1980年のアルバム『Hold Out』で遂に全米No.1に上り詰めたジャクソン・ブラウンは、この頃アルバムをおよそ3年毎に発表しており、1982年はその狭間の年でした(次作『愛の使者』は1983年)。 1982年7月にリリースしたシングル「誰かが彼女を見つめてる」はオリジナル・アルバム収録用の作品ではなく、同年公開の青春映画『初体験/リッジモント・ハイ(Fast Times At Ridgemont High)』のサウンドトラックとして発表されています。 シングルはBillboard Hot 100で7位(年間68位)を記録し、ジャクソンにとって最大のヒット曲となりました。
しかしこうした映画はその時代のリアルなアメリカの若者の文化や風俗を描いた側面もあり、特に『リッジモント・ハイ』は原作者のキャメロン・クロウが直前に1年間カリフォルニアの高校に学生として潜入取材し書いた作品です。 その甲斐あって『リッジモント・ハイ』は興行的な成功だけでなく、2005年に“アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録”され、2015年にEntertainment Weekly誌“50 Best High School Movies 2位”に選出されました。
「プリテンダー」は1976年の4thアルバム『The Pretender』のタイトル曲で、2ndシングルとしてBillboard Hot 100で58位を記録しました。 レコーディングにはTOTO以前のジェフ・ポーカロなど名うてのミュージシャンがサポートしていますが、実は冒頭で紹介したCS&Nのデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュもバック・コーラスに参加しています。 また、同曲は1995年のハリウッド映画『陽のあたる教室(Mr. Holland's Opus)』にも起用されました。
プロデュースはブルース・スプリングスティーンのアルバム『Born to Run』のジョン・ランドーが手掛け(「Born to Run」曲単体のプロデュースはマイク・アペル)、ジャクソンにとって初のBillboard 200でTop10入り(5位)を果たした名作で、ローリング・ストーン誌“the 500 greatest albums of all time”の391位にランクインしています。
And when the morning light comes streaming in …やがて、朝陽が射し込む頃 We'll get up and do it again 起きて、君と僕はまた愛し合う Get it up again(※)
歌中で何度か登場する数少ないフレーズです。 【do it again】は、他では淡々と繰り返される時の流れを映し出しているのに対し、ここは前後から肯定的なニュアンスを感じさせます。 そのせいか、非常にマジメな作品に於いて唯一暴走気味! 【Get it up】は“起こす”のは言葉の通りですがスラングで、愛し合うために“男はitを起こさねばならない”… つまり、“下ネタ”になっておりまして…!?(訳は自粛)
今回私を一番悩ませたのが、すぐ上の And then we'll put our dark glasses on で、“愛し合うのに何故【サングラスを掛ける】?”という疑問でした。 でも、それに続くこの部分で【朝陽が射し込む頃】なのに【do it again(もう1ラウンド?)】挑もうとするタダならぬ執着心に気づき、“朝になろうと、サングラスを掛ければ二人の夜は終わらない!”なのだという解釈に至ったのです。