Jackson Browne - The Pretender (1976年)~ジャクソン・ブラウン、7年振りの日本公演~ 昨年10月リリースされた14thアルバム『Standing In The Breach』に伴うツアーで間もなく来日するジャクソン・ブラウン。
単独としては実に7年振りの日本公演で、
3/9~3/19 の期間に名古屋・東京・大阪・広島で7公演が予定されています。
もちろん「プリテンダー」はツアーのセット・リスト曲で、ファンにとっては忘れ難い作品です。
今回、ジャクソン・ブラウンとほぼ同時期に
クロスビー、スティルス&ナッシュ が来日する予定で、もしかしたらドコかで“こんなサプライズ”があったりする?
VIDEO with Crosby, Stills and Nash - The Pretender - Madison Square Garden - 2009/10/29&30 ~概要~ ジャクソン・ブラウンはデビュー前からソングライターとして知られていた人で、親交のあったイーグルスのデビュー曲
「テイク・イット・イージー」 は彼の手による作品です(グレン・フライとの共作)。
1972年に自身が歌手としてデビューし、イーグルスと共にアメリカ“ウェスト・コースト・ロック”の代表格に数えられる地位を築きますが特に歌詞が秀逸で、ローリングストーン誌は彼を
“1970年代で最も完成された作詞家” と評しました。
「プリテンダー」は1976年の4thアルバム
『The Pretender』 のタイトル曲で、2ndシングルとして
Billboard Hot 100で58位 を記録しました。
レコーディングには
TOTO 以前のジェフ・ポーカロなど名うてのミュージシャンがサポートしていますが、実は冒頭で紹介したCS&Nのデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュもバック・コーラスに参加しています。
また、同曲は1995年のハリウッド
映画『陽のあたる教室(Mr. Holland's Opus)』 にも起用されました。
プロデュースは
ブルース・スプリングスティーン のアルバム『Born to Run』のジョン・ランドーが手掛け(「Born to Run」曲単体のプロデュースはマイク・アペル)、ジャクソンにとって初のBillboard 200でTop10入り(5位)を果たした名作で、ローリング・ストーン誌
“the 500 greatest albums of all time”の391位 にランクインしています。
この作品が完成に至る過程に於いてジャクソンは“痛恨の悲劇”に襲われていますが、その詳細については次項にて…
~Lyrics~ 時代を代表すると評されただけあって実に多くの“スポット”が埋め込まれていて、ごく一部しか触れられないのが残念なほど味わい深い歌詞です。
タイトルが「The Pretender」のせいか、【tender】【fender】【vendor】【spender】【contender】など同じ韻に拘った創りが試みられており、言葉選びの一つから丁寧に練られていった苦心を窺わせます。
Caught between the longing for love 愛への憧れと And the struggle for the legal tender カネにあくせくする現実の狭間に生きる アルバム『The Pretender』は1976年11月に発表されましたが、実は
同年3月にジャクソンは妻フィリス(Philis Major)を亡くしています 。
2人は前年12月に入籍したばかりだったもののジャクソンはアルバム制作に掛かりきりになってしまい、一緒の時間が十分取れぬまま、その間にフィリスは薬物による狂言自殺から誤って命を落としてしまったのです。
その事件がこの作品に影響を及ぼしたか否かは定かではありませんが、彼の“もっと時間を割いてあげていたら…”の悔恨にも思えてしまいます…。
I'm gonna find myself a girl きっと素敵な娘を見つけよう Who can show me what laughter means 笑うことの意味を教えてくれる人 “なんとなく満たされていない日常”を抱かせる本作品ですが、ここは大いに希望を語っています。
彼は自分を含め何気ない日常の風景を冷静に観察し本質を見抜く知性があり、それ故に何事も楽観できず心から笑うことも少ない日々を送っているのではないでしょうか…。
だからこそ、“自分にない価値観を教えてくれる誰か”を求めている。
知性ではなく、直感によって得られる悦びを…。
And when the morning light comes streaming in …やがて、朝陽が射し込む頃 We'll get up and do it again 起きて、君と僕はまた愛し合う Get it up again(※) 歌中で何度か登場する数少ないフレーズです。
【
do it again 】は、他では淡々と繰り返される時の流れを映し出しているのに対し、ここは前後から肯定的なニュアンスを感じさせます。
そのせいか、非常にマジメな作品に於いて唯一暴走気味!
【
Get it up 】は“起こす”のは言葉の通りですがスラングで、愛し合うために
“男はitを起こさねばならない” …
つまり、“
下ネタ ”になっておりまして…!?(訳は自粛)
今回私を一番悩ませたのが、すぐ上の
And then we'll put our dark glasses on で、
“愛し合うのに何故【サングラスを掛ける】?” という疑問でした。
でも、それに続くこの部分で【朝陽が射し込む頃】なのに【do it again(もう1ラウンド?)】挑もうとするタダならぬ執着心に気づき、
“朝になろうと、サングラスを掛ければ二人の夜は終わらない!” なのだという解釈に至ったのです。
~Epilogue~ 作品のテーマである
【pretender 】 は、
“偽りの見せかけをする人・ふりをする人” といった意味です。
知ってるふり、持ってるふり、強いふり… 知らないふり、見ないふり、“か弱いふり”…
…あなたにも、覚えがあるでしょう?
ところで、写真の昆虫は何だかわかりますか?
…えっ、“
ハチ ”?
期待通りの模範解答、ありがとうございます♪
実はこの虫、“蛾”です!(スカシバガ科の一種)
“ボクにちょっかい出したら、刺すゾ~”?
彼の気持ちを想像すると、“ふり”もカワイイでしょ♪
(ただし、実際に刺したりはしないらしい)
この作品に於いて“The Pretender”とは、どんな“ふり”を指しているのでしょうか?
ジャクソンによると、それは
“夢の代わりに物質的なライフスタイルを受け入れた人たち” と定義しているようです。
夢は至難が伴う大きな目標であるが故に、叶わぬことが多いもの。
夢破れて現実を見回した時、私たちの世界には余りにも魅力的なモノが溢れています。
気が付くと“アレが欲しい、コレはみんなが持っているから”と、いつの間にか必要不可欠なモノが増えて“先立つもの”がもっと必要になってしまう…。
それで現在の豊かな経済社会が回っているといえばその通りですが、一方で
“何か本質的にもっと大切なものに手が届いていない” ような気がする方も多いのではないでしょうか?
皮肉なことに、ジャクソンにとってそれは愛妻の死によって宣告されることとなってしまいました。
“仕事と私、どっちが大事?”
その問いに対する答えは、二人にとって取り返しのつかない最悪の結末へと導かれてしまったからです。
Strolls the Pretender ただ、宛てもなく歩くのさ… He knows that all his hopes and dreams 夢も、希望もすべて Begin and end there そこに始まり、終わると知っているような顔をして 物質的価値か、精神的価値か…
明らかなのは、物質的価値は日進月歩で豊かになっているはずなのに、私たちはそれ程までに幸福を実感できていないということ。
“全ての人にとっての究極的な夢は幸せになること”と仮定するなら、私たちが築いてきた価値観は何かがズレているのではないでしょうか?
物質的に豊かになることと精神的に豊かになることは別モノであり、それぞれバランス良く豊かさを分け与える必要があるのかもしれません。
まずは“ふり”を止めて、あなたと大切な人の心に訊いてみてはいかが?
“何が幸せ?”と…。
「プリテンダー」 VIDEO Writer(s):Jackson Browne /訳:Beat Wolf 家を借りることにしよう フリーウェイの陰の、陽の当たらない場所 毎朝、昼食を詰め 仕事へと出掛けるんだ 夕暮れ巡ると 家に帰り、身体を横たえる …やがて、朝陽が射し込む頃 起きて、僕はまた同じ一日を重ねるだろう Amen(アーメン) もう一度、祈ろう Amen... 何が変わってしまったのだろう… 愛がもたらすものを、僕らは心待ちにしていたはずなのに それは、ただの気まぐれな夢? …より大きな目覚めのための 時は、過ぎゆくもの… 結局、それは瞬きに過ぎなかったんだね …やがて、朝陽が射し込む頃 起きて、君はまた幻想を描くだろう Amen... 愛への憧れと カネにあくせくする現実の狭間に生きる 唸るサイレン、響く教会の鐘… くず鉄屋のフェンダーを叩く音がこだまする、この国で 退役軍人が信号の束の間に微睡(まどろ)み 過ぎ去りし戦いを、夢に彷徨う アイスクリーム売りを 子どもたちがじっと待つ、この国で… 夕暮れの涼しさへと繰り出そう ただ、宛てもなく歩くのさ… 夢も、希望もすべて そこに始まり、終わると知っているような顔をして 恋人たちの笑い声… それは、夜を駆け抜け 他には何も残さず 諍いと別れを選ぶ あらん限りの力と共に世界は引き裂かれ 二人の夢だけを載せて、船は 彼方へと出帆する きっと素敵な娘を見つけよう 笑うことの意味を教えてくれる人 互いに欠けた色を補い合い 一緒に夢の塗り絵を彩るんだ そして、サングラスを掛け 力が尽きるまで、二人は愛し合う …やがて、朝陽が射し込む頃 起きて、君と僕はまた愛し合う Get it up again(※解説文を参照) 幸せな愚か者になろう カネに、あくせくしながらも 溢れるほどの広告が、カネづかいの心と魂に狙いを定め 躍起に売り込む、この国で たとえ、まやかしであろうと信じるさ それが、カネで買えるものなら かつて、本物の愛はそれに抗い得たけれど… 主よ、あなたがそこに御 座(おわ)すなら いつわり生きる者のため、ここに祈りを捧げましょう かつて、若い力をみなぎらせ旅立ち 結果、膝を屈した者たちのために いつわり生きる者のため、祈りを捧げましょう あなたが、そこに御 座すなら…最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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1976年 ロック 希望 味わい深い
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