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「007 美しき獲物たち」デュラン・デュラン

2017.05.26

category : Duran Duran

Duran Duran - A View To a Kill1 Duran Duran - A View To a Kill2


Duran Duran - A View To a Kill (1985年)



~Sir Roger George Moore 1927 - 2017 R.I.P.~

半世紀以上の歴史を誇るイギリスの人気スパイ・アクション映画『007シリーズ』に於いて、歴代6人中最多の7作でジェームズ・ボンドを演じたイギリスの俳優ロジャー・ムーアが、5月23日ガンのため亡くなりました(享年89)。
ロジャーの訃報に際し初代ショーン・コネリー、5代目ピアース・ブロスナン、6代目ダニエル・クレイグら歴代ボンド俳優からの追悼に加え、彼が出演したボンド作品のテーマ曲を歌ったポール・マッカートニーやデュラン・デュランからもそれぞれ哀悼の意が示されました。

本記事はロジャー・ムーアへの追悼を込めて、彼が最後に出演した1985年の『007 美しき獲物たち』のテーマ曲をお届けいたします。



~概要~

デュラン・デュランのデビューは1981年、時はアメリカの音楽専門ケーブル・テレビ・チャンネル『MTV』が開局した年であり、美しいヴィジュアルを備えた彼らはまさに“MTV時代の申し子”といえる存在で、当時女の子に最も影響力のあったロック・バンドといえるでしょう。
特に1983~84年頃は同じイギリスのカルチャー・クラブらとBritish Invasion(イギリスの侵略)の中心としてアメリカのヒット・チャートを席巻するほどの勢いがありました。

1985年、デュラン・デュランはイギリスの国民的映画[007]シリーズ第14作『007 美しき獲物たち(A View to a Kill)』の主題歌を担当しイギリスで3週2位、アメリカBillboard Hot 100で2週No.1(年間35位)に輝く大ヒットを記録、これは007主題歌史上初の快挙であり、今日までも唯一の達成です。
ちなみに、2012年にBillboardは007の50周年を記念して『007ベストテーマソング・トップ10』を発表していますが、その映えある1位こそ「A View to a Kill」であり、奇しくもロジャー・ムーア時代の作品が上位4曲を独占しました。

この頃“時の人”だったデュラン・デュランがこのタイミングで007の主題歌を歌うことはごく自然な流れに思われますが、実はその背景にはメンバーのジョン・テイラーによる“隠れた功績”がありました。
ジョンはボンド・スタイルのアストン・マーティンを所有し『007 オクトパシー』のボンド・ガールの一人 Janine Andrews と交際するなど、自他共に認める長年来の“007 オタク”で、そんな彼はあるパーティーで『007』シリーズの映画プロデューサーであるアルバート・R・ブロッコリと会う機会を得ています。
そこで、ここ数年の『007』の音楽に満足していなかったジョンは酔った勢いを借りて“いつになったらあなたの映画の主題歌をちゃんと歌える誰かを起用するの?”と、アルバートに自分を売り込んだそうです。
こうして、ジョンのこの強引な売り込みがきっかけでデュラン・デュランは“大役”を任されることになりました。

…しかしこの頃のデュラン・デュランは、メンバーが【パワー・ステーション】と【アーケイディア】という2つのユニットに分かれそれぞれ違った色合いの作品を発表するなど、音楽的にも精神的にもバラバラな状況にありました。
一方で「A View to a Kill」はデュラン・デュランと007シリーズの作曲を手掛けるジョン・バリーによる共作となっており、メンバーによると彼との連携はそれぞれ[作曲]と[オーケストラ・アレンジ]という明確な役割分担により、非常にスムーズに進行したそうです。
…それどころか、本曲のプロデュースには外遊先であるパワー・ステーションからプロデューサーのバーナード・エドワーズを参加させ、これにより“あのエフェクト”の効いたキレのあるロック・テイストと、ジョン・バリーのスリリングなオーケストラの融合が実現、見事に“007のアクション・イメージ”を代弁するサウンドに仕上がりました。

そして、同年7月13日に催された世紀のイベント『LIVE AID』当日はまさに「A View to a Kill」がHot 100でNo.1に就いた日であり、バンドにとっては最高の気分で迎えるべきステージでしたが、この日一部のメンバーは同じ舞台でパワー・ステーションとしてもパフォーマンスを披露していることが予兆であるかのように、これを最後にアンディ・テイラーとロジャー・テイラーはバンドを去ってしまいます。
結果、「A View to a Kill」はデュラン・デュランの黄金期(第4期)を形成した5人が創作した最後のシングルとなってしまいました。

 



~Lyrics~

Meeting you, with a view to a kill
心に殺意を秘め、お前と見(まみ)える
Face to face in secret places, feel the chill
恐怖と興奮を背に、人知れず相見(まみ)える

本作の原作はイアン・フレミングの『バラと拳銃(From a View to a Kill )』という短編集で、映画では語呂が悪いとの理由から[From]を省いて『A View to a Kill 』としたそうです。
また、劇中で誰かが映画タイトルをセリフにするのがこのシリーズの恒例となっていますが、今回は飛行船から見下ろすサンフランシスコ湾の眺望をメイデイ(グレース・ジョーンズ)が“What a view!(なんて素晴らしい眺め)”と感嘆した場面、そこに透かさずゾーリン(クリストファー・ウォーケン)が“...to a kill”と付け加える形でフレーズを完成させています。

ゾーリンはこの地に人工的な大地震を起こし都市を壊滅させる計画を企てており“...to a kill”はそういう意味と考えられますが、【kill】には[うっとりさせる]というニュアンスもあるため、“大量殺戮=うっとりさせる”という彼の残虐的な内面まで匂わせる一言であるような気もします。

ちなみに、歌詞で使われている【view】も単に[眺望]といった意味ではなく“計画・目的”といった意味合いを意図していると思われ、007が敵対する女性に相対する際の複雑な心境をイメージさせます。


Night fall covers me,
夜の闇がこの身を隠そうと
but you know the plans I'm making
お前は俺の心などお見通し

『007』シリーズの魅力は何といってもジェームズ・ボンドと敵対側が繰り広げる、ハラハラするド迫力の戦い…
任務の遂行のためには、互いの生死は問いません。

一方で、“お約束の楽しみ”は美しい【ボンド・ガール】とのドキドキのラブ・シーン…
しかし名うてのプレイボーイであるジェームズの“物色”の対象は、女性であれば敵味方を問いません!
映画を見ている私たちにとっては彼の前に美女が現れたら、たとえ敵であろうと最終的に二人が“いい関係”になることは、誰もがお見通しですよね? 


Still oversea,
海の向こう
could it be the whole world opening wide
世界を股にかけた駆け引きとなるだろう

今回はシベリア(実際はアイスランドとスイス)やフランス、アメリカなどを舞台としてストーリーが展開しており、前半の目玉の一つはエッフェル塔で007とメイデイが繰り広げる追跡劇です。
そして「A View to a Kill」のPVは、このシーンに沿わせるように、デュラン・デュランのメンバーがそれぞれの役割を演じて展開します。

近未来的な装置を備えた車から映像を交信するロジャー・テイラーと、カメラマンに扮しながら情報収集するニック・ローズ。
一方、携帯型カセットプレイヤーに偽装した爆破装置を操るサイモン・ル・ボンと、展望台の望遠鏡を利用するスナイパーのジョン・テイラー、そしてアコーディオンを武器とした盲目の暗殺者アンディ・テイラー。
最後は任務を完了させ、すっかり007気取りのサイモンが、ついうっかり…!? 



~Epilogue~

…さて、1973年から1985年まで約12年間/7作もの長きに亘りジェームズ・ボンドを演じたロジャー・ムーア。
しかし1927年生まれの彼は、実は初代ボンドのショーン・コネリーより年長であり、役を受け継いだ時すでに46歳、最後の作品となった『007 美しき獲物たち』では57歳でした。
このため本作が同年の世界興行成績5位を挙げたにも拘らず、“これ以上やったら殺される”と言ってボンド役を降板したそうです(本作のボンド・ガール、タニア・ロバーツの母親より自分が年上だったことにショックを受けたという説もある)。

Duran Duran - A View To a Kill3

…そして、私が物心ついた時ボンドだったのがロジャー・ムーアであり、エレガントでユーモアがあって物腰柔らかな英国紳士という私にとっての“ジェームズ・ボンドのイメージの雛型”となったのが、彼でした。
このキャラクター像はそれ以前の概念だった[ボンド=タフでワイルドなショーン・コネリー]の殻を打ち破るために正反対の路線を目指したといわれますが、一方でそれはロジャー生来の持ち味でもあったようです。
そのことは、それぞれが決して仲の良くない007シリーズの制作者たちとも親交を築けていることや、記者への応答で“アクション映画は楽だ。覚えるセリフは少ないし、危険なシーンは代役がいる”と発言をしてもユーモアと解され問題視されることのない彼のエピソードからしても、その人柄を物語っています。

Duran Duran - A View To a Kill4

また、ロジャー・ムーアの出演作で私の大好きな映画に1981年の『キャノンボール』があり、ここで彼は“ロジャー・ムーアを自称し、怪しげな特殊装備を施したボンド・カー(アストンマーティン・DB5)を乗り回すボンド・オタクの御曹司役”を演じていますが、本物のボンドがリアルタイムでヒーローである自分のパロディーを演じるというこの気の利いた演出は、彼のキャラクターと心の広さがあって初めて実現したといえるのでしょう。

[007=万能の人]というイメージがありますが、ロジャーのボンドは必ずどこかに[完全ではない隙(⇒人間らしさ)]みたいなものがあり、それが彼独特の魅力に繋がっている気がします。
しかし彼についてそれ以上に意外なのは、ボンドが最も得意とするはずの[運動とラブ・シーンが苦手]というコト!
それさえも“ラブ・シーンは全部スタントマンが演じている”と自らジョークにするユーモア精神は、ボンドには決してなれそうもない私たち凡人の人生にも良い教訓になりそうです。
そんな彼にとっても、ガンとの闘いは苦しかったことでしょう。
長い間、本当にお疲れさまでした。
…そして、ありがとう。

Duran Duran - A View To a Kill5
Sir Roger George Moore R.I.P.



「007 美しき獲物たち」



Writer(s): Duran Duran, John Barry /訳:Beat Wolf


心に殺意を秘め、お前と見(まみ)える
恐怖と興奮を背に、人知れず相見(まみ)える

夜の闇がこの身を隠そうと、お前は俺の心などお見通し
海の向こう、世界を股にかけた駆け引きとなるだろう
侵すべからざるもの、謎が大きく口を開けた心
週末とは…


炎の中、踊ろう 死を懸けた口づけこそ、望むすべて
炎の中、踊ろう 砕けた夢が破滅の叫びを挙げるまで
炎の中、踊ろう 死を懸けた口づけこそ、望むすべて
Dance into the fire...

お前との答え…それは、殺しの宿命
暗がりとの狭間、殺意はいまもこの胸に
今、クリスタルの涙が雪の結晶の如くその身を落ちる
今、積年を越えて愛する者の淡紅色がその肌を濡らす
辿り着くのは不死鳥の炎か
あるいは、死…




最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 1985年 ニューウェイヴ 映画80's 007 名作MV 

コメント

Beat Wolfさんへ
歴代でダニエル・クレィブ、ション・コネリーです。

曲は因みに、「Janes Bond Thene 」「 Sky fall」
「From Russia With Love 」が好きです。

2017.05.27  みすてぃむーん  編集

みすてぃむーんさん

みすてぃむーんさんは、クールなボンドがお好みでしょうか?(笑)
そういえば、みすてぃむーんさんとのご縁を取り持ってくれたのも
ダニエル・クレイグの「スペクター」でしたね♪

「Janes Bond Thene 」は定番として
他の2曲はゆったり哀愁があり、私も大好きです。

2017.05.27  Beat Wolf  編集

Beat Wolfさんへ
007はショーン・コネリーが年長者かと思っていました。
ホンドの役柄とジャー・ムーア本人の人柄とは
開きがあったのですね。
ガンとの苦闘は、お疲れ様でしたとしか....

私が物心ついたとはBeat Wolfさんのことですかー♪

2017.05.30  みすてぃむーん  編集

みすてぃむーんさん

そうでしょう?
ロジャーが3歳年長だそうです。
本来あまりスパイ向きじゃないと思いますが
身近にいたら楽しいと思います。
実は20年以上前もガンを患ったことがあるということなので
ひょっとしたら人知れずの苦闘もあったかもしれませんね。

そうです。
私だって、子どもの頃はありますよ?(汗)

2017.05.30  Beat Wolf  編集

お初は「私を愛したスパイ」でした

ボンドカーのロータス・エスプリのギミックにヤラレマシタ。(さすがに小2くらいだったんでお色気シーンは意味不明でしたが)以降、本作までは全部劇場で見ましたが、Beat Wolfさんから「CannonBall」ネタが出てくるとは・・・Pt.1のロジャー・ムーアやジャッキー・チェン&マイケル・ホイ(三菱スタリオン)などメッチャ興奮して観てましたよ!(Pt.2のリチャード・キールはロジャー・ムーアの代役?彼もR.I.Pですね…)オープニングのカウンタックの疾走やディーン・マーチン、サミー・デイヴィス・Jr等の名演技抜きでは語れませんが。

ところでDuran²のこの曲ですが、嫁さんと知り合った頃(高1)に観に行った思い出の映画主題歌なんです。butサイモンとジョンが好きと言う「我儘DuranFan」の彼女にとっては映画の流れよりも「Duranの今後が気になっていた」らしく、映画本編でなくPVの内容しかおぼえてないそうです・・・嗚呼、ロマンチストなのは男ばかりなり。

2017.05.31  地味JAM尊  編集

Re: お初は「私を愛したスパイ」でした

『キャノンボール』は劇場でも観ましたが
テレビの日本語吹き替え版をみて、もっと好きになりました。
通常ロジャー・ムーアの声は広川太一郎さんがやっていますが
この映画ではマイケル・ホイも彼ですよね!
そのギャップがタマりません。

それとディーン・マーチン&サミー・デイヴィス・Jrの名演は光っていましたが
これも日本語吹き替え版の2人の掛け合いは、腹を抱えるほど笑ってしまいます♪

奥さまの興味はやっぱりソッチでしたか!
女性には、「ボン・キュッ・ボン」のロマンはわかりませんよ。
逆に、男性にとっては「Duran²のロマン」が理解できないかもしれませんね?(笑)

2017.05.31  Beat Wolf  編集

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