Pet Shop Boys with Dusty Springfield - What Have I Done To Deserve This? (1987年)
~概要~
「とどかぬ想い」は、ペット・ショップ・ボーイズ1987年の2ndアルバム『哀しみの天使(Actually)』に収録された作品です。 前年「West End Girls」で大ブレイクを果たし、本アルバムからも「It's a Sin」(過去ログ)が全英No.1(全米9位)を記録、これに続く2ndシングルとしてカットされ、Billboard Hot 100の2位(年間50位)を記録しました。
彼女のファンであるPSBはそうした事情を知っていたため、心にはあっても彼女への依頼を躊躇っていたと思われますが、求めていたのはやはりダスティでした。 周囲にティナ・ターナーやシャーデーを薦められてはいたものの結局これが実行されることはなく、「とどかぬ想い」は1stアルバムに収録されませんでした。 そんな両者の運命を変えたのは「West End Girls」の大ヒットで、ダスティがこの曲をラジオで聴いて気に入ったことから遂に共演依頼を承諾してくれたといいます。
「哀しみの天使」はペット・ショップ・ボーイズ1987年の2ndアルバム『哀しみの天使(Actually)』の収録曲で全英で3週No.1、アメリカBillboard Hot 100で9位を記録したダンス・ナンバーです。 作者はメンバーのニール・テナント(vo)とクリス・ロウ(key)で、彼らが有名になる前の1984年にBobby O(Bobby Orlando)と制作したデモ音源が残されています。 タイトル「It's A Sin」にも使われる【sin】は“(宗教・道徳上の)罪”という意味で、ニール・テナント自身の体験を投影した作品です(別項参照)。
シングルが発売された後イギリスのDJジョナサン・キング (Jonathan King)が、「It's A Sin」はキャット・スティーヴンス1971年のヒット曲「Wild World」の盗作であると主張し、「It's A Sin」の曲・アレンジに「Wild World」の詞を組み合わせたカバーを勝手に発表したため逆にPSB側から訴えられ、この改変作の売り上げはチャリティーに寄付する羽目になるという騒ぎが起きています。 似ているといえば1988年に日本のWinkがカバーした「愛が止まらない 〜Turn It Into Love〜」(カイリー・ミノーグの曲としても有名)も気になるところですが…。
~Lyrics~
Father, forgive me, I tried not to do it ファザー…お許し下さい、止めようと努力しました Turned over a new leaf, then tore right through it 心を入れ換えても、ずたずたに引き裂いてしまうのです
作者の一人であるニール・テナントはローマ・カトリックの男子校[St Cuthbert's High School]の出身で、「It's A Sin」はここで体験した厳格な戒律への不満や怒りを表しており、本作品がリリースされたとき当時の教師が不快感を示したといわれています。 こうした経緯からもここでの【Father】はニールの実父ではなくカトリック教会の神父を指していると解され、これに続くセンテンス[Father, you fought me]を私は“あなたは懸命に向き合ってくれました”と訳していますが、もし【神父=教師】であるならより[fight(戦い)]的な激しいものだったのかもしれません。
For everything I long to do 僕がやりたいと望むことは No matter when or where or who たとえそれがいつ、何処で、誰とであろうと Has one thing in common, too 一つの概念で通じている
さて… PSBの「ゴー・ウエスト」といえばサッカーとは切っても切れない“チャント(Football chants;聖歌)”であり、世界中の競技場でサポーターにより歌われています。 起源は、『1993–94 European Cup Winners' Cup』準決勝でイングランドのアーセナルFCのサポーターが歌ったのが最初だそうで、2006年には“W杯ドイツ大会の公式テーマ・ソング”としてイタリアの歌手パトリツィオ・ブアンネ(Patrizio Buanne)がオーケストラをバックに歌ったカバー「Stand Up! (Champions Theme)」が採用されました。
もともと「ゴー・ウエスト」はサッカーと何の関係もない作品ですが、このバージョンでは“Go west…”に始まるサビの部分を“Stand up for the champions”…といったように、チャンピオン・スポーツのテーマとして歌詞の全体が書き換えられています。
~Lyrics~
(Go West) Life is peaceful there そこに、穏やかな暮らしが待っている (Go West) In the open air 何処までも広がる空気
テーマとなっている「Go West」はアメリカ合衆国がアメリカ連合国に勝利(南北戦争)した1865年、 西部開拓時代の幕開けを告げることとなった新聞『ニューヨーク・トリビューン』でのホレス・グリーリーの論説 "Go West, young man, go West and grow up with the country.”(西部に行け若者よ、西部に行ってこの国と共に成長せよ) に由来するとされています。 この時代、ジェシー・ジェイムズやビリー・ザ・キッドなど危険な無法者が横行した一方、チャンスをモノにした石油王ジョン・ロックフェラーや鋼鉄王アンドリュー・カーネギーといった大富豪を輩出し“金ぴか時代(Gilded Age)”とも呼ばれました。
(Together) We will find a place きっと、僕らの場所は見つかるさ (To settle) Where there's so much space 果てしなく広い、安住の地…