I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「反逆のヒーロー」ジョニー・ヘイツ・ジャズ

2014.07.28

category : Johnny Hates Jazz

Johnny Hates Jazz - I Dont Want To Be A Hero1 Johnny Hates Jazz - I Dont Want To Be A Hero2


Johnny Hates Jazz - I Don't Want To Be A Hero (1987年)


~Prologue~

日本の長い歴史に於いて、最も重い意味を持つであろう1945(昭和20)年8月。
“たった2発の爆弾”が、想像も及ばぬほど多くの人命を奪いました。
広島・長崎両市HPによるとそれぞれの死者数は広島が約14万人(1945年12月末までに)、長崎は73,884人(昭和25年7月発表の報告による)です。
もちろん、その死すら確認されぬまま亡くなった方、その後原爆症に苦しみ亡くなった方々は含まれていません。

あれから69年が迫る今年7月28日、広島に原爆を投下したアメリカ軍のB29爆撃機“エノラ・ゲイ”の搭乗員の一人だった男性が93歳で亡くなりました(これにより広島・長崎に原爆を投下した爆撃機の乗組員全員が死去)。
少なくとも14万人の死に関与した彼は英雄? それとも…。



~概要~

ジョニー・ヘイツ・ジャズは、1986年にデビューしたイギリスのバンドです。
“Johnny Hates Jazz(ジョニーはジャズ嫌い)”という変わったバンド名は、奥さんがジャズ好きで朝から晩まで傍で聴かされたメンバーの友人が、半ばノイローゼになったというエピソードに由来します。
翌年2ndシングル「Shattered Dreams」が英米で大ヒット、それに続いて発売されたのが3rdシングル「I Don't Want To Be A Hero」でした。

イギリスでは11位とまずまずの成績でしたがアメリカのレコード会社はこの作品が“反戦的である”と発売に乗り気ではなかったそうです。
結局アメリカでもシングルは発売されることとなるのですが、当初イギリスで公開されたPVはヴォーカルのクラーク・ダッチェラーの美男子ぶりをフィーチャーした映像(カラー)なのに、アメリカ用(モノクロ)には戦争シーンを挿入させた重苦しい映像で、ヒットはしたもののBillboard Hot 100では31位に終わりました。

1988年初頭に「Shattered Dreams」「I Don't Want To Be A Hero」の入った1stアルバム『反ヒーロー宣言(Turn Back the Clock)』がリリースされ全英1位をはじめヨーロッパで大ヒット、アメリカBillboard 200(アルバム・チャート)では56位まで上昇しました。
日本では「ヴィーナス」をカバー・ヒットさせた長山洋子(現・演歌歌手)が、日本語カバー「反逆のヒーロー」としてオリコン10位とヒットさせています(内容はラブ・ソングに変更)。


I Don't Want To Be A Hero (US Version)




~Lyrics~

Oh, send me off to war With a gun in my hand
あぁ…銃を握らせ、戦場に送り出すがいい
But I won't pull the trigger
だけど、僕はトリガーを引いたりはしない

「反逆のヒーロー」たる所以です。
軍というものは、“任務遂行のためなら殺人も厭わない”性質の組織であり、“トリガーを引かない”という行動は自己矛盾に他なりません。
直後の“赤と白、青の支配”というのは恐らく“ユニオンジャック(イギリスの国旗)”のことで、この歌が批判しているのは1982年にアルゼンチンとの間に生じた“フォークランド紛争(Falklands War)”ともいわれます。


And what if I fail Will you put me in jail
…そしてあなたは、しくじった僕を投獄するというのか?
For a murder I will not commit?
“人を殺さなかった罪”として

一般社会では、“人を殺した罪”ですよね。
人を多く殺せば“英雄”と呼ばれ、人一人殺せなければ“臆病者”と呼ばれるのが戦場。
こんな“狂気”の中でサバイバルを強いられたら、心が壊れてしまっても不思議ではありません…。


And those who return Come back only to learn
生還した兵士は帰郷し、ただ思い知らされる
That they're hated by those who they love
愛する人にさえ、忌み嫌われる自分に

イラク戦争から帰還した米兵の6人に1人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)など深刻な問題を抱えているとされ、戦後の復興支援に派遣された自衛隊員26人がその後自殺したと報告されています。
戦場から物理的に解放されても、残虐非道の世界に適応すべく高度に訓練された心と感覚は、直ぐには切り替われるものではありません。
平和の世界しか知らない家族には、彼の本当の苦しみは想像さえ及ばないことでしょう…。



~Epilogue~

冒頭に挙げた広島・長崎に原爆を投下したB29の搭乗員たちは、間違いなくアメリカにとって第二次世界大戦中の偉大な英雄のひとり(チーム)です。
戦後、彼ら自身もアメリカ政府も、あるいは次世代へ歴史を伝える教科書も一貫して“原爆の投下は、戦争終結を早め犠牲者拡大を防いだ正当な行為”と主張し、この点について公式に謝意を表明したことはありません。

公式な答弁は、彼らが勝者なのだから仕方ありませんが(日本が勝っていたら真珠湾攻撃も正当化していたはず…戦争とは、そうしたものです)、10万人もの命を殺害したという逃れようのない事実について彼ら自身、一人の人間として内心どう思っていたのでしょう?
目の前で微笑む我が子の澄んだ瞳に、曇りなき親心で応えることができたのだろうか…。


一方、現在の我が国へと目を向けると近年中国の尖閣諸島への領土・領海的野心は明らかで、日中両国の艦船・航空機が尖閣周辺で接近することは今や日常茶飯事の出来事であり、いつ不測の事態が起きても不思議ではありません。
安倍首相はこのような有事を想定して“米国頼み”を強固にすべく、これまで歴代内閣が決して認めてこなかった“集団的自衛権の(一部)容認”に踏み込みましたが、国民の理解と賛同を得ぬまま各国首脳との会談で“積極的平和主義”を触れ回って既成事実化を図っています。

また、7月1日の閣議決定では“憲法解釈変更した/しない、どちらとも取れる玉虫色”でお茶を濁しており、安倍政権にはこの問題を国民と徹底的に対話するつもりはないように感じられます(今年の知事選・来年の統一地方選で争点にしたくない)。
私が一番恐れるのは、ある軍事行動に対し“国民の大多数が反対”しているにも関わらず、海外で既成事実化した“日本は集団的自衛権を行使する国”が独り歩きし、この国を思いがけず戦争へと導くことです。

“敵を多く殺す英雄”を生まない社会こそ、69年前の8月の先人が切望した境地であるはずだし、この国の政権を受け継いだ“誰か”が目指すべき“美しい国”なのだと、私は思います…。



「反逆のヒーロー」



Writer(s): Clark Datchler /訳:Beat Wolf


あぁ…銃を握らせ、戦場に送り出すがいい
だけど、僕はトリガーを引いたりはしない
運命は赤と白、青の支配の下
僕を殺戮(さつりく)へと、導いてゆく…

さぁ…臆せずパレードに参列しよう
究極の自己犠牲を捧げるんだ
時代遅れな、希望と栄光の物語のため
殺しの免罪符と引き換えに…

[Chorus]
ヒーローなんて、望まない
“あなた”のために死にたくない
ヒーローなんて、真っ平さ

あぁ…遠く離れた戦場に送り出すがいい
存在さえも知らない地へと
目を覆う現実、恐怖と痛みが支配する世界
心が捻れてしまうまで…

…そしてあなたは、しくじった僕を投獄するというのか?
“人を殺さなかった罪”として
自らの手を血で汚さぬ限り、あなたには解らないだろう
憎しみを忘れ、許し合う時だということも…

[Chorus]

生還した兵士は帰郷し、ただ思い知らされる
愛する人にさえ、忌み嫌われる自分に
“あなた”は、千の命が失われるまで満足しない
その代償は、彼らの血で支払われているというのに…

[Chorus]
ヒーローなんて、望まない
“あなた”のために死にたくない
ヒーローなんて、真っ平さ…


最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 1987年 ダンス/Pop 反戦 日本で人気 

コメント

お久しぶりです♪なかなかお邪魔できずにすみません~v-388

曲調はダンスナンバーぽいけどv-352
歌詞はかなりシビアですね

来年で70年の節目を迎えますね・・・

8月は戦争に関する事が多いですね・・・・

2014.08.02  chiyuki  編集

chiyukiさん

来てくれて、ありがとう。
この曲、覚えてない?
今は演歌歌手のアノ人が日本語カバーして歌っていたよ。

chiyukiさんにとっては、「身近な町」の出来事だものね。
わが町も、空襲で焼けちゃったけど…。

2014.08.02  Beat Wolf  編集

戦争は、

国だけでなく人間の心も壊します。
もう、決して日本は関わってはいけない。
どれほどの人が苦しみ耐えてきたのか。。。

今も世界の何処かで戦争が続いている。
日本は、たくさんの犠牲をだし、9条が出来たことを
無駄にして欲しくないですね。

この歌のように、悲しい思いをする人が出ないように願うしかないのでしょうか?

2014.08.05  ☆dct☆  編集

Re: 戦争は、

日本人のほとんどが戦後生まれになって
幸いにも、戦争の悲惨を体験していません。
中には「中国がその気なら、やってやろうじゃないか!」とか
特攻隊がカッコいいと思っている人までいます。

「その結果どうなるか」という想像力に欠けたからこそ
戦争を始めてしまっただけで、結果を事前に見ることができたなら
当時の人だって、何があっても戦争を避けたでしょう。

戦争を体験していない私たちも、それを忘れてはなりません…。

2014.08.05  Beat Wolf  編集

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2014.08.06    編集

Good!

素晴らしい!いろいろ出ている和訳の中でダントツでした。私も大学時代に聞いてアルバム買いました。ありがとうございました。

2016.05.21  KOKO  編集

Re: Good!

> 素晴らしい!いろいろ出ている和訳の中でダントツでした。私も大学時代に聞いてアルバム買いました。ありがとうございました。


恐縮です。(汗)
音楽だけ聴いてるとお洒落なダンス・ナンバーですが
歌詞もいいですよね♪

2016.05.21  Beat Wolf  編集

英国いろいろ

同時期の、スコッツ双子デュオ、プロクレイマーズの gonna be 500 milesの泥臭いけど能天気な歌も印象的だったなあ。

2016.08.15  MA  編集

Re: 英国いろいろ

当時ユーロビートが全盛だったので、逆に新鮮でした。
ジョニー・デップの映画にも使われましたね…。

2016.08.15  Beat Wolf  編集

近所のスーパーで

早々に返信ありがとうございました。
夕方、近所のスーパーで何とi don't want to be a heroが流れていました。偶然なのか、日本でも復活の兆しなのか・・・。

先日、イギリスの夏の野外ライブのビデオを見ていたら、たまたまJohnny Hates Jazzが出ていて、懐かしいなあと思っていたところ、こちらのブログに辿り着きました。

shattered dreamsに続いて~heroが出てきた時は、「フォークランド紛争なんて、何年も前にしかも楽勝してるのに」、「スタイルカウンシルとかみたいに、体制批判にリアリティが感じられない」だなんて思っていました。でもこの人(Clark Datchler)は、84年にRAKから"no want, no war"って曲も出していたんですね。聴いたことはないのですが。繊細で感受性が強い人のようなので、10代で戦争をみて、思うところがあったのかな、と今さらながら感心しました。

2016.08.20  MA  編集

Re: 近所のスーパーで

昔の曲が、今でも街で流れていると嬉しくなりますね。
日本ではカバーのヒットもあったせいかShattered Dreamsより
I Don't Want To Be A Heroの方が圧倒的に知名度があった気がします。
また、カバーでは歌詞がラブソングに書き換えられていたので
オリジナルもラブソングと思っていた人も多いでしょう。

でも、もしフォークランド紛争中だったら発売できなかったり
放送禁止になっていたのではないでしょうか?
戦時中の国家にとって、この歌は「不都合」ですから。
本当は、この心こそ平和にとって大切であるというのに…。

2016.08.20  Beat Wolf  編集

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