I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

80年代の洋楽ロック・ポップス&ビートルズを中心に、歌詞の和訳と詳しい解説でお届けします♪

「レディ・マドンナ」ビートルズ

2018.06.22

category : Beatles & Solo

Beatles - Lady Madonna1 Beatles - Lady Madonna2


The Beatles - Lady Madonna (1968年)



~概要~

「レディ・マドンナ」は1968年3月15日(米は3/18)にビートルズが発表した17枚目のオリジナル・シングル曲で、B面はジョージ・ハリスンによるインド・テイストな作品「The Inner Light」、同年ビートルズはアップル・レコードを設立したため英・Parlophone/米・Capitolレーベルとして最後のシングルとなりました。
イギリスでは30万枚以上を売り上げNME;2週連続No.1/MM;2位、アメリカでは100万枚以上のセールスを挙げBillboard Hot 100で4位(年間60位)を記録しています(「The Inner Light」は週間96位、ジョージ作品として初のチャート・イン)。

オリジナル・アルバムには入っておらず、1970年に米キャピトル編集盤『Hey Jude』や1973年の“青盤”『The Beatles / 1967-1970』、1988年のCD『PAST MASTERS VOLUME TWO』などにステレオ・ヴァージョンが収録されています。
また、1996年の『The Beatles' Anthology 2』にはテイク3とテイク4をリミックスした音源が公開されました(この記事を編集時点で日本のyoutubeでは視聴不可)。


ビートルズは1968年3月中旬にシングル・リリース、メンバー4人には2月中旬から約3カ月間に及ぶインドへ瞑想修行の予定が控えていたため、2/3~2/15というごく短い期間で本曲を含む4曲がレコーディングされました。
作者は主にポール・マッカートニーで、ジョン・レノンは“たぶん歌詞を幾らか助けたけど、自慢できるほどでもない”と言及しています(別項詳細)。

ビートルズにしては珍しいジャズ・テイストなピアノは、同じパーロフォン所属のハンフリー・リッテルトン(Humphrey Lyttelton)が1956年に発表した「Bad Penny Blues」がヒントになっているといわれます。
PVではジョンがピアノを弾いている姿が見られますが実際に本曲を演奏しているのはポールであり、これは同じセッションでレコーディング中だった「Hey Bulldog」の演奏風景を撮影して「Lady Madonna」のPVに充てたためです(このとき撮影された映像は後年「Hey Bulldog」のPVにも編集使用されている)。

また、ポールによる“エルヴィス・プレスリー風のヴォーカル”も特徴的で、恐らく本曲を聴いた多くの人は本家本元“エルヴィスの歌声でも聴いてみたい”と願望したことでしょう。
しかし、今回の検索でその“エルヴィス本人によるカバーver.”を発見いたしました!
これは1970年頃の即興スタジオ・ジャムの一部音源で、ビートルズよりブルース色が濃く、エルヴィスは歌詞もうろ覚えですが、さすが期待を裏切らない“the King”の風格です。

2月6日夜までのセッションで「Lady Madonna」の一通りの録音作業は終了していますが、ジョン、ポール、ジョージによる“サックスの口真似コーラス”だけでは満足できなかったか、当夜突然ポールが“本物のサックスを使う”と言い出しました。
急遽テナー・サックス2名(ロニー・スコットを含む)+バリトン・サックス2名が招集され、その一人ハリー・クラインは“夕方6時半頃、入浴中に電話で呼び出された…”と、慌ただしさを語っています。
さらに楽譜もパートも決まってない状態から始まったため進行は当を得ておらず、挙げ句ポールに101回ものやり直しを求められ、作業は夜遅くまでかかったそうです。

本曲発表時すでにコンサート活動を止めていたため残念ながらビートルズでのライブ演奏はありませんが、1976年ウイングスの『Wings Over America』以来ポールのライブでよく演奏されるビートルズ・ソングの1つでもあります。


 
 



~Lyrics~

See how they run
駆け回る彼らをご覧

コーラスとして度々登場するこのフレーズはジョンのアイデアという説があり、1967年の彼の作品「I Am the Walrus」にも【See how they run】のフレーズが使われているので、まず間違いはないのでしょう。
ただしジョンというとイングランドの伝承童謡『マザー・グース (Mother Goose)』好きとして有名であり、【See how they run】は彼によるオリジナルではなくそのマザー・グースにもある有名なフレーズです。
マザー・グース『Three blind Mice スリー・ブラインド・マイス』には【Three blind mice. Three blind mice./See how they run. See how they run.】というフレーズがあって、“3匹の盲目ねずみが農家の奥さんを追いかけ回す歌”となっています。

また、1964年のアメリカNBCのTVムービーに『小さな逃亡者(See how they run)』という作品があり、“父親を殺され孤児となった三人の子供が組織に追われるストーリー”で、こちらが影響を与えた可能性も無きにしも非ず?

 

Tuesday afternoon is never ending
火曜の午後はいつ終わるとも知れない
Wednesday morning papers didn't come
水曜の朝は新聞が来ない

マザー・グースでは“1週間の歌”は子どもに曜日を覚えさせる定番曲であり、幾つもの歌がみられます。
そのうちの一つ、谷川俊太郎も訳したことで知られる「Monday's Child」は“占いの歌”となっていて、【Monday's child is fair of face 美しいのは 月曜日の子ども /Tuesday's child is full of grace 品のいいのは 火曜日の子ども… 】という風に誕生日の曜日ごとに子どもの性質を伝えています。

日本で“1週間の歌”といって私が思い浮かぶのは、川崎のぼる原作のアニメ『てんとう虫の歌』のEDテーマ「ぼくらそろって一週間」です。
タイトルは【てんとう虫】に由来していますが、実際は[日曜子(ひよこ)][月美(つきみ)]…ら曜日が充てられた7人きょうだいの物語となっています。


Friday night arrives without a suitcase
金曜の夜はスーツケースもなしに到着
Sunday morning creeping like a nun
日曜の朝は尼さんみたいに忍び歩き

“土曜日”だけ抜けているのは、何故だろう…
なぜ土曜かは不明ですが、曲の構成上“七曜日を1番と2番で3日+3日に削るしかなかった”ことは想像できますね?

ただ、ポールによると【1週間の歌】というアイデアはマザー・グースではなく、ファッツ・ドミノ1956年の「Blue Monday」から得たそうです。
ファッツ・ドミノはポールの敬愛するピアニスト&ロックンローラーであり、1968年にはそのファッツがビートルズの「Lady Madonna」をカバーしています。

 



~Epilogue~

ファッツ・ドミノの「Blue Monday」は【Got to work like a slave all day 一日中奴隷みたいに働かなければならない】男の1週間を描いた作品ですが、歌詞を顧みると確かに「Lady Madonna」は“その女性版”ともいえる趣きがあります。
ポールによると「Lady Madonna」は当初【聖母マリア】をテーマとしていたものの、その後主人公を【リヴァプールの労働者階級の女性】に変更したそうです。

a working-class woman ...

それを意識した表現かは定かではありませんが、本曲は“ポールのヴォーカルやギターの音をエフェクターで歪ませ”たり、“ジョンとジョージがポテトチップスを食べながらコーラス”したり、“ピアノに安っぽいマイクを使ってコンプレッサーとリミッターを大量にかける”…といった明らかに音を劣化させる作業にわざわざ手間をかけ録音されています。
【Mother Mary】なる存在が登場し、ゴスペル風のオルガンを響かせピアノの余韻で終わらせた「Let It Be」とは真逆の趣きです。


ポールにテーマを変えさせたのは、“1枚の写真”との出あいでした。
それは『ナショナル ジオグラフィック(National Geographic)』誌1965年1月号に、
「Mountain Madonna」というタイトルで掲載されていた一人の女性の写真…
アジアの貧しい山あいの村人を思わせるその女性は半裸で、まさに【一人の乳飲み児を胸に抱えて授乳し】、【足元にいるもう一人の子どもの相手】をしながら何か作業をしている母親の日常を捉えたであろう一枚です。
これを見たポールは、僕には聖母マリアのように見えたと後に語っています。

Beatles - Lady Madonna3 Nursing Madonna

そのさまは、“この世で最も尊い営み”です。
彼女が聖母であるとか、人種や貴賎の違いに分け隔てなく…
子を想う愛情が自らの体内で母乳を生成させ、触れあう肌のぬくもりを通してそれを直接分け与える能力は、男性にとって“神秘”であり、まるで“神の領域”です。

Lady Madonna, baby at your breast
レディ・マドンナ、乳飲み児を胸に抱え
Wonders how you manage to feed the rest
どうやってほかの子を食べさせるのだろう

【Lady(貴婦人)】と【Madonna(the~)聖母マリア】…
二つを重ね合わせたタイトルにこそ、彼女に対するポールの本当の想いが込められているのです。



「レディ・マドンナ」


Writer(s): Lennon–McCartney /訳:Beat Wolf


レディ・マドンナ
足元に子どもたちを纏(まと)い
どうやって生計をやり繰りするのだろう
家賃は誰が工面しているの?
お金は天が与えてくれると?

金曜の夜はスーツケースもなしに到着
日曜の朝は尼さんみたいに忍び歩き
月曜日は子どもが靴紐の結び方を覚えた

See how they run
(駆け回る彼らをご覧)

レディ・マドンナ
乳飲み児を胸に抱え
どうやってほかの子を食べさせるのだろう

See how they run

レディ・マドンナ
ベッドの上に横たわり
頭の中で音楽を浮かべ聴いている

火曜の午後はいつ終わるとも知れない
水曜の朝は新聞が来ない
木曜の夜はストッキングを繕わなければならない

See how they run

レディ・マドンナ
足元に子どもたちを纏(まと)い
どうやって生計をやり繰りするのだろう


~Let's Singin'~

最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : 音楽 Lyrics 和訳 洋楽 

コメント

渋い雰囲気を出しながらもいつまでも記憶に残るレディマドンナ、この曲が発売されてちょうど50周年ですね!小生も今年秋はホワイトアルバム50周年特集を公開しようと思っています。

2018.06.24  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

今回は私も50周年を意識して選曲してみました。
ローリングウエストさんも秋に特集なさるご予定なのですね。

この調子でいくと来年、再来年までこのネタが使えそうです。
…というか、レコード会社はずっとこれで稼いできましたが…?(笑)

2018.06.24  Beat Wolf  編集

レディマドンナに、こんなエピソードがあったなんて。
「生きること」「子供を育てること」への敬愛
ポールの視点が素敵✨

エルビスプレスリーの歌はCool✨

2018.07.02  ☆dct☆  編集

☆dct☆さん

ポールは早くにお母さんを亡くしているし
家族思いな人なので、こういう視点を持てたと思います。
…この歳で!(笑)

エルヴィスはまるで自分の歌のようでしょう?
やっぱりCoolさでは本家本元には敵いません。
でもポールの得意技は「shout」で
私はそのカッコよさに惚れたんですよね~♪(笑)

2018.07.02  Beat Wolf  編集

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ジャンルを問わず音楽が大好き♪
古い歌の“温故”から、歳月を重ねた“知新(いま思う・いま考える)”を綴ります。



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