ナイルはプロデュースを依頼された際デヴィッドに【赤いスーツを着て赤いキャデラックに乗ったリトル・リチャードの写真】を見せられ、“今度のアルバムはこんなサウンドにしたい”と伝えられたといいます。 正直デヴィッドとリトル・リチャードの歌唱スタイルは正反対に思えるのですが、「Modern Love」の音楽的要素というなら彼の1957年の作品「Keep a Knockin'」に通じるものがあるかもしれません。 似ているといえばエルトン・ジョンの「I'm Still Standing」(録音;1982年9月)のサウンドとの類似が指摘されており、そのことはお互い認識していたようです(「Modern Love」の録音は1982年12月)。
Modern love walks on by Modern love... いつか心を踏みにじる Modern love gets me to the church on time Modern love... “時間どおり、教会へ”と連れていっておくれ
ミュージカル・ファンの方は、【gets me to the church on time】のフレーズに覚えはありませんか?
1964年にオードリー・ヘプバーン主演で映画化もされた『マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)』の第2幕で歌われる「Get Me To The Church On Time(時間通りに教会へ)」です。 主人公・貧しい花売り娘イライザの父・アルフレッドが思わぬ大金を手に入れ、愛人と結婚式を挙げる前夜に酒場で仲間と飲み交わす場面で歌われる曲で、だから「時間通りに教会へ」と歌っています。 しかし不憫なことに娘のイライザは、彼に“お前を引き取れない。お前なら一人でもやっていける”と言い渡されてしまうのです。
UK Official Singles Chartでは1/15付・初登場45位、US Billboard Hot 100では1/30付・初登場40位(これは、この週の最高位ランク・イン)を記録しており、デヴィッドにとってHot 100のTop40ヒットは1987年の「Never Let Me Down」以来のことです。 また、デヴィッドの死去に伴ってUKチャートでは「Heroes」(12位)・「Life On Mars」(16位)・「Starman」(18位)・「Let's Dance」(23位)・「Space Oddity」(24位)など、トップ100に彼の過去の作品を含め13曲がランク・インする現象が起きています。 一方UKアルバム・チャートでは『★』が初登場1位を記録し10枚目のNo.1となったのをはじめシングル・チャート同様トップ100内にデヴィッドのアルバム19枚がチャート・インする騒ぎとなり、US Billboard 200でも初登場1位に輝きましたが意外にも彼のアルバムが全米No.1を獲得したのはこれが初めてのことです(これまでの最高は2013年『The Next Day』の2位)。
さらに「ラザルス」は、オフ・ブロードウェイの劇場“New York Theatre Workshop”で昨年12/7~1/20に限定公演されたミュージカル『Lazarus』のためデヴィッドによって創作された楽曲でもあります(『Lazarus』の主演はマイケル・C・ホール)。 この舞台は1976年にデヴィッドが初めて主演したカルト映画『地球に落ちて来た男(The Man Who Fell To Earth)』の40年後を描いた内容となっており、デヴィッド自らも脚本など共同制作者として数年懸かりで密かに精力を注いできたプロジェクトでした。 デヴィッドの突然の死を受け、ニューヨーク市は彼の長年に亘る芸術への功績に敬意を表しミュージカル『Lazarus』の最終日である1月20日を“David Bowie Day”とすることを定め、当日のカーテンコールで宣言書が授与されたそうです。
~Lyrics~
Look up here, I’m in heaven 見上げるがいい、俺は天国(ここ)にいる I’ve got scars that can’t be seen この傷痕、見ること能(あた)わず