5/14~20の単独来日公演と、21~22日の『GREENROOM FESTIVAL’16』に参加する予定のチャカ・カーン。 先日亡くなったプリンスはファンク界を代表するミュージシャンですが、チャカもまたグラミー受賞10回&“ファンクの女王”の異名を持つ偉大な女性R&B歌手です。 そのパワフルさはティナ・ターナーにも劣らず、ファンキーなスタイルはホイットニー・ヒューストンの「I'm Every Woman」として受け継がれ、さらにはバラードやジャズ歌手としても活躍が知られています。
今回のキーワードは、“I Feel For You”♪ さて、どんなストーリーが待っているのでしょう…。
~概要~
「フィール・フォー・ユー」は1984年のソロ5thアルバム『I Feel for You』からの1stシングルで、Billboard Hot 100で3位(1985年の年間5位)を記録した自身最大のヒット曲です。 ポップ・チャートでは頂点に立てなかったもののU.S. dance/R&Bチャートでは1位に輝き、Cash Box誌では週間No.1を獲得しています。 チャカにとってグラミーをもたらした作品の一つであり、彼女は同曲で“Best R&B Vocal Performance, Female”を受賞しました。
「I Feel for You」はプリンスの作詞・作曲であり、元々彼の1979年のアルバム『Prince』で発表された楽曲でした。 その後1982年にR&Bコーラス・グループPointer Sistersがカバーしていますが、何れもシングル・カットはされていません。 チャカは当時1982年の4thアルバム『Chaka Khan』の売れ行きが不振だったことから所属レーベルのワーナーに何としてもヒットを出すよう強く求められており、そこで同じワーナー所属で以前から大ファンだったプリンスの「I Feel for You」をレコーディングするきっかけとなりました。 ちなみにこの二人は個人的にも親交があったようで、1990年代後半にプリンスが自身のレーベル『NPG』を立ち上げるとチャカもこれに参加しています。
チャカver.の特筆すべきは彼女の力強いヴォーカルに加え、素敵なエッセンスが加えられていたことにあります。 まず特徴的なのは、チャカの名前を連呼するメリー・メル(Melle Mel)のセクシーなラップを大胆にフィーチャーしていることでしょう(当時ラップはまだ一般的ではなかった)。 そして、それに続いて入ってくるクロマチック・ハーモニカ…実はコレ、あのスティーヴィー・ワンダーによるものです! スティーヴィーとはチャカがルーファス(Rufus)時代の1974年に彼から「Tell Me Something Good」(全米3位)の楽曲提供を受けた頃からの縁で、「I Feel for You」のハーモニカはマーヴィン・ゲイの葬儀に出席した日(1984年4月1日)にレコーディングされたものだといいます。 また、実はスティーヴィーはハーモニカ以外でも本作に貢献しており、彼が“リトル・スティーヴィー・ワンダー”時代の1963年に初めて全米No.1に輝いた「Fingertips pt. 2」の呼びかけ部分が、「I Feel for You」の間奏(約3:00頃)に“サンプリング”されています。
チャカとプリンスとスティーヴィー… この3人の力が集結して作品が生み出されたというだけでも凄いことですが、実はこの3人が揃ってライブで「I Feel for You」をパフォーマンスしている貴重な映像(BET Awards, 2007)を見つけたので、ご覧ください♪
クイーンの有名曲に「We Will Rock You」がありますが、「I Feel For You」での【rock you】とは全く異なる意味であることは曲調から何となくわかるでしょ? 【rock】は動詞だと“揺する”という意味であり、これは2つの作品とも共通しています。 問題は“何を揺するか”ですが、「I Feel For You」は“funk”であり、“作者はプリンス”であることを考え合わせてみるとご理解いただけるのではないでしょうか…。