Earth, Wind & Fire - Let's Groove (1981年)~Maurice White 1941-2016 R.I.P.~ 2月3日、アース・ウインド&ファイアーの創設メンバーでリーダーであった
モーリス・ホワイト 《写真》が亡くなりました(享年74)。
モーリスは1990年代初めから難病パーキンソン病を患っており、直接の死因は伝えられてはいないもののここ数ヶ月は病状が悪化していたそうです。
モーリスの弟でバンド・メンバーのヴァーディン・ホワイトは“自宅で睡眠中に安らかに息を引き取った”と伝え、ナイル・ロジャースやクインシー・ジョーンズ、レニー・クラヴィッツ、オバマ大統領など多くの著名人も哀悼を捧げました。
奇しくもアース・ウインド&ファイアーは今年2月15日(日本時間16日)に催される第58回グラミー賞授賞式で
“特別功労賞生涯業績賞(Lifetime Achievement Award)” の受賞が決まっていただけに、その栄誉が追悼となってしまったことが残念でなりません。
(ちなみに今回のグラミーでは、
イーグルス &
ジャクソン・ブラウン が
グレン・フライ を、
レディー・ガガ が
デヴィッド・ボウイ の追悼パフォーマンスを行う予定があるそうです!)
今夜は、モーリスの代表曲としてお馴染みの「Let's Groove」をお届けします…。
~概要~ アース・ウインド&ファイアー(以下;
EW&F )は、モーリス・ホワイトが“土(Earth)・空気(Air)・火(Fire)”の要素があるという占星術の発想を基にネーミングされたアメリカのファンク・バンドで、1970年代のディスコ・ブーム(1975年-1979年)に黄金期を迎えますが、ブームの終焉と共にバンドの人気にも陰りが見え始めます。
EW&Fにとって、時代の風に逆らい独自のダンス・ミュージックを貫きながら、最新テクノロジーの産物である電子楽器を先駆けて試みようとしていた時期でもありました。
1981年、EW&Fは11thアルバム
『天空の女神(Raise!)』 を発表。
先行シングル「レッツ・グルーヴ」はミリオンセラーに輝く堂々たる大ヒットを記録したものの、
Billboard Hot 100では“5週連続3位”(1982年・年間33位) という悔いの残る結果に終わってしまいました。
何故ならこの時、上位には
“10週連続No.1” に君臨する「フィジカル」(
オリビア・ニュートン=ジョン/カテゴリ )と、
“10週連続2位” を継続中の
「ガール・ライク・ユー」(過去ログ) フォリナーが存在していたからです!
また、第24回グラミー賞でも本作品は“Best R&B Performance by a Duo or Group with Vocal”にノミネートされながら、受賞は逃しています。
一方、モーリスが作者、リード・ヴォーカル、プロデュースに寄与した「Let's Groove」は聴きどころがいっぱい!
まず何といってもキャッチーで楽しい楽曲、そしてダンス・ミュージックに不可欠な“ノリ”、看板であるホーン・セクションと新たなシンセサイザーの融合…
そして、特に“耳を惹く”のが冒頭からふんだんに使われている
“ヴォコーダー” で、新生アースが目指す方向性が集約されています。
【vocoder】は[voice]と[coder]を合わせた名称であることが示すように、マイクを通して入力した
人の声を機械的な声に合成するエフェクター の一種で、当時世界の注目を集めた日本のバンド“YMO”の
「テクノポリス」 や“スティクス”の「Mr.Roboto」なども有名ですね♪
また、「Let's Groove」は日本でも人気が高く、2013年には
ラウンドワン(ボウリング)のCM曲 に起用されたのをご記憶の方も多いでしょう。
VIDEO VIDEO ~Lyrics~ Move yourself and glide like a 747 体を動かして、747みたいにグライドさせてごらん loose yourself in the sky among the clouds in the heavens 心を解き放ち、天空の雲へと飛び込もう 【747】が[glide(滑空する)]といえば、やはり“ボーイング747型機”でしょうか…。
ボーイング747は1970年から世界中で運用されるアメリカ・ボーイング社製の超大型旅客機で、現在まで約半世紀に亘り生産され続けるロングセラー・モデルです。
また、【glide】はダンス用語でもあり、“滑るような優雅な動き、またはそのようなダンス”を指し表します。
PV では[空]どころかEW&Fらしい[宇宙とピラミッド形]を背景に歌っていますが、さすがに当時の技術では人が自在に空を滑空する映像は無理だったか、メンバーの動きは“至って重力に従ったもの”です!?
しかし
“残像効果” をはじめとする当時のテクノロジーの粋を尽くした映像は見応えがあり、音楽との融合により並の映画以上に想像を膨らますミュージック・ビデオの魅力がいっぱい詰まった作品といえるでしょう。
You will find peace of mind on the floor きっと、君はこのフロアで心の安らぎを見つける Take a little time, come and see, you and me もっと時を重ねよう…そしてまたここで会おう、君と僕 主人公が彼女に叶えてあげたかったものは、【peace of mind】?
二人はこのダンス・フロアで知り合い、彼は彼女をダンスに誘い、次はもっと関係を深めたいと願っている…
果たして、彼はチャンスを得ることができたのでしょうか…。
We can boogie on down, down, down, down 君とならブギを踊り続けることができる、力尽きるまで… 【boogie】は20世紀初頭にピアノの演奏スタイル
の一つブギウギ(boogie-woogie)として派生し、そのリズムはギターなど様ざまな楽器に転用されジャズやブルース、カントリー、ロックへと融合されてゆきました。
心地よいリズム感があるためダンス・ミュージックとしても親しまれ、競技ダンス
の一ジャンルにもなっており、[boogie]は
“ロックに合わせて踊る”という意味 もあります。
ブギはかなり速いテンポを刻むのでダンスとしては激しい運動量があり、これに同調している主人公のテンションの高さも想像できるでしょ?
VIDEO VIDEO ~Epilogue~ ところで、R&Bファンクを代表する“Earth, Wind & Fire”と、J-POPのポップ・アイコン“
DREAMS COME TRUE ”の共通点は何でしょう?
ちょっと漠然としているので、範囲を絞ってこうしましょう…
「レッツ・グルーヴ」と「決戦は金曜日」 の共通点は? 「決戦は金曜日」を作曲したドリカムの
中村正人 はモーリス・ホワイトを“僕の音楽の父(いや、神様)”と公言するほど彼を尊敬しており、
本人談 によると“
「決戦は金曜日」は「Let's Groove」とシェリル・リンの「Got to be Real」 っていう2曲の曲を合体させて作った ”そうです!
彼の念願が叶って1994年にドリカムの
「WHEREVER YOU ARE」 のバックボーカルをモーリスが務めた際、彼は“
私はあなたの作った音楽をさんざんパクって日本で今売れちゃってます。 ”と告白したそうで、するとモーリスは“
それでいいんだ ”と言って認めてくれたといいます。
イントロが同じ ドリカムが日本歴代屈指のセールスを誇る成功者である事と、EW&Fが日本で人気が高いのには案外共通点があるようですね?
さて、タイトルにもなっている
【groove】は 、元々は“細長い窪みや溝”を指す言葉ですがレコード盤の規則的な針溝が波形(うねり)をイメージさせることから、音楽用語としてはリズムやテンポが生み出す
“ある種の高揚感やノリ” を表す言葉として用いられ、スラングとして
“楽しく愉快なこと” という意味もあります。
【spice】は[薬味・香辛料]であり、“それが無くても食事の第一目的(栄養補給)は成立する”類いのものです。
しかしスパイスがあることで食欲を増したり、より風味を楽しむことができますよね?
そして、【the spice of life】…
人生に、
【spice(趣)】 や
【groove(楽しみ)】 がなくても生きてゆけるのかもしれません。
でも、一人でいる時も、二人でいる時も、みんなでいる時もそれがそばにあったなら、より人生を味わい深いものにしてくれるはずです。
一日3回の食事でも、週に1回のデートでも、月に1回の“ムフフ”でも…?
ドリカムやEW&Fの最大の魅力であり共通点は、
“音楽を楽しむ心” なのだと思います。
特にEW&Fは音楽でも、PVでも、ステージのパフォーマンスでも観衆を楽しませることを第一に、そして演奏しながら踊るといったように彼ら自身もそれを楽しむことを決して忘れません。
それを身を以って教えてくれたのが、モーリス・ホワイトという人でした。
VIDEO あなたは「Let's Groove」を聴いている時、どんな気持ちになりますか?
…
それこそが、私たちが日々を生きてゆく上で最も大切な感覚の一つ であると、私は思います。
そのためには、あなた自身が日常の中に【spice】や【groove】を見つけ出すこと!
あとは…
Let's groove tonight さぁ、グルーヴしよう Share the spice of life 人生のスパイスを分かち合うのさ 「レッツ・グルーヴ」 VIDEO 続きはこちら >>
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