I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と解説+エッセイでお届けします

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「ゴールデン・スランバーズ~キャリー・ザット・ウェイト~ジ・エンド」ビートルズ

2015.04.10

category : Beatles & Solo

The Beatles - Golden Slumbers2 The Beatles - Golden Slumbers1


The Beatles -
Golden Slumbers/Carry That Weight/The End
 (1969年)




~ビートルズ終幕のメドレー~

ポール・マッカートニーの“リベンジ公演”が、いよいよ目前に迫りました(4/21~)。
昨年はまさかのウイルス性炎症でのリタイアでしたがその後は70代とは思えない超人的な活動ぶりをみせているので、必ずや今年は雪辱を晴らしてくれることでしょう!
今回は一昨年と同じ『Out There! Tour』の一環であることからセットリストは基本的に前回と同じと想定し、そのラスト・ナンバーを選んでみました。

…それにしても、初々しい「Please Please Me」(過去ログ)から6年でこんなに成長するなんて!



~概要~

「ゴールデン・スランバーズ~キャリー・ザット・ウェイト~ジ・エンド」はビートルズが最後に制作したアルバム『アビイ・ロード(Abbey Road)』(イギリスで1969年9月26日発売・12作目の公式オリジナル・アルバム)のフィナーレを飾るメドレーです(正確には、“隠しトラック”「Her Majesty」が最後)。
3曲いずれもポールの手による作品で、リード・ヴォーカルもポール。
作品の性格上シングルとしてのリリースはありませんが非常に評価の高い楽曲で、ローリング・ストーン誌は“本作のB面のみで『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に匹敵する”と形容し称えました。
一方でメンバーのリンゴ・スターは“B面のメドレーは僕らの最高傑作のひとつ”と賛同しているのに対し、ジョン・レノンは“あれはジャンク(ガラクタ)を集めただけ”と辛辣です(ジョンはこのメドレーにほとんど関与していない)!

ビートルズ末期の作品であり80年代はポール自身がツアーを行わなかったことから長年ライブで披露されることはありませんでしたが、1989年の『The Paul McCartney World Tour(通称;ゲット・バック・ツアー』のリハーサルでポールがこの曲を演奏したところスタッフが涙を流して喜んだことから、セットリスト入りが決まったそうです。
ポールにとってウイングス以来約10年ぶり(ソロとして初)となるこのツアーは1990年に日本でも東京ドームで6公演が催され、私はこの時の「ゴールデン・スランバーズ~」のライブでの素晴らしい再現にとても感動を覚えた思い出があります。

また、この曲は1997年にビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンが働きかけた『モントセラト島救済コンサート』でポールをはじめ、エリック・クラプトンやマーク・ノップラー、フィル・コリンズら豪華協演により披露されました。
カバーも数多く存在しますが、ここではジョージ・マーティンのプロデュースによるフィル・コリンズver.と、2010年に『ケネディ・センター名誉賞』受賞トリビュートでポールを目前に捧げられたスティーヴン・タイラーver.をご紹介いたします。

 
Live-1989-90 / George Martin, Eric Clapton, Mark Knopfler,Phil Collins,Robbie McIntosh,Ray Cooper join Paul in the closing of The Concert for Montserrat

 
Phil Collins / Steven Tyler



~「Golden Slumbers」~

ポールがピアノとヴォーカル、ジョージ・ハリスンがベース、リンゴ・スターがドラムを担当していますが、ジョン・レノンはこの時入院中でレコーディングには参加していません(詳細は過去ログ「カム・トゥゲザー」にて)。
「Golden Slumbers」は2010年、堺雅人主演の映画『ゴールデンスランバー』にも影響を及ぼし、斉藤和義が主題歌としてカバーしたことをご記憶の方も多いでしょう。


Golden slumbers fill your eyes,
やすらかな黄金色が夢を彩り
smiles awake you when you rise
やさしい微笑みが目覚めを促してくれる

趣ある一節ですが実はコレ、“殆んどパクリ”です! 
ポールの義妹ルース(父ジェームスの再婚相手の連れ子)に読んであげた絵本の中にイギリスの作家トマス・デッカーの「Golden Slumbers」という詩を見つけ、そこから“Golden slumbers kiss your eyes/Smiles awake you when you rise/Sleep, pretty wantons, do not cry/And I will sing a lullaby”の4行を殆んどそのまま引用しています。
ただし、17世紀の作品であるため法的問題は生じない…というワケです。



~「Carry That Weight」~

メドレー2曲目ですがここでもジョージがベース&リード・ギター、ポールがリズム・ギターという変則的な編成で、ジョンはかろうじてコーラスに加わっているようです。
当初ポールは“この部分”を「Golden Slumbers」の一部と捉えていたようで、途中から「Carry That Weight」として分けられました。

Boy you're gonna carry that weight
あぁ、君はその重荷を背負ってゆくんだ

Boy】とは、一体誰を指すのでしょう…
また、彼が背負わねばならない【that weight】とは?
that weight=ビートルズ解散】と仮定すると、早くからその言動を示してきたジョンに対するポールの非難という見方もできますが、現実その十字架を背負ったのは“脱退宣言”で一身にバッシングを浴びせられたポールの方だったといえるでしょう。


I never give you my pillow,
もう君に枕を与えることはない
I only send you my invitations
あとは、ささやかな招待状を送るだけ

これも意味深で、【pillow】や【invitations】は何を象徴している?
このフレーズは同じ『アビイ・ロード』B面に収録される“「You Never Give Me Your Money」の替え歌”になっていて、同曲がビートルズの設立した会社『アップル・コア』の財政難を言及していることから考えると、ここでの“【you】=アップル”という仮説も成り立つでしょう。
すなわち、“僕はもうアップルに楽曲を提供することは無いし、後は法的決着だけ。世間が騒いでいる最中にね…”
この予言通り(?)、4人はこの後アップルを巡ってドロ沼の法廷闘争を繰り広げることとなります。



~「The End」~

タイトルの如く、ビートルズの終幕を飾るに相応しいメンバー総掛かりでの演奏を繰り広げる壮大な作品です。
ここでは初めてリンゴのドラム・ソロをフィーチャーしただけでなく、ポール⇒ジョージ⇒ジョンの順に2小節×3回のギター・バトルが展開されていて、今回メインとしたCG動画では夢でしか見ることができなかったこの競演が映像として見事に再現されています♪ 
バンドが危機を迎えて以降ポールがライブに拘ったのは“こういうこと”なのだろうと、ひとり私は感慨に浸る思いです…。

また、「The End」はアウトテイク集『The Beatles' Anthology 3』にも収録されており、マスター・バージョンでは取り除かれた音を確認することができます。


the love you take,
愛とは、与えた分だけ
is equal to the love you make
受け取るもの…

連呼される【Love you...】は“ポールのビートルズ愛”か…それとも、離れゆく“ビートルズへの切なる片思い”?
私には、夢の中での彼の心の悲鳴とも思えます。

そしてこのフレーズ、みなさんどう思います?
私は以前、友人に“うんうん…そうとも言えないね(笑)”と論破された思い出がありますが、人生経験豊かなみなさんはいかがでしょう…
でもイコールであるかはともかく、あまりそれを意識し過ぎると人生が楽しくなくなるかも? 



~Epilogue~

「Home」...

もしも「Golden Slumbers/Carry That Weight/The End」というメドレーを1つの言葉で表すとしたら、私はそう名づけるでしょう。
ポールにとって“それ”は、帰るべき家のように大切なもの…
そう、もちろんそれは“ビートルズ”に外なりません。
デビュー当初とても仲が良かった4人も『サージェント・ペパーズ~』で人気・音楽的に世界の頂点を極め“燃え尽き症候群”に襲われると同時に、それぞれの願望にもズレが生まれていったのです。

ジョン ;公私の区別なく、ヨーコのことしか頭にない
ジョージ;独立して、制限なく自分の作品を発表したい
リンゴ ;ビートルズを続けたいけど、いがみ合いは耐えられない

これに対し、“ビートルズを、より発展させたい”と願うポールが対立するのは必然でしょう。
ジョンやジョージにとって、ポールがビートルズを存続させたいと懸命になるほどそれは彼らにとって障害であり、ポールにとっても彼の願望を危うくさせる彼らの言動が悩ましくてならない…。

そんなポールが、“かつての4人”を取り戻すために一番の薬として考えたのが、“ライブ”でした。
デビュー前後の頃はいつも4人揃って演奏しあれこれ話し合いもしたものでしたが、録音機材の発達によって一人で好きな時間に自分の分を録音しダビングすればちゃんとレコードができ上がる時代になり、特にツアーを止めてからはそれぞれがバラバラに行動することが多くなってしまったからです。
ライブだと4人が一堂に会さずにはいられないし、良い演奏のために協力が生まれるはず…
しかし、それはジョンやジョージにとっては“余計なお世話”でしかありませんでした。
もはやこの時4人をビートルズに踏み止まらせていたのは彼らの絆ではなく、“ただの紙切れ(契約書)”だったといえるでしょう。


Once there was a way,
かつて…
to get back homeward
そこには、家へと続く道があった

ポールが帰りたかった“家”…
それは、“私たちの家”にもあてはまるのかもしれません。
例えば昔、家族が居間で囲むようにして見たテレビを今はそれぞれの部屋で見ていたり、友達遊びの楽しさを覚えた子どもが団らんの時間にも家に帰らなかったり…
時代の流れや置かれた状況は無常と解ってはいても、それが“かつて”の光景として過ぎゆくのが忍び難く、危機感を覚えた誰かが“みんなでバ-ベキューでもやろうよ!”なんて言い出す…

この頃、ポールは“そんな誰か”だったのだと思います…。



「ゴールデン・スランバーズ~キャリー・ザット・ウェイト~ジ・エンド」


Writer(s):Lennon-McCartney /訳:Beat Wolf

《Golden Slumbers》

かつて…
そこには、家へと続く道があった
帰るべき
わが家へと続く道…
さぁおやすみ、泣かないで
子守唄を歌ってあげるから

やすらかな黄金色が夢を彩り
やさしい微笑みが目覚めを促してくれる
だから、泣かないでおやすみ
君の眠りを、唄で見守っていてあげるから…



《Carry That Weight》
**
あぁ、君はその重荷を背負ってゆくんだ
重荷を
この先、ずっと…

もう君に枕を与えることはない
あとは、ささやかな招待状を送るだけ
宴も佳境を迎えるころ
僕はもう、疲れ果ててしまった…

**


《The End》
あぁ、今度は
僕の夢に現れるつもり?
今夜…

Love you...

でも結局
愛とは、与えた分だけ
受け取るもの…


最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 1969年 アート・ロック 偉大な曲 アビイ・ロード 

コメント

伊坂幸太郎さんの小説のタイトルは、この曲からとっているんですね~。ちょっと歌詞の雰囲気が物悲しいのですね。

2015.04.11  g-clef  編集

g-clefさん

原作を読んでらっしゃったのですね!
(恥ずかしながら、私は映画だけ…)
物悲しい理由は明日記事にするので、読んでくださいね。

2015.04.12  Beat Wolf  編集

Home・・
想いですね。

愛とは与えた分だけ受け取る
・・・
与えた分自分ではない誰かが受け取る場合も^ ^
循環するものと考えると楽かも(*^_^*)
考えないのが一番

2015.04.17  ☆dct☆  編集

☆dct☆さん

Home・・・
気に入っていただけましたか?

>与えた分自分ではない誰かが受け取る場合も・・・
☆dct☆さんは、心が広いですね!
でも、そのくらい潔い方が気持ちが楽になれるかもしれません。

2015.04.18  Beat Wolf  編集

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