I Wish~洋楽歌詞和訳&解説

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「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」ビートルズ

2018.11.18

category : Beatles & Solo

Beatles - While My Guitar Gently Weeps1 Beatles - While My Guitar Gently Weeps2


The Beatles - While My Guitar Gently Weeps (1968年)



~概要~

「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」(以下「ホワイル・マイ~」)は、1968年11月22日に発売されたビートルズ10作目のアルバム『ザ・ビートルズ(The Beatles)』(通称;『ホワイト・アルバム』) に収録された楽曲です(A-7)。
英・米両国でのシングル・カットはありませんが、同アルバムから「Ob-La-Di, Ob-La-Da」のB面として、日本・ドイツ・フランス・イタリア・オランダ等で発売され各国でヒットを記録しています。
作詞・作曲/リード・ヴォーカルはジョージ・ハリスンで、当時クリーム(過去ログ)のギタリストとして人気絶頂にあったエリック・クラプトンをリード・ギターに迎え演奏された“泣きのギター”は特に有名です。
ジョージやエリックのキャリアに欠かせない代表曲であるだけでなく、ロックの歴史に残る名曲として絶大な人気があり、有名誌でも以下のように評価がなされています。

『ローリング・ストーン』誌
“500 Greatest Songs of All Time”136位(2011)
“100 Greatest Guitar Songs of All Time”7位(2008)
“100 Greatest Beatles Songs”10位(2011)
『GUITAR WORLD』誌
“100 Greatest Guitar Solos”42位(2008)

1968年2月、ビートルズはパーロフォンからの最後のシングルとなる「Lady Madonna」(過去ログ)のレコーディングを終えると、2月15日からインドで瞑想修行を行い(メンバーによって滞在期間は異なる)、5月30日から約5カ月近くに亘る新たなアルバムのレコーディング・セッションに入っています。
「ホワイル・マイ~」のレコーディングが始まったのは7月25日のことで、ジョージのギブソン・J-200とポールのハーモニウムを一部被せただけの素朴な音源でした(詳細次項)。
8月16日にメンバー4人が揃ったバンド編成で録音がなされ、その後も9月3日・9月5日と、第44テイクまでレコーディングが重ねられたものの納得できるサウンドが得られず、翌9月6日にジョージが友人のエリック・クラプトンを招きセッションしたことがあらゆる面で奏功し、ようやく作品が完成に至っています。


その後1971年12月の『バングラデシュ難民救済コンサート』と1987年の『プリンス・トラスト』ではジョージとエリック、リンゴ・スターが揃ったパフォーマンスが実現していますが、1971年時エリックはドラッグ中毒と盟友デュアン・オールマン急死(1971年10月29日)の影響を感じさせるものでした。
1991年には日本で12公演にも亘る『ジョージ・ハリスンwith エリック・クラプトン and his band』が催され、「ホワイル・マイ~」が目玉となっていたことをご記憶の方も多いでしょう。

ジョージの一周忌に催された2002年11月29日の『コンサート・フォー・ジョージ(Concert for George)』ではエリックがホスト役を務め、「ホワイル・マイ~」では元ビートルズのポール&リンゴに加えてジョージの長男ダーニ・ハリスンが演奏に参加し、盛大な追悼となりました。


 
 



~Lyrics~

I look at the floor and I see it needs sweeping
床を見ると、それは掃き清められるべきと気づく
The problems you sell are the troubles you're reaping
あなたが売る問題の数々は、あなたが受ける苦労の種

今月発売された『ホワイト・アルバム』 “50周年記念エディション”のプロモとして「ホワイル・マイ~」の何種類かの未発表音源が公開されており、それを聴いてみるとレコーディング過程で歌詞が一部書き換えられていったことがわかります。

上段は『ホワイト・アルバム』 に収録の最終ver.下段は音源として残っている恐らく最初期と思われる1968年5月の最終週、英サリー州イーシャーにあるジョージの家にメンバーが集まって27曲のアコースティック・デモを録音した【Esher Demo】の、[Verse 1]の同じラインを並べてみました。
何れも[sweeping/reaping]と韻を意識しているのは同じですが最終ver.は1行目の[I look at...]を反復しリズム感を重視しているのに対し、Esher Demoは歌詞に深みを感じます。




I look at you all, see the love there that's sleeping
愛を眠らせたままのあなた
While my guitar gently weeps
傍らで、僕のギターはそっと涙を零す

ジョージがインド思想に造詣が深かったことは有名ですが、彼は古代中国の儒教・五経の一つ『易経』の本も持っていたそうです。
易経は“あらゆる出来事は起こるべくして起こる”という占いの理論と方法を説く書で、これに感銘を覚えたジョージが両親の家を訪ねたとき適当に取って開いた本のページにあった言葉【gently weeps】をテーマとして創作した作品が、「ホワイル・マイ~」でした。

そういわれてみると、変更された上の[Esher Demo]のラインを含め、歌詞の随所に感じられる示唆的な言葉の表現が腑に落ちるのではないでしょうか…。


I look from the wings at the play you are staging.
あなたが演じる芝居を舞台の袖から見ていよう
As I'm sitting here doing nothing but aging
ここに座り、ただ年老いてゆきながら

1968年7月25日のセッション初日のテイクにはあった[Verse 5]の歌詞です。
(最終ver.では[Verse 1]とほぼ同じ内容に差し替えられている)
このフレーズは『The Beatles' Anthology 3』で初めて公開された音源に含まれるものですが、2006年にシルク・ドゥ・ソレイユによるラスベガスでのミュージカル常設公演『Love』に提供されたのもこのバージョンにストリングス・アレンジを加えたもので(ビートルズもサウンドトラックとしてリミックス・アルバム『LOVE』を発売)、2016年にはその10周年を記念して新たにアーティスティックなミュージック・ビデオも制作されています。
今回の『ホワイト・アルバム』 “50周年記念エディション”では1968年の同日録音された【Take 2】が公開されており、ここではジョージが歌の途中で“たぶん彼にもマイクを1本立てた方がいい”と指示を出しています。

ここでもやはり、差し替えられた歌詞の方が趣きがあるように思えます…。
そもそもが【gently weeps(静かに涙を流す)】であることを考慮すると当初の寂しげなアコースティックver.が自然で、むしろ最終ver.の強烈なエレキは【cry(声をあげて泣く)】に近い感覚といえるかもしれません。

 



~Epilogue~

11月29日は、ジョージ・ハリスンの命日。
今月23日からは、エリック・クラプトンの半生を描いたドキュメンタリー『エリック・クラプトン~12小節の人生~』が劇場公開されました。
先日クイーンの映画も公開されましたがあちらは“エンターテインメント”色が強く、こちらは“ドキュメンタリー”なので、当時の時代背景やエリックの人間関係・[黒い歴史]に知識・興味を持つファン向けの作品といえるでしょう。

 

「ホワイル・マイ~」でのジョージの“迷走”は、【gently weeps】な歌を【cry】な方向に向けようとしたアプローチにあったといえるかもしれません(初期のアコースティックだけで十分「Something」に匹敵する美曲である)。
障害となったのは[ジョージの技能不足]で、彼はテーマのような“泣きのギター”を表現しようと何度も試みたものの上手くできず、《9月3日》に居残って逆回転を用いた録音であれこれ試みましたが果たせず、エンジニアによるとこの段階で“エリック・クラプトンを参加させる”案が出たそうです。
《9月5日》には“逃亡”していたリンゴがスタジオに復帰しお祝いムードの中、一気に第44テイクまで録音されましたが結局満足できるサウンドは得られませんでした
エリックの記憶によると、“明日空いてる?”とジョージからの電話があったのはこの日だったそうです。

翌《9月6日》、二人同乗する車中で突然ジョージが“レコーディングに参加してソロ弾かない?”と持ち掛け、エリックは“ビートルズなんて恐れ多い”と固辞したものの、“だからどうした?僕の曲だ”と半ば強引に、そのままエリックをスタジオへと連れて来たようです。
そのためエリックはギターを持たず同日スタジオ入りすることになりますが、そこには直近までエリックが所有し1968年8月初旬にジョージに譲った【57年製ギブソン・レスポール“Lucy(ルーシー)”】が置かれてありました(Lucyは9/4に撮影された「Revolution」のビデオで確認できる)。

エリックにとって「ホワイル・マイ~」は初めて聴いた曲であるにも拘らず、レコーディング・セッションはわずか2テイクで完了しました。
しかも正式音源に採用されたのは最初のテイクといいますから、いくら即興に慣れているとはいえ、あれだけの“泣きのギター”を一発でやってのけるというのは、まさに“神”というほかはありません。
誘ったジョージ本人も“エリックがあれをプレイしたとき、本当に凄いと思った”と驚嘆していますが、エリック本人はNHK『SONGS』で“僕には簡単なことだった”と語っています。

しかし“クラプトン効果”は、それだけに止まりません。
ホワイト・アルバムのレコーディング・セッションはスタジオ中に怒号が響き渡り、リンゴ・スターやエンジニアのジェフ・エメリックが“逃亡”してしまうほど険悪な空気の中で行われていましたが、ジョージによると“エリックがいる間、みんな本当にお利口さんだった”といいます。
また、セッションの当初よりジョンもポールもジョージの曲に関心を示さず真剣に聴こうともせず、適当にレコーディングを済ませようとする風潮があったそうで、“あれ以来、みんなもっと本気になった。すごく真面目に仕事するようになった”と、ジョージは当時を振り返りました。
とりわけそれが顕著に表れているのはポールのベース・プレイで、ここでの彼の素晴らしい演奏はエリックのギターが刺激となったのは想像に難くなく、共演したエリック自身も“ジョンやジョージも素晴らしいミュージシャンだけど、彼らの中で最高のプレイヤーはポールだ”と、評しています。


一方、「ホワイル・マイ~」を演じた伝説の主演女優“Lucy”は1970年にジョージ宅で盗難の被害に遭い、紛失してしまいます。
1973年に転売先の楽器店からの購入者が見つかり、同等の58年型レスポールとの交換によってLucyはジョージの元へ帰って来ました。
同等品を手に入れるのにジョージ自らがアメリカまで飛んだそうで、協力してくれたギターのコレクターはジョージへの敬意を込めて1500ドルで売ってくれたそうです。
2013年に伝説の女優・Lucyのカスタム・レプリカ『GIBSON CUSTOM George Harrison / Eric Clapton Les Paul』が世界100本限定生産で発売されましたが、価格は約200万円!

世界に一つしかない本物の伝説の女優には、一体いくらの値がつくのでしょう…。 



「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」


Writer(s): George Harrison /訳:Beat Wolf


愛を眠らせたままのあなた
傍らで、僕のギターはそっと涙を零す
掃き清められるべき床
ギターは、そっと涙の雨を降らせる

なぜ、誰も教えてあげないのだろう
心の内にある愛の表し方を
なぜ、誰かが他人を支配したりするのだろう
まるで、売り買いでもするように

世界を見渡せば、それは休むことなく回っている
僕のギターが、そっと涙を零す傍らで
過ちを一つ犯すたび、人は確かに学んでゆかなければならない
ギターは、そっと涙を奏でる

どんな風にして、あなたは道を逸らされ  
邪(よこしま)へと導かれてしまったのだろう
どんな風にして、あなたは覆されてしまったのだろう
戒める者さえなく

そこに、愛を眠らせたままのあなた
傍らで、僕のギターはそっと涙を零す
あなたを見つめる
ギターは、そっと涙を奏でる…


最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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tags : ホワイト・アルバム ロック 偉大な曲 偉大なギター 

コメント

こんばんは、Levalloisbeeです。大好きな、ジョージの一番の傑作と勝手に思っております、While My Guitar Gently Weeps を紹介いただきありがとうございます。ウェットなメロディーとちょっとアジアっぽいギターの響きがよく合っているような印象で、当時の日本ではヘイ・ジュードのようなメガヒットではなかったと思いますが、一度聴いたら耳から離れない曲になりました。

2018.11.23  Levalloisbee  編集

こんばんは~今日もいいもの見させてもらえました、懐かしい人達が出てて嬉しい動画でした。フィル・コリンズはなんでもやりますね、器用なもんです。ありがとうございました。

2018.11.24  たまごバナナ  編集

Levalloisbeeさん

ジョージ・ファンでらしたのですね。
でもWhile My Guitar Gently Weepsはファンだけでなく
みんなに誇れる名曲だと思います。

ヘイ・ジュードのような表立ったヒットでなくとも
根強く愛され続けてるって、いかにもジョージらしいですね。
ただクラプトンが入る前のverの方が
本来のジョージに近い感覚だったとも思います。(笑)

2018.11.24  Beat Wolf  編集

たまごバナナさん

後ろの人たちが懐かしいなんて、よく通じてらっしゃるのですね。
確かに、当時フィル・コリンズはどこでも見かけました。(笑)

2018.11.24  Beat Wolf  編集

こんばんは~今日も覗きに来ました。ジョ-ジがクラプトンに弾いてみないと言わなかったら?ジョ-ジも上手いこと弾けなかったからきつかったんだろうね~それにしてもクラプトンのギターテクは素晴らしいですね。今日も感動してゆっくり寝れそうです。

2018.11.27  たまごバナナ  編集

たまごバナナさん

自分で弾けるようになるまで練習して
後年発表することもできたでしょう。
実際、この時レコーディングを目指して完成できず
10年以上後に発表した別の曲もありますから。

でも、結果としてクラプトンが弾いて良かったと思います。

2018.11.28  Beat Wolf  編集

ホワイトアルバム50年の特集やっていますね。小生も11月4日に公開しましたが、名曲を公開しきれなかったので年末に後編をヘイジュード50周年記事とセットでレポします。クラプトン映画来週観てきます。1月はエルトンジョン映画ですね。

2018.11.29  ローリングウエスト  編集

ローリングウエストさん

何だか最近、音楽界をテーマとした映画が相次いでますね。
あまり集中されると見る方も大変です。
ローリングウエストさんなら
クラプトン映画はど真ん中でしょう。
ごゆっくりお楽しみになって来てくださいね。

2018.11.30  Beat Wolf  編集

やっぱりビートルズ🌟好きです。
きっと昔聴いてたから染み込んでるのかな(*^_^*)

クラプトンにとっては、簡単なことだったんですね。
ギターを持って、軽く弾くところカッコいい!

「泣くギター」最近聴かなくなってる。。。
ギターの音色良いですよねえ✨

フレディに続きクラプトン観に行かなくては。

2018.12.02  ☆dct☆  編集

☆dct☆さん

ビートルズほどクオリティの揃った
楽曲を残したミュージシャンはありません。
だから、これからも聴いてくださいね?(笑)

クラプトンにとっては、「普段やっていること」
に過ぎないのだと思います。
だからいきなりやってできるし、簡単なことなのでしょう。
クラプトンの好きなbluesって、「泣き」ですから。
そういう感情を表現したのが彼の音楽だし
実際、そういう人生だったのでしょうね。(笑)

2018.12.02  Beat Wolf  編集

the floor

こんにちわ、
自分でも「While My Guitar Gently Weeps」を訳してみようと思っていて、
御記事を参考にと拝読いています。 
この歌詞を読んでいて私は、
The floor はyou all と同じ意味、 
sweeping はunfoldと同じ意味で使っている様に思います。
it needs sweeping のit はloveではないかと思うのです。

2021.04.01  ノエルかえる  編集

Re: the floor

そうかもしれません。
ジョージの代表曲で人気曲でもあるので一度は挑戦してみたくなる作品です。
がんばってください。

2021.04.01  Beat Wolf  編集

ありがとうございます、
訳してみました。

2021.04.03  ノエルかえる  編集

ノエルかえるさん

おつかれさまでした。

2021.04.03  Beat Wolf  編集

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