Marvin Gaye - What's Going On (1971年)~What's Going On~ みなさんは、世の中の動きに「What's Going On ?」と思うことはありませんか?
…私は、連呼しまくりです!(笑)
特に、ここ最近は胸の“気持ち悪さ”が募る一方…
でも、この胸の痞(つか)えは“お医者様でも草津の湯でも治せない”でしょう…。
~概要~ マーヴィン・ゲイは1960~70年代のソウルR&Bミュージック界でもとりわけ重要な意味を持つ黒人歌手で、『ローリング・ストーン誌』“
100 Greatest Singers of All Time 6位 ”にランク(※5位;ジョン・レノン/7位;
ボブ・ディラン )されていることでもそれが想像いただけるでしょう。
60年代からモータウンの看板スターの一人として多くのヒットを生み出してきましたが転機となったのが1971年、アルバム
『What's Going on』 です。
ここでマーヴィンはモータウンの伝統としては異例の“セルフ・プロデュース”に初めて挑み、戦争や公害・貧困といった社会問題を全体のテーマに掲げた“コンセプト・アルバム”として昇華させました。
「ホワッツ・ゴーイン・オン」はそれを象徴するテーマ曲で、アルバムの先行シングルとしてリリース、
Billboard Hot 100で2位(年間22位) を記録しました。
作品は戦争や不当に置かれた人々の苦悩をテーマとして扱っており、当時モータウンの社長ベリー・ゴーディJr.には“今まで聴いた最悪の曲だ。”とコキ下ろされたのに反し大ヒット、『ローリング・ストーン誌』“
The 500 Greatest Songs of All Time 4位 ”に列せられる歴史的名曲として評価されています。
日本では当初「愛のゆくえ」という邦題が付けられていたようですが、後に「ホワッツ・ゴーイン・オン」に改められました。
カバーとしては
シンディ・ローパー ver.
が有名で、1986年のアルバム
『True Colors』 に収録されHot 100で12位を記録しました。
あと、私の好きな
ホール&オーツver. も併せてどうぞ♪
VIDEO VIDEO Cyndi Lauper / Hall & Oates, Japan 1991 ~Lyrics~ Brother... There's far too many of you dying 彼方は、兄と弟の早過ぎる死で溢れている 「What's Going On」は“反戦歌”として認識されることが多い作品ですが、その発想の基となったのはベトナム戦争に従軍した弟フランキーを通してマーヴィンが戦地での実態を知ったことでした。
しかし楽曲そのものは元々フォー・トップスのレナルド・ベンソンがモータウンの作家アル・クリーブランドと書いたもので、
フォー・トップス で歌うことを他のメンバーに拒否されたためマーヴィンに託され、彼が詞・曲を手直ししたものです。
私は戦争の経験はありませんが、愛着も何もない異郷の地で家族と離れひとり死んでゆくのは、どんなに無念なことだろう…。
We don't need to escalate これ以上、エスカレートさせないで You see, war is not the answer 分かっているはず、戦争が正しい答えではないことを ベトナム戦争の開戦を1960年12月とすれば、この時すでに10年以上経過していたことになります(終戦は1975年)。
戦争を始める決断や後方で指示するのは“父親世代”ですが、最前線で血を流すのはいつも“若者世代”。
特にアメリカ人にとってこの戦争は直接自国や家族を守るためのものではなく、戦っている兵士たちからすると“誰のため、何のために10年も戦い続ける?”という思いもあったことでしょう。
指導者は、そんな未来まで想像して戦争へと足を踏み入れたのだろうか…。
Picket lines and picket signs ピケットライン(監視線)にプラカード… Don't punish me with brutality 無慈悲なやり方で、不当に痛めつけないで このラインは、原作者のレナルド・ベンソンが1969年5月15日に目撃したという
“Bloody Thursday(血の木曜日)” に基づいていると思われます。
“何が起こってるんだ!?なぜ自分の子どもたちを暴行してるんだ…?”
目の前で起きている信じ難い現実のショックと危機感が、彼を突き動かしたのでしょう。
事件の発端となったカリフォルニア大学バークレー校にあった空き地“People’s Park”は、学生や市民が集会や公園として自由に利用していましたが、これを“共産主義支持者・抗議団体・性的倒錯者の安息所”と呼んで排除の機会を狙っていた当時のカリフォルニア州知事ロナルド・レーガン(後の大統領)が5月15日早朝から空き地を金属フェンスで封鎖、集会に訪れた学生ら約3000人と警備の警官との間で争いが生じ暴動に発展、群衆は6000人にも膨らみ州兵2700人も投入され、17日間に亘る闘争を繰り広げ双方数百人の負傷者と市民1人が死亡しました。
亡くなったのは学生で、警官の“散弾銃”使用によるものだったといいます。
しかしその1年後の1970年5月4日、今度はケント州立大学構内で催されたベトナム戦争反対の集会参加者に対し警備の州兵が発砲し4人の死亡者と9人の重軽傷者を出すという、同じような悲劇が繰り返されてしまいました(May 4th事件)。
こうした一連の事件については、サーフィンのイメージのビーチ・ボーイズさえ1971年に
「Student Demonstration Time」 (The Robins「Riot In Cell Block #9」の替え歌)で社会問題を訴えねばならない、時代の異様さが窺えます…。
VIDEO What's Going On A Cappella ~Epilogue~ What's going on (
どうしたの? )
今回、私が「What's Going On」をテーマに掲げたのは、その言葉通りの感情を覚える出来事があったからです。
ご存知の方も多いと思いますが、3月27日のテレビ朝日
『報道ステーション』 でコメンテーターの
古賀茂明 氏が
“官邸の圧力⇒テレビ局上層部の指示⇒番組プロデューサー&コメンテーター2氏降板” の実情を示唆する発言をしたことでした(ただし、官邸と局側は全面否定している)。
そもそも発端は1月23日の同番組で古賀氏が安倍首相を、対イスラム国有志国連合の有力なメンバーになるために米英と一緒になって武力行使も含めた外交政策を展開していると批判し、
“そうではない、日本人はイスラムを敵と思っていないし中東で戦争しようとも思っていない、日本人の大多数は安倍首相と違う考えだ ” という世界へ向けた意思表示として
“I am not ABE” を掲げるべきだと、発言したことに始まります。
これに対し番組放送中に官邸サイドから報道局幹部へ“連絡”が入り、担当プロデューサーと古賀氏の降板が決まった(…らしい)。
Ya, what's going on (
何が行われているの? )
私がここで言いたいのは、“I am not ABE”問題ではありません。
政府官邸に、“言論統制”の強い意思を感じる ことです。
一連の問題は古賀氏が“圧力があった”と証言しているだけで、官邸もテレビ局も“無い”と口を揃えている(あったとしても認めるはずはない)ので、真相を確かめる手掛かりは限られています。
しかしこれまで残された複数の事実から、隠された彼らの真意をあぶり出すことは可能です。
まず、今回の騒ぎの中でそれを窺わせる2点…
3月27日の番組中で古舘伊知郎 キャスターが古賀氏の降板に対し、楽屋を訪れ本人に“自分は何もできなかった。本当に申し訳ない” と謝罪したことを認めている(⇒負い目が無かったら、【何もできなかった】と詫びる必要はない)。 古賀氏にバッシングしたと名指しされた菅官房長官 は3月30日の記者会見で、“放送法があるので、テレビ局がどのような対応を取るかしばらく見守りたい” とコメントをしている(⇒落ち度のあったテレビ局が、監督側に【法】と【どのような対応を取るか見守りたい】と突き付けられたら…)。 また、安倍内閣が発足以来の事実を2点振り返ってみると…
安倍内閣が提示した人事案に基づいたNHK経営委員が選任したNHK会長・籾井勝人 氏は、“政府が右ということを左というわけにはいかない” と発言している(⇒説明不要、そのまんま!)。 昨年の衆院選の公示前(11月20日)、在京テレビキー局各社に対し自民党 が出した『選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い』 という文書の中で、“出演者の発言回数や時間、ゲストやテーマの選定、街角インタビューや資料映像”など細部までも言及し報道の仕方について要望している(⇒申入れの2日前の18日、安倍首相は各テレビ局のニュース番組に出演しているが、キャスターによる鋭いツッコミや街頭インタビューでの厳しい批判を浴び、激昂する場面も見られた)。 (※この影響で、選挙前の『朝まで生テレビ!』は当初各党議員と政治家以外のパネリスト数人が討論する構成であったが、直前に議員のみの出演に変更された) Ah, what's going on (
一体、何が起きているというの…? )
一例を挙げてみましたが、あなたはこの事実をどう捉えたでしょう?
これ以外にも“秘密保護法”や“解釈改憲”に異議を唱えたり、“反原発”だったり、安倍政権の政策に批判的な言動をしたジャーナリストやアナリストたちがこの間
“何らかの理由” で次々と私たちの前から消えています。
官邸の意に反する報道や発言をして制裁・処分されたり、(政府と利害が一致する)スポンサーが降りてしまう事態を恐れメディアが国民に伝えるべき“報道”を自粛する…
このようなメディアの萎縮は、戦前を思い起こさせます。
当時のメディアは主に新聞とラジオでしたが、内閣直属の情報機関である“情報局”によって厳しく検閲され事実を歪めただけでなく、売り上げを伸ばすため自ら進んで対外強硬論を煽って国民を開戦支持に導く役割も果たしました。
つまり、政府とメディアが“同じ側”に立ち、利害を共有することは非常に危険なことであり、それが一蓮托生の関係になってしまったら今の脆弱な野党では彼らの暴走を止められません。
私たち一人ひとりが危機感を持って、しっかり彼らを制御してゆく以外には…。
政治とは、国民大多数の願いの具現であるはずですが、残念ながら現在の安倍政権は権力を握った安倍氏個人の望みを叶えるための営みとなってしまっているような気がします。
“権力の暴走の行く先はみんなの不幸” であると、この国は先の大戦で多大な命の代償を以って学びました。
忘れないでください…
“あなたの主権”こそ、それを制御でき得る最後の切り札である ことを・・・。
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