1971年5月、3rdソロ・アルバム『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー(Every Picture Tells a Story)』を発表、7月に最初のシングル「A面;Reason to Believe/B面;Maggie May」がリリースされ、「Reason to Believe」はアメリカBillboard Hot 100の98位でランク入りしました。 しかしラジオ局を中心に「Maggie May」の人気が急上昇、10月にHot 100のNo.1(5週/年間2位・全英5週No.1/年間2位)に輝いた頃には「Maggie May/Reason to Believe」と、「Maggie May」がA面扱いされるようになっていました。
ロッド本人によると当初「Maggie May」の扱いは、シングルB面どころか“殆んどアルバムに入り損ねるところだった”そうで、その理由は“(周りの)誰にも気に入ってもらえなかったんだ。メロディーが無いって…”というものでした。 また、本曲が彼の運命を変えるきっかけとなったことについて、“クリーブランドの熱心なDJがレコードをひっくり返して(B面の「Maggie May」をかけて)くれなかったら、俺は今でも(誰に知られることなく)シコシコやってただろう。運のいいヤツっているもんだ”と語っています。 そんな「Maggie May」は2010年、ローリング・ストーン誌【The 500 Greatest Songs of All Time 131位】の評価を獲得しています。
Wake up Maggie I think I got something to say to you 起きてよマギー、言いたいことがある It's late September and I really should be back at school 9月ももうすぐ終わるし、俺も学校に戻らなきゃ
The morning sun when it's in your face really shows your age 朝日が“その顔”を照らすと、実の年齢(とし)まで露わになる But that don't worry me none in my eyes you're everything だけど“この目”はそんなの気にしない、俺にとってはあんたがすべて
Or steal my daddy's cue and make a living out of playing pool それとも親父のキューを盗んで、玉突きで生きてみるか Or find myself a rock and roll band that needs a helpin' hand あるいは、助けが必要なロックンロール・バンドに途を見出すか…
ロック歌手を目指す前ロッドがサッカー選手を目指していたことは有名ですが、1973年に全英8位を記録したフェイセズのシングル(ロッド/ロン・ウッドの共作)に「玉突きリチャード(Pool Hall Richard)」という作品があり、ビリヤードも選択肢の一つだったかもしれません。 ただし【pool】は“賭け金”という意味からイギリスでは“賭け玉突き”を指すこともあり、彼が真っ当なプロを目指したかは特定できません(むしろ賭け玉突きの方が作品に合っている?)。
~Epilogue~
まずは、この映像をご覧ください。
投稿主によるとこの映像は1961年のニュース映画のアウトテイクで、『the 6th Beaulieu Jazz Festival』(イングランド南岸ニュー・フォレスト)に訪れていたビートニク(Beatnik)を映したものらしいのですが、この中に登場するギターを背負った若者に見覚えがありませんか? …そう、彼が若きロッド・スチュワート(Roderick David Stewart)だというのです!
ロッドがこれを自分と認めたかは不明ですが、“1961年(16歳)に『the Beaulieu Jazz Festival』に行った”ことはイギリスの音楽雑誌『Q』2007年1月号で本人も認めています。 しかも、“「マギー・メイ」はここで出逢った女性とのことについて、おおよそ実話”とまで告白しています。 それについて、具体的に語ってくれているのですが…
“about the first woman I had sex with!” (…訳しません!)
ただし、この女性の名前は【Maggie May】ではなく、“リヴァプールの古い民謡を引用した”と語っています。 その民謡とはビートルズも『レット・イット・ビー』でカバーした「Maggie Mae」(Maggie Mayとも綴る)のことで、ここに歌われる女性“Maggie Maeは娼婦”です。 ロッドは『the Beaulieu Jazz Festival』のビアテントで年上の女性に強引に口説かれ“貴重な体験”をしたそうですが、彼女が娼婦であったかはわかりません。
Oh Maggie I wish I'd never seen your face マギー、あんたと出逢わなければよかった You stole my heart but I love you anyway だけど心を盗まれた俺は、それでもあんたに惚れている
「ダウンタウン・トレイン」は1989年のベスト・アルバム『The Best of Rod Stewart』のため新たに録音されたシングルで1990年1月にリリース、「Da Ya Think I'm Sexy?」以来11年ぶりにロッド・スチュワートが英・米両方のチャートでトップ10入り[UK 10位/US Hot 100 3位(年間37位)]を達成した作品です。
ロッドver.のヒットの要因として彼自身の哀愁たっぷりのヴォーカルがあるのはもちろんですが、プロデューサーを務めたトレヴァー・ホーンの貢献も大きく、ロッドはその出来映えについて『The Best of Rod Stewart』のライナーで“すばらしい才能にあふれ社交的なトレヴァー・ホーンがプロデュースした一枚岩のような曲”と評しました。 “レコーディングに貢献”といって忘れてはならないのは1960年代からの盟友ジェフ・ベックで、ここではスライド・ギターで参加しています。 また、「Downtown Train」は元々ロッドのお気に入りというわけだったわけでなくWEAレコードのロブ・ディキンズの紹介によるものだったらしく、“彼が、僕の関心をこの美しいトム・ウェイツの曲に向けてくれた”と、その功績に言及しています。
私が初めて「Downtown Train」のパフォーマンスを目にしたのは1991年のグラミーで、これはロッドが本作品で“Best Male Pop Vocal Performance”にノミネートされたことによるものですが、実際には恐らくこの時の歌は“口パク”だったと思われます。 ただ、この時のロッドのパフォーマンスがとにかくカッコよくて、今もお気に入りの映像です。 でも、どうしてもロッドの生歌が聴きたいという方のために、正真正銘の生歌映像をお付けいたしましょう♪
You wave your hand and they scatter like crows お前が別れの手を振ると、奴らは烏のように四散する They have nothing that'll ever capture your heart …そんな連中に、その心を熱くさせるものなどあろうはずもない
作品のテーマの一部となっている【downtown】は普通名詞としては[商業地区に・都心部に]といった意味ですが、この作品ではそこを走る電車は【Brooklyn girls】で溢れているということから、舞台は“ニューヨーク市ブルックリン区ダウンタウン・ブルックリン”と思われます。 ブルックリンはニューヨークの5つの区の中で最も人口が多い250万人が居住する大都会で、区内にはニューヨーク市地下鉄が18線通っておりマンハッタンとを行き来する者の92.8%はこの地下鉄を利用するそうです。 「Downtown Train」のPVには地下鉄が登場し、《概要》の項で紹介したグラミーのパフォーマンス映像でも【Will I see you tonight on a downtown train】のラインにくるとロッドが頻(しき)りに右手で下を指さす仕草をすることからも、【Train=地下鉄】という解釈が成立します。
Will I see you tonight on a downtown train “今夜、ダウンタウン・トレインで会えない?” Every night, every night its just the same …毎夜毎晩、唯そればかり想い巡らす