シーナ・イーストンは1980年2月にレコード・デビューした、イギリスの女性歌手です。 デビュー・シングル「Modern Girl」が全英56位と結果を出せぬまま、同年5月16日にリリースされたのが2ndシングル「9 To 5」でした。
同年夏、シーナに転機が訪れます。 イギリスBBCのドキュメンタリー番組『The Big Time』で、ポップ・スターを目指すシーナの日々を追った『Sheena Easton - Pop Singer』が7月2日に放送され、反響を呼んだのです。 これはレコード・セールスに絶大な影響を及ぼし、「9 To 5」は全英3位(年間9位)の大ヒットを記録しました。 この成功によってポップ・スターとして本格的な活動を展開することとなり、翌1981年1月18日に「Modern Girl」と「9 To 5」を核とした1stアルバム『モダンガール(Take My Time)』を発表しています。
一連の出来事はシーナに国境と海を越えさせるに十分なインパクトであり、タイトルを「9 to 5 (Morning Train)」と変更しながらも(後述)1981年2月にアメリカで初めてシングルがリースされ、5月にBillboard Hot 100でNo.1(2週/年間12位)に輝きました。 勢いはこれに止まらず、『US Cash Box』やオーストラリア、カナダ、ニュージーランドでのNo.1をはじめ世界各国で大成功を収め、第24回グラミーでは【最優秀新人賞】も受賞しています。
本作は「9 to 5 (Morning Train)」というタイトルで広く知られていますが、オリジナルは「9 To 5」でした。 1980年5月にイギリスで発表された時は「9 To 5」だったものの、アメリカで発売された1981年2月は奇しくもドリー・パートンの「9 To 5」(同名異曲)が全米No.1に輝く大ヒットを遂げていた時期であり、それと混同しないようシーナの側が配慮したことによります。 ただ、歌詞的にみると「9 To 5」も「Morning Train」も彼女にとってさほど重要なテーマではなく、本当に言いたいのは【My baby】についてであることは疑いありませんネ?
My baby takes the morning train 愛しいあの人は朝の電車で出掛け He works from nine to five and then 9時から5時まで働いて
シーナは当時20-21歳でしたが、「9 To 5」は“彼の留守中も彼を心に描き”、“帰ったら二人で一晩中楽しむ”…といった女の子らしい微笑ましい物語である一方、よく考えたら“彼女は同棲か結婚してる?”みたいにも受け取れます。 しかし実際、シーナは1979年に結婚しており、【Easton】はその夫の姓でした。 ただ、二人は8ヵ月で離婚したといいますから、本曲発表時彼女が[Miss or Mrs.]どちらだったかは詳しい時系列がないのでわかりません。
もう一つ興味深いのは、デビュー曲「Modern Girl」と2nd「9 To 5」の描く女性像が真逆なことで、当時「Modern Girl」に共感してレコードを買った人は、続く「9 To 5」の保守的な女性像に相当戸惑いを覚えたことでしょう。 恐らく斬新な「Modern Girl」が予想外に売れなかったので正反対の選曲をしたと想像するのですが、「9 To 5」がアメリカでヒットした年はオリビア・ニュートン=ジョンが大胆なレオタードに身を包んだ「Physical」や、ジェーン・フォンダのフィットネス『Jane Fonda's Workout』が社会現象化し、女性の権利を訴えたドリー・パートンの「9 To 5」も大ヒットした時流であり、むしろそんな逆風の中でよくヒットしたとも思えます。
ジョディ・ワトリーといえば歌・容姿ともに当時を代表するセクシー・アイコンの一人ですが、一方これに対抗するシーナ・イーストンのお色気路線といえば、やはり「The Lover In Me」でしょう。 シーナの色っぽい“ムフフ”なPVもご用意してありますので、どうぞお楽しみに♪
~概要~
「ラヴァー・イン・ミー」は1988年の9thアルバム『ラヴァー・イン・ミー(The Lover in Me)』からの1stシングルで、Billboard Hot 100で2位(1989年の年間41位)を記録した作品です。 シーナにとって1984年の「Sugar Walls」以来約5年ぶりのTop10ヒットですが、ゲスト参加としては1987年にプリンスとの「U Got the Look」の2位もありました(「Sugar Walls」もプリンスの楽曲)。
1980年にデビューしたシーナは80年代前半は正統派のポップ・シンガーというイメージがありましたが、80年代半ばから“ファンク王子”と共演していることからも分かる通りブラック・ミュージックへのアプローチを試みており、彼女にとって転換期でもありました。 “シンデレラ・ガール”として一躍話題を集めたシーナも、“MTVの申し子”マドンナの出現によって衆目を奪われ、80年代半ばはジャネット・ジャクソン、80年代後半頃はポーラ・アブドゥルといった、何れもセクシーさとダンスを持ち味とした女性シンガーが際立った活躍をみせていた時流から、彼女もそのスタイルを意識せずにはいられなかったことでしょう。 プリンスとの共同関係は『The Lover in Me』でも継続されており、殿下はこのアルバムでシーナのために2曲を提供しています。
しかし80年代後半頃プリンス以上にアメリカのダンス・シーンに影響を与えていたのはボビー・ブラウンやペブルス、キャリン・ホワイトらを次々にスターへと導いていたL.A.リード&ベイビーフェイスで、「ラヴァー・イン・ミー」は彼らによる楽曲・プロデュース作品でした。 そのため「The Lover In Me」はそれまで以上に“黒っぽい強烈なダンス・ビート”をフィーチャーし、オーソドックスな楽器と最新の機材を巧みに融合させ洗練されたサウンドが創り上げられており、シーナ自身も“水を得た魚”のように生き生きと艶っぽい歌声とオーラで魅せてくれています。
~Lyrics~
Talk about the love you're missing アナタがフラれたって噂 Maybe then it's true …たぶん、それは本当でしょう