミネートされ、前者を授賞。
翌年、同賞を「All My Life」により2年連続で獲得しています。
89年のグラミーは私も見ましたがこの時の二人のパフォーマンスは、今も心を離れません…。
「Don't Know Much」というとリンダ&アーロンのバージョンが圧倒的に有名ですが、実はカバー作品です。
作者は
ライチャス・ブラザーズの作品でも知られるバリー・マン&シンシア・ワイル夫妻とトム・スノウで、1980年にバリー・マン自身のアルバムで発表されました。
その後81年に
ビル・メドレーがHot 100の88位、83年に
ベット・ミドラーが同77位とカバーしていますがヒットには至っていません。
~Lyrics~今回「Don't Know Much」を、私は“男女が歌い分ける形で訳して”いますが、最初にバリー・マン自身がソロで歌っていることからすると、元々この詞はデュエットを前提として書かれたものではなく“一方から他方へのメッセージ”だったようです。
そう考えると、また別の趣きが生まれてくるかもしれません…。
Look at this life見てごらんI still don’t know where it’s goin’未だ迷ってばかりのこの人生顔にその“年輪”が刻まれる男が、未だ自分の人生を確かなものにできずにいます。
『論語』に“四十にして惑わず”とありますが、迷いのない人などいるのでしょうか…?
Look at these dreams見て…So beaten and so battered, hoo…ooh…打ちのめされ、ボロボロになったこの夢を女も、その人生に“いろいろ”あったようです。
経験を重ねるほど自分の弱さを思い知り、心の中の傷(痕)も増えてゆきます。
そうした年齢の人を愛するとは、“そうした背景も受容する”ということでもあるのでしょう…。
So many questions多くの問いにStill left unanswered答えを見出せぬまま人生とはきっと、“そういうもの”なのではないでしょうか?
たとえ天寿を全うしたとしても、見つからない答えはある…
~Epilogue~PVに目を向けてみると、映像ではリンダ&アーロンが夫婦(?)を演じ、過去の二人を走馬灯のように巡らせています。
印象的なのは、出逢った頃の若い二人が“ひらめく真っ白なシーツ”と共に生気溢れるように見えるのに対し、歳月を重ねた現在の二人はそれが衰退し“がらんとして、くすんだ空間”が、どこか淋しげに映し出されていることです。
I don't know much But I know I love youわからないことばかりだけれど、この愛は迷わないAnd that may be All I need to knowきっとそれこそが、二人の知るべき全て…経験は、いつも正しい方向に導いてくれるわけではありません。
豊富な知識が懐疑や迷いを生み、失敗や挫折が心の傷や恐れを育み、“何を為し、何を信ずれば良いか判らなくさせる”ことさえあります。
だからこそ“本当に大切なものは何か”、心を整理してみるべきなのでしょう。
一番大切なものという“骨組み”に、二番目三番目を“枝付け・肉付け”していくというような…。
そして、この二人にとって一番大切なものが、“パートナー”だったというわけです。
人生は、山もあれば谷もある…
わからないことばかりだからこそこそ、迷った時・苦しい時“そのこと”

を思い出してみてくださいね♪
「ドント・ノウ・マッチ」
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