サム・スミスは、その声を“天使の歌声”と評される美しいファルセットが持ち味のイギリスのシンガー・ソングライターで、現在23歳。 グラミーを受賞した名曲「Stay With Me」やデビュー・アルバム『In the Lonely Hour』の世界的大ヒットにより一躍国民的スターとなった彼の活躍は、まるで3年前の同国出身の女性歌手アデルを彷彿させるものでした。 しかし国民的歌手となった彼女がその後“国民的映画”の主題歌を担ったように、サムの下にもその依頼が届くことになります…。
「Writing's On The wall」は今年10月26日にロンドンでプレミア上映された007シリーズ第24作映画『007 スペクター(Spectre)』の主題歌です(日本公開は12月4日)。 同曲は日本時間9月25日に世界一斉デジタル配信開始され12の国と地域のiTunesでNo.1を獲得、全英シングル・チャートでもNo.1に輝きました(Billboard Hot 100では71位)。 半世紀にも亘る007シリーズの歴史に於いて数々の名曲が提供されてきましたが、意外にも本国イギリスでNo.1になった曲はこれまで1つも無く(全米No.1はある)、この偉業によってサムの名はギネスに刻まれることとなりました。
サム・スミスの歌う「Writing's On The Wall」には3代目ジェームズ・ボンド役だったロジャー・ムーアもお墨付きを与えていて、“美しいオーケストラで心に残るメロディ、よくできてるよ。”とコメントしているそうです。 一方、007シリーズの大ファンを公言し自らも主題歌の先輩であるデュラン・デュランのサイモン・ル・ボンは、“僕の好みじゃないな、僕らの曲の方がいい出来だよ。でも、彼はサム・スミスだからね…美しい声の持ち主だし、僕は彼の大ファンだよ。”と、自らの作品に軍配を上げました。 (サイモンの発言は映画に抱くイメージの違いであり、デュラン・デュランの「A View To A Kill」は007の“スリリングなアクション”を、「Writing's On The Wall」はジェームズ・ボンドの“逃れ得ない宿命と心の痛み”に焦点を当てている違いに因るものと思われます。)
For you I have to risk it all …それでも、君のため危険を冒さなければならない Cause the writing's on the wall “壁の文字が告げている”から…
主題歌のタイトルにもなっている「Writing's On The Wall」は、“不吉な前兆”を意味する慣用句です。 旧約聖書『ダニエル書』第5章の中で、“バビロンの王ベルシャザルが宴会を催していたところ突如空中に手が現れ、壁に“バビロンが滅びて、王は死ぬ”と書くと、その夜ベルシャザルは殺害されてしまった”…という逸話に由来します。 “現れた手”は神よりの使者であり、書かれた文字は“神のお告げ”だということです…。