「ブレイク・フリー (自由への旅立ち)」は、1984年発売のクイーン11thアルバム『ザ・ワークス(The Works) 』の収録曲。 アルバムからの1stシングル「RADIO GA GA」(過去ログ)は世界中で大ヒットを記録し、2ndシングル「I Want To Break Free」もヨーロッパ4カ国でのNo.1をはじめ南米やアフリカでもヒットを記録するなど世界的成功を収めましたが、アメリカ Billboard Hot 100 では45位と、残念な結果に終わりました(後述)。
クレジットはクイーンとなっていますが、多くの部分の作者はブライアン・メイ。 ロジャー・テイラーとジョン・ディーコンによるコードを元にブライアンとフレディが作品のテーマを話し合い、主にブライアンが詞・曲を作り、フレディが歌詞の一部を書きました(別項参照)。 作曲に当たって、ブライアンは17世紀ドイツの作曲家ヨハン・パッヘルベル(Johann Pachelbel)の作品「パッヘルベルのカノン」(Canon and Gigue in D)からヒントを得ているそうですが、この曲はさまざまな式典のBGMとして使用されているので、みなさんも聴き覚えがあるでしょう。
病気で体調の思わしくないフレディは、『Innuendo』で3rdシングルまで化粧や映像処理で衰弱をカバーして何とかPV制作に参加できていましたが、4thに当たる「The Show Must Go On」の頃にはもう撮影に加われないほど病状が悪化していました。 このため「I Want to Break Free」をはじめ「Radio Ga Ga」(過去ログ)や「Innuendo」など、1981年から1991年までのPVを編集した映像となっています。
リリースから6週間後にフレディが亡くなってしまったため彼が歌う「The Show Must Go On」がライブで再現されることはありませんでしたが、1992年4月20日に行われた『フレディ・マーキュリー追悼コンサート(Freddie Mercury Tribute Concert)』では【クイーン+エルトン・ジョン(vo)+トニー・アイオミ】という形で披露され、エルトンは1997年にもパリのナショナル・シアターで開催された『スペシャル・バレエ』プレミア公演でクイーンと再演しています。 その後本格的にツアーを再開したクイーンは、【クイーン+ポール・ロジャース】や【クイーン+アダム・ランバート】という形で「The Show Must Go On」を歌い継ぎました。 また、2016年5月にセリーヌ・ディオンが「The Show Must Go On」のカバーをデジタル・シングルとしてリリースし、同月【2016 Billboard Music Awards】で見事な歌唱を披露していますが、このときセリーヌは1月に夫レネ・アンジェリルを亡くしたばかりでした。
~Lyrics~
Empty spaces, what are we living for? 虚(うつ)ろなる空間… 人は、何を求め生きるのか? Abandoned places, I guess we know the score 見捨てられた場所… 人は、そこで真実を思い知る
1986年、クイーンはアルバム『A Kind of Magic』を発表した後6/7-8/9まで同アルバムに伴う『Magic Tour』を行っていますが、その後フレディは体調が悪化し、結局彼が参加したツアーはこれが最後となりました。 その後1987年のイースター直後にフレディはAIDS(エイズ)と診断されたそうですが、痩せ衰えた外観やツアーへの不参加やなどから1990年頃メデイアにはAIDSを疑う声が挙がり始めたものの、その真実は彼が亡くなる前日の1991年11月23日までフレディ側から公表されることはありませんでした。
My soul is painted like the wings of butterflies 魂は、蝶羽の如く彩られ Fairy tales of yesterday will grow but never die 昨日の伽話(とぎばなし)は伝説となり、決して絶えることはない
「The Show Must Go On」は主にブライアン・メイによる創作とされていますが、この部分の歌詞はフレディ・マーキュリーによるものであるかもしれません。 生前フレディは歌詞を記したノートを持ち歩いていたそうで、2016年に彼が最期の3年間使用していたノートがオークションにかけられ、その中に「The Show Must Go On」のこの部分の歌詞が綴られていました。
…確かに、【like the wings of butterflies】という比喩の発想は、どう考えてもフレディっぽい?
My make-up may be flaking 道化の仮面が剥がれ落ちようとも But my smile still stays on 真の面は、笑みを灯し続けよう
「The Show Must Go On」はこの映画のサウンドトラックの一つであり、フレディの人生を語るのに最も似つかわしいテーマと考え、これを選曲しました。 【The Show Must Go On】はこの作品に限った特殊な言葉ではなく、英語圏のショウ・ビジネスにおいて使われる慣用句で、凡そ本項に示したような意味合いが込められています。
ブライアン・メイによると、1990年に「The Show Must Go On」のレコーディング時、フレディは既にほとんど歩くことができない状態だったといいます。 「The Show Must Go On」を作曲してはみたものの、そこにはブライアン自身がファルセットでなければ歌えない高い音域が何か所か含まれていました。 そのため、デモをフレディに聴かせたとき、体が衰弱したフレディには無理な要求ではないかと心配して、この言葉を添えたといいます。 “フレッド、これ歌えるかわからないけれど…”
これに、対してフレディは… “I'll fucking do it, darling(いっちょ、やってやるさ!)” そう言ってウォッカをグイッと飲み干すと、完璧なヴォーカルでブライアンが苦戦した難曲をやっつけてみせたそうです。 (ブライアンは、この曲でのフレディの歌唱が生涯最高のうちの一つだったと評価している)
The show must go on ショウは、続けなくてはならない The show must go on 半ばにして、舞台を降りてはならないのだ
「アンダー・プレッシャー」はイギリスのロック・バンドのクイーンと、同シンガー・ソングライターのデヴィッド・ボウイにより1981年10月26日にリリースされたコラボレーション・シングルで、全英No.1/アメリカBillboard Hot 100で29位を記録、クイーンにとって1975年の「Bohemian Rhapsody」以来2曲目/デヴィッドは1980年の「Ashes to Ashes」以来3曲目の全英No.1でした。 アルバムはクイーンが1981年11月の『GREATEST HITS』(英国盤には未収録)と1982年の『Hot Space』、デヴィッドは1995年にリマスターした『Let's Dance』のボーナストラックに収録されています。
「Under Pressure」でもう一つ特筆すべきといえばジョン・ディーコンによる“ベース・リフ”で、2011年のMusicradar.comの一般投票による<The 25 Best Basslines of All Timeで4位>にランクされました。 一度聴いたら頭にこびりつくこのベース・ラインについて、ジョン自身は“デヴィッド・ボウイの創造”と言い、そのデヴィッドは“僕が参加する前に書かれていた”と回顧しています。
These are the days - it never rains but it pours These are the days - どしゃ降りの日々 People on streets - people on streets People on streets - 路上の人々
【it never rains but it pours】は“降れば必ずどしゃ降り”と訳され、“悪い事は続く”という広い意味合いのことわざとしても解されます。 【people on streets】は歌詞中に何度も使われており、日本語版wikiには“この曲の最初のタイトルは「People on Streets」であった”とありました(ただし、その根拠は付加されていない)。
一方、英語版wikiによると「Under Pressure」は元々ドラマーの“ロジャー・テイラーが書き始めた「Feel Like」が原曲”とされています。 デヴィッドとのセッションが始まった時点で「Feel Like」は未完成で、当初フレディ・マーキュリーが中心となってメンバー全員で創作が進められ、その後デヴィッドも歌詞面で重要な貢献があったようです。 ちなみにロジャーは1998年のソロ・アルバム『Electric Fire』で「People On Streets」という曲を発表しており、なかなか面白い作風となっています。
Under pressure that burns a building down Under pressure! 建物は焼き尽くされ Splits a family in two 家族は二つに裂かれ
【under pressure】は、“物理的または精神的に加圧・強制された状態”のことです。 【people on streets】といい、とても重苦しい言葉が並びますが、このラインからすると本作品は内戦か戦争を背景としているのでしょうか… 何れにしても、風や川がそうであるように、力の作用は“上から下へ”働きます。